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■東風(11)

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東京に戻ってきたビーナ(数紀)に、川崎ゆりこが言った。
 
「ビーナちゃんが出演して好評のヘアドライヤーのCMだけどさ」
「はい」
「CM曲も歌って欲しいという話なのよ。ちょっと音源制作に行って来てくれる?」
「分かりました」
 
「あ、それとこの子、紹介しておくね。君のマネージングのサブに入ってもらうことになった、女子大生の川世宇津美ちゃん」
 
「川世宇津美です。よろしくお願いします」
と何だか可愛い女子大生である。
 
「よろしくお願いします。水森ビーナです」
と数紀も挨拶した。
 
「夏休みに入ったらすぐビーナちゃんに付いてもらうつもりだったんだけど、ビーナちゃんが熊谷に籠もってたから、しばらくアクアのヘルプに入ってもらっていた」
 
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「それは無茶苦茶忙しかったでしょう」
「目が回りました!」
 

ともかくも数紀は東京に戻ると休む間もなく、スタジオに入って音源制作をすることになった。
 
これまで、松梨詩恩、高崎ひろか、白鳥リズム、七尾ロマンの仮歌を歌ったことはあるし、ここ1ヶ月近く常滑舞音の仮音源制作に関わっていたが、自分の歌をCDにするのは初めてである。
 
川世宇津美ちゃんの運転するMazda3 fastback (千里3が主として使用しているアテンザ・ワゴンの後継車)に乗って数紀はスタジオに行く。
 
そして少しドキドキしながら、数紀はスタジオの中に入った。
 
入口でいきなり転ぶ。
 
「君大丈夫?」
と30代の男性が言う。
 
「大丈夫です。いきなり足首を掴まれた気がしたんですが、きっと気のせいです」
 
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今回の音源制作の指揮を執ってくれるのは、野潟四朗さんと言う人だった。
 
「取り敢えず歌ってみて」
と言って、譜面を渡される。ギターコード付きのメロディー譜である。
 
「済みません。キーボード弾きながら歌っていいですか?」
「うん、いいよ。これ使って」
と言って、スタジオに置かれていた、Yamaha PSR-E360 (61key)を指さされるので、その前に座る。数紀は譜読みをしてから、オートリズムを120の8 Beatに設定した。フィルインから伴奏を左手和音で弾きながら歌って行く。
 
途中でダカーポの戻り先が一瞬分からなくて出遅れたものの、すぐに追いついて何とか辻褄を合わせる。その他はあまり大きなミスは無しで、最後まで歌いきった。
 
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「すみません。5ヶ所も間違いました」
と数紀は言ったのだが
 
「いや、いきなりこれだけ歌えるのはアクアのレベル」
と野潟さんは言う。
 
どうも褒めてくれているようだ。
 
「まあ間違った所は次修正すればいいんだけど、ここが少し違うかなと思った」
と言って、野潟さんは楽曲の“解釈上の問題”を少し指摘した。
 

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数紀は野潟さんとやりとりしながら楽曲を練り上げていった。1ヶ所は
 
「ここは僕のほうが思い違いしていた。君の歌い方のほうが正しい」
と言われた所もあった。
 
2時間ほどの後、
 
「これで完成だね。文句付けるところがない」
と言われた。
 
「そうですか?ありがとうございます」
 
「この1曲だけで終わりのつもりだったけど、ここまで歌えるなら1曲だけのシングルにするのはもったいない。もう1曲入れちゃおう」
 
「はい」
 
それで野潟さんはどうもコスモス社長に電話したようである。それで別の譜面を送ってもらったようだ。その場でプリントして渡される。やはりギターコード付きのメロディー譜てある。
 
「これは缶コーヒーのCM曲で、まだ誰を当てるか決めてなかったらしい。これを歌って」
「はい」
「たぶん追ってこれのCF撮影も入ることになると思う」
「分かりました」
 
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それでこの日はまた2時間ほど掛けて、缶コーヒーのCM曲の音源制作をしたのである。
 
「今日はほんとにいい仕事ができた。君は素晴らしい歌手だよ」
「ありがとうございます」
「ぜひまた一緒にやろう」
「はい、よろしくお願いします」
 
それで数紀は野潟さんとエア握手してから退出した。
 

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川世マネージャー、及び、野潟さんからの連絡を外出中のコスモスに代わって社長デスク横のサブデスクで聞いた花ちゃんは、呟いた。
 
「やはり私の予想通り。結局音の正確性にこだわりを持つ野潟さんと、歌唱力の無いエーヨの組合せが最悪だったんだな。だから、水森ビーナとか七尾ロマンとか、他にたぶん四宮七菜みたいな正確な歌を歌う子には、野潟さんは相性がいいんだよ。一度、四宮七菜も当ててみたいな。個人的にはリンゴより買ってるんだけど」
 
それで、コスモス・ゆりこに簡単な同報メールをしてから、花ちゃんは、締め切りの迫った楽曲の編曲作業を続けた。
 

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一方アルバム制作が終わって熊谷から戻った常滑舞音は、ドラマに出てと言われ、『風の街』というドラマに女子高生役で出た。レギュラーの生徒達がコーラス大会で出会う他校の生徒という役である。実は舞音はこのドラマの出演者と一緒にこのドラマのセットを利用した、音楽教室のCMに出演したことがあり、その時に一度ドラマ自体にも出てと言われていた。しかしなかなか時間が取れなかった。CM撮影後2ヶ月半もたって、やっとドラマ出演が実現した。
 
でもドラマに出たのはゴールデンウィークに撮影した『招きマネキン』以来3ヶ月ぶりであった。
 
舞音はひたすらCMを撮影し、その歌を歌っている感じだ。
 

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オリンピックが終わった後、夏休み期間中、§§ミュージックではいつものようにネットライブ(あけぼのテレビで有料放送)を企画していた。日程はこのようになっている。
 
8月9日(振)白鳥リズム(司会:山本コリン、ゲスト:花貝パール)
8月14日(土)姫路スピカ(司会:大仙イリヤ、ゲスト:七尾ロマン)
8月15日(日)甲斐姉妹(司会&幕間:水谷姉妹)
8月16日(月)アクア(司会?:、ゲスト:恋珠ルビー)
8月21日(土)ラピスラズリ(司会:桜野レイア、ゲスト:美崎ジョナ)
8月22日(日)常滑真音(司会:長浜夢夜、ゲスト:山鹿クロム・三陸セレン)
8月28日(土)品川ありさ(司会:鹿野カリナ、ゲスト:西宮ネオン)
8月29日(日)高崎ひろか(司会:鈴鹿あまめ、ゲスト:水森ビーナ)
 
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美崎ジョナは風谷リンゴにコスモスが付けた芸名である。美崎は、彼女の出身地・江差の名前がアイヌ語で岬を表す“エサウシ”という単語が語源になっていることと、リンゴの品種“ジョナサン”(紅玉)から来ている。彼女はやや孤高癖があることもあり、(安価で甘くて庶民的なリンゴである紅玉に寄せて)甘くて庶民的でみんなから愛されるようにという願いを込めて付けたものである。
 
花ちゃんは彼女が7月末に東京に出て来た時に彼女を呼んで
「君が現時点でレノンに負けているのは、歌の技術ではない。親しみやすさだ」
と通告し、毎朝鏡を見て笑顔を作る練習をしなさいと言った。
 
なお、川崎ゆりこは“桧山サニー”というのを提案したが、インパクトが弱いとして、コスモスが却下した。(江差町は檜山郡にある)
 
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山鹿クロム・三陸セレンは「あんたたちいつも一緒にいるから一緒に出なさい」と言われて舞音のライブにセットで出演することになった。
 
「男物の服でも女物の服でも好きな方を着ていいから」
と言ったら、どうしよう?と言って悩んでいた!
 
なお、会場はアクアのみ小浜のミューズシアターで、それ以外は仙台の織姫である。バックダンサーは各地域の信濃町ガールズを動員予定である。(織姫は仙台空港にとても近いので使いやすいし、牽牛を予備に使える)
 
アクアをわざわざ平日にするのは、回線パンクに備えるためである。
 
またアクアがラストでないのは“万一”の場合に備えて“8月20日”より前にしておきたかったからである。また常滑舞音は、アルバム制作が8月16日くらいまでかかる可能性があったので、その後に日程を組んだ。
 
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8月14日(土).
 
「昔話」シリーズの夏休みスペシャル第一弾『八岐大蛇(やまたのおろち)』が放送された。
 
主演・須佐之男命(すさのおのみこと)を七浜宇菜が男装で演じる。
 
物語は須佐之男命が天界で暴れて、怒った姉の天照大神(あまてらすおおみかみ:演アクア)が天岩戸(あまのいわと)に隠れてしまう所から始まる。
 
太陽神が隠れてしまったので世の中は真っ暗闇になる。
 
神々が話し合い、まずは岩戸の前で大宴会をして、天宇受売(あめのうずめ:演キャロル前田!)が岩戸の前で踊る。騒ぎを不審に思って岩戸の戸を開いた天照大神の手を天手力男(あめのたぢからお:演エレガント河田:元女子プロレスラー)がぐいっと引き、外に出して、しめなわを渡し「もうここから戻ってはいけません」と通告した。
 
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しかしこれで太陽神が外に出て来て、世の中には光が戻った。
 

騒動の責任を問われて、須佐之男命は天界から追放になる。須佐之男命も反省し姉に謝罪してから地上に降りた。
 
そして歩いていると、川に箸が流れてくるのを見る。それで須佐之男命はこの上流に人が住んでいる所があると思って川の上流へと向かった。
 

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須佐之男命が歩いて行くと、やがて村がある。そして一軒の家に中年の夫婦(演:佐竹宏信・南原夕子)と若い娘(羽田小牧!)がいて、3人とも泣いていた。
 
「お前たち何を泣いているのだ?」
と須佐之男命が尋ねますと、夫婦はこのような説明をした。
 
・自分たちには8人の娘が居た。
・しかし毎年八岐大蛇(やまたのおろち)がやってきて娘を1人ずつ食べてしまう。・そしてとうとうこの櫛稲田姫だけになってしまった。
・この子も今年は食べられてしまうのだろうか思うと悲しくて泣いている。
 
それで須佐之男命が“八岐大蛇”とはどのようなものかと尋ねると夫婦は説明した。
 
・ひとつの身体に8つの頭と8つの尻尾がある
・その長さは8つの谷と8つの山にわたる
・背中には多数の樹木が生えている
 
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ここで須佐之男命は
「私は天照大神の弟である」
と身分を明かし、自分がその八岐大蛇を倒すから、娘を自分の嫁にくれと言った。
 
夫婦は驚いたが、娘を嫁にやることには同意した。そして、須佐之男命は夫婦に命じた。
 
「8つの門のある垣を作れ。そして門ごとに8つの桟敷を作り、各々の桟敷に樽を置いて強い酒で満たせ。それで八岐大蛇を待ち受ける」
 
それで夫婦は村人にも手伝ってもらい、1ヶ月がかりで8×8=64の桟敷を作り、そこに各々樽を置き、またこの桟敷を望む8つの門を持つ垣根を建設した。そして全ての樽になみなみとお酒を満たした。村の男たちが桟敷や垣根を作っている間に女たちがたくさんお酒を製造した。
 
撮影では、この桟敷・垣根は8m×8mの移動可能な台の上にミニチュアで作ったのだが。制作に8人がかりで8日間掛けた大がかりなものである(制作費が800万円かかっている:放送後公開した)。
 
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(8分の1スケールを想定しているので8倍速で撮影すると実物大撮影っぼくなる)
 

やかて八岐大蛇がやってくる(CG)。八岐大蛇はお酒の匂いに誘われ、8つの門に首を突っ込み、各々の首が次々と8つの桟敷に置かれた樽の中の美酒を飲む。(8つの首が各々色と顔が違う)
 
それで酔っ払って大蛇は8つの首とも眠ってしまった。
 
すると、須佐之男命は刀身が1m以上ある剣(*4)を取り出し、眠ってしまった八岐大蛇の首を1つずつ切り落としていった。大蛇はしばらくもだえていたが、やがて動きが止まる。須佐之男命はこの大蛇を細かく切ってしまった。
 
須佐之男命が大蛇を切り刻んでいくと、1ヶ所で抵抗がある。調べてみると、大蛇の体内に1本の剣があった。これは美事な剣だったので、天照大神に献上することにした(*5)。
 
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(*4)古事記には「十拳(とつか)の剣」と書かれている。“拳”というのは男性が手を握った時の幅で、須佐之男命はかなり体格が良いと思われるので、12cmくらいと考えると、1.2m ということになる。この刀は天羽々斬(あめのははきり)と呼ばれ、石上神宮(いそのかみ・じんぐう)に伝わることになる。
 
(*5)これが天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)で、天皇家の“三種神器”(さんしゅのじんぎ/みくさのかむだから)のひとつである。別名は草薙剣(くさなぎのつるぎ)。この剣は、現在、名古屋の熱田神宮内に祭られている。なお、壇ノ浦の合戦で失われたのは、天皇の夜御座に置かれていたこの剣の分霊である(その後、伊勢の宝物庫にあった別の古剣が分霊として夜御座に置かれている)。
 
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ドラマではこの天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を須佐之男命(宇菜)が天照大神(アクア)に献上するシーンが10秒ほど流れてから、須佐之男命が“八重垣”の邸宅を建てて、そこに櫛稲田姫と一緒に住み、歌を詠む。
 
「八雲立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣作る、その八重垣を」
 
日本最古の和歌とされるものである。幸せそうな須佐之男命(七浜宇菜)と櫛稲田姫(羽田小牧)の2ショットで物語は閉じられる。
 

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しかしこのドラマは七浜宇菜演じる須佐之男命があまりにも格好良すぎるとして、大きく評価された。宇菜は元々女性ファンが多いが、その女性ファンたちが物凄く騒いでいたし、男性の視聴者にもかなり魅力的に感じられたようである。
 
一方で羽田小牧ちゃんの櫛稲田姫は物凄く可愛かった。彼は身長でも宇菜より低いので、2人の組合せがとてもよく似合っていた・
 
「女の子役なんて恥ずかしい」
と彼は言っていたらしいが、ここまで可愛くなるのを見せてしまうと、きっと彼には女の子役のオファーが殺到する。アクアは小牧ちゃんが“道を誤らない”ことを祈った。
 
しかし、このドラマは、天照大神がアクアで、天宇受売がキャロル前田で、天手力男はエレガント河田だし、全体的に性別がおかしいという意見もあった。キャロル前田はサンパの衣装のような露出の多い服で、ゴールデンタイムで許されるギリギリレベルまで“お肌”を見せていたが、バストも大きく、完璧に女性化しているのが視聴者にも分かった。何よりも色気が凄かった。
 
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(「不覚にも立った」という男性視聴者の声多数)
 
しかし彼は一応男性タレントということになっているので、BPOから文句を言われる心配は無い!などと鳥山プロデューサーは言っていたようである。(それもあり普通の女優さんではなく、男の娘?を使ったようだ)
 
でも多くの視聴者は彼を普通の女優さんと思ったようである。
 
彼はかなりハイレグの衣装を着けていて、“そこ”に何かがあるようには見えなかったので、彼のことを知っている人たちも「取っちゃった?」と思ったようだが、本人は
 
「ボクはまだアクアちゃんみたいに性転換手術までは受けてないよ」
などと言っていた!
 

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