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■東風(6)
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青葉は最後の種目800mで優勝して有終の美を飾ることはできたものの、今回のエースはやはり金堂さんだったなと思った。金メダル2個と銀メダル1個というのは素晴らしい成績である。
青葉はこれで安心して後のことは彼女に任せて引退できると思った。
オリンピック終了後の日本記録はこのようになった。
400m 竹下リル 4:00.18 :2021東京五輪
800m 川上青葉 8:07.94 ;2021東京五輪
1500m 川上青葉 15:37.20 :2021東京五輪
400iM 金堂多江 4:30.74 :2021東京五輪
金堂はこの他に200iMの日本記録(2;07.91)も持っている。
今回は女子長距離の全ての日本記録が塗り替えられた。
青葉は400iMの記録を金堂に破られたが、800mでジャネの記録を破って結局2種目の日本記録保持者である。ジャネはこれまで400m, 800m 2種目の日本記録を持っていたが、いづれも破られた。
全てのレースが終了した後、竹下リルが「負ぁけぇたぁ!」と叫んでいた。金堂さんとメダルの数の勝負をしていたらしいが、金堂が金2個と銀1個に対してリルは銅2個なので、今回は完璧に負けである。それできっちりトンカツをおごったらしい。トンカツ用お肉を20枚!用意してもらい、ホテル昭和のお部屋で旅館の板前さんに揚げてもらいながら(自分たちで買いに行くのは幸花が禁止し、自分達で揚げるのも若葉がやめてと言った)、金堂さんは8枚、リルは7枚食べて
「トンカツで負けるからレースでも負けたのかな」
などと言っていた。
ちなみに残った5枚は揚げるだけ揚げて食べやすいサイズに切ってもらい、夜間練習の合間に“おやつ”で2人で食べて翌朝までには無くなったらしい!?
31日夕方、幡山ジャネ(1993.8.28 16:35 あわら市生 27歳)が自分のツイッター・アカウントから競技引退を発表した。所属している百万石スイミングクラブにも退部届を提出したらしい。
彼女は交通事故で足首から先を失った上に窓から突き落とされる事件の被害に遭い、1年間意識不明だったことから、リオ五輪に出場できなかったのが気の毒であった。そこからカムバックして東京五輪に出たのは凄かったが、オリンピックのメダルには届かないまま無念の引退である。
彼女にとっては2019年の世界水泳 800m で金メダルを取ったのが頂点となった。
青葉は、自分はジャネみたいな有名選手じゃないから、わざわざ引退発表とかする必要もないだろうけど、東京五輪で引退することは予め水連にも石崎部長にも言ってあるし、金沢に戻ったら退部届けを書こうと思った。
§§プロのカレンダーというのは2004年に作られたのが最初である。それまでも個々のアーティストのカレンダーは制作していたのだが、この年は、2003年に同事務所のトップスターであつた新宿信濃子が結婚して引退したことから、次世代のトップスター・立川ピアノを盛り立てていくのと、その他の若手歌手のプロモーションのために制作したものである。この最初の§§プロカレンダーは6枚物でこのような構成だった。
2004 上野陸奥子+立川ピアノ/春風アルト/日野ソナタ/大宮どれみ/上野陸奥子/立川ピアノ
以下各年のメンツはこのようであった。
2005(5) 立川ピアノ×2 大宮どれみ 日野ソナタ 春風アルト 冬風オペラ
2006(6) 立川ピアノ 大宮どれみ 日野ソナタ 春風アルト 冬風オペラ 夏風ロビン
2007(7) 立川ピアノ 大宮どれみ 日野ソナタ 春風アルト 冬風オペラ 夏風ロビン+満月さやか(セット)
2008(6) 大宮どれみ 春風アルト 冬風オペラ 夏風ロビン 満月さやか 秋風コスモス
2009(6) 大宮どれみ 冬風オペラ 満月さやか 秋風コスモス 浦和ミドリ 川崎ゆりこ
2010(6) 大宮どれみ 満月さやか 秋風コスモス 浦和ミドリ 川崎ゆりこ 桜野みちる
2011(6) 満月さやか 秋風コスモス 浦和ミドリ 川崎ゆりこ 桜野みちる 海浜ひまわり
2012(6) 秋風コスモス 浦和ミドリ 川崎ゆりこ 桜野みちる 海浜ひまわり 千葉りいな
2013(6) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる 海浜ひまわり 千葉りいな 神田ひとみ
2014(6) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる 海浜ひまわり 神田ひとみ 明智ヒバリ
2015(5) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる×2 品川ありさ 高崎ひろか
アクアは2014年12月に初露出で、それまで情報を伏せていたので2015年のカレンダーには出ていない。ただし1月にアクア単独のカレンダーを販売したら物凄いセールスになった。以降アクア単独のカレンダーは全員カレンダーの10倍以上売れている。
2016(7) 秋風コスモス+川崎ゆりこ(セット) 桜野みちる 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン
2017(10) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる×2 品川ありさ 高崎ひろか アクア×2 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド
人数が増えたのでこの年から12ヶ月構成に変更された。アクアと桜野みちるが2回登場である。
2018(12) 秋風コスモス 川崎ゆりこ 桜野みちる 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド 桜木ワルツ 石川ポルカ
2019(12) 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド 桜木ワルツ 石川ポルカ 山下ルンバ 桜野レイア 原町カペラ
ついに12名を越えたので、コスモスとゆりこが遠慮した。
2020(12) 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド 桜木ワルツ 石川ポルカ 山下ルンバ+桜野レイア(セット) 原町カペラ ラピスラズリ
年長の2人が「私は外してもいいよ」と言ったが、その2人をセットにした。
2021(12) 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 姫路スピカ 白鳥リズム 花咲ロンド 石川ポルカ 山下ルンバ+桜野レイア(セット) 原町カペラ ラピスラズリ 七尾ロマン+恋珠ルビー(セット)
桜木ワルツが引退して空いた1枠に新人2人をセットで放り込んだ。
そして2022年のカレンダーを制作しなければならない時期になったのだが、
「構成任せた」
と、昨年までこの作業をしていたゆりこから言われた花ちゃんはマジで悩んだ。
「どうやってこの人数を12枚に収めろと言うんだ!?」
と文句を言う。
載る権利のある人は↓である。
秋風コスモス 川崎ゆりこ 品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 今井葉月 花咲ロンド 姫路スピカ 白鳥リズム 石川ポルカ 桜野レイア 山下ルンバ 原町カペラ ラピスラズリ リセエンヌ・ドオ 大崎志乃舞 七尾ロマン 恋珠ルビー 花貝パール 常滑真音 甲斐姉妹 中村昭恵 水森ビーナ 水谷姉妹 風谷リンゴ 広中礼音 四宮七菜 (28組)
まず下記8組を独断で外す。
(秋風コスモス 川崎ゆりこ 今井葉月 桜野レイア 山下ルンバ リセエンヌ・ドオ 大崎志乃舞 中村昭恵)
すると残りは20組である。
品川ありさ 高崎ひろか アクア 西宮ネオン 花咲ロンド 姫路スピカ 白鳥リズム 石川ポルカ 原町カペラ ラピスラズリ 七尾ロマン 恋珠ルビー 花貝パール 常滑真音 甲斐姉妹 水森ビーナ 水谷姉妹 風谷リンゴ 広中礼音 四宮七菜
もうこれは組合せていくしかない!というので花ちゃんの独断で次のようにまとめた。数字は割り当て月である。表紙には信濃町ガールズ全員の顔写真+外した8組の上半身写真を並べる。
アクア(1) 常滑真音(4) ラピスラズリ(7) 白鳥リズム(10) 姫路スピカ(2)
高崎ひろか+水森ビーナ(12)
品川ありさ(11) 西宮ネオン(9)
花咲ロンド+石川ポルカ+原町カペラ(6)
七尾ロマン+恋珠ルビー+花貝パール(5)
甲斐姉妹+水谷姉妹(8)
風谷リンゴ+広中礼音+四宮七菜(3)
「アクアは当然振袖だけど、ひろかちゃんも、12月に置くなら振袖着せようかな。そしたらビーナも振袖でいいよね?あの子、振袖着られるよね?」
トップアーティストであるアクアを12月でなく1月に置いたのは、ひょっとしてアクアが性別問題で人気急落したような場合に備えたものである。
「しかしこれ絶対、どうしてこういうまとめ方なの?とかどうしてこの順序なの?とか文句言われた時に、私のせいにするのに、私にこの作業押しつけたんだ」
などと花ちゃんはぶつぶつ言っていた。
花ちゃんは、この“全員登場”ものの他に“ヤング§§ミュージック”ものを作ることを提案することにした。こういう構成である。
ラピスラズリ(1) 風谷リンゴ(2) 広中礼音(3) 甲斐姉妹(4) 水谷姉妹(5) 中村昭恵(6) 水森ビーナ(7) 山鹿クロム+三陸セレン+鈴木春南(8) 四宮七菜+池田芽衣(9) 恋珠ルビー+花貝パール(10) 七尾ロマン(11) 常滑真音(12)
「8月の男の娘3人はビキニの女の子水着を着せたらダメかなあ。この子たち喜んで着そうな気がするけど。中学生のビキニは叱られるだろうか?」
などと花ちゃんは楽しそうに独りごとを言っていた。
熊谷の郷愁村で2枚のアルバムを同時進行で製作していた常滑舞音であるが、水谷姉妹と一緒に歌う童謡アルバムの方は、伴奏音源が7月中に完成して、伴奏していたアンサンブル・オーケストラのメンバーおよび仮歌係の山本コリンは7月31日に郷愁村を退去した。舞音は童謡アルバムを優先して完成させることにして、結局8月3日に完成させる。それで水谷姉妹も退去した。
コテージ“桜”には舞音とビーナだけが残る。ここでビーナが「舞音ちゃんと2人だけで何か誤解されたら困るから」と言ったので、ホテル昭和の方に泊まりこんでいたマネージャーの西岡空世(悠木恵美)がこちらに移ってきた。
「女の子同士ルームシェアしてて誤解されることはないと思うけど」
と舞音は笑っていた。
オリンピックに出場した水泳の津幡組は、一応8月8日まで熊谷で待機してから津幡に戻る(金堂さんも仙台には戻らず、来年5月福岡での世界水泳に向けてこのまま津幡で練習を続ける)予定である。
それで青葉も31日だけ浦和に泊まって(やっと彪志と愛の確認作業もした)、8月1日、熊谷に移動し、他の子たちと一緒に練習していたら、その日の夕方、〒〒テレビの石崎部長が熊谷に来たのである(社員さんが運転する車で移動してきた)。
「川上君、メダル3個おめでとう」
「ありがとうございます。色々便宜を図って頂いたお陰です」
「君のこの後のスケジュールはどうなってたっけ?」
「一応8月10日まで休職期間になっています。8日が閉会式ですが、その後もしかしたら何か公式行事があるかも知れないので、余裕見て10日までで。その後8月11日からアナウンサー部に復帰します」
「だったら、僕の権限で11日から13日まで特別休暇にするからさ」
「あ、はい」
「ずっと熊谷なり東京付近に居て8月16日に“この場所”に行って欲しい」
と言って、紙を渡される。
「Jヴィレッジ!?」
「うん、そこが会場になる。全国から多分30-40人が参加すると思うから」
「何をするんでしょう?」
「自転車40km, ランニング10000m、水泳1500mかな」
トライアスロン?
「あのぉ、まさか最後に水泳ですか?」
「それだと死者が続出するよね。たぷん水泳は先頭じゃないかなぁ。辛かったら途中棄権推奨だけど」
「まあいいですけど」
1500m水泳は全く問題無い。いつも泳いでいる距離である。10kmくらい走るのは平気だし、自転車40kmも全然問題無い。でもなぜ唐突にトライアスロンなのだろう。
「あと英語のテスト、数学と物理のテストがあるけど、高校1年程度の簡単なものだから。君、英語はペラペラだったよね?」
「ペラペラというほどではありませんが、一応通常の会話なら電話で話せる程度には」
「電話ができるのは充分凄いと思う。じゃよろしくね」
「はい」
と言いながら、方程式は解けると思うけど、物理忘れてないかなーと少し不安になる。
「オーディションの様子は民放各局で共同取材になるから」
「オーディション??」
一体何のオーディションなのだろうと思ったものの、部長は行けば分かるからとだけ言ったのである。
なお、青葉は〒〒スイミングクラブの退部届けも書き、石崎部長に渡したが「じゃ取り敢えず預かっておく」と部長は言っていた。
預かっておくって・・・受理じゃないの?と青葉は不安を感じた。
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