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■△・落雷(11)

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4/17 14:30.
 
千里3と雨宮先生の乗るNH-806 B787-8は成田空港・第1ターミナル・南ウィングに予定より30分も早く着陸した。
 
入国審査・税関を通り、1Fミーティングポイントで三宅先生と落ち合う。
 
「雨宮先生を連行してきました」
と言って千里は笑顔で三宅先生に雨宮先生を引き渡す。
 
「それとこれを」
と言って雨宮先生の財布も渡した。千里の往復航空券代を聞き、それにプラスアルファしたお金を現金でもらった。
 
「ありがとね。でも忙しい時に苦労掛けたね」
「いえ、いつものことですし」
 
「こういう時に頼れるのは千里ちゃんと(新島)鈴世ちゃんだけだし」
と三宅先生は言っている。
 
「毛利さんだとミイラ取りがミイラになっちゃいますからね」
「あの人、人が良すぎるんだ」
 
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「そうだ!千里ちゃん、ガラケー使っているだろ?」
と三宅先生が言う。
「はい」
「最近ラインでやりとりすることも多くてさ。スマホ持ってくれないかなと思って」
「そうですね〜」
 
千里がスマホを使わない(ことにしている)のは、携帯との使い分けに関する微妙な問題があるのだが、ガラケー対象のサービスがどんどん終了して行っているのはひじょうに困ったものがある。
 
「それでね。邪魔かも知れないけど、これ1台持っててくれない?料金は雨宮が払うから」
 
千里は吹き出した。
 
「三宅先生ではなく雨宮先生が払うんですね」
「当然。こいつはお金持ちだし。少なくとも僕の1000倍はお金を持っている」
「1000倍は大げさだと思うけど」
 
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「だから他の人には非公開でもいいし。仲間内の連絡用に限ってもいいから」
「分かりました。お預かりします」
 
それで預かったスマホはSharp AQUOS SERIE mini SHV38 champagne-pink である。
 
「でもこれ可愛い!」
と千里は言う。
「千里ちゃんにはこういうのが合うかなと思った」
 
三宅先生は(実質)男になってしまったものの、女の子の好みをけっこう理解している。
 
「ありがとうございます。LINEってどうやって登録するんですか?」
「それも勝手にやって悪いかなと思ったけど登録しておいた。スタンプとか買った時は雨宮の口座から落ちるから安心して使って」
 
「分かりました。安心して使わせて頂きます」
 
雨宮先生はもうふてくされている。
 
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「あ、それとこれ、急で申し訳無いんだけど」
と言ってメモを渡される。アーティスト名と楽曲タイトルが書かれている。但しタイトルは変更可と書かれている。恋愛ドラマの主題歌にするので、恋愛にふさわしいものであればということである。
 
「AYAですか」
「このまま下降線に入って行くアーティストでは無いと思うのよね。彼女ってまともなビッグヒットが無いのはおかしいと思うのよ」
「いつまでですか?」
「できたら今月中」
「分かりました。何とかします」
 

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それで千里3は三宅先生たちと別れて江戸川区内の秘密マンションに移動することにした。合宿の方は25日に合流すれば良いということだったし、それなら集中できる場所でひたすら集中して曲を書こうと思ったのである。
 
なお、千里3は、桃香の入院のことも阿倍子の入院のことも知らない。
 
京成の上野行きに乗る。
 
千里は三宅先生からもらったスマホの番号をごく親しい何人かには伝えておく必要があると考えた。それで、取り敢えず桃香・玲央美の2人のスマホ、また《きーちゃん》が使っているスマホ(Fujitsu Arrows NX F-02G white)にも端末のアドレスにメールを送り、新しいスマホを借りたのでといって、電話番号とメールアドレスを伝えた。
 
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電車に乗っている内に、やはり車に揺られているほうがいいアイデアが浮かぶかもと思う。それで矢鳴さんに電話し、合宿所に駐めたままのアテンザを葛西駅まで持って来て、そのあと少しドライブしてくれないかと頼んだ。すると18時半くらいまでに行けると思うということであったので、千里は途中のジェーソンで買物をし、18時頃、葛西に到着した。
 
矢鳴さんはまだ来ていないようだ。千里は今日は放置状態になってしまった京平と少し話そうと思い、彼に直信をした。
 
『ごめんねー。今日私はタイまで往復して来たのよ』
『お母ちゃん忙しいね!』
『ごはん食べた?』
『まだ。今一緒にいる人がお出かけしてひとりでお留守番してるの。でもその人が戻って来たら晩御飯になると思う』
『ああ、色々忙しいのかな』
『そうかも』
 
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それで千里3は10分くらい京平と話していた。そこに矢鳴さんの姿が見える。
 
『じゃまた明日の朝、連絡するね』
『うん、おやすみー』
 

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矢鳴さんが駆け寄ってくる。
 
「済みません。お待たせして」
「いえ。私も買物とかして、さっきついたばかり」
 
と言って千里2は買い物袋を持ってアテンザの後部座席に乗り込んだ。
 
「どこに行きます?」
「そうだなあ。東北道方面とかいいですか」
「分かりました」
 
それで矢鳴さんは近くの葛西ICから首都高に乗ると、東北道に接続する川口JCT方面に車を向けた。
 

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さて、桃香のアパートで食糧ストック作りをしていた千里2は、15:00頃に京平に
「悪いけど4-5時間ほどお留守番しててね」
 
と言って、桃香の着換えとパソコンにたまごクラブのバックナンバーを持ち、プラドに乗ってまずは京平を用賀のアパートに置き、ついでにチャイルドシートもベビーシートも外してアパートに置いた。そして桃香が入院しているF産婦人科に移動した。
 
病院ではお医者さんに挨拶し、夜中なのに受け入れてくれたことについて、あらためて御礼を言った。
 
支払いを済ませた上で「みなさんで分けて下さい」と言って菓子折を渡した。「こういうことされると困るんです」と言いながらも、事務の女性は受け取ってくれた。
 
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桃香の病室に戻って、一緒に退院する。緊急入院していたので、何も持ち物が無い。それで千里が持って来た着換えに着換えただけで、退院した。これが15:30くらいである。
 
なお、千里が来れることになったので、朱音は今日は来ずにあとでお見舞いに行くと言っていたということだった。
 
桃香にはプラドの2列目中央に座るように言って、あきる野市の大間産婦人科まで走る。
 
「この車も以前乗ったことあるな」
と桃香は言っている。
 
「うん。ミラだと狭いかなと思って、友だちから借りてきた」
「まあ確かに狭いけどね」
 
実際にはミラはJソフトの駐車場に駐めたままになっている。千里2はミラが用賀にも経堂にも見当たらなかったので、たぶん《きーちゃん》が使っているのだろうと判断していた。ちなみに《せいちゃん》は車の運転はできないので、電車で通勤せざるを得ない。
 
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大間産婦人科には17:00くらいに到着する。簡単な診察を受けてから入院の手続きをする。
 
「ところで今日は千里が何か変な感じがするんだけど」
「そう?」
「新しいスマホ買ったからといって2度も連絡あったし」
「え?私別にスマホ買ってないけど」
「そうなのか?」
 
では昼間連絡あった2件は何なんだろう?と桃香は疑問を感じた。
 
「千里も入院したんだっけ?」
「お友達で入院した子がいたから、その子のことでもちょっと走り回っていた。その子が退院するまで、2〜3日だけどその子の子供を預かっている」
 
「ああ、入院したのは友だちか。何で入院したの?」
「性転換手術かなあ」
「え!?」
「というのは冗談で、ただのインフルエンザだけどね」
「なあんだ。でも季節外れだね」
 
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「だよね〜。そうだ。その子供に御飯食べさせないといけないから、悪いけどすぐに帰るね」
「なんか千里はほんとに忙しいようだ」
 
それで千里2は18:00頃に桃香が入院した病院を出て、20:00頃用賀のアパートに帰り着いた。そして京平と一緒に御飯を食べ、阿倍子さんにも様子を伺う電話を入れ、京平と阿倍子を少し話させる。
 
そしてこの日は
「何か疲れた〜」
と言って、9時頃、京平と一緒に布団で寝た。京平がおっぱいダメかなあ、などと言うので少しあげたら、とても満足していたようである。実際問題としておっぱいをあげながら眠ってしまった。
 

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なお、桃香は千里(千里2)が帰ってからふと「母ちゃんに言っとかないとまずいよな」と思い、朋子に入院したことを報せた。
 
入院というので朋子はびっくりしたようだが、千里も忙しいし、何かあった時にひとりで対処できないとまずいから念のため入院しただけと説明すると朋子も安心したようである。
 
どっちみち1度そちらの様子を見に行くよという話であった。
 

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一方B中央病院に入院していた千里1は、18時すぎにやっと退院の許可が出て支払いを済ませてから退院する。この時、玲央美と桃香、風田コーチに退院した旨のメールをiPhoneから送った。その送信した時刻が18:30くらいである。
 
合宿所によってアテンザを使おうかとも思ったが、そこまでの気力が無い。それでタクシーを呼んで経堂のアパートまで行った。そして
 
「やはり病院は疲れた〜!」
と言って、布団を出して眠ってしまった。
 

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《きーちゃん》はJソフトでのハードな作業で相当疲れていた所に、千里が雷に撃たれるというショッキングなことが起こり、しかも2時間ほどにわたって意識を失っていたので心労も重なった。それで明日のJソフトには《せいちゃん》を行かせると《こうちゃん》が決め、《きーちゃん》はホテルを取って休ませてもらった。
 
彼女は本当に疲れていたようで、結局17日の夜まで眠ってしまう。時計を見たらもう19時すぎである。
 
それで起きてからホテル内のレストランで遅い夕食を食べ、なにげなく自分のスマホを見ていたら「あれ?」と思うことがあった。
 
3件のメールが入っている。
 
1つは10:40頃のメールで、知らないアドレスからだが、千里を名乗り、《すーちゃん》が新しいiPhoneを買ってきてくれたので、その番号とメールアドレスをそちらに伝えておくというメールである。これは問題無い。
 
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1つは13:30頃のものだが、落雷で破損したと思っていた、千里のガラケー(T008)から送られたメールで、結構な長文だ。どうしても眷属達と会話ができないのだけど、どうしたんだろう?と書かれている。“本人”は阿倍子さんが急病で倒れたので、大阪で彼女を入院させた上で、貴司の合宿が終わるまでの間、京平を預かることにし、プラドを運転して東京まで来て、現在用賀のアパートに居ると書かれている。
 
そしてもう1つは16:20頃のメールでこれも知らないアドレスからだが、千里と名乗っており、新しいスマホ(Aquos)を借りたのでといって、そちらの番号とアドレス、LINE IDが記されていた。
 

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《きーちゃん》はこの3つのメールを何度も見比べてみた。
 
そして、各々のメールの送り主と会う必要があると考えた。
 
この3つのメールは《きーちゃん》のスマホの固有アドレス宛に送られている。このメールアドレスは、千里と《せいちゃん》以外には誰にも教えていないのである。Jソフトの仕事関係のメールは《せいちゃん》と情報を共有する必要があることもあり、Jソフトが運用しているサーバーのメールアドレスをIMAP4で使っている。
 
だから自分の端末宛にメールしてきたということはそれは千里であるとしか考えられない。
 
まず所在がいちばん明確なのは、10:40のメールの送り主だが、これは内容から判断するに、昨夜1:30頃に「千里の心と体が合体」した千里で、B中央病院で今日1日検査を受けていた千里だろうと判断した。この千里には他の子たちが付いているはずである。《きーちゃん》はこの千里を仮に《千里1》と呼ぶことにした。
 
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『天空さん?』
と《くうちゃん》に直信で問いかける。
 
『なんだね』
『B中央病院に入院していた千里は今どこに居ますか?』
『経堂のアパートで寝ているよ』
『ありがとうございます』
 
そちらは取り敢えず放置しておこう。問題はあとの2人だ。
 
16:20頃にメールしてきた千里は所在地が不明確だが、13:30にメールをしてきた千里は今用賀のアパートに居るという。《きーちゃん》はこの用賀に居るという千里を仮に《千里2》と呼ぶことにした。
 

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