広告:にょたいかっ。 2 (MFコミックス)
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■△・落雷(6)

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《たいちゃん》は合宿所の千里の部屋にいたのを合宿所前に転送された。転送距離はほんの30-40m程度である。物凄い雨が降っているので「わっ」と思う。
 
《てんちゃん》は大阪の貴司のマンションで京平に寝ているように言って寝かせつけた後、阿倍子の様子を見ていたのだが、いきなり東京に転送された。転送距離は400km程度である。なお京平には伏見から派遣されている守りのお狐さんも付いているが、そちらの人は阿倍子のことまでは関知しない。
 
《びゃくちゃん》はあきるの市のフェイのマンションに居たのだが、突然転送される。転送距離は40kmほどになる。なおフェイには青葉の眷属・笹竹も付いている。
 
《せいちゃん》は世田谷区用賀のアパートで寝ていた所を転送された。転送距離は17km程度である。
 
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《いんちゃん》は世田谷区経堂の桃香のアパートに到着し、苦しんでいる桃香の様子を見て、対処を考えようとしていた所を、いきなり北区に転送された。転送距離は15km程度である。なお、桃香には青葉の眷属・小紫も付いている。
 

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《きーちゃん》は《千里B》として、深夜にJソフトで会議をしていた。同社で運用しているシステムに重大な欠陥があることが発覚し、それをどうするか、SE総出で話し合っていたのである。まともな改修をするとどう見ても7-8人月の作業工数(費用は1000万円超)が掛かるので、何とかもっと簡単で早く改修する方法はないかと議論していたものの、妙案は出なかった。
 
「このA案とB案について、村山係長はどう思う?」
と専務が言ったのに対して、何も返事が無い。
 
ん?とみんなが千里が座っていたはずの場所を見るに、そこには誰も居ない。
 
「村山君どこに行ったんだっけ?」
「今さっきまでそこに居たよね?」
「トイレにでも行ったか、コーヒーでも入れに行ったか」
 
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「でも気付かなかった!」
 
「専務。やはりみんな疲れているのでは?これでは出る案も出ませんよ。少し寝て、また明日の朝から会議をしませんか?」
と矢島課長は提案した。
 
「そうするか。では今夜はこれでいったん解散」
 
ホッとした空気が流れる。この時間に終わってくれたら、終電に間に合う人も多い。
 
しかし矢島は大部屋にもマシン室にも、女子更衣室や女子トイレにも千里の姿が見当たらないので、本当にどこに行ったんだろう?と首を傾げた。
 
「まさか社内のどこかで遭難してないよね?」
 
《きーちゃん》の転送距離は19km程度である。
 

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“須佐ミナミ”は4/14 11:00 PDT (=4/15 3:00 JST)にロサンゼルス国際空港に到着した。「須佐ミナミ」の軌跡を作っておくため、その日は市内に宿泊した上で4/15日市内に本拠地を置くWNBAのチームの練習を見に行ったあと、市内のS大学に行き、ここでも女子バスケットチームの練習を見学した。特に“本物の”須佐ミナミのプレイはよくよく目に焼き付けておいた。
 
この人才能あるなあ。いい指導者に当たるともっと伸びるだろうけどなあと《すーちゃん》は思った。
 
彼女は《磨かれていない原石》という感じである。S大学は強豪なので実際問題として彼女は大会のベンチにも座れないようだ。
 
彼女のプレイを1時間くらい見てから、ホテルに戻りもう1泊する。翌16日にホテルを出たらローキューツに居た“須佐ミナミ”とは違う女性の姿になって、日本に舞い戻る予定である。
 
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そして翌朝6時半頃朝食を済ませ、チェックアウトしてからロサンゼルス空港に行くのにタクシーに乗る。10:20発の羽田行きに乗るつもりである。なお、ロサンゼルスの4/16 6:30(PDT)は日本時刻では4/16 22:30になる。
 
《すーちゃん》はタクシーに乗ると
「Los Angeles International Airport」
と運転手に告げて、後部座席で目を瞑っていた。アメリカに来たの久しぶりだし、どうせなら少し遊んでから帰れば良かったかなあ、などとも思う。千里に言ったらきっと『うん。息抜きしておいでよ』と言いそうだし。
 
と思っていたら、突然あたりが真っ暗で物凄い雨が降っている所に来る。
 
《すーちゃん》はびっくりして、一瞬転びそうになった。
 
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『何?何?』
と声を出すと
 
『お帰り』
と《びゃくちゃん》から言われる。
 
《すーちゃん》の転送距離は“地表経由”で計算すると8800km, 物理的な“直線距離”で計算すると8100kmになる。但しこの場合地下1465kmの所を通過することになる。100万気圧・2000度という高温高圧の下部マントルの領域である。《くうちゃん》がどちらのルートで彼女を転送したのかは不明である!?
 

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《すーちゃん》が乗っていたタクシーの運転手は最初の頃は彼女に
 
「You here for sightseeing ?」
とか
「Have you seen MOCA ?」
とか訊くので、《すーちゃん》も適当に答えていたのだが、その内反応が無くなる。
 
運転手は機嫌でもそこねたかな?と思ってバックミラーを見るが、客の姿が見えない!?
 
へ?
 
と思い、車線変更して右車線に行き、そのまま路肩に停めた。
 
振り返る。
 
居ない!?
 
そんな馬鹿なと思い、運転手は降りて後部座席のドアを開け、見てみる。
 
が誰もいない。
 
まさか・・・まさか・・・
 
今のって、例の幽霊ヒッチハイカー(Ghostly Hitchhiker)かぁ!???
 
そう考えると運転手は背筋がぞっとする思いがした。
 
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日本の「タクシーただ乗り幽霊」に相当する「幽霊ヒッチハイカー」という都市伝説がアメリカでは有名である。話の筋は日本のとほぼ同じである。研究者によるとこの話は少なくとも19世紀まで遡るらしい。
 
運転手は
「I'd better go home and sleep a little」
 
と言って、取り敢えずメーターを起こした上で、近くのハンバーガーショップに入り、少し休憩してから帰ることにした。会社には
 
「I'm not feeling well. I want to take the rest of the day off」
 
と連絡を入れた。無線に出た社長も
「OK. Take care, Bill」
 
と言ってくれた。もっとも社長は
 
「One more thing, Don't drink」
と言ったのでビルも
 
「Roger!」
と答えて首を振った。
 
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結局千里は付き添ってくれた人たちと一緒に、やってきた救急車に乗せられて病院へ運ばれる。眷属たちも一緒に付いて行った。救急車の中でも《びゃくちゃん》が千里の治療をしていた。
 
『白虎、どうだ?千里の状態は?』
と《こうちゃん》が尋ねる。
 
『ショックで気を失っているだけだと思うんだよ。すぐ目を覚ますと思うんだけどなあ。どこも怪我とか火傷とかしている様子も無いし』
 
『それは騰蛇が守ったからな』
 
心配そうに眷属たちは千里の様子を伺っていた。
 

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16日23:25.
 
「桃香大丈夫?」
と言って千里はアパートのドアを開けた。
 
「千里、来てくれたんだね。嬉しい」
「赤ちゃんの様子どう?」
「なんかもう股の間から飛び出してきそうな感じ」
「破水は・・・してないね?」
「と思う」
 
「取り敢えず病院に連れて行くよ」
 
千里は桃香がかかりつけの大間病院まで連れて行くのは遠すぎると判断した。それで世田谷区内の産婦人科を電話帳で調べて片っ端から電話してみることにした。最初自分の携帯から掛けようと思ったのだが、見当たらない。あれ〜?車の中に落としたかな?(千里はこれをよくやる)と思い、家電から掛けていった。すると1軒目では断られ、2軒目は電話がつながらなかったものの、3軒目のお医者さんが
 
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「だったら連れてきなさい」
と言ってくれた。それで千里は桃香をアパートそばに駐めている赤いアテンザまで運ぶと、その病院、F産婦人科まで連れて行った。
 

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取り敢えず診察室に案内され、千里は桃香をベッドに寝せた。
 
「ああ、まだこれは出てこないよ。大丈夫だよ」
と先生は言った。
 
「切迫早産ではないのですか?」
「違う違う。中の赤ちゃんが少しおいたして暴れただけだな」
「全く人騒がせな胎児だ」
「切迫早産なら、こんな痛みじゃなかったと思うよ」
「気が重くなる話だ」
 
「とりあえず安静にしておいた方がいい。病室で寝てる?」
「お願いします」
 
それで取り敢えず明日1日入院して安静にしていることになった。千里が入院の手続きを代行した。
 
「あれ?あなた妹さんか何かではなかったのですか?」
と書類を見ていた看護婦さんが言う。
 
「私たち同性の夫婦なので」
「ああ、それでしたら問題無いです」
 
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16日23:10.
 
「阿倍子さん、阿倍子さん」
と名前を呼ばれ、身体を揺すられる感覚に、阿倍子は意識を戻した。
 
「千里さん?」
「京平が阿倍子さんのスマホを操作して、私に電話を掛けてきたんだよ。ママが、ママが、って言うから何か起きたと思って。私ちょうど仕事で大阪に来ていたから駆けつけて来た」
 
「わ、京平が呼んでくれたのか」
 
可愛い女の子みたいなパジャマを着た京平が心配そうに見ている。
 
阿倍子のスマホには実は貴司・母・千里の3人しか登録されていない。アドレス帳を開くと先頭にその3人が表示される。ちなみに千里の所は髑髏のアイコンになっている!しかしそれで京平は識別したのかもと阿倍子は思った。
 
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しかし阿倍子が正常な状態であれば、どうして千里がマンション内に入れたのか疑問を感じる所だが、この時阿倍子はそこまで頭が回らなかった。
 
「凄い熱。救急車呼ぼうか?」
「そこまで大げさでなくても。もし良かったら貴司の車で市民病院に連れていってもらえない?救急外来を受け付けていると思うから」
 
「分かった。連れて行くね」
 
それで千里は京平にはもう心配ないから寝ているように言い、貴司のランドクルーザー・プラドの鍵を壁のフックから取る。阿倍子を支えて部屋を出る。エレベータまで連れていき、乗せて地下に降りる。そして何とか車まで連れて行きドアを開ける。2列目中央に設置されているチャイルドシートを取り外して荷室に移動した上で、その2列目に彼女を寝せた。プラドの3列目はキャプテンシートなので、横になることができないのである。
 
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「ありがとう。千里さん力あるのね」
「バスケット選手だから」
「すごーい」
 
それで千里は阿倍子を市民病院に連れて行き、救急外来の所で診察を頼んだ。
 

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