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■△・落雷(2)

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「友利恵ちゃんが佐斗志の高校の女子制服を着ている写真もある」
「それ友利恵が未来の自分を想像するシーンに使われたんですよね」
「ああ、あそこか!」
と政子が言っている。
 
「なんか佐斗志君の写真より友利恵ちゃんの写真の方がずっと多い気がするんだけど」
と冬子。
 
「そうなんですよ。半々くらいにするからと言われたのに」
と龍虎は文句を言っている。
 
政子は
「私は友利恵の写真だけでいいけどなあ」
などと言う。
 
「でも女装の写真集なんて恥ずかしくて恥ずかしくて」
と龍虎が言うので
 
「何を今更!」
と冬子にまで言われていた。
 

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コスモスが
「龍ちゃん、何なら、水着写真集も出しちゃう?」
などと言っている。
 
「それどっちの水着なんですか?」
「男子水着の佐斗志君と、女子水着の友利恵ちゃんで」
とコスモスが言うと
 
「ぜひぜひ、友利恵ちゃんの水着姿だけで」
などと政子が言っている。
 
「えー?どうしよう?」
などと龍虎は言っている。
 
「まあ男子水着姿も、女子水着姿も『時のどこかで』で披露しているけどね」
と千里。
「あれ、うまく乗せられちゃったんですよ」
と龍虎。
「一度やっているんだから、もう恥ずかしいことないよ」
と政子は言っている。
 
「あれはスクール水着だったけど、今度はビキニになろう」
「おっぱいないから無理です」
「いや、胸の無い男の娘の水着姿って、けっこう出回っているけど、割と可愛い」
と政子。
 
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「最終的に女の子になっちゃったけど、世界一美しい男性モデルとか言われたアンドレイ・ペジック(Andrej Pejic, 現アンドレア・ペジック Andreja Pejic) とかもそんな写真があったね」
 
と千里は言う。
 
「あの人凄い美人ですよね。ボクでさえ、この人、男のままでいるのもったいないって思いましたよ」
と龍虎。
 
「世間ではアクアも男になってしまうのはもったいないから、ぜひ女の子にしてあげたい、と言われているのだが」
と政子。
 
「そう思ってもらうのはありがたいですけど、ボクは女の子になるつもりはないので、すみません」
と龍虎は笑顔で政子に言った。その時の言い方が、以前のように少し迷いのある感じでは無かったので、やはり男としての意識が芽生えてきたのかな、と青葉は思ったが、同時にちょっと寂しいような気もした。
 
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別にこの子を性転換したいわけではない・・・と思うけどね!
 

「でも今回から、佐斗志の声はこれでやりますしね」
と龍虎は男声で言った。
 
「声の出し方、かなりうまくなったね」
と冬子が言う。
 
この声は1月8日深夜に安曇野の温泉宿に集まった時に、冬子たちには初公開したものである。
 
「え?アクア、声変わりしちゃったの?」
と政子が驚いて言う。
 
「声変わりはしてません。でも練習して男の子みたいな声も出せるようになったんですよ」
と龍虎は普段の声に戻して言っている。
 
「コスモスと支香さんが発案したことなんだよ。声変わり前からこの声を使っていて、声変わりした後も女声を使っていれば、結局いつ声変わりしたのか分からない。男性アイドルの人気って、声変わりを境に崩壊的に小さくなるから。それを曖昧にしちゃおうということなんだよね」
と冬子は説明する。
 
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「会社勤めの男性がYシャツをブラウスに、靴下をストッキングにって、服装を少しずつ女性化させていけば、いつの間にか女性会社員になってしまい、いつ女の服装になったのか曖昧になるというものかな」
と政子。
 
「それ、挑戦中の人が結構いると思うけど、キュロットをスカートに変えた時点でだいたい文句言われる」
と千里が言っている。
 
「でもまあそれに近い話だよね」
「済し崩し変声作戦というんです」
と龍虎。
 
「そういう意味では『ときめき病院物語』は男女双方の役をするから、うまい両声披露の場だよね」
 
「ええ。そう思います。元々ボクが佐斗志と友利恵の2役になったのは神田ひとみさんの降板からきた緊急処置だったので、2年目からは友利恵役は別の女優さんを当てる予定だったんですけどね。何か友利恵役はアクアちゃんから変えないでという葉書とか電話とかが凄まじい数あったらしくて」
と龍虎が言うと
 
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「当然だよ。佐斗志役を降りて友利恵役だけになるならいいけどね」
と政子は言う。
 
「あの番組、ずっと毎年やるの?」
「まあ視聴率次第ですね」
 
「今の所20%前後で安定しているみたいだから、今のままなら5〜6年続くかもね」
「龍ちゃんが高校卒業する頃まで続いてくれると、まさに変声期曖昧化作戦成功になる可能性あるけどね」
「いや、金曜8時台でこれだけの視聴率を稼いだドラマは多分金八先生以来じゃないのかなあ」
「三崎京輔さんの人気が凄いですからね」
と龍虎は言うが
「いや、アクアの人気が凄いからだよ」
と政子は言う。
 
三崎京輔さんは中年のおばさまたちに絶大な人気があり、一応彼がこのドラマの主役である。アクアが映る時間はそんなに長い訳ではない。
 
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「うちの社長はあの番組が終わってしまった場合は、またボクが男女二役やるドラマを企画するって言ってました。女盗賊とそれを追う男刑事の二役というアイデアもあるとかで」
 
「キャッツアイ!?」
 
「あ、そういうドラマがあったんですか?」
「漫画だけどね。アニメにもなったよ。でも古い漫画だよ。龍ちゃんのお父さんが生まれて間もない頃じゃないかな」
「わあ、そんな昔ですか」
「でも名作だね」
 
「それも楽しみだなあ」
と政子は言ってから
 
「内海刑事は他の人で、アクアは瞳役だけでもいいけどね」
と付け加えた。
 

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「ね、ね、これ凄くない?」
と言って、その日マリは青葉にテレビを見せた。
 
何でも今アメリカで話題になっている手品師でレフ・クロガーという人のショーらしい。
 
「何です?これ!?」
と青葉は顔をしかめた。
 
手品師が美女を箱に入れて大きな刀を出し、首の所とお腹の付近で箱ごと切断する。すると3つに分かれた身体が各々勝手に動き始める。
 
スカートを穿いた下半身はそのまま左手に走って行くし、胴体は胴体で両腕を使って右手へ移動して去る。そして残った首には小さな足のようなものが生えて「きゃー」などと悲鳴をあげながらステージ上を走り回る。その人間の頭だけが走り回っている様を青葉は、物凄く気持ち悪く感じた。
 
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その頭もそのうち左手に走り去っていった。
 
「あまりにも真に迫っているから、彼のショーでは気絶して搬出される人が後を絶たないんだって」
と政子は言っている。
 
「いや、今のは私自分ちで見ていたのなら、即テレビの電源切ってましたよ」
と青葉は言った。
 
「私もこの人のショーは気持ち悪くてとても見ていられない」
と冬子も言っている。
 
「だけどこれ本当に手品なんですかね?」
と青葉は言う。
 
「さすがに本当に人間を切断している訳はないから、手品なんじゃないの?」
 
と政子は言う。
 
しかし青葉は首を切断された時に、箱に入っていた美女が、とても演技とは思えないほどの凄まじい形相を示したのが気になった。
 
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「そうそう。クロガーは6月下旬から7月上旬に掛けて来日公演するらしいよ。全国10ヶ所でショーをするんだって」
と政子。
 
「不思議な時期にやりますね。夏休みにやった方がお客さんたくさん来ると思うのに」
「その時期は本国で稼ぐんじゃないの?」
「なるほどー」
「去年1年間でアメリカ国内で30万人動員したらしいし」
「それは凄い」
 

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その日《千里B》は困惑していた。
 
「そういう訳で4月1日付けで君を係長にするから、よろしく頼む」
と言って専務から辞令を渡された。
 
「あのぉ、私が先日出した退職願は?」
「ああ。あれは却下」
「でも私、今年も日本代表に選出されたので、たくさんお休みすると思うんですが」
「うん。それは構わない。合宿や大会に掛かってない範囲でよろしく」
と専務は言った。
 

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「もう職場放棄して逃亡しようかな」
などと文句を言いながら、《千里B》はその日もいつも行っている茶道教室に出かけた。
 
和服を着てお茶の作法をしていると、やはり心が落ち着く。これ千里本人にもやらせてみたいなあ、あの子忙しすぎだよ、と《きーちゃん》は思っていた。
 
この日は教室が終わった後、やはり常連の川島康子さんからコーヒーでも飲みましょうよと言われて、それにも付き合った。川島さんのことを《きーちゃん》は最初てっきり教室の先生と思い込んでいたのだが、実は生徒さんだった。彼女は華道と着付けの免許を持っているものの、茶道は免状を持っていないらしい。
 
「このコーヒー美味しい」
と《きーちゃん》は言った。
 
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「最近は機械で自動で入れるコーヒーを出すカフェとかばかり流行ってて、こういうしっかりした淹(い)れ方をする店が無くなってしまったよね」
と康子さんは言う。
 
「でもホントにあなた、和服の着こなしが素敵ね。今日は化繊の“お召し”で来たのね」
「ええ。でもこれが化繊と気付くのがさすが康子さんですね」
「凄く絹っぽいけど。シルックだよね?」
「そうなんですよ。安くていいですよ」
 
その日は康子さんが珍しくふたりの息子のグチを言っていた。
 
「兄ちゃんの方はしょっちゅう女の子引っ替え取っ替えで」
「もてるんですね」
「弟の方は、逆に全然女の子の影が無いのよ」
「まじめなんですね」
 
「どちらもそろそろ結婚して欲しいんだけどねぇ」
「まあ最近は結婚遅い人も多いですし。おいくつでしたっけ?」
「上が32で下が30なんですよ」
「でも最近は30歳過ぎてから結婚する人も多いですね」
「そうみたいですね〜」
 
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そんなことを言いながら、康子さん自身も65-66歳に見えるし、遅くできた子供なんだな、と《きーちゃん》は考えていた。
 

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田代龍虎は4月1日(土)、東京北区のC学園高校で入学式に臨んだ。
 
出がけに
「男物のボクサーパンツが見つからない!」
と騒いでいたら、母から
「どうせ男物なんて付けない癖に」
と言われた。結局レースたっぷりのシルクのパンティを穿いてきている。上も男物のシャツが見当たらないのでベージュのキャミソールを着てきた。
 
ここは中学と高校が一体化しており、基本的には中高一貫教育が行われているが、中学は2クラス、高校は3クラスで、1クラス分だけ高校から入学する生徒がいるのである。龍虎もその高校入学組である。
 
中学・高校で共用する体育館が校内に3つあり、一番大きなのがグラウンドのそばに立っている鉄骨造りのもので、各種行事や発表会の類いにもこれが使用されることが多い。この体育館は《黄金》と呼ばれる。
 
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次に特別教室棟の地下に造られた体育館がある。バスケットとバレーのラインが引かれていて、屋内球技の体育の授業や、バスケット部・バレー部の練習で使用される。この体育館は《乳香》と呼ばれる。
 
もうひとつ、テニスコートに隣接されて設置された小さな体育館があり、ここは主として柔道・剣道といった武道の練習に使用されている。この体育館は《没薬:もつやく》と呼ばれている。
 
この3つの体育館の名前はキリストが生まれた時にやってきた東方の三博士(The Three Magi)が贈った贈り物に由来している。メルキオール(Melchior)が黄金(gold), バルタザール(Balthasar)が乳香(frankincense), カスパール(Casper)が没薬(myrrh)である。
 
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乳香とはムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から分泌される樹脂で古くはこれを焚いてお香として使用していた。リラクゼーションなどの効果があり、現代でもアロマテラピーなどで使用されている。
 
没薬とは同じくムクロジ目カンラン科の没薬樹と呼ばれる樹木が分泌する樹脂で現代では男性用の香水や線香などに使用されている。昔は聖所のお清めに使用されたと言われる。
 
「メルキオール、バルタザール、カスパーと言ったら、エヴァンゲリオンにも出てきたね」
と今年入った3人の男子生徒の中で唯一!?ちゃんと男子生徒に見える武野昭徳が言う。
 
「何だっけ?それ」
と彩佳が訊く。
 
「物語の舞台となっている特務機関ネルフのメインコンピュータシステム“マギ”を構成する3つのコンピュータなんだよ。3台のコンピュータがお互いをチェックしながら動いているから、どれか1つをクラックしたとしても、あと2つのマシンがそれを排除してしまうんだよね」
 
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「三者合議制なんだ!」
 
「そうそう。歴史的にも三頭制というのはうまくいきやすい。トロイカ体制とも言うよね。日本の歴史でも推古帝の時代、推古天皇・聖徳太子・蘇我馬子の3人が共同で統治した時代に日本の政治システムの基礎は作られたんだよ。大化の改新の以降は今度は孝徳天皇・中大兄皇子・中臣鎌足でトロイカ体制が組まれ、中大兄王子が天智天皇となった後は、天智天皇・大海人皇子・中臣鎌足のトロイカ体制になっている」
 
「ああ、そんなこと歴史の時間に習った気がする」
と龍虎も言う。
 
「トロイカ体制という言葉の元々の起源は、レーニン死後のソビエト連邦でスターリン・ジノヴィエフ・カーメネフによって形成された指導体制のことなんだけど、似たようなシステムは中国でも、登小平・胡耀邦・趙紫陽の3人で1980年代に作られたこともある。政治以外でも、野球の読売ジャイアンツで藤田元司監督・牧野茂ヘッドコーチ・王貞治助監督の体制がやはりトロイカ体制と呼ばれた」
と博識な日高洋子が言う。
 
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「やはり奇数というのがいいんだろうね」
と彩佳。
「そうだと思う。2人だと、両雄並び立たずと言って、意見が対立した時にどうにもならなくなるんだよ。3人だともうひとりが仲裁して何とかまとまることができる」
と昭徳。
 
「現代の先進国で多く採用されている三権分立というのも、相互にチェックする仕組みだよね」
「うん。有効に働いているかは別としてね」
 

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