広告:女の子の声になろう! 即効ボイトレ編
[携帯Top] [文字サイズ]

■娘たちの逃避行(14)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

千里はこの年末に色々なイベントを経験している。
 
11.26 富士急ハイランドに行き絶叫マシンに乗せられる。
11.28-29 関東総合で3位。薫がローキューツに合流。
12.12-13 雨宮先生たちを大阪まで送る。緋那・研二・千里・貴司が遭遇。 緋那が千里に鍵を返す。貴司とふたりで伏見に行き京平と会う。
12.19-20 純正堂カップ優勝。
12.23-29 ウィンターカップ 23.1回戦 24.2回戦 25.3回戦 26.準々決勝 27,準決勝 28.3位決定戦・決勝・表彰式 (29.男子決勝)
 
千里自身にとってはやはり12月12-13日の大阪行きが大きかった。
 
貴司は5月中旬から新たに緋那という恋人と交際し始める。しかし千里の影が頻繁にちらつくことに緋那は次第にイライラを募らせていく。そこに緋那自身にも求愛者が現れたことから彼女はとうとう千里にマンションの鍵を返して半年間の戦いから事実上撤退したのである。但し緋那は完全に貴司を諦めた訳ではなく、この三角関係はこの先まだ2年ほどくすぶり続けることになる。
 
↓ ↑ Bottom Top

それでも貴司との夫婦関係を実質復活させた千里は、翌朝貴司と一緒に伏見を訪れ、(数年後に生まれる予定の)ふたりの子供・京平と会って彼にバスケットを教えるのであった。(この時、京平にあげたのは千里が5月に三宅先生からもらったミニバス用の5号球である)
 

↓ ↑ Bottom Top

純正堂カップが終わった12月20日(日)、優勝の後の打ち上げをまだ入院中の国香も加えて北千住の純正堂ケーキショップで行い、解散したのが19時くらいである。千里は薫に
 
「じゃ、行こうか」
と声を掛ける。
 
「うん。でも集合場所までどうやって行く?」
「車があるよ」
と言って千里は北千住ルミネそばの駐車場に入っていく。
 
「へー。インプ買ったのか」
「中古だけどね」
 
と言って、千里が運転席に座り、薫が助手席に座る。
 
「ね、千里」
「ん?」
「私たち北千住に来るって、表彰式が終わった後、急遽決めたよね」
「うん」
「偶然ここに駐めてたの?」
「うーん。私もそういうの分からない。私も今朝はなんで私こんなに会場から離れた駅のそばに駐めるんだろう?と思ったんだけど、都合良く行ったね」
 
↓ ↑ Bottom Top

「うーん・・・・」
薫が何だか悩んでいるふうなので千里はどうしたんだろう?と思った。千里にとってはこういうのは「日常的」なことなので、何も不思議ではい。
 

↓ ↑ Bottom Top

首都高・中央自動車道を走って調布ICまで行き、そのあと少し下道を走ってK市内の業務用スーパーまで行く。
 
先に、川南(K大学)・敦子(J大学)・夏恋(LA大学)が来ている。
 
「遅ーい」
と川南が文句を言う。
 
「ごめん。ごめん。もう少し早く終わるつもりが話が盛り上がっちゃって」
と千里は謝る。
 
「今日は何か試合やってたの?」
と敦子が訊く。
 
「うん。純正堂カップに出てきた」
「どこか強い所出てた?」
「準決勝は多摩ちゃんず」
「ああ、あそこは割と強い」
「そして決勝は伊豆銀行ホットスプリングス」
「そこは無茶苦茶強い」
 
「勝った?」
「うん。優勝したよ」
「さすが日本代表が入っているだけのことある」
「いや、なまってるよ。高校時代ほど練習しなかったもん、今年1年は」
 
↓ ↑ Bottom Top

「世界を相手に大活躍した人が何を言ってる?」
などと夏恋が言うので、千里は何のことだろう?と疑問を感じた。高3の時のアジア選手権のことかな? などとも思う。あの頃は自分もよく練習していたなあと、ほんの1年ほど前の出来事を思い起こしていた。
 
この1年は考えてみると、軽い朝練をする以外は、月水金に学校が終わってから体育館に行き、2時間程度麻依子や浩子たちと練習し、後はアパートに他に住人が居ないのをいいことに日々室内でドリブルしたり壁掛け式のゴールめがけてシュートしたりしている程度だ。
 
高校時代はほんとにバスケ漬けだったしもっとハイレベルな人たちとの切磋琢磨もあった。自分はこんなんでいいのだろうか?千里は自分のあり方に少し疑問を感じ始めていた。
 
↓ ↑ Bottom Top

なお千里の「リハビリ」期間は9月23日で終了しており、その後現在は高校時代に鍛錬をしていた頃の身体に戻っている。腕などもちょっと悲しくなるくらい太くなっている。今の千里は8月上旬に玲央美から「腕が細くなっている」と言われた時の身体ではない。身体だけは、世界とも戦える身体である。
 
しかしU19を事実上ボイコットしてしまった以上、千里はもう2度と日本代表に呼ばれることもないだろうと思っていたし、今後はずっとローキューツのようなチームでのんびりとバスケットを楽しんでいくしか自分には道は無いのだろうと思っていた。それは自分で選んだ道ではあっても少し寂しい気も、しはじめていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

業務用スーパーで大量にお肉、野菜、飲み物、お米などを買う。買ったものは千里の車と川南の車に分けて積み込んだ。
 
「千里の車はたくさん荷物が載って良い」
「これ高かったでしょ?」
「ううん。中古で54万」
「安!」
 
「川南のマーチは幾らしたの?」
「40万円。でももう少し大きな車買えば良かったかなあと後で後悔した」
 
「川南、例の龍虎ちゃんとはまだつながりがあるの?」
「うん。あの子今は元気に小学校に行ってるよ。定期的に診察は受けているけど再発の兆候とかは無いらしい」
「それは良かった」
「新しいお父さん・お母さんとも仲良くやっているみたいだし」
「それも安心した」
 
「女の子の服も色々送ってあげている」
「・・・・」
「女の子として生活してるの?」
「一応男の子として学校には行っているらしい」
「ふむふむ」
「川南さんスカートとか送ってこられても困るんですけどと言われる」
「ふむふむ」
「穿いてみないの?と言ったら、少しと言ってた」
「ああ」
「女の子パンティも穿いてみたことを告白した」
「まあ目の前にあれば興味は持つよね」
 
↓ ↑ Bottom Top

「やはりまた可愛いスカートやワンピ送ってあげよう」
「それセクハラじゃないの〜?」
「ふふふ。あの子はきっと可愛い男の娘に育つよ」
「うーん・・・・」
「外出先でトイレの場所を尋ねるとたいてい女子トイレに案内されるらしい」
「誰かさんみたいだ」
「それそのまま女子トイレ使うの?」
「その件については口を濁す」
「怪しいな」
 
旭川N高校は今年はウィンターカップ道予選で準々決勝で函館U女子高に快勝、「実質的な決勝」である準決勝で同じ旭川同士、旭川L女子高と延長戦にもつれる死闘を演じて最後は伏兵・1年生センター・松崎由実のフリースローで1点差勝利、ウィンターカップへの2年連続の出場を決めた。
 
更にその後ほんの2時間ほどの休憩を経て行われた札幌P高校との(名目的な)決勝戦で、その由実がリバウンドを取りまくり、自らも8点を取る活躍。この「想定外の戦力」のおかげでN高校はP高校に「まさかの6点差」で勝利したのであった。
 
↓ ↑ Bottom Top

インターハイ道予選に続くP高校に対する勝利で、N高校はP高校の今年の北海道高校三冠を阻止したのである。
 
それで今年もウィンターカップの北海道代表はP高校とN高校になったのだが、渡辺純子がかなり悔しがっていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

そしてN高校の女子バスケット部員たちは今日20日夕方の飛行機で旭川空港を発ち、またまた東京のV高校にお世話になることになったのである。それで彼女らのお世話係兼練習相手として、東京近郊にいるOGに声が掛かった。
 
参加したのが、2003年のインターハイに旭川N高校が出場した時のメンバーで山口宏歌(PF 実業団2部のAS製薬)・麻野春恵(SF 同じく実業団2部のKQ鉄道)、蒔枝さんたちと同じ学年で結婚してこちらに出てきていた月原天音(SF 旧姓愛野 趣味のチームに所属)、今年もまた参加してくれたW大学4年の田崎舞(実業団2部JP運輸への入団内定済)、そして買出しに行ってきた千里(SG)・薫(SF)・川南(PF)・夏恋(SG/SF)・敦子(PG/SF)の5人、合計9人である。
 
↓ ↑ Bottom Top

レッドインパルスの靖子さんも時間が取れたら顔を出すと言っていたが、彼女は忙しいようなので少なくとも毎日という訳にはいかないであろう。
 
「でも私は高校時代は最後までスターターになれなかったけど、みんなの合宿に協力していて自分も頑張らなきゃと思ってW大学のスターターまで登り詰めたから、これって千里ちゃんたちのお陰かも知れないよ」
 
などと田崎さんは言っていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

旭川N高校の一行約40名は昨年と同様、旭川19:50(ADO)21:35で羽田まで飛び、そのあと電車を乗り継いで深夜11時半頃にV高校に到着した。千里たちは彼女らの結構な人数が夜食を欲しがるだろうというので、消化が良さそうなサンドイッチとかおにぎりとかを用意して待っていた。しかし・・・
 
「お腹空いたぁ!ハムカツか唐揚げでもないですか?」
などと言っている子もいる。
 
一応そういう子たちのために唐揚げも2kgほど揚げておいたのだが、1秒未満で無くなり、川南が呆れていた。
 
部員たちには「遅くまで起きていたら強制送還」などと言って1時前に寝せたのだが、千里たちは南野コーチ、今年度から保健室の先生になった大島先生の2人と一緒に少しだけお茶を飲みながら歓談した。
 
↓ ↑ Bottom Top

「お疲れ様でした。この人数連れてくると神経使うでしょう?」
「うん。これまでは幸いにも事故もなく来ているけど、今年はインターハイに来ていた学校で選手がひとり急死した学校があったんだよ」
 
「そういうのは他の選手もショックだし親も辛いけど、引率している先生も立場がきついですね」
「うん。状況次第では引率者の責任を問われる場合もあるしね」
 

↓ ↑ Bottom Top

「でも1週間、2週間の遠征をしていれば、ふつうに病気や軽い怪我はあるよね」
と夏恋が言う。
 
「練習中の細かい怪我は日常茶飯事だしなあ」
と敦子も言う。
 
「やはり環境が変わって体調崩す子はいますね」
と川南。
「うん。どうしてもデリケートな子がいるからね」
と大島先生。
「でもドーピング問題があるから、うかつな薬は飲ませられなくて大変なのよ」
 
「遠征中は色々あるからなあ。カップル成立したり失恋したりってのもあるし」
 
「2年前は男子も一部連れてきたんだけどさ、あんたたちも気づいたでしょ?」
と南野コーチが言う。
 
「ああ」
「氷山君と寿絵がくっついちゃいましたよね」
「あれどこまでしたの?」
 
↓ ↑ Bottom Top

「セックスしたと思いますよ」
と夏恋が言う。
「やはりねぇ」
「避妊はしたはずです」
と敦子が補足する。
 
「つまり準備もしていたわけか」
「今はもう堂々と同棲しているし」
「ほほお」
 
「まあそんなことがあったから昨年も今年も女子だけにしたんだよね」
「なるほどー」
 
↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 
娘たちの逃避行(14)

広告:素数-8008710-エアーブラパッド