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■娘たちの逃避行(2)

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「あんた、バスケどうするの?」
と1月中旬、わざわざ北海道まで来てくれた母親は心配して薫に訊いた。
 
「分裂した両者がお互い非難しあってる状態でさ、自治会からも双方が登録拒否されたし連盟側は統一されるまで大会参加は認めないと言っているんだよね。選手も嫌気が差してかなり辞めちゃって、実質崩壊状態。それで考えたんだけどどこかのクラブチームに入ろうかと思ってる」
と薫は答える。
 
「ああ、そういうのがあるんだ」
「クラブチームにも、ほんとにレジャー的なサークルみたいなのから、実質プロみたいな所まで様々なんだけどね」
 
「でもあんた結局来年の2月までは大会とかに出られないんでしょ?」
「うん。去勢していることを確認してもらったのが高校2年の2月だったから。去勢手術した直後に、手術した病院でなくても良かったからどこかで診断書取っておいたら7月から参加できたんだけどね」
 
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「だったらさ、あんたいっそ今の内に性転換手術を受けちゃったら」
 
「・・・・いいの?」
「こういうの、できるだけ早く手術しちゃった方がいいんでしょ?どうせなら」
 
薫は少し考えてから言った。
 
「私、手術したい。でもお金は?」
「お父ちゃんと話し合ったんだけど、JR東海の株を売ってもいいとお父ちゃんも言ってくれたから。150万円になるはずなのよね」
 
「ありがとう。ね、ひとつ打ち明けてもいい?」
「うん?」
「お父ちゃんには内緒で」
「・・・あんた何したの?」
「実はね、私の学資保険を勝手に解約しちゃって」
「ちょっとあんた」
「それで実はもうおちんちん切っちゃった」
 
「あんたじゃ、もう女の子の身体になってるの!?」
「ううん。単純に切っただけ。だから女の子の形にはなってないんだよ。それでヴァギナを作って割れ目ちゃんも作って女の子の形にする形成手術を受けたいの」
 
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と言って薫はその部分を母親に見せた。今日は最初から見せるつもりでいつもしているタックによる女性器偽装は外している。母親は息を呑んで「元息子」の股間を見つめた。これは男でも女でもない形だ。
 
「普段はこうしてるんだよ」
と言って薫はその場でペニス代わりのFUD(排尿器具)を尿道口に後ろ向きに装着した上で、それを陰嚢の皮で包み込み10分ほどで美事に女性の外陰部にしか見えない股間にしてみせた。母親は
「面白ーい」
と言って、結構喜んでいた。
 
「でもその手術、いくらくらいかかるの?」
「たぶん80万円くらいかなぁ・・・」
 
母親は考えた。
 
「ちょっと待って。それはJR東海株を売れば払えるけど、あんた学資保険が無いならA大学の授業料が払えないじゃん」
「あはははは」
 
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4月上旬。
 
TS大学女子バスケ部ではこの日新入部員を迎えたのだが、
 
「うっそー!?前田さんが居る!」
と叫んだのが中嶋橘花である。
 
「どうもどうも」
 
橘花と前田彰恵は今年のオールジャパンを観戦に行って遭遇している。
 
「なんか大阪の大学に進学する予定とか言ってませんでした?」
「うん。実はギリギリになってから志望校を変えたんだよ。あの時点ではこんな偏差値の高い大学に合格する自信無かったから、恥ずかしくて言ってなかったんだけどね」
 
「凄い。日本代表が3人もいる」
と松前乃々羽が言う。
 
3人と言うのは、前田彰恵・橋田桂華・中折渚紗である。
 
「なんかそこの5人、ちょっと凄いオーラを放ってるね」
と3年生の井手さんが言う。
 
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「5人?」
と言って橘花が左右を見る。
 
「あんたと、あんたと、あんたと、あんたと、あんた」
と言って井手さんが指さしたのは、その日本代表3人と橘花・乃々羽である。
 
「んーん。じゃその5人と、2−3年生チームで試合してみよう。10分ハーフの20分間ね」
と4年生の部長・光田さんが言うので、2−3年の中核メンバー5人と、この新入生5人とで試合をしてみる。
 
すると45-38でこの1年生5人が勝ってしまう。
 
「強ぇ〜〜〜。参った」
と井手さんが言っている。
 
「じゃ君たち5人にはTSフレッシャーズの名前を与えよう」
と光田さんは言った。
 

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4月上旬に交通事故に遭い2週間も入院するハメになった愛沢国香は病院のベッドの上で暇をもてあましていた。病気による入院と違って怪我による入院というのは、本人としてはあまり苦しかったりというのが無いので、概して暇である。
 
「しかし参ったなあ」
とつぶやく。折角今年は溝口麻依子を引き込むことができて、かなりいい所まで行けるぞと思っていたのに、自分自身が怪我してしまい、先週の春季大会にも出場することができなかった。今回の大会は麻依子の活躍で1回戦・2回戦を勝ち上がったものの準決勝で敗れてBEST4に終わった。自分も出られたら決勝まで行けたろうし、ひょっとしたら優勝できたかもと思うと悔しい。
 
「夏の大会にも微妙だよなあ。間に合わなかったらうちの弟を女装させて代役させる訳にはいかんかなあ」
などと半ば冗談のように独り言を言う。
 
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取り敢えず月末までに退院できそうなので、退院したら頑張ってリハビリして鍛え直して、9月の裏関では上位に食い込めるようにしたいな、などとも思い、上半身だけでも鍛えねばと思ってダンベルもしている。
 
国香をはねた(というより正確には国香がぶつかった!)車のドライバーさんはとってもいい人で、毎日のように本人か奥さん、または高校生の娘さんが色々差し入れを持ってきてくれる。おかげで国香はおやつには事欠かずに済んでいた。
 
でも私、太っちゃうかも!?
 
なおこの事故は原因の大半が国香の側にあるということを国香側も認め上申書を書いたこともあり、ドライバーさんは30日免停(講習で短縮されて実際には1日、要するに講習を受けた日のみ)で済んだようである。もっとも25年間も続けたゴールド免許がダメになったと嘆いていた。でもこれからまた無事故無違反を続けて20年後に再度スーパーゴールドを取るんだとポジティブに語っていた。20年後って63歳?凄いなあ。頑張るなあ。
 
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そんなことを考えている内に喉が渇いてくる。あいにくお茶もコーヒーも切れている。
 
「私も頑張らなきゃ」
などと独り言を言って国香は松葉杖を突き、1階の自販機まで行ってこようと思った。
 
ここ数日、病院の中を歩き回るのが国香の密かな楽しみになっている。
 
エレベータの所で待っていたのだが、なかなか来ない。どこかで患者を乗せるか降ろすかしているのかな?などと思って待っていたが、ほんっとに来ない。国香はイライラしてきた。
 
階段で行っちゃおうかな?
 
松葉杖を突きながら随分と「平面」は歩き回ったものの、まだ階段は未経験である。でも階段ったって1つ1つのステップは平面なんだから、廊下とかを歩くのと変わらないよね?
 
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国香はそんなことを内心つぶやきながら、エレベータの隣にある階段に向かう。1歩1歩慎重に降りて行く。なーんだ。簡単じゃん。
 
国香はこれ退院まで毎日登り降りして少し鍛えるのもいいなという気がした。ここ2週間、何も練習できなかったのが、すごーく不満だったのである。国香は毎日練習するのが生活の一部になっていた。
 
階段を半分まで降りて踊り場で方向転換する。そして後半を降り始める。その時のことであった。
 
松葉杖を突いたつもりが突く角度が悪かったのか、ツルッと滑ってしまった。
 
え〜〜!?
 
バランスを失った国香はそのままガタガタっと凄い音を立てて階段の一番下まで一気に滑り落ちた。
 
痛たたたたた・・・・
 
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近くに居た看護婦さんが飛んできた。
 
「愛沢さん!?どうしたの!?」
 

2009年4月下旬。
 
U19日本代表の実質的な選考役を任された札幌P高校の高田コーチは困っていた。
 
候補者の中で所在の分からない選手が数名居るのである。
 
昨年のU18アジア選手権が日本の初優勝という素晴らしい成績となったことからバスケット協会の上層部から、昨年のメンバーをできるだけそのまま代表にして欲しいという指示が来ている。
 
しかし取り敢えず離脱確実なのが、森下誠美である。彼女は今春Wリーグのエレクトロ・ウィッカに加入したのだが、Wリーグはちょうど世界選手権と重なる日程でサマーリーグを行っているため中核選手の指名は遠慮して欲しいという要望が来ている。
 
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「しかしこいつら、今いったいどこに居るんだ?」
と高田コーチは昨年の代表選手および数名の補充候補の現在の所属チーム一覧を見ながら、ぶつぶつ文句を言っていた。
 
4.PG.入野朋美(愛知J学園大学)
5.PG.鶴田早苗(山形D銀行)
6.SG.村山千里(???)
7.SG.中折渚紗(茨城県TS大学)
8.SF.前田彰恵(茨城県TS大学)
9.PF.橋田桂華(茨城県TS大学)
10.SF.佐藤玲央美(???)
11.PF.鞠原江美子(大阪M体育大学)
12.PF.大野百合絵(神奈川J大学)
13.C.森下誠美(エレクトロ・ウィッカ)出場不可
14.C.中丸華香(愛知J学園大学???)
15.C.熊野サクラ(???)
補充候補者
*.PG.海島斉江(愛媛Q女子高)出場困難
*.SF.竹宮星乃(神奈川J大学)
*.PF.高梁王子(???)
*.C.花和留実子(H教育大旭川校)
*.C.夢原円(愛知J学園高校)出場困難
*.C.富田路子(大阪E女学院高校)出場困難
 
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要するに所在不明のメンバーおよび補充候補者が5人もいるのである。
 
村山と佐藤はなぜか連絡が取れない。高田は最初、村山が千葉県のC大学に入ったと聞いたので、てっきりそこの女子バスケ部に入ったものと思い照会したら、「当方にはそのような選手はいません」という回答が返ってきた。まさか男子バスケ部じゃないよなと思って念のため確認したが、そちらにも居なかった。
 
佐藤は入るはずだったスカイ・スクイレルが会社の倒産で廃部になり、その後十勝監督が他のチームを斡旋しようとしたのだが、その頃から彼女と全く連絡が取れなくなった。お兄さんに確認した所、都内の企業に勤めているという話だが「本人が今バスケ関係者と接触したくないと言っているので」という回答なのである。
 
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村山も佐藤も、直接送ったメールは受け取られてはいる感じだが返事が無い。電話を掛けても取ってくれない。
 
中丸は愛知J学園大学への進学が決まっていたはずなのに、入学式にも姿を現さなかったし、授業にも全く出てきていないらしい。取り敢えず大学側では学籍を維持し、また彼女のお母さんの同意を取ってJ学園大学の女子バスケ部に登録だけはした。それで彼女は一応バスケット協会にも登録されている身なので姿を現せばいつでも大会にも出られるし代表にもなれるのだが、本人の所在がつかめない。メールでは連絡が取れているものの、誰も居場所を知らないようなのであ。
 
熊野サクラも似た状態だが、彼女は入学が決まっていた福岡C学園大学の入学金を支払わなかった。それで彼女は所属も曖昧なままになっている。お母さんによると「大学に行きたくなくなったので」という話で、彼女の所在も誰も知らないようだ。お母さんには「会社勤めしている」とメールや電話で連絡しているものの、どこに居るのかは聞いても答えないのだと言う。
 
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また、補充候補者の中で高梁王子の所在もつかめない。
 
倉敷K高校を1月に退学したことだけは分かっている。倉敷K高校は同窓会の会長選挙から始まった激しい派閥対立の余波で女子バスケ部と女子バレー部の監督が解任され、あわせてスタッフも全員解任されてしまった。その混乱の中、他校に転校したバスケ部員やバレー部員もいる(転校した場合半年間高体連の大会には出られない。1月末に転校した場合、7月末まで出られない。しかし日本代表にはなれる)。高梁もどこかの高校に転入したのではと思い調査させているのだが、まだ居場所を確認できずにいる。
 
実は彼女が学校を移動したことでインターハイには出られないことが確実なので、それなら日本代表に呼べるという思惑もある。世界選手権はインターハイと日程がぶつかるのでインターハイに出る高校の生徒は出場できない。2年前の世界選手権でも高校生選手がほとんど出られなかったことから、日本はアジア選手権より弱い選手構成で臨まざるを得なくなり惨敗したのである。インターハイの時期をずらしてくれというのは前々から要望があるものの、一向に改善される雰囲気は無い。
 
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実際、他の高校生3人(夢原円・富田路子・海島斉江)も念のため打診してみたが彼女らの所属高校がインターハイに出場した場合は代表への選抜はできたらしないで欲しいという内々の回答をもらっている。E女学院は分からないがJ学園やQ女子高がインハイに出ない事態は考えられないので特に昨年のウィンターカップ以降頭角を表してきたパワフルなセンター夢原の使用は絶望的だ。
 
そして夢原が出られない以上、何としても中丸と熊野は見つけ出したいのである。
 

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娘たちの逃避行(2)

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