広告:ボクの初体験 2 (集英社文庫―コミック版)
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■娘たち、男と女の間には(15)

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アクアのゴールデンウィークのツアーは5月5日の関東ドームで終了したのだが、龍虎の母は連休中ということもあり、5月3日に龍虎が札幌から戻ってきた後、ずっと赤羽のマンションに滞在してくれていた。
 
その母が滞在していた5月5日、連休前に龍虎が頼んでおいた追加の制服が届いた。これで3人が各々1つずつ制服を使えるようになったのだが、母は荷物を受け取り、それが制服だったので、「なんでこんなに何枚も制服が要るの?」と戸惑うように龍虎に尋ねた。
 
それで龍虎はまた言い訳をするのに苦労した。
 
「そうだ、お母ちゃん、明日結婚式に招待されているんだけど、結婚式って何を着ていけばいいのかなあ」
と龍虎は尋ねた。
 
実は明日5月6日(土)にリダンダンシー・リダンジョッシーの中村正隆と鹿島信子が都内のホテルで結婚式をあげるのである。アクアは信子と同じ"CBF"のメンバーということで招待されていたのだが、アクアは自分がCBFのメンバーになっていることを知らないし、会員証が送られてきていたことも忘れている。
 
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母は言った。
 
「未婚の子は振袖じゃない?そうだ!例の夕香お母さんが着ていた青い振袖を着たら?」
 
といって、桐のタンスの最上段に入っている振袖を出してくる。
 
「着れるよね?」
「うん」
 
それで龍虎は自分でその母(長野夕香)の形見の振袖を着てみた。
 
「可愛い!」
と母(田代幸恵)は嬉しそうに言った。
 
姿見に映してみて、自分でも「いいなあ」と思う。しかし龍虎はハッとした。キャロルと自分の性別問題があれだけ騒動になった直後である。そういう時に振袖で人前に出るのは、あの問題で散々骨を折ってくれたコスモス社長に悪いという気がした。それで龍虎は言った。
 
「ボク、やはり制服で出席するよ。中高生は制服でいいはずだもん」
 
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と言って、今日届いたばかりの新しい制服を手に取る。
 

「まあそれでもいいかもね。下はスカートだよね?」
「自粛してズボンにする」
「スカートの方が可愛いのに」
 
なお、ご祝儀の額が分からなかったので、コスモス社長に電話してみたら、社長はアクアが信子たちの結婚式に招待されたことが意外だったようで驚いていたが、「500万円にしなさい」と言った。
 
「500万円ですか!」
「アクアは超高額所得者だからね。でも休日だから高額現金を引き出せないよね?事務所に来たら、そのくらい貸すから」
「行きます」
 

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それで(1人では怖いので)母に付き添ってもらい、電車で事務所まで行った。
 
赤羽(埼京線)新宿(中央線)信濃町
 
事務所に行くと、社長が金庫を開けて日本銀行の封印がついた100万円の札束5つ、そしてこの厚さの札束を入れられるマチの大きな祝儀袋を渡してくれた。祝儀袋の水引がまた美しい。
 
「この祝儀袋自体が凄く高くないですか?」
と母はコスモス社長に尋ねた。
 
「うん。水引の名人さんが作ったもので、祝儀袋自体が20万円する」
「ひぇー!!」
と龍虎は思わず悲鳴をあげた。母も絶句している。
 
「やはり中身が大きければ外側もいいものにしないとね。でも醍醐春海先生なんかは、200万円を100円ショップで5枚100円の祝儀袋に入れたりする」
 
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「醍醐先生らしいです!安い物大好きだもん」
「でもアクアは豪華な祝儀袋にしよう。この祝儀袋の値段は事務所の経費で落としておくから」
「すみません。500万円も月曜日に返却しますね」
「5月末の振込から引いておくからいいよ」
「分かりました。それで」
 
「ところでアクアは何を着て出席するの?」
とコスモス社長は訊いた。
 
「高校生なので制服で」
「豪華なドレスとか着ればいいのに」
「性別問題で騒ぎになったばかりなので自粛します」
 
「それもいいかもね。制服の下はスカート?」
「ズボンにします。それも自粛して」
「スカート穿きたくないの?」
「我慢します」
 
アクアたちはもちろん帰りはタクシーで帰宅した!
 
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翌日の結婚式で、アクアはみんなから
 
「ドレスとか着ればいいのに」
「振袖とか着てきたらよかったのに」
などと散々言われて、やはり振袖が良かったかなあ、などと心が揺らいだ。
 
ちなみにご祝儀に500万円を渡したのは3人(組)で、ローズ+リリー、丸山アイ、そしてアクアである。千里はアメリカ遠征中だったのだが、醍醐春海と葵照子の祝儀袋をケイが「言付かってきた」と言って、出していたが、醍醐春海分・葵照子分を各々200万円(合計400万円)、本当に100円ショップのいちばん安い祝儀袋に入れて出していた(正確にはPPC用紙で札束を包み、上に祝儀袋を貼り付けていた!)。
 
これ以外の芸能人はだいたい30-100万円くらいだったようである。フェイやヒロシも100万円であった。
 
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(芸能人以外の招待客にはリダンリダンのサブリーダー葛城詩葉が「1万円でいい」というメールを回したのだが、料理が物凄く豪華だった(料理とお土産で5万円の予算)こともあり、追加で払った人もあり、大半の人が結局2−3万円払ったようである)
 

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去勢していることを公表したキャロル前田が主演する『変身ポンポコ玉』の視聴率はその後も全く改善されず、スポンサーからの苦情もあって、とうとう5月いっぱいで打ち切られることが決まった(本来は8月までの予定で、撮影も全部終わっていた)。
 
キャロルはこれまでは倒れるくらい忙しく仕事をしていたのだが、全ての番組で番組改編に伴い降ろされることになり、6月いっぱいで全ての番組から姿を消した。事務所側が違約金を払ってキャロルとの契約を解除したことも明らかになった。どうも契約解除の結果降板することになったようだ。僅かに残った彼/女(**)のファンの間には、倒れて入院するくらいまで散々こき使っておいて、性別問題で解雇するって非道い、セクマイ差別ではという声もあった。訴訟を勧める人もあったようだが、彼/女は「いったん出直します」と公式アカウントの最後でツイートした。
 
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(**)「彼/女」は「s/he」の訳語候補のひとつ。なおs/heの所有格はhis/r. 目的格は his/r, 目的代名詞は his/rs.
 
『変身ポンポコ玉』の後番組はキャロルと一緒に『変身ポンポコ玉』に主演していた七浜宇菜主演の『少女革命ウテナII』が8月まで放送されることになり、急遽5月下旬から撮影が行われた。前回姫宮アンシーを演じた横川れさとのスケジュールが取れず今回はれさとの親友でもある白島もれあがアンシーを演じる。
 
しかし宇菜ちゃんも全くお疲れ様である。
 

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「宇菜ちゃんは男の子になりたい?」
とバラエティ番組で司会者の丸呑ジョージアに訊かれた宇菜は
 
「男の子になりたい!ジョージアさん、おちんちん譲って下さい」
などと言う。
 
「これはやれん!無くなったら女房も困るし」」
「だったら、私が奥さんのお世話もしてあげますよ」
「女房まで取られたら俺どうしたらええんよ?」
「代わりに宇菜になれば?セーラー服着て女子校に通っていいよ」
「俺がセーラー服着て女子校に入っていこうとしたら痴漢で捕まるわ」
 
などとやりとりをして笑いを取っていた。
 
ジョージアはその後で相棒の丸呑ワンダから
「お前がセーラー服着たら、どのくらい変態に見えるか」
と言って急遽用意されたビッグサイズのセーラー服を着せられたが
 
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「これは酷い!」
「あかん、放送事故や」
と居並ぶ出演者から言われていた。宇菜も笑っていた。
 

「だけど女の子が男の子になりたい!とか言っても別に誰も変に思わないのに男が女になりたいと言ったら、たいてい変態とみなされるのは何でだろね?」
と何気なく丸呑ジョージアはセーラー服を着たまま言った。
 
それに対して答えた宇菜の言葉は、ネットでかなりの反響を呼んだ。
 
「それは男女差別だと思いますよ」
と宇菜は答えた。
 
「なんでそこに行く?」
 
「多くの人が男の方が女より優れた存在だと思っているからだと思うんですよね。例えば貧乏な人がお金持ちになりたい!と言っても誰も変に思わないでしょ?でもお金持ちの人が貧乏になりたい!と言ったら変態かと思われます」
 
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「なるほど」
 
「キャロルちゃんとかアクアちゃんとかは、逆に女の方が男よりすぐれた存在だと思っているんですよ。だから、今の自分より、すぐれた存在である女に進化したいんでしょうね」
 
「それは面白い見方だという気がするよ」
 
「でも貧乏になりたかったら、お金を全部どこかに寄付してしまえばいいやん」
と丸呑ワンダが言う。
 
「だから女の子になりたいなら、ちんちんを取っちゃえばいいんですよ」
「おぉ!」
 
「でも女の子はちんちんを誰かにもらえないと男になれないから、ジョージアさん、ちんちんを私に下さい」
 
「なんでそうなるんや!?」
 
出演者一同大笑いする。
 

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「アクアちゃんの場合は、多分私と似たタイプだと思うんですよ。私も男の子だったら良かったのにと小さい頃からずっと思っていたし、周囲からもそう言われて育っているけど、女である自分を受け入れているから、性転換手術まで受けて男になりたい訳じゃない」
 
「ふむふむ」
 
「きっとアクアちゃんも、さんざん男になるなんてもったいない。女の子になりなよとか、女の子だったら良かったのにとか言われて育っている。本人もまんざらでもない。でも彼も男である自分を渋々受け入れているんじゃないかな。だから性転換手術までして女の子になる気はないんですよ」
 
「宇菜、お前、アクアの凄い理解者かもしれんぞ」
とジョージアは言う。
 
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「だから、ジョージアさん、おちんちん下さい」
「結局そこに行くんかい!?」
 

5月3日、桃香の祖父・高園和彦(にぎひこ)の一周忌が、無宗教で行われた。これに桃香は出産間近で出席できなかったが、青葉と朋子、それに千里が出席した。実際に出席したのは千里2である。千里は公式には海外遠征中だったのだが、実際に海外遠征しているのは千里1である(千里3はフランスにいる)。
 

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2017年5月10日、桃香の子供・早月が誕生した。《きーちゃん》は3人の千里をうまく調整して分娩室や病室に出し入れし、3人ともに早月を抱かせた。
 

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娘たち、男と女の間には(15)

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