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■娘たち、男と女の間には(7)

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アクアが声変わりしない問題については、アクアの口から正直に専門家の管理下で微妙なホルモンコントロールをしていることを認める。精液は保存しているので、このホルモンコントロールの副作用で万一不妊になっても個人的には問題無いと思っているとも言った。
 
「それ立つんだっけ?」
「え?ぼく立ってしたこと無いです。いつも座ってしてます」
 
話が通じてないが、まあいいことにする。
 
「アクアって恋愛対象は男性?女性?」
と和泉が訊いた。
 
「ごめんなさい。ぼく、実は個人的には恋愛ってのがよく分からないんですよ」
とアクアは言った。
 
その関連でいくつか質問があるが、多分アクアはアセクシュアルなのだろうと大半の人間(千里とコスモス以外)が思った。
 
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アクアはこの半年ほど練習したという男声も披露した。丸山アイに指導してもらったのだが、多くの人はボイストレーナーの指導を受けたのだろうと思ったようだ。
 
「橋元さんと話してみないといけないけど『ときめき病院物語III』では佐斗志の声はそのアクアが開発した男の子っぽい声で、友利恵はアクアの地声で話してもいいかもね」
とコスモスは言う。
 
「男声・女声の両方を使えるというのを見せておくと、結果的にアクアがいつ声変わりしたのかという問題は曖昧にできる気がする」
と和泉が言う。
 
「いつの間にか声変わり作戦だね」
「それマリちゃんが言ってたね」
 
「マリが言ってたのはいつのまにか女子化作戦かな。男子会社員として勤めていたはずが、パンツをパンティに変え、ソックスをパンストに変え、ブラジャーをして、シャツをキャミソールに変え、ワイシャツをブラウスに変え、背広を女性用ジャケットに変え、ズボンをキュロットに変え、キュロットをスカートに変えると、少しずつ変化しているから、いつ女子会社員になったのか分からない」
 
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「それ絶対無理」
 
「一般的にはやはりキュロットからスカートに変えた所で注意されるんだよ」
「キュロットもスカートの一種なのに」
「種数1の閉局面と種数2の閉局面の差だな」
 

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一同はこの湯船の中で2時間ほどにわたり様々な問題を話し合った。
 
のぼせないようにと、飲み物も配られる。適宜湯船からあがって涼んだりもするが、女性が湯船に出入りする時、葉月は目を瞑っていた(アクアは全く気にしない)。
 
アクアや、コスモス・ゆりこはお茶やポカリスエットなどを飲んでいたが、千里・和泉・陸奥子などはけっこうワインとかビールとかを飲んでいた。千里は車で来ているのだが、帰りは《こうちゃん》に運転させるつもりである。《こうちゃん》は勾美名義の運転免許証も所有しているので、千里に擬態せずに運転することもできる。千里の免許証を使い女装で運転するのは趣味の範囲である!
 
冬子・青葉はコーヒーを飲んでいた(きっと眠いのだろう)。葉月はお茶を飲んでいたはずが、最後のあたりでは酔っていた!ので誰かがどさくさ紛れにお酒を飲ませたようだ。あるいは、裸の女性に囲まれてとても精神が耐えられなくなりつつあったので、“発射回避”も兼ねて、罪悪感を減少させるために敢えて酔わせたのかもと龍虎は思った。彩佳たちや§§ミュージックの女子寮で散々鍛えられた(?)自分とは違うだろう。
 
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最後にコスモスが
「でもアクアに女の子になる気が全く無いのであれば、安心して女装させられるな」
などと言うと、アクアは期待するような目をしていた。
 

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明け方各々の部屋に引き上げる。部屋割りはこのようになっている。
 
冬子・青葉・千里
コスモス・ゆりこ・和泉
アクア・葉月
 
上野陸奥子と夫・紅良々
佐良・矢鳴・和泉の従姉
渡辺純子・黒木不二子
 
会議終了後に会議不参加の人が既に寝ている部屋に行って休んだのは上野陸奥子だけである。
 

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部屋に引き上げた後、葉月はそのまま眠ってしまったが、龍虎は生理用品入れの入ったバッグを持って、旅館1階の多目的トイレに行く。
 
『すみません。いいですか?』
と思念を飛ばしてみると、数時間前に龍虎にタンポンを入れてくれた女の人が出てきてくれた。
 
『冷たいけど床に横になって』
『はい』
 
それで下着を脱いで横になると、そっと抜いてくれた。抜くのも全然痛くなかった。抜いたタンポンは龍虎が自分でビニール袋に入れてトイレの汚物入れに捨てる。
 
『ありがとうございます。後はナプキン付けるのでひとりでできます』
『タンポンの入れ方は、時間に余裕のある時に少し練習するといいよ』
『そうですね』
『学校で水泳の授業とかある時もタンポンの方がいいし』
『その状況は考えてなかった!』
『まあ生理にぶつかったら授業休む子もいるけどね』
 
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『ああ、それでもいいかなあ』
『生理中なのでと先生に言って休む?』
『う・・・それはヤバい気がする。そうだ、お名前教えてください』
 
『ゆばちゃん、でいいよ』
『ありがとうございます、ゆばちゃんさん』
『ゆばちゃんさんは二重敬語だ』
『じゃ、ゆばちゃん』
『うん、それでいい』
 
『でも女の人にしてもらって良かった。さすがにこうちゃんさんにはされたくないもん』
『ん?私、男だけど』
『え〜〜〜!?』
 

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龍虎は1月9日(月)の夕方、(熊谷市の)自宅に戻った。ゆりこ副社長が運転するフォルクスワーゲン・ポロで自宅まで送ってもらった。ゆりこはその後コスモスを高崎まで送った。コスモスは高崎に駐めていたロードスターの車内で1時間ほど仮眠し、再度軽食を取ってから帰宅する。
 
龍虎が自宅に戻ると、半月ほど自宅を留守にしていたので、大量の郵便物が溜まっている。母が「DMの類いは捨てて、ファンレターは事務所に持って行ったよ」と言った。ファンレターはうかつに開けると危険な場合もあるので事務所でX線検査などをしてもらった後で、手紙は(大量にあるので)スキャンしてデータでもらえることになっている。自動要約ソフトで各々のお手紙の内容を簡単にまとめているので、龍虎は結構ファンからの手紙の内容を把握している。それで特に目に留まったものには、ちゃんと直筆のお返事を書いていたりもする。
 
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そういう訳でここには個人的なものと思われる郵便物だけ残っているのだが、それでもかなりの量がある。龍虎は取り敢えず差出人だけ見ていたが、その中に "CBF" という所から送られてきたもので“会員証在中”と書かれた封書があった。
 
心当たりが無いので、何だろう?と思ったものの、疲れているので後から見ることにして、取り敢えず棚の書類入れに封書ごと放り込んだ。
 
それできれいさっぱり忘れてしまった!
 

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1月14日(土)に08年組による東北復興支援ライブの詳細が発表された。
 
3月11日(土) 10:00-12:00 アクア
3月11日(土) 13:00-17:00 白鳥リズム・姫路スピカ・花咲ロンド・西宮ネオン・高崎ひろか・品川ありさ・川崎ゆりこ・桜野みちる(30分ずつ8人)。
 
3月12日(日) 10:00-12:00 アクア
3月12日(日) 13:00-17:00 Golden Six, KARION, XANFUS, Rose+Lily
 
Golden Six は前座という名目で登場する。KARIONとRose+Lilyの間にXANFUSを入れるのは“技術的理由”である。
 
アクアは2日間登場である。会場が狭い(キャパ7000)こともあり、チケットの競争率を緩和するため、2回歌うことになった。それでも実際の競争率は20倍にも達した。今回は★★レコード不参加で人手が足りないこともあり、パブリック・ビューイングは断念した。
 
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§§ミュージックで、4月以降の寮の部屋割り当てが内示された。このように移動する。下記の学年は4月以降の学年である。
 
201.
202.南田容子(中3)
203.
204.
205.山口暢香(中2)
206.吉沢蕾美(中3)
207.高島瑞絵(中2)
208.
 
301.白鳥リズム(中1)←201
302.
303.姫路スピカ★(高2)
304.花咲ロンド(高3)
305.佐藤ゆか(高1)←203
306.
307.
308.
 
401.
402.吉田和紗(19)←302
403.
404.
405.川内峰花(19)←305
406.品川ありさ★(高3)←306
407.高崎ひろか(高3)←307
408.
 
退寮
アクア(308) 都区内のマンションに住むので。
米本愛心(204) 契約終了により。
 
(★は居住はしておらず遅くなった日の泊まりや早出の前泊に利用している人)
 
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結構な移動になる。2月中に4階に移動する子に引越してもらい、業者を入れてクリーニング後、3階に移動する子の引越を3月にしてもらうことになった。204,308の退去は4月中にすればいいことにした。
 
アクアがマンションを借りて退去すると聞き、一部の寮生の間では
「龍ちゃんにセクハラができなくなる」
などという声があり、
 
「あんたたち、ふだん何やってんのさ?」
とゆりこ副社長から言われていた。
 
「いや、あわよくば玉の輿にと」
「それは無理だね。だいたいあんたたち、龍ちゃんにちんちん無いこと知ってる癖に」
「ちんちんくらい無くたって結婚していいですよ」
「確かに、そういう意見はわりと多い」
 

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「私改名することにしたから」
とその日ハナちゃんは言った
 
「改名というより、また名前作るの?」
などとみんなから言われる。
 
「ハナちゃんは名前の数が多すぎて全部は覚えきれない」
「川内峰花、竹本和恵、紅型明美、高村梓紗、夢倉香緒梨、Flower XYZ、Jasmine Mercury, Lucia Fiorina, ...」
「あんたよく覚えてるね!」
「どれが本名か分からなくなっている人も多い」
「こないだ書類に川内峰花と書いたら、沢村さんが『本名書いて』と言ってたね」
「沢村さんでさえ分からなくなっているのか」
 
「いや、“ハナちゃん”という名前が長すぎるという指摘があって。だから短くして単に“ハナ”にするから」
と本人は言う。
 
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「それ呼び方は全然変わらない気がする」
「でも中学生の子たちは“ハナちゃん”と“ちゃん”付けで呼ぶのに抵抗があったみたいだから“ハナさん”と呼ぶようになるかもね」
 
「“ちゃん”は芸能界では普通の尊称だよ」
「確かに“山本ちゃん”とか“本田ちゃん”とか、お互いけっこう“ちゃん”を付けて呼んでますね」
 
「でもまあそういう訳で、私の名前は単に“ハナ”ということで」
 
それで2月1日付けで、§§ミュージックのホームページで“仮名ハナちゃん”というのが“仮名ハナ”と変更されていた。
 
「まだ仮名(かめい)なのか」
「社長から、いい加減芸名付けてあげるからと言われたけど、まだ仮名でいいと言ってる」
 
実はしびれを切らしたコスモスから「山下ルンバ」の名刺を1箱もらったのだが、まだ使いませんと言っている。
 
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§§ミュージックでは、新たに「練習生」という制度を設けることを発表した。
 
これまでの「研修生」は§§ミュージックと契約(B契約)をして、レッスンを受けるかたわら仕事も紹介して、ドラマの端役をしたり、ライブや音源製作の補助(主として楽器演奏やコーラス)をしたり、また他のアーティストのPVに出演したりして歩合制または固定給の報酬をもらえるというシステムだった。(ハナや愛心に利美など一部を除けばほとんどの子が固定給を選択していた)
 
これに対して新たに創設する「練習生」は、§§ミュージックと委託契約に近い軽い契約(C契約)をする。お仕事の紹介はたまにはあるが、特に保証しない。レッスン代も自腹である。結果的に毎月の収支が赤字になる可能性もある。練習生になるには、歌唱・ダンス・演技などの試験と面接を受けてもらい、合格する必要がある。歌唱・ダンス・演技の総合成績ではなく、どれか1つでも水準に達していたら合格できる。ダンスが水準点に達している場合は“信濃町ガールズ”に勧誘する場合もある。レッスンへの交通費も自腹だし、学校を休んで活動に参加するのは禁止なので、事実上、東京または大都市の提携芸能スクールに通学可能な人に限られる。
 
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これを発表した直後から
「女子限定ですか?」
という質問が大量に来たので、コスモスはほとんどノリで
「男子でもいいですよー」
と答えた。
 
「男子の練習生も信濃町ガールズになれますか?」
という質問には
「なれます」
と即答した。
 
それで応募者の中から“ふつうの男の子”の信濃町ガールズ・メンバー、上田信貴くん(2005生−4月から小学6年生)が誕生することになる。
 
「あのぉ、信濃町ガールズで踊る時の衣装はスカートですか?」
と彼が信濃町ガールズの“世話人”のハナに訊くと
 
「一応他の子とお揃いのデザインのショートパンツを用意しようと思っていたけど、スカートが穿きたい場合はスカートでもいいよ」
と言われる。
 
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「ショートパンツにしてください!」
と慌てて彼は答えた。
 

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娘たち、男と女の間には(7)

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