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早朝高崎線の電車に乗って東京に出、新幹線・特急はしだて1号を乗り継ぎ、舞鶴線で舞鶴に至る。
熊谷5:39-6:51東京7:00-9:17京都9:25-10:31綾部10:33-10:55西舞鶴
龍虎たちが葬儀場に到着した時、ワンティスのメンバーで来ていたのは、三宅先生と海原先生だけだった。三宅先生とは古くからの知り合いなので
「中学生はこちらで休んでいなさい」
と言われて“女性用”控室に連れて行かれたが、実はこの時凄いメンツが集まっていたのである。
橘美晴(小2)後のミュージシャン:ムラン・ルージュのリーダー
桜田行滋(年長)後の俳優・桜幸司
藤島行将(年長)後のウィステリア社長
里中彩奈(昨年生れ)後のアイドル秋山怜梨
各々の母親に連れられていた。他に妊娠中の女性も1人いたのだが、その“5人”が雨宮先生の子供らしかった!祖父の葬儀だから連れてきたということのようだが、雨宮先生の(元)愛人が5人並ぶという様は、まず見られないものであった。しかしお互いわだかまりはないようで、その5人はふつうにおしゃべりしていた。なぜ仲良くできるんだ?と龍虎には理解不能だったが。
橘美晴の母・橘由利香にも1度会ったことがあったので会釈した。旅番組やクイズ番組などのレポーターやドラマの端役などに時々出ている(と思っていたのだが、実は龍虎が見ていたのは双子の妹・恵利香のほうだった!ユリカもたまにテレビに出ることはあるものの、エリカほどの頻度ではない)。
「アクアちゃん、おはよう。あんたまさか雨宮の子供じゃないよね?」
と由利香から訊かれる。
「違います。私は高岡猛獅の子供なので、その名代(みょうだい)で来ました」
「そうだったのか!」
「みんなそのことは秘密にしといてね」
と三宅先生が言うと、みんな頷いていた。
なお、後に橘美晴は、この時にアクアと出会ったのが、自分も歌手になろうと思ったきっかけだったと述べていた。
三宅先生はすぐに出て行って会場の準備作業などを手伝っていたようである。彼女は一応“男手”である。龍虎の両親も手伝いに出て行った。
ワンティスのメンバーも次々と到着したが、上島さん夫妻は仕事の関係で今夜には間に合わず、明日の告別式にだけ出席するという話だった。ワンティスのメンバーは全員、龍虎が高岡の子供であることを知っている。
「よく来たね。忙しそうなのに」
と声を掛けてくれたりした。下川先生は小学6年生の娘さんを連れていて、彼女はアクアに握手を求め、更にサインが欲しいと言ったものの、父親からたしなめられていた。
「でも学生服なんですね。セーラー服着ればいいのに」
「今日それ既に10回くらい言われた」
「たぶん明日までに100回言われるますよ」
「どうしよう?」
「セーラー服を着れば問題解決。持ってるんでしょ?」
「うーん・・・」
通夜自体は夕方16時から始まり18時頃に終了した。出席者の大半はお父さんの会社関係の人で、お花なども○○支店一同などというものがたくさん並んでいた。
翌朝、上島夫妻が千里、マリ・ケイと一緒に到着した。苗場ロックフェスティバルが行われた越後湯沢から千里が車を運転して連れてきたのだという。「千里さんも体力あるなあ、さすが日本代表のバスケット選手だよな」と思う。
告別式は9時頃から始まったが、出席者は昨夜以上のようだった。雨宮先生の子供たちは昨日は各々の母親に連れられていたものの、今日は母親たちは出席を遠慮し、どうも雨宮先生から頼まれたらしい、下川先生の奥さんと娘さんが連れてお参りさせていた。
お経もやたらと長く(きっとお布施がすごかったのだろう)、告別式が終わったのはもう11時すぎだった。合宿に戻らなければならない千里さんはすぐ帰るということで、アルバムの制作中で、ミュージシャンたちを待たせているケイさん、マリさんも千里さんのインプレッサに同乗していくという話だった。
しかし、この時初めて龍虎は、千里が合宿中のオーストラリアから、この葬儀に顔を出すためだけにとんぼ返りしてきたと聞いて、驚いた。あり得ない!呼びつけた雨宮先生も無茶だけど、千里さんの体力もとても信じられないと思う。
『こうちゃんさん、千里さんは体力の限界超えていると思う。手伝ってあげてよ』
『OKOK。任せとけ』
と言って、《こうちゃん》はインプレッサに付いて行ってくれたようである。
告別式が終わった後は、火葬している間に親戚一同+ワンティス関係者の会食があったが、出席者は50人以上いた。龍虎も田代の両親とともにこれに出席した。
お骨を拾って骨壺に入れるのは、ごく近い親族だけでおこない、龍虎はそれをじっと見ていた。その後、初七日の法要までおこなってから、葬儀は14時半頃に完全に終了した。
そして15時半頃から宴会が始まる!
龍虎の父は完全に宴会好きな親戚たちにつかまってしまった。ワンティスのメンバーでも、上島・下川・雨宮・水上・海原・山根の6人は参加してかなり盛り上がっていたようである。
春風アルトさん、下川さんの奥さんと娘さんや、雨宮先生の子供たちと母親たち、それに三宅先生と支香さん、それに龍虎は別室で何人かの親戚の女性と一緒にお茶を飲んでいた。三宅先生がいるので、支香さんとアルトさんもこの場は“休戦”という感じである。もっとも2人の関係はアルトさんが支香さんに敵対的な視線を送るだけで、支香さんは気にしていない、というのが龍虎の見方である。
それにしても三宅先生って、男物の喪服を着けてて出棺の時は棺を担いだし、一応“男扱い”なのかなという気もするけど、この席では中性的な服を着て女声で話している。きっと本人の基本は男でも、生まれてから大学に入る前までは女としての生活を強要されていたから、女になることもできるんだろうなどと思う。一度わざわざ触らせてくれたけどDカップくらいのバストがあった。
なんかこういうふうに男女2つの性を生きるのも悪くないかもと龍虎は一瞬考えた。
雨宮先生の従妹という人が、ケーキを持ち込んでいて頂いたが、凄く美味しかった。
「これ都会でも売れそう」
という声がある。
「でもここ安いんですよ。これだいたい平均350円くらい」
「すごーい」
「まあ都会レベルの値段をつけても田舎では売れないから」
「それは言えるなあ」
龍虎は両親とともに今日の最終で東京に戻った。父は完全に酔いつぶれていて、母にかなり文句を言われていた。荷物を持てない状況だったので、結局支香が荷物持ちを兼ねて付き合ってくれた。
支香は
「田代さんもお疲れ。立場上断れないでしょ?私も誘われそうになったけど、酔っ払いたちには付き合ってられないから離脱の理由ができてよかった」
と言っていた。
西舞鶴 7/27 18:15-19:53 京都 20:05-22:23 東京
特急まいづる14号と新幹線の乗り継ぎである。龍虎は明日の仕事に備えて、そのまま東京の§§プロの寮に泊まり、両親は新幹線(東京23:00-23:38熊谷)で帰宅した。支香も上野東京ラインで浦和に帰った。両親は最初高崎線に乗ると言っていたのだが、龍虎は、僕がお金出すから新幹線に乗りなよ、疲れてるでしょと言って、新幹線に乗せたのである。
龍虎が寮に行くのに使ったのも上野東京ラインだが支香が乗ったのとは別系統である。上野東京ラインは運転系統が分からないと言う人もいるが、実は龍虎もよくは分かっていない。“上野東京ライン”そのものは2015年3月に完成した上野−東京間の線路の名称であるが、これを利用して新しい路線が作られた。
基本的な運行系統は2つである。
沼津・伊東−東京−上野−大宮−前橋(高崎線)・黒磯(宇都宮線)
品川−東京−上野−我孫子−高萩(常磐線)・成田(成田線)
支香が浦和に帰るのに使用したのは上野から高崎線方面に行く籠原行き(籠原は熊谷の次の駅)、龍虎が乗ったのは常磐線方面に行く土浦行きであった。龍虎はこれを北千住で降りて東武に乗り換え五反野で降りる。駅から先はパスを持っているのでタクシーを使用する。
§§プロの寮で龍虎は固定の部屋No.208を使用する。実はこの部屋の鍵もいつも持っていて、熊谷まで帰れない時、疲れて帰る気力がない時はいつでも使っていいことになっている。隣の207号は北海道出身の高崎ひろかである。品川ありさは海老名市の実家に住んでいるが、ここの寮の209号も割り当てられており、遅くなった場合あるいは早出の場合に泊まることがある。他にはNo.204には中学2年、No.205には高校2年の研修生が居て、現在研修所に常時居るのは3人、それ以外に龍虎とありさが泊まることもあるという状況である。この時期は§§プロの在籍タレントの数も少なかったし、研修生の数も少なかったのである。
それで龍虎が寮に入って、階段を登って2階にあがっていったら、洗面器を抱えた高崎ひろかが部屋から出てきた所だった。
「龍ちゃん、お帰り。お仕事早く終わったのね」
「ううん。今日は親戚のお葬式で舞鶴まで行って来てその帰り。明日は朝から仕事だから熊谷まで帰らずにこちらに泊まることにした」
「いっそ夏の間はここにずっと泊まっていたら?」
とひろかは言う。
「ああ、ひょっとするとそれがいいかも知れない」
と龍虎も言われて思った。お母ちゃんに相談してみようかな。実はあと半月ほどで熊谷−東京間の新幹線定期が切れるのである。夏休みの間はここに泊まってもいいかも。
「私、お風呂行くところだけど、龍ちゃんも一緒に入る?」
「いやいい!クニちゃんあがったら教えて」
「恥ずかしがらなくていいのに。“女の子同士”なんだし」
と言って、ひろかは階下に降りていった。
部屋に入ってベッドの上に横になってから龍虎はつぶやいた。
「やはり自宅から通おうかな。ここにずっと泊まってたら、ボク、クニちゃんやハナちゃんに解剖とかされそう」
既に3度も品川ありさにはフルヌードを見られて、ちんちんが無いお股と少し膨らんでいるバスト(身長を伸ばすために敢えて飲んでいた女性ホルモンの副作用)もその度に見られていることは取り敢えず忘れている。
うとうととしていたら、部屋のドアがトントンとされる。
「龍ちゃん、寝た?私はあがったけど」
と高崎ひろかの声。
「ありがとう!じゃボク入るよ」
と言って起き上がり、お風呂セットを持って部屋を出た。階段を降りていき、浴室に行く。脱衣場に入って、服を脱ぐ。この時、龍虎は疲れていたので、脱衣場の中に他にも脱衣カゴが出ていたことに全く気付かなかった。どちらかというとボーっとしたままの状態で、キュロットとTシャツ、ブラジャーにパンティを脱いで、タオルとシャンプーセットを持って浴室とのドアを開けた。
“浴槽の中に入っていた”女の子がこちらを振り返って言った。
「あ、龍ちゃん、お疲れ〜。今夜は寮に泊まるの?」
No.204の住人、中学2年の米本愛心(よねもと・あこ)であった。龍虎はさっきの高崎ひろかの言葉を思い起こしていた。クニちゃんは“私はあがった”と言った。ボクも彼女に「クニちゃんがあがったら教えて」と言った。でも他にも入っていた子がいたのか!
「一緒に入ろうよ。“女の子同士”で中学生同士、遠慮することもないよ」
と愛心は笑顔で言った。自分が入ってくることを予想していたようだ。クニちゃんと共犯か?
でもアコちゃんにまで、ボク、ヌードを見られちゃったよぉ、えーん、と龍虎は思ったが、今更である。