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■娘たちのフィータス(3)

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広島駅で降りて指示に従い広島レッドアリーナまでタクシーで行く。楽屋口から入り、中の人たちに挨拶するが、みんな優しくしてくれて鱒渕はホッとした。
 
「あなたが、アクアちゃんの担当になったの?」
と凄く頭が良さそうな感じの女性から訊かれる(あとで★★レコードの氷川さんという人だと判明)。
 
「まだよく分からないのですが、12日までお供させて頂きます」
「鱒渕さん、今日うちに入社したらしいです」
とアクアが補足する。
 
「それでいきなり初仕事初出張なんだ!」
「頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
 

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アクアの出番は『雪を割る鈴』という曲の途中で、剣を振って、鈴を割る役ということだった。出番はその1つだけ、ほんの数分というのに東京からわざわざ行くなんて大変だなと思ったのだが、アクアがステージに出て行くと観客の歓声が凄まじいので「この子、こんなに人気なのか!」と驚いた。
 
こんなに人気のある女の子なら、わざわざこのたったひとつの出番のために、ローズ+リリーに付いてまわる価値もあるのかも知れないなあと鱒渕は思った。
 

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その日は広島市内のホテルに泊まったが、一流のホテルなので、すごーいと思った。アクア本人はプレミアツインのシングルユース、鱒渕は同じ階のプレミアシングルを取ってもらっていた。ホテル代はローズ+リリー側が払ってくれるようである。しかし鱒渕は
 
「このシングル、普通のビジネスホテルのツインの、倍の広さがある気がする」
 
と思った。
 
ローズ+リリーは今人気絶頂だから、予算が潤沢なんだろうなぁ。
 
各部屋に入ってから、東京の沢村と電話で話して今日の報告をした上で、アクアの携帯にメッセージを送ってみるが反応が無い。念のため預かっている合い鍵で彼女の部屋に入ってみたが、アクアはすやすやと眠っていた。
 
ほんとによく寝る子だ!
 
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でもこの子、寝顔まで可愛い!
 
でもハードスケジュールで動いているんだろうな。寝てる時は寝かせてあげようと思って、そのまま部屋を出る。一度ホテルを出て近くのコンビニで着替えの下着を確保してきてから、鱒渕もシャワーを浴びてベッドでぐっすり寝た。
 
翌朝、アクアは《不思議の国アリス》のトレーナーとウールのロングスカートを穿いていた(男物の服を持って来ていたはずなのに消失していた)。一緒に朝御飯を食べていて、初めてアクアがまだデビュー前であることを知った。
 
「デビュー前から凄い人気だね」
「そうなんですよね。ボクも戸惑ってます」
などと言っている。
 
“ボク”なんて自称を使うんだ? でも元気な子みたいだから、それも似合うかもね、と鱒渕は思った。
 
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なお、鱒渕が急に出張を言われて着換えを持っていないので、もし出発まで時間があったら買いに行って来たいと言ったら、ローズ+リリーの付き人?の甲斐さんという人が、ホテルのフロントに衣料品店の場所を訊いてくれて、それで鱒渕はしまむらまで行って、無事着換えを確保することができた。この時、鱒渕はアクアから、1万円札を2枚渡され、彼女のサイズのズボンを3〜4本買ってきてと頼まれた。
 
「ああ、ホテルで休む時はズボンもいいよね」
「Wは26インチあるいは56センチでいいですから」
「了解」
 
それで鱒渕は、女子中学生らしい、可愛いパンツを4本買って帰った。
 

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2015年1月15日(木)。
 
日本バスケット協会は昨年10月末と指定された期限までに、改革の案さえも提出できず、FIBA(国際バスケット連盟)から11月26日付けで資格停止処分をくらったのだが、その改革のためFIBAは12月16日、事務総長のパトリック・バウマンを直々に日本に派遣。バウマンはバスケット協会の幹部や文部科学省の幹部など多数の関係者と対談、再建のための作業部会(タスクフォース)を作る方針を固める。
 
そのトップとなるべき、バスケット界とのしがらみは無く、かつプロスポーツに深い理解があり、そしてカリスマ性のある人物として、この時期までに既にある人物が推されていたのだが、その手足となり、実務的な作業を進めるNo.2として、文部科学省は弁護士の境田正樹(51)を推薦。この1月15日、彼の就任が決まった。彼は2011年のスポーツ基本法の制定作業にも関わっていた。
 
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日本バスケット界がこのあと土壇場で再生するのは彼のバイタリティあふれる交渉能力のお陰である。
 
現時点では、日本は資格停止になっているため、国際大会に出場することができず、また海外遠征・海外合宿や外国のチームを迎えての友好試合などもすることができない。
 
しかし来年のリオデジャネイロ五輪に出場するための女子アジア選手権は8月29日に迫っていた。それまでに日本の資格停止が解除されない場合、自動的に日本はリオデジャネイロ五輪に出場できないことになる。
 
また7月4日にはユニバーシアード、7月18日にはU19女子世界選手権(ロシア)も行われ、日本はどちらの大会にも出場権を持っていたが、資格停止が解除されないと、これらの大会にも出ることができない。
 
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FIBAから求められていることはこれらのことである。
 
(1)分裂状態にある男子トップリーグの再統合。
(2)日本バスケット協会あるいはそれに代わる組織のガバナンスの確立。
(3)先進国とは思えないほど弱すぎる日本男子代表の強化。
(4)インターハイとユースの国際大会の日程がぶつかり有力選手が国際大会に出場しない問題の解決。
 
特に(1),(2)は4月末までに解決できないと(オリンピック予選となる)アジア選手権への出場は認められない情勢であった。
 
タイムリミットは極めて短かった。
 

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千里は就職のための保証書に署名捺印をもらうためお正月に北海道まで往復した後、1月6日に新幹線+はくたかの乗り継ぎで高岡まで行き、夕方、桃香の実家に入った。実はこの日はアクアの制作会議が入っていたのだが、疲れていたので、そちらは《きーちゃん》に代わってもらい、新幹線とはくたかの中でぐっすり眠っていた。
 
千里は18日まで高岡に滞在したのだが、10-11日(土日)には青葉・桃香と一緒に“ドッペルゲンガー少女”左倉ハルと“飼い猫?”のアキを連れて秋田まで、ボールペンの修理に往復して来ている。ハルとアキは青葉のクライアントで、一家に掛かっていた呪いを青葉が解いたのだが、一方でハルはここ数ヶ月、千里がしばしばバスケットの指導をしていたので、お互い思わぬ関わりがあったことに驚いた。
 
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なお千里はスペイン時間で10日夕方(18:00-20:00頃)試合が入っていた。これは日本時間では1/11 2:00-4:00に相当し、この時間帯は秋田市から富山に戻る途中で、青葉も寝ていたので、代理で《わっちゃん》が運転していることには気付かれずに済んだ。
 
試合は17日の夕方にもあったが、これも日本時間では深夜なので問題無かった。
 

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千里は18日に桃香と一緒にミラを運転して東京に戻った。到着したのは19日の朝だが、実際には夜間運転していたのは《こうちゃん》で、千里本人は車内でぐっすり眠っていった。
 
千葉市内のアパートまで戻ると、桃香は寝たりないようで、まだ寝ている様子なので、千里は桃香を放置してインプレッサで出かける。土浦市(東京と水戸の中点付近にある)まで行き、ユニバーシアード代表の件で篠原監督と会って、別途呼んでいたらしい前田彰恵と少し手合わせした。(彰恵が通っているTS大は土浦市のすぐ近くのつくば市にある)
 
「千里、強すぎる。全くかなわない!」
と彰恵は音を上げた。
 
「ね、ね、引退していたって嘘でしょ?」
 
「じゃ彰恵には見せてあげるよ。これ玲央美くらいしか知らないんだけどね」
と言って、スペインのレオパルダの選手証を見せる。
 
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「うっそー!?いつの間に?」
 
「私、日本バスケ協会から強化選手として派遣されて、ここに来たんだけど、バスケ協会がドタバタしていて、スタッフもすっかり入れ替わって、私をスペインに派遣したことを忘れてしまったみたいで」
 
「それ滞在費とか困るでしょ?」
「チームからのお給料で充分暮らせているから全く問題無い」
「すごーい」
 

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篠原監督たちと別れてから、土浦市内のファミレスでお昼を食べていたら、向こうからある人物が近づいてくる。
 
千里は伝票を取って、さっと席を立った。しかし会計に行くまでに捕まる。
 
「こら逃げるな」
「雨宮先生、麗しゅうございます」
 
「白々しい。あんた、ちょっと男の娘妊娠計画について聞きなさい」
「先生、以前にも男の娘を妊娠させて子供を作ったのでは?」
「今幼稚園だよ(*1)。でも今度は別の男の娘を妊娠させたいのよ」
「たいへんですね〜」
 
結局、千里は自分の車は土浦市内の、雨宮先生の知り合いがやっている音楽教室の駐車場に駐めさせてもらったまま、雨宮先生の612スカリエッティを運転して東京に戻ることになる。実は先生はうっかり(?)お酒を飲んでしまったので、誰か運転できる人を探していたらしい。
 
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そして結局銀座の高そうなスナックで雨宮先生の“男の娘妊娠計画第2段”について話を聞くはめになった。17時頃、雨宮先生が眠ってしまったので、先生のカードを勝手に使って代金(6万円も使っていた)を払った上で、先生本人は《くうちゃん》に頼んで、三宅先生(雨宮先生の夫)の自宅玄関に転送した。
 

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(*1)この子は後の俳優・桜幸司(2009年8月生 **)で、母は桜クララである。桜クララは本名桜田安芸那。この2015年の時点ではまだ新田安芸那の芸名を名乗っていた。2009年に桜幸司を“出産”した直後、★★レコードから『男と女のあいだには』をリリースしたが、ほとんど売れなかった。昨年(2014年)ローズクォーツの『Rose Quarts Plays Sex Change』の企画に参加。でもお仕事は増えなかった。
 
2016年の“悪魔の歌”事件の後、旧知の玉梨乙子(たまなし・おとこ。本名=月見里折江:やまなし・おりえ)に呼ばれて金沢に移動し、サクラ・アキナと改名して、スートラのチーママ兼スートラバンドのボーカルに就任する。それで桜幸司は東京の小学校に入学したものの、すぐに金沢の小学校に転校した。結果的に雨宮が金沢を訪れる頻度が増えることになる。
 
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(**)本当に生まれたのは6月だが“従兄”の藤島行将と誕生日をずらすため、わざと2ヶ月遅れで出生届けを出した。
 

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さて、雨宮先生を“送り届けた”後、千里が帰ろうかと思ったら★★レコードの加藤課長からメールが入っていることに気付く。それで銀座線で表参道まで移動し、★★レコードに寄る。するとアクアの件で話したいと言われ、会議室でコーヒーとケーキを頂きながら1時間ほど話した。その後、「ついでの時でいいので、この書類をケイさんに」と頼まれる。まだ完全に酔いが覚めていなかったので、酔い覚ましを兼ねて、恵比寿の冬子のマンションまで歩いて行く。
 
ところがエントランスまで来て冬子に電話して入れてもらおうとした時、青葉から電話が掛かってきた。
 
「ちー姉、今どこ?」
「プカプカ島だけど」
「それどこ〜?」
 
「まあ実際は恵比寿の冬子のマンション前に居る」
 
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「できすぎだよ!実は冬子さんに誰かが呪いを掛けたんだよ。冬子さん、今夜夜通し車を運転して神戸まで行く予定だったんだけど、それだと冬子さんは車の事故で死ぬようになっているんだ」
 
「ああ、それはいけないね」
と千里は他人事のように言った。
 
「だけど神戸にはどうしても朝までに行かないといけないらしくて。だから、ちー姉、代わりに運転してくれない?」
と青葉。
 
「それなら、呪いを掛けた人物は相当のプロだね。私は5時頃まで雨宮先生と飲んでて、まだ酔いが覚めてない」
 
「うっそー!?」
 
「取り敢えず冬子の部屋に移動する」
 
それで冬子に電話して中に入れてもらった。
 

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それで電話の向こうの青葉も含めて、千里・冬子と3人で話し合っていたのだが、政子が
 
「だったら私が運転するよ」
と言い出した。
 
それで不安はあったのだが、最初は政子が運転して出発し、千里の酔いが覚めた時点で千里に運転交替することにした。
 
この付近の詳細↓
http://femine.net/j.pl/memories9/37/_hr009
 
ところが政子は免許をとってまだ1ヶ月なので首都高で思う方向に分岐できず、東京ICではなく練馬ICに辿り着いてしまう。それで圏央道経由で東名に行こうと言っていたのだが、今度は海老名JCTまで行く前に八王子JCTで分岐してしまい、車は中央道を行くことになってしまった。
 
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雪が降り出し、積雪する。速度は落とさせたのだが、車が何度か横滑りし、その度に政子は悲鳴をあげている。千里は運転交替したほうがいいなと判断。次のPAに入ってと言ったのだが、政子は進入しそこねる。
 
「じゃ次のSAで運転交替」
「うん」
 
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娘たちのフィータス(3)

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