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■娘たちのフィータス(7)

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2月5日(木).
 
龍虎はこの日の昼休みに冬子(ローズ+リリーのケイ)にメールし、個人的に相談したいことがあると言って1度会えないかと尋ねた。するとケイは訊いた。
 
「私はあまりテレビとか出ないし、アルバムも1月21日にローズ+リリー『雪月花』の外国語版を出して、昨日KARIONの『四・十二・二十四』も出して明後日からはツアーが始まるけど、今日なら時間が取れるよ。龍ちゃんは?」
 
「今週は月曜から木曜まで毎日学校が終わったらそのまま帰宅できたんですよ」
「それはよかったね。だったら、今日夕方会おうよ。私が熊谷まで行こうか?」
「あまり知り合いに見られたくないから、こちらとそちらの中間の大宮とかはどうでしょうか?」
「いいよー」
 
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それで龍虎が新幹線で出てくるので、その時刻に合わせて大宮駅前で16:45に待ち合わせることにしたのである。
 
ケイは最近買ったらしいリーフに乗ってきてくれていたので、その車に同乗して車内でお話しした。
 
龍虎の要件は自分は偶然にも思春期の発達が遅れ、まだ声変わりが来ていないけど、あと4年くらい、高校を卒業するくらいまで来て欲しくないので、男性機能を壊さない程度に、身体が女性化しない程度に、そして声変わりがこないようなホルモンコントロールをしたいということだった。それで“同様に声変わりしないようにホルモンコントロールしていた”冬子にそのやり方などを習いたいと言ったのである。
 
実はこの問題は冬子に相談しろと龍虎は《こうちゃん》から言われたのである。
 
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冬子は自分がやっていたホルモンコントロールとは趣旨が違うとは思ったものの、龍虎に「女の子になりたい訳ではない」「いづれは女性と結婚して子供も作りたい」という彼の意志を確認した上で、それなら紹介できる人がいると言って、青葉にセッションをしてもらうことにする。青葉と会わせるため、KARIONの3月15日金沢公演にアクアをゲスト出演させることを紅川さんに連絡を取って決めた。そのついでに青葉の所に連れて行こうという訳である。
 

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2月7日はクイズ番組の収録を終えた後、付き添ってくれた田所さんから「ちょっと来て」と言われて行ってみると貸し倉庫で、ボタンを押して入口を開けてみると10m×10mほどのスペースに大量の段ボール箱が積み上げられている。
 
「ここは・・・」
「幾つか箱を開けてごらんよ」
 
それで手近な箱を開けてみると、リボンの付いた包みがたくさん入っている。別の箱を開けてみると、それにもたくさん入っている。
 
「アクアちゃん宛てに送られてきたバレンタインのチョコ」
「あははは。お菓子屋さんが始められる」
 
「今だいたい1000箱くらいあるけど、2月14日までにはたぶんこの倍にはなると思う」
「1000箱・・・」
「大型トラック5台分。中身は3万個くらいかな」
「1日3個食べても1万日ですか」
「30年くらい掛かるね、それ」
「どうするんです?これ。今までのタレントさんへの贈り物とかどうしてました?」
 
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「うちもバレンタインをもらうのは初体験だけど、ホワイトデーとか各タレントさんのお誕生日には、結構なプレゼントが送られてきていたよ。基本的には全国各地の福祉施設に配っていた」
と田所さん。
 
「それに準じて処理をお願いします!」
とアクア。
 
「チョコだけじゃなくてお洋服とかマフラーとかお人形とかもあるよ」
「それも福祉施設行きですか?」
 
「高価なブランド物とかは福祉施設への贈り物としてなじまないから衣装としてキープ。実際初期の頃プレゼントしたら入居者間で取り合いの喧嘩になっちゃったことがあって、それ以降高価なものは贈らないことにした。普及品は福祉施設へ。デザインに難があるものは廃棄。手作りのは悪いけど廃棄。高価ではないブランド品とかでサイズが合う物は本人へ」
 
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「じゃそれもその方式で」
「だったらアクアちゃんのサイズに合うものは選別して届けるね」
「お手数お掛けします」
「ちなみに贈られてきているのはほぼ全部女の子用の服とか下着だけど」
「あははは。せっかくだからサイズが合うのは頂きます」
 
「それから多分女性ホルモン剤ではないかと思われるお薬も大量にあるんだけど」
「すみません。それは廃棄で」
「女性ホルモン剤も一部もらっておく?」
「要りません!」
 

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そのまま帰るなら東京駅まで送ると言われたのだが、買いたい本があったので、新宿で降ろしてもらった。それで紀伊國屋方面に行こうとしていたら、バッタリ、彩佳・桐絵・麻由美の3人と遭遇した。バレンタインのチョコを買いに来たというので、龍虎もそれに付き合うことにする。
 
「龍ちゃんはバレンタイン誰に贈るの?」
「うちのお父さんと、お父さんのお友だちで、ボクと良く遊んでくれていたおじさん」
 
龍虎は毎年、田代の父と上島雷太にバレンタインを贈っている。
 
「彼氏とか居ないんだっけ?」
「ボク、男の子には興味無いよぉ」
「まあ、龍は女の子にも興味無いけどね」
「あ、それは分かる」
「ボク、恋愛ってのがよく分からないんだよ」
「龍はまだ思春期が来てないしね」
 
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「龍自身は誰か女の子からバレンタインもらったことあった?」
「無い。ボクは多くの女子から“男の子”とは思われていないし」
「まあ確かに私たちも男の子とは思ってないよね」
「龍はまだ中性だからね」
 
4人で一緒にチョコを買った後は、マクドナルドに入って、しばしおしゃべりしてから一緒に高崎線の電車で熊谷まで帰った(FREXを持っていると、並行する在来線の列車にも乗ることができる)。龍虎が持っている定期を見て麻由美は言った。
 
「1万9千円ってやはり結構するね」
「麻由美ちゃん、桁を読み間違っている」
「え?」
と言って麻由美は再度桁を数えてみた。
 
「うっそー!?」
 
「まあ恐ろしい金額だよね」
と彩佳は言った。
 
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2月9日の夜、千里と桃香は花野子から呼ばれて冬子のマンションに行った。なぜ花野子が冬子のマンションに居たのかは分からないが、ひょっとしたらアクアに関する打合せだったのかも知れない。行ってみると居たのはこういうメンツだった。
 
冬子と政子
和実と淳
あきらと小夜子
横沢奈緒 冬子の小学校以来の親友
南国花野子 ゴールデンシックスのリーダー
矢嶋梨乃 ゴールデンシックスのサブリーダー
琴尾蓮菜(葵照子)千里の小学生以来の親友
前田鮎奈 千里や花野子の高校以来の親友
 
この中で、蓮菜と鮎奈は医学部卒業間近で、ちょうど医師の国家試験を終えたところ。奈緒は医学部の5年生で来年国家試験を受ける。
 
この日はそれもあってか、医学的な話題がわりと多かった。その内、みんな妊娠検査をしてみよう、などという話になり、全員トイレに行って検査薬におしっこを掛けてきた。妊娠するはずのない、元男性のメンツもやらされる。もっとも淳や冬子などはかなり“不純な動機”で検査薬を使用していたようだ。
 
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この日のメンツの中で、妊娠中の小夜子(出産予定日は6月)は当然陽性になるのだが、他はみんな陰性になる中で、千里だけは陽性になり、みんなを驚かせた。
 
「千里妊娠してるの?」
「まさか」
 
「千里、検査薬まだあるよ。もう一度やってみない?」
「いい、いい」
と千里は笑っていた。
 
むろん、京平を本当に妊娠しているのは千里だから、陽性になるのである。
 

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2015年2月11日(水).
 
この日、龍虎はコーラス部の最後の大会に参加した。どっちみち多忙で部活などとてもできないのだが、来月にはプロ歌手としてデビューするのでアマチュアの大会には参加資格を失う。それでこの日が最後のコーラス部員としての活動になったのである。
 
学校で参加する大会だから、当然龍虎は学生服で集合場所に出て行った。
 
ここで龍虎はまだ声変わりが来ていないのでソプラノである。普段の大会ではまわりがセーラー服を着ている中、ひとりだけ学生服を着てソプラノパートを歌っていた。ところがこの日、みんながうまく乗せて、龍虎にセーラー服を着て歌うように唆す。
 
「でもセーラー服の予備とか無いんじゃないの?」
と言っていた時“主犯”っぽい宏恵が
 
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「龍ちゃんのセーラー服、私が持って来ました」
と言って、バッグの中から取り出す。
 
「うっ・・・」
 
そのセーラー服は見覚えのあるハミングミントのハンガーに掛かっていた。つまり龍虎の部屋から持ち出してきたものである!
 
「それ誰のセーラー服?」
 
「龍ちゃんのですよ。龍ちゃん、自分のセーラー服を持っているんです」
 
「え〜〜〜!!?」
と部員たちから声があがる。
 
「そんなの持ってるなら、それを最初から着て来れば良かったのに」
「学校にも普段からセーラー服で出てくればいいのにね」
 
と言われて、結局龍虎はそのセーラー服を着てしまう。
 
「可愛い!」
「似合ってる!」
「ほんとに明日からそれで学校に出ておいでよ」
とみんなが言った。
 
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なお着換えた学生服は宏恵が「預かってあげるね」と言って自分のバッグに入れていた。
 

それで龍虎は最後の大会で、セーラー服を着てソプラノの列に並んで歌ったのである。大会が終わってから学生服に着替えようと思ったのだが「電車の時間があるから急いで」などと言われて、ドタバタと会場を出る。それで結局、龍虎はセーラー服のまま自宅まで戻ってきた。母は帰宅していたが、母は龍虎がセーラー服を着ているのを見ても何も言わない。いや、むしろこの日の事件は母も共犯だった可能性が高い。
 
自室に戻り、セーラー服を脱いで普段着に着替え、セーラー服はハンガーに掛けようとしたのだが、これを掛けていたハミングミントのハンガーが見当たらない。あれ?どこにやったっけ?と考えていた時、事務所の沢村さんから電話があった。
 
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今夜のスタジオμ(生放送)に、急病で倒れた歌手の代わりに1曲歌って欲しいということだった。時刻を見ると新幹線の時刻までギリギリである。アクアは
 
「すぐ行きます。時間がないので、普段着でもいいですか?」
と尋ねる。
「いいよ。衣装は用意しておくから」
 
本来は放送局やドラマの撮影現場には制服で出入りするよう言われている。しかしこの時はほんとうに着換えている時間が無かった。
 
それで今日はアクアは白いトレーナーと黒いコットンパンツ(母から借りた)という格好のまま(渋滞を避けるため)自転車で熊谷駅まで走り、新幹線に飛び乗った。東京駅で丸の内線に乗り継ぎ、赤坂見附で降りて##放送まで行く。
 
行くと宝塚の男役みたいな派手な衣装を着せられメイクもされた、それで番組では『恋人たちの海』を歌った。
 
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この日はアクアの出演は予定されていなかったものの、番組オープニングの出演者紹介でアクアが出ていたので、ネットにそのことが大量に書かれ、おかげでこの日のスタジオμは物凄い視聴率になった。
 

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