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■娘たちのフィータス(2)

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翌日、1月8日(木).
 
熊谷市内の中学では3学期の始業式が行われた。龍虎は“ごく普通に”学生服を着て学校に出かけて行った。それで教室に入って行くと、クラスメイトたちが龍虎の傍に寄ってくる。
 
「テレビ見たよ」
「すっごい可愛くなってた」
 
「あれ恥ずかしい」
と龍虎はマジで答える。
 
「でもどうして今日は学生服着てるの?」
「どうしてって、いつもボク学生服着てるじゃん」
 
「だって、古屋さんが、龍ちゃんの自宅から男物の服は全部撤去するから、3学期からはセーラー服を着て学校に通うって言ってたじゃん」
 
「嘘!?あれ放送されたの?」
「本番では放送されなかったけど、後から舞台裏とか映した増補版で放送されたよ」
「撮影されてたなんて知らなかった!」
 
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「だからてっきり今日から龍ちゃんは、セーラー服で出てくるものと思ってたのに」
 
「そもそもボク、セーラー服なんて持ってないし」
「ああ、セーラー服ができるまでは学生服着るの?」
 
などと言われて龍虎が困っていたら、近くには寄らずに自分の席に座ったままで居た彩佳がひとこと言った。
 
「男物の服を撤去するも何も、そもそも龍は男物の服なんて持ってないじゃん」
 
「ああ、そんな気がする!」
 

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1月9日(金).
 
短大卒業を目前にした鱒渕水帆は年内に§§プロの内定をもらっていたのだが、この日は保証書に親と伯母の印鑑をもらって、信濃町の事務所に出てきた。
 
「おはようございます」
と言って、事務所の中に入ると、何だか騒然としているので、今日は誰かのライブとかあるのかな?と思った。
 
「いらっしゃいませ、アポイントは頂いていましたでしょうか?」
と“沢村”という名前が入った社員証を首から提げた23-24歳くらいかな?という感じの女性が寄ってくる。何だか疲れたような顔をしている。ひょっとして徹夜作業していたのかな?と思った。
 
「済みません。私、先月内定を頂いた鱒渕と申しますが、保証書に署名捺印をもらってきたので提出に来ました」
 
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「ああ!あなた、うちに入るの?」
「はい」
 
「助かった!田所さんがダウンして今日の広島、誰に行ってもらおうと言っていた所なのよ。あなた、アクアちゃんに付き添いして広島まで行って来てくれない?」
 
「はい!」
「運転免許は持ってる?」
「ええ、一応」
「よかった、今回の出張では運転する場面は無いとは思うけど、免許持ってれば何かの時に安心」
と沢村は言っている。鱒渕は一応免許は取っているものの、あまり運転に自信が無いので焦った。レンタカーとか借りて少し練習しなきゃ!
 
「今仮払い渡すね」
と言って、沢村は金庫からお金の封筒を出して来た。札束が分厚いのでびっくりする。
 
「念のため100万入れておいたけど、さすがにこんなには使わないと思う。でも今日広島で、明日は仙台、次の日が千葉、12日が横浜と4日連続だから念のため。ホテルはローズ+リリー側で取ってくれているはず。タクシー代とか食事代とかも全部領収書もらってね」
 
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「分かりました!」
 
私着換えどうしよう?
 
「すぐ東京駅に移動して。アクアちゃんを熊谷駅13:01発の東京行きに乗せて、13:50の広島行き《のぞみ》に乗せないといけないから東京駅11:52のガーラ湯沢行き《たにがわ》に乗る必要があるのよ」
 
それあまり時間無いのでは!?
 
誰とかさんがダウンしてと言っていたから、本来行くはずだった人が行けない状況で時間もやばくなってきているのだろう。
 
「すぐ行きます!」
と言って、鱒渕は関係者の電話番号リストと仮払いに新幹線や航空券のセット、それにJCBのタクシーチケットを1冊受け取ると、事務所を飛び出して信濃町駅まで走った。今日はパンプスじゃなくてローファーにしといて良かったぁ!と思った。
 
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信濃町11:15-11:17四ツ谷11:20-11:29東京11:52-12:31熊谷
 
それで鱒渕は4月からこの事務所に勤めるはずだったのが、この日からアクア担当として超多忙な仕事に投入されることになってしまったのである。
 
「ところでアクアとか言ったっけ?どんな子だろう?」
と思い、鱒渕は東京駅から上越新幹線で熊谷に向かう途中、自分のスマホで検索してみた。
 
「可愛い!」
と思わず声をあげる。
 
「可愛い女の子だなあ。こんな子の付き添いを4日間やるのは楽しそう」
と鱒渕は自分に与えられた仕事にワクワクしていた。
 

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龍虎は1月8日は始業式だったので午前中だけで下校し、午後からは東京に出てバラエティ番組の撮影に臨んだ。台本とか無く、適当に答えてと言われたのだが、振られると、絶妙の答えをするので、この番組のMCであるベテランのお笑い芸人さんから、かなり気に入られたようであった。
 
「あんた雑学いっぱいあるね」
「おっぱいは小さいですけど」
「あんた、おっぱい大きくしたいの?」
「ギャラは大きくしたいです」
「それは事務所の社長と相談しぃ」
 

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1月9日(金)、ローズ+リリーやKARION, XANFUSなどで構成している“08年組”の主催による、東日本大震災復興イベントの詳細が発表されたが、その前座として、ゴールデンシックス・フィーチャリング・アクアが入っているのを見て、アクアのファン(になってしまった人たち)が翌日1月10日の発売開始と同時に電話・ネットに殺到。僅か1時間半で4万枚のチケットが売り切れてしまった。
 
買うのにプレイガイドに行列していた人たちの中には「売り切れました」という案内に「朝6時から並んでいたのに」などと騒ぎ出す人もあり、店舗側が客を落ち着かせるのに苦労するケースもあったらしい。
 
主催者では当初は売る予定の無かった追加席3万枚を来週17日に発売することにしたことを発表した。なお今回プレイガイドで騒動が起きたことから、17日の追加販売は、電話・ネットのみでの販売とした。
 
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元々は、早朝から会場に入る人が出ることが予想されたので、その人たちのために、メインスピーカーは停めたまま客席に分散している小型スピーカーからBGM的に、聞いても聞かなくてもいいような音楽を流しましょうとゴールデンシックスが申し出て演奏してくれることになっていた。そのついでにアクアを“営業”でゲスト出演させましょうか、という趣旨だったのだが、結果的に今年の震災復興支援イベントでは、アクア以外の出演アーティストのファンたちは、各々のファンクラブで発売した枠で確保した人以外はほとんどチケットが買えなかったのである。
 
それで翌2016年からはアクアのイベントは“分離”されることになる。
 

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龍虎は、1月9日(金)は午後から広島に移動してローズ+リリー公演の“鈴割り”をすることになっていたので、午前中の授業だけで早退させてもらうことにしていた。ちなみにこの日の4時間目は体育だった。
 
準備運動をしてから柔軟体操をするのだが、触った感触が女の子の龍虎とは小学5年生頃以降、男子は誰も組みたがらなくなっていた。それでいつも先生と組むか、あるいは女子の誰かと組んでいる。この日は彩佳と組んだので、龍虎も気兼ねなかった。
 
サッカーをしたのだが、男子対女子になり、龍虎は「人数が男子が多いから女子の方に入って」と言われる。これもいつものことなので気にしない。
 
それで授業が終わって、3組の教室に戻って(この中学では体育の時、男子は奇数組、女子は偶数組の教室で着換える)制服に着替えようと思ったら、自分の男子制服が見当たらない。
 
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「あれ〜。ここに置いたと思ってたのに」
 
「田代さん、どうしたの?」
と藤島君が訊く。
 
実は他の男子が“龍虎の着換えを見ないように”龍虎は、教室の後ろにあるサブ黒板のかげでいつも着換えることになっている。それがそちらに行かず、何か探しているようなので、藤島君が声を掛けたのである。
 
「制服が見当たらなくて」
「え?どうしたんだろう?」
 
その時、西山君が言った。
 
「さっきから気になっていたんだけど、そこの椅子に掛けてあるセーラー服って、田代さんのじゃないよね?」
 
「え!?」
 
西山君がセーラー服の内側のネームを確認している。
 
「あ、これ鉄田さんのセーラー服だ」
「鉄田さんのセーラー服は確か南川(彩佳)さんがもらってたよね」
「それで、田代さんが時々それを着ていた」
 
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あれは着てたというか着せられていたというか・・・。ちなみに鉄田さんは、小学6年生の12月に転校してしまったので、ここの中学のセーラー服を作っていたのが使えなくなり、それを彩佳が譲ってもらったのである。そしてこれまで何度もその彼女のセーラー服を、龍虎は着せられている。
 
「要するに、田代さん、そのセーラー服を着ればいいのでは?」
 
結局彩佳のしわざか!
 
「田代さんがセーラー服を着ていても、誰も変には思わないよ」
と伊東君。
 
それが困るんだけどなあ、と思う。でも龍虎はこのあとすぐに熊谷駅に移動しなければならなかった。彩佳を追及している時間が無い。彩佳は女子の着換え部屋に行っているから、そちらに入って行く訳にもいかないし(実際は龍虎が女子の着換え部屋に来ても誰も何とも思わない)、捕捉するのに時間が掛かる。いや、きっとすぐには捉まらないようにする気がする。
 
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そう考えた龍虎は言った。
 
「時間無いし、取り敢えずこれ着ようかな」
 
「いいと思うよ」
と多数の男子から声がある。
 
それでそのセーラー服と下着の替えを持っていつものサブ黒板のかげに行き、汗を掻いた下着を交換、セーラー服の上下を身に付けた。リボンが上手く結べなかったのだが、黒板のかげから出て行くと、西山君が
 
「田代さん、そのリボン変」
と言って、直してくれた。
 
西山君はなんで女子制服のリボンが結べるんだ!?
 
「ありがとう。じゃ、ボクもう行くね」
「お仕事頑張ってね」
 
それで龍虎は学生鞄は教室に放置(彩佳が持ち帰ってくれるはず)し、旅の用意をしていたバッグを持って生徒玄関まで行くと、靴を履き替えて職員玄関の所まで走り寄った。予め手配してもらっていたタクシーがいるので飛び乗り、熊谷駅に向かってもらった。
 
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鱒渕は“アクアは水色のタクシーに乗って駅に向かっている”という連絡を受け、熊谷駅前のロータリーで待っていると、やがて水色のタクシーが停まり、セーラー服の少女が降りてくるので駆け寄る。
 
「アクアさん?私§§ミュージックに今度入社した鱒渕と申します」
「アクアです。マスブチさん?よろしくお願いします」
 
それで2人は階段を登って駅構内に入ると、改札を通って新幹線ホームに行く。それで無事13:01の東京行きに乗ることができた。
 
座席に座るとアクアは言った。
「すみません。疲れているので、寝てていいですか?」
「うん、寝てて、寝てて」
 
それでアクアは東京駅に着く直前まで寝ていた。でも東京駅に着く3分くらい前に、鱒渕が起こさなくてもひとりで起きたので凄いと思う。東京駅には小野さんが来ていて、鱒渕に写真入り社員証と、さっき渡し忘れたと言ってローズ+リリーのバックステージ・パスを渡してくれた。それでアクアと2人で東海道新幹線に乗り込む。この新幹線の中でもアクアは広島に着く直前までひたすら寝ていた。
 
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鱒渕はアクアのプロフィールとかも全然知らないので、長時間何の会話をしていこうと?と悩んでいたので、アクアが寝ていてくれて正直助かった。しかしその寝顔を見ていて、こんな可愛い美少女アイドルなら、きっとお仕事も忙しいんだろうなぁと同情した。
 
熊谷13:01-13:40東京13:50-17:56広島
 

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