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■娘たちのムスビ(3)

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「この新しい方の画像が間違いで、最初に撮った方が本当かも知れないよ」
「えっと・・・」
 
「染色体検査も今回取ったサンプルでは確かにXYになっている。でもこれはねあなたの身体がモザイクである可能性がある」
 
「・・・・」
 
「つまりあなたの身体には染色体XXの部分とXYの部分が混在してるんだな」
「そんなことあるんですか?」
「あるよ。多くは本来男女の双子で生まれるはずだった子が何かの間違いで合体して1人で生まれて来た場合。そうするとXXとXYが混在するんだよ」
 
「でもきっと間違いですよ」
 
と答えながら和実は思っていた。
 
自分のことは取り敢えず棚に上げて \(・_\)千里こそ身体的にも霊的にもモザイクなのではなかろうかと思っていた。魂だけでいえばいわゆるtwo spiritsに近いのかも知れないが、ひょっとするとmulti spiritsかも知れない。
 
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この時期和実は物凄く霊感が発達していた。その和実の目には、千里の中に幾つかの魂(2つのようにも見えるし4つのような気もする)が並立しているかのように見えていたのである。和実は更に千里の“周囲”にも複数の魂を感じていた。周囲に見えるものは多分千里が使役している式神ではないかと思ったが、そのことも誰にも言っていない。また和実の目には千里がとんでもないパワーを持つ霊能者のように見えるのに、青葉も冬子もそうは感じていないようであるのを不思議に思っていた。
 

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松井医師は少し考えていた。
 
「7月に手術をするまでの間、うちで交通費・宿泊費を出すから、毎月ここに診察を受けに来てくれない?あなたの身体がある種のモザイクだったとしたら、再度卵巣・子宮が写るかも知れない」
 
「費用出してもらえるのなら、検査を受けに来るのはいいですよ」
 
「検査を受けていて気が変わったら即手術してあげるから」
「7月まで待ってください」
と和実は困ったよう顔をして言った。
 

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この日、和実は青葉の家に泊めてもらった。
 
「あら、和実ちゃんもこの夏に手術受けるんだ?」
と朋子が言った。
 
「タイで予約していたんですけどね。国内で受けられるなら、その方がいいかなと思って。向こうはキャンセルする予定です」
と和実は答える。
 
まあ本当は予約なんてしてなかったけどね。
 
「手術費用自体は国内の方が高いけど、渡航費用とかコーディネーターの費用とか考えると微妙だよね」
と青葉も言う。
 
「でも千里ちゃんは海外なのね?」
「松井先生がちー姉を見たら、今すぐ手術してあげるからと言いそうだけど」
「それ今日、私も言われた!」
「あの先生はどうも性転換手術が趣味みたいね」
「実際問題としてタダででも可愛い子はどんどん性転換したいみたい」
 
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「そういえば、彪志さん、受験じゃないの?どこ受けるんだっけ?」
と和実は訊いた。
 
「千葉のC大学」
「じゃ桃香・千里と同じ大学か!」
「学部も同じね。化学だけど」
 
「試験はいつ?」
「25日。だから明日岩手から東京に出てきて、1泊して試験に臨む」
 
その時、和実はハッとして言った。
 
「青葉、彪志さんと最後に会ったのはいつ?」
「・・・10月24日」
「4ヶ月も会ってないんだ!?でも青葉、毎月岩手に行ってたのでは?」
「会うと受験勉強の邪魔になるから、合格までは会わないことにしていたんだよ」
 
「女は割とそういうの我慢できるけど、男は我慢できないよ」
「そうかな?」
 
「ねぇ、お母さん、明日試験前に激励にだけ行ってくるというのはどうでしょう?」
「激励だけ?」
「彪志さんが東京駅に新幹線で到着したところを迎えて、頑張ってねと言って激励し、そのまま帰る。セックス無し」
 
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「そのくらいならいいかもね」
「一声掛けるだけのために往復の電車代使いますけど、青葉はお金持ちだから大丈夫だよね?」
「お金持ちってことはないけど、そのくらいは問題無い」
 
「だけど声掛けるだけなら電話でも同じなのでは?」
と青葉は言うが
「声だけなのと、リアルに青葉が目の前で『頑張ってね』と言うのではまるで違う。電話の先の相手は仮想的存在。目の前にいれば現実的存在」
 
「うーん・・・」
 
「じゃ私が向こうのお母さんに電話してみるよ」
 
それで朋子が電話する。彪志の母・文月は、ただそれだけのために富山から東京までの往復電車代を使うのはもったいないのでは?と心配したが、それで彪志さんが奮起してくれたら安いものですよと朋子は言い、それで文月も了承した。
 
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「だったらこれサプライズにしませんか?」
と文月は言う。
 
「今彪志はお風呂に入っているんですが、このこと私言いませんから。多分青葉ちゃんなら、彪志が知らなくても東京駅で彪志をキャッチできますよね?」
「この子なら大丈夫だと思います」
 
それで朋子と文月の話し合いでこの《電撃激励計画》は成立したのである。
 
「だから青葉は《会いには行けないから電話で激励するけど頑張ってね》みたいなメールしておくといいよ」
 
「そうする!」
 

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2月23日(木).
 
貴司は23-24日の2日間有休を取ると新幹線で東京に出た。東京駅から京浜東北線で浦和まで行く。出札の所に千里が立っていて笑顔で手を振った。こちらも笑顔になり手を振る。
 
「取り敢えずごはん食べよう」
「うん」
 
それで浦和パルコに入り、叙々苑で焼肉をたっぷり食べる。まだお昼前なので客は少なく、のんびりとした雰囲気の中で食べることができた。
 
「よく焼肉を食べている男女はこれからセックスするんだろう、とか言われるよね」
などと千里が言うのでドキッとする。
「焼肉屋さんに入るってのは、もうお互い遠慮の無い関係になっているからだと思うけど」
 
「でも私の友だちでお見合いして、いきなりうどん屋さんだったという子を知っているよ」
「あはは、それは2つの意味でやめといた方がいい」
「2つ?」
「1つは相手の女の子が気に入ったら、少しでも自分をよく見せようと思ってある程度いい所に連れて行こうとする。《いい所》というのは、その人の経済力にもよるけど、最低でもファミレスだと思うんだよね。うどん屋に連れて行ったというのは、そんなに気に入っているのではない可能性が高い」
 
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「なるほど。じゃ火曜日の**ちゃんとの食事の約束はキャンセルしてもらおうかな」
「ぶっ・・・」
 
「どこで御飯食べるつもりだったの?」
「あ、えーっと、ヴェトロ・ディ・ヴェネツィアというお店なんだけど」
「ヴェネチアン・グラスという意味か」
「よく分かるね!ガラスの容器でパスタが出てくるんだよ」
「じゃ今度大阪に行った時、私をそこに連れてって」
「分かった」
「それで?」
「キャンセルする」
と行って貴司は女の子とのデートをキャンセルするメールを入れているようである。
 
「でもなんで分かったの〜?」
「貴司顔に書いてあるもん」
「そうなの!?」
 
「あ、お見合いでうどん屋に連れて行った男はやめといた方がいいもうひとつの理由は?」
「もうひとつは、そういう男は、女性との付き合いの経験が無い男だという可能性」
「確かに」
 
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「お見合いだから、相手って多分26-27歳だよね?」
「30歳といってた」
「30歳ならなおさらだよ。そのくらいまで恋愛をしたことがない男というのは性格的に問題がある可能性がある」
「なるほど」
 
「そういう男との結婚生活は破綻しやすいんだよ。やはり肉体関係までは結ばなくてもいいから、中高生時代から恋愛って経験しておくべきものだよ」
「私たちはもう高校時代にセックスしてたね」
 
貴司が咳き込む。
 
「遠距離恋愛だったからというのもあると思うよ。僕たちの場合。近くに住んでいていつも逢える関係だったら、かえってセックスしてなかったかも」
 
「確かに離れて暮らしていると寂しいから逢った時に激情があふれるよね」
「そうそう。僕もひとりで4年暮らしてきて寂しいよ」
「だから浮気するのね?」
「勘弁してよ〜」
 
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「じゃその激情を熱いパトスに変えようか?」
と千里が言うので貴司はドキッとした。
 

お店を出る。代金は貴司が払った。千里が駐車券を見せるのでサービス券をくれる。
 
「ああ、車をここに駐めていたんだ」
「そうそう。駅前で無料で駐められるから便利だよ」
 
それで千里が駐車場に駐めていたインプレッサにふたりで乗り込む。千里が運転してお店を出る。貴司はドキドキしているようである。千里は微笑んで車をそこに着けた。
 
「熱いパトスってこういうことだったのか」
と言って貴司が当てが外れたような顔をしている。
 
「汗を流すと気持ちいいよ」
「そうだね」
 

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車を駐車場に駐めて中に入る。
 
「予約していた細川ですが」
「はいはい。2時間利用ですね」
 
それで中に入る。奥のドアを開けて更にその中に入る。キスをすると貴司がドキドキしている。更にあそこをいじってあげると貴司の心臓の鼓動が物凄いスピードになる。
 
「じゃ気持ちいいことしようよ、ハニー」
「うん」
 
ふたりとも服を脱いで・・・
 
トレーニングウェアを着た!
 
それでゴールを引き出す棒を持って用具庫を出ると、バスケットのゴールを引き出す。棒はいったん用具庫に戻し、まずは軽く体育館内を10周走る。ラジオ体操をしてまずはドリブル練習から始める。
 
「さすがこのくらいでは息が乱れないね」
「毎日練習しているから」
 
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その後シュート練習をする。千里がゴール下に居て、貴司が攻めて来る。貴司のランニングシュートを千里が巧みにブロックする。
 
「すげー。身長差20cmあるのに!」
「そりゃだてに日本代表やってないよ」
「千里、ジャンプ力こんなにあったっけ?」
「私はスリー専門だからあまりやらないけど、ダンクだってできるよ」
「マジ?」
 
それでやってみせると
「うっそー!?」
と貴司が言っていた。
 

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身長168cmの千里が手を伸ばした場合、168cm x 1.25 = 210cm だがバスケのゴールの高さは305cmである。今日使用している男子用の七号ボールは直径24.5cmある(女子用六号は23.2cm)。従って千里がダンクを決めるには最低でも305+25-210=120cmのジャンプが必要である。
 
中高生の一般的な女子の走り高跳びの成績は100cm前後だが、中学生女子でも陸上の選手なら130cmくらいザラに飛ぶし、高校記録は190cm、成人女子の日本記録は196cmである!だから千里がゴール下で120cmのジャンプをするのは別に不可能ではない。
 
もっとも190cmなどというのは背面跳びと思われる。この場合、身体の重心(正確には重心−身体の厚みの半分)が190cmの所を通過しているわけで、立ち跳びに換算すると(身長−身体の厚み)の半分を引いて110cm程度ということになる。
 
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そういう訳で今実際にダンクを決めたのは《こうちゃん》である!
 
なお本来の千里の跳躍力は80cm程度である。留実子は100cm、誠美になると110cmくらい飛ぶ(彼女が背面跳びをマスターして陸上の国内大会に出ればかなり良い成績を取る筈)。
 
留実子の場合身長180cmで腕を伸ばせば225cm.100cmジャンプして325cmで、ギリギリダンクができる。誠美は186cmで腕を伸ばすと233cm, 110cm飛んで343cmになり楽々ダンクを決める。
 

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