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■娘たちの継承(14)

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そのまま11-0まで行った所で日本はタイムを取った。
 
「浮き足立ってる。落ち着け。まだ序盤だぞ」
と監督が言う。
 
「済みません。ちょっと頭の中が混乱していました」
「背の高さにこれだけ差があって優秀なシューターも居る相手にはマンツーマンで守る以外の手が無い。相手の攻撃が始まったら速やかに自分のマークマンに付くこと。そしてパス筋を塞ぐこと、中へ簡単に進入されないようにすること。そのあたりの基本を忘れてはいけない」
 
「済みません」
 
「メンバー変えるぞ。広川と花園をいったん下げる。横山、三木、行け」
「はい」
 
先日の韓国戦で猛攻をくらった時に変えずに敗戦につながったので今日は監督は選手の意見は聞かないまま即、交代を命令した。
 
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それで交代して出て行くと、さすがに完全なワンサイドにはならない。スペインリーグで背の高い選手とたくさん戦っている横山温美、そして幾千もの修羅場をくぐってきている三木エレンは、簡単には身体能力の高い中国選手を通さない。そしてメンバーチェンジがあったことで、変えられなかった3人も落ち着きを取り戻す。
 

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しかし中国は攻撃の手を緩めない。
 
日本側に少しでも隙があると進入してくるし、シュートが失敗しても身長201cm(手を伸ばすと約250cm)の潘が全部リバウンドを取ってしまう。
 
結局このピリオドは35-8という大量得点差で中国がリードした。
 
第2ピリオド、日本は若手主体で出て行った。
 
亜津子/千里/玲央美/王子/恵子
 
千里・玲央美・王子はU21で世界と戦ってきている。アンダーエイジではあっても、アメリカやロシアは物凄く強かった。千里はこの試合で中国の大柄な選手と戦っていて、あれほどでは無いと思った。
 
確かに背丈では中国選手は大きいが、スピードや瞬発力、それに読み合いなどでは千里は充分相手に勝てる。玲央美も同様である。王子の場合は、中国選手をパワーで圧倒していた。
 
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それでこのピリオドは、17-23で日本のリードであった。
 

「恵子さん、向こうの選手から何か言われてた?」
 
「ああ、裏切り者って言われた」
と恵子はこともなげに言う。恵子は中国からの帰化選手である。
 
「酷い」
 
「私は気にしてないから平気平気。単に相手の心を撹乱させるだけの戦法だよ。別に悪気があって言っている訳では無いから、こちらも気にしない」
 
「恵子さん、おとな〜!」
 
「きみちゃんも何か言われてたね」
 
「性転換手術の傷はもう痛まないのか?と日本語で言われました」
「えーっと」
「ああ、もう平気平気。ちんちんが無いと凄く調子いいよと言っておきました」
 
「それ相手は本気にしたかも」
 

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第3ピリオドは恵子に代えて咲子を使う以外は同じオーダーで行く。こちらも必死で得点を取っていくのだが、向こうも充分強いので大きなリードを奪うことはできない。このピリオドでは21-29となった。
 
ここまでの合計は73-60で、得点差は13点ある。
 

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第4ピリオド、再びセンターには恵子を使う。また王子が4ファウルになっているので、このピリオドの前半は横山温美を使った。
 
中国は第2・第3ピリオドを休んでいた殷を投入する。
 
「どちらがやる?」
「じゃんけん」
「勝ったぁ!」
「くっそー」
ということで、殷の相手は亜津子がすることになった。
 
「あんたら、何やってる?」
と温美が呆れていた。
 
ところが亜津子は殷を止めきれない。うまく抜かれてしまうし、一瞬の隙からスリーを撃たれてしまう。
 
「ダメだ。相性が悪いみたい。千里代わって」
「OKOK」
 
それで殷の相手は千里がすることになる。千里は対戦していて、ああこの人は動きが亜津子に似ている、と思った。同じタイプなので読み合いになるが、向こうの方が経験が豊富なのだろう。
 
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しかしこのタイプは千里は大丈夫である。どんどん彼女からスティールするのでとうとう途中で殷は代えられてしまった。
 
途中からは温美に代えて王子を投入する。日本は必死に追撃する。そしてついに残り1分で93-90と、3点差まで詰め寄る。
 
「よし。あとスリー1本で追いつく」
「頑張るぞ」
と言っていた時、中国はシューティングガードの聞(ウィン)を投入してきた。聞は予選で当たった時には出ていたが、この試合では初めての登場である。
 
聞はしかし予選に出てきた時とはまるで別人だった。
 
186cmの長身ではあるものの、物凄く軽やかなステップで日本選手たちを抜いていく。体格がいいので、亜津子や千里は跳ね飛ばされてしまう。何とかなったのは玲央美と王子だけである。その王子が聞のシュートを止めようとしてファウルを取られてしまう。
 
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5ファウルで退場である。王子は久々の退場だが、やはり最大の敵とみなされ最初から仕掛けられていた感もあった。代わって温美を入れる。
 
結局ここから聞は3連続ゴールで9点(スリー2つと王子のファウルに伴う2点ゴール+ワンスロー)を入れ、日本を引き離してしまった。
 
最後ボールを持っていた亜津子がセンターライン付近から思いっきりゴール目掛けて投げたら、これが入ってしまった!
 
日本側応援席が沸くが、それでも中国には及ばない。
 

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「102 to 93, China won}
と主審が告げる。
 
こうして日本は準決勝で中国に敗れ、この大会でオリンピックの切符をつかむことはできなかったのである。
 
「聞さんともっとやりたーい」
と千里が挨拶の時に中国語で言うと、彼女は思わず微笑んで
「また今度ね」
と日本語で答えた。
 
なお、この試合でのスリーは亜津子が最後に決めた超ロング・スリーを入れて亜津子が8本、千里は6本で、ここまでの合計は亜津子39本・千里36本である。
 

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この日の試合が終わったのが19:00であった。千里は玲央美にだけ
「ちょっと席を外すね」
と言って、《すーちゃん》と入れ替わった。
 
「すーちゃん、お疲れさん」
と玲央美が言う。
「レオちゃん、お疲れ。残念だったね」
と《すーちゃん》は言った。
 

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19時すぎ、平田さんの通夜が始まる。26日に引き上げられた遺体は検屍の上、27日(土曜・仏滅)のお昼前に青葉に引き渡された。それでこの日の通夜となった。
 
ここに来ていたのは、青葉、朋子、佐竹慶子、桃香の4人である。今回彪志は模試と重なったので来られなかった。
 
しかし読経が始まって少しした時、
 
「遅くなってごめん」
と言って、喪服を着た千里が入って来た。
 
「ちー姉、来れたんだ!?」
「バスケの試合に出ていたんだよ。試合が終わってから飛んできた」
「わあ、お疲れ様!」
 
当然青葉や桃香はきっと東京付近で夕方近くまで試合をやっていて、その後こちらに急行したのだろうと思っただろうが、実際には大村でつい10分ほど前まで試合をやっていたのを本当に飛んできた(正確には瞬間転送)のであった!
 
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千里は実際にはここの葬儀場の駐車場に駐めていたインプレッサの中に転送してもらい、車内でバスケのユニフォームを脱ぎ、下着も交換した上で、汗の臭い消しにコロンをスプレーし、喪服を着て急いでメイクもして出てきた。ここまでやるのにはさすがの千里も10分ほど掛かったのである。
 

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この日も££寺の住職、川上法嶺の読経で通夜が進んだ。ひととおりの読経が終わった後、青葉、朋子、桃香、千里、慶子の順に焼香した。
 
通夜の後、頼んでいた仕出しを会館の和室で頂く。この日は御住職は遠慮したので、仕出しをお持ち帰り用のパックに詰めて渡した。
 
「ちー姉が行けるかどうか分からないけど、行けたら行くと言っていたから、ちゃんと6人分で手配していて良かった」
と青葉が言う。
 
「まあ少し遅刻したね」
と千里。
 
「でもこの平田さんというのは、青葉の伯父さんか何か?」
と桃香が訊いた。
 
「お母さんの彼氏なんです」
「不倫!?」
 
「厳密に言ったらそうなるかも知れないけど、平田さんが居なかったら、私も姉も母も、とっくに餓死するか、心中でもしていたと思う」
 
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「・・・・」
 
「父が全然家に戻ってこないでしょう? それで平田さんが心配して、色々と支援してくれていたみたいなのよね。だから、私や未雨姉ちゃんは、お母さんと一緒に平田さんちで、よく御飯を食べてたよ。平田さんは高校生の頃、お母さんのこと好きだったんだって」
 
「へー!」
「何かロマンティックだね」
 
「この平田さんには親戚とかは?」
「妹さんがいたらしいけど、若くして亡くなったらしい。両親も早く亡くなったから、天涯孤独だと言ってた」
 
「伯父さんとか伯母さんとかは?」
「ひょっとしたら居るかも知れないけど、その手の付き合いはしていなかったみたい。連絡を取る必要が出るかも知れないと思って、実は弁護士さんにも少し調べてもらったんだけど、戸籍の上でたどれる範囲には、生きている人は見つからなかった」
 
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「でもこの震災では、こういう全く親戚の居ない人で亡くなった人って、結構いるのでは?」
と桃香が言う。
 
「そういう人は遺体の引き取り手もないままになるのかね」
と朋子が言った。
 
「そもそも身元も不明のままになるかも知れないね」
と千里も言った。
 
「平田さんはどういうお仕事してたの?」
と桃香が訊く。
 
「農業やりながら左官をしていたんです。ですから生き残っていたら、今は大忙しでしたね」
と青葉は疲れたような表情で言った。
 
「左官の親方をしていた人も今回の震災で亡くなったのですが、兄弟弟子の人たちが明日の葬儀には来て下さるそうです」
と慶子が言った。
 

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翌8月28日の午前中に葬儀が行われた。
 
礼子の時は遺体の損傷が酷かったので先に火葬したのだが、平田さんは震災から半年近く経っていたのに、車内にあったせいか比較的傷みが少なく、通常通り、葬儀の後火葬ということにした。
 
葬儀には左官仲間だった人たち3人が来てくれた。
 
「平田の親戚の話は全然聞いてないんだよ」
とその人たちも言っていた。
 
「あまり個人的なこと話す奴じゃなかったから」
「礼子さんは奥さんかと思ってた」
「不倫だったのか」
 
「実際には夫婦関係は破綻していたみたいだし、大きな問題はないと思いますよ」
と青葉が言うと
「娘さんがそう言うのなら、いいんだろうな」
と彼らは言っていた。
 
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