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■娘たちの継承(10)

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彼女は「久保早紀(くぼ・さき)」と名乗った。
 
長崎で友人たちとバンドを組んでいるらしいが、他の子は特にメジャーからCDを出してなどということは考えていないものの、本人はかなりやる気で、バンド仲間に伴奏してもらって歌を吹き込み、CDをパソコンで作ったのだと言った。
 
「あ、良かったら1枚もらってくれません?できるだけ多くの人に配りたくて。今回1000枚プレスしてきたんですよ」
「それは頑張りましたね!頂きます」
 
と言って受け取る。しかし1000枚もプレスするといったら費用も相当掛かったはずだ。
 
「でも私はあまり日本の音楽は聞いてなくて」
と桃香は言う。
 
「ああ、洋楽派ですか?」
「そうなんですよ」
 
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「どういうアーティストがお好きなんですか?」
 
「最近だと、アデル(Adele)にシェネル(Che'Nelle)、ケルティック・ウーマン(Celtic Woman)、テイラー・スウィフト(Taylor Swift)にアヴリル・ラヴィーン(Avril Lavigne)、あとリリックス(Lillix)も好きだったんだけど」
 
「リリックスは『Tigerlily』が最後のアルバムになってしまうんでしょうかね?」
「それを危惧してるんですよ」
 
「だってあのバンドは最初 Tigerlily という名前だったんですもんね」
「そうなんですよ!」
「でも同名バンドがあったから Lillix という名前でメジャーデビューした」
「あなたも洋楽に詳しいみたいですね」
 
それで桃香のおごりで飲み物とフードも追加して、結局1時間くらい話していた。
 
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「いけない。話し込んでしまった。15:20に成田に行くなら、そろそろ出ないといけないのでは?」
 
「今何時です?」
「今13:22ですよ。あ、もしかして時計持ってません?」
「iPhoneに頼っていたので」
「ああ、そういう時は不便ですね」
 
それで彼女は桃香におごってもらった御礼を言って駅の方へ小走りに歩いて行った。
 

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KARIONのツアーでは結局らんこが7月29日の苗場、30日の福岡、31日の岡山に参加できないということだったので、代理のキーボード奏者として楠本京華さんという人をお願いした。
 
ミュージシャン志望という23歳の女性で、音楽系の大学を出ているらしく、ピアノ・エレクトーンはもちろんヴァイオリンとギターも弾きこなす。歌もひじょうに上手かったので、らんこパートの代理歌唱も一緒にお願いした。
 
彼女は実はKARIONの初期の頃からのファンだったらしく、らんこ=ケイというのも知っていたので、和泉たちも気楽であった。
 

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冬子(ケイ=らんこ)は、その日、栄の地下街で10時から演奏(これは地下街の商店街事務局と話して集客イベントとして実施したもの)した後、11時にナゴヤドーム前で演奏するも警察が来て撤収。名古屋駅に移動して、12:50くらいから演奏。ここでもまた警察が来て「道路使用許可を取ってますか?」と言われ「すみませーん」と言って演奏を中断する。
 
これが13:10くらいであった。
 
それで撤収して次の演奏をするイオン扶桑店に移動しようとしていた時のことであった。
 
「ちょっと責任者の方、来て頂けませんか?」
と40歳前後の女性に言われる。何か腕章を付けている。駅ビルの人だろうか?
 
一瞬顔を見合わせたが、冬子は
「私が行ってくるよ。みんなはもう移動しておいて」
 
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と言って、その女性に付いていった。冬子が自分でそう言ったのは冬子だけ楽器を持っていないからであった。タカとマキはギターとベースを持っているし、サトのドラムスは男性3人で分担して持つ。
 
「すみません。ご迷惑をお掛けして」
と冬子は言う。
 
「ローズ+リリーさんでしょ?事前に照会して頂けたら、許可出せたのに」
と女性は言う。
 
「あ、いえ。ローズクォーツというバンドなんですが」
「え?でもあなたケイさんですよね?」
「はい。でも今日はローズ+リリーではなくローズクォーツで来てたもので」
「あら?何か別のユニットもなさってたんですか?」
「ええ、まあ」
 
そんな話をしながら女性は冬子を駅ビルの中の一室に案内した。
 
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「こちらで少しお待ち下さい」
 
と言って、女性がドアを開けるので、冬子は中に入った。女性はドアを閉めて誰かを呼びに行ったようである。
 

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KARIONのマネージャー舞田祥子は、あと少しで本番だというのに、楠本京華が来ていないことに気付いた。
 
「まだ楽屋にいるんじゃないかな?」
「私、呼んで来るよ。祥子さんは、その美空の酷いメイクを直してあげてて」
と小風が言って、小走りで楽屋に行く。
 
「京華さんいます〜?」
と言ってドアを開ける。
 
「小風?」
「冬?」
 
小風が開けたドアの向こうに居たのは驚いたような顔をした冬子であった。
 
「なぜここにいる?」
「なぜここにいる?」
とふたりは同時に言った。
 
「でも冬子が居るなら好都合。来て来て」
と言って、小風は冬子の手を引いてステージ脇に連れて行った。
 

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「らんこ?」
と和泉が驚いたような声で言う。
 
「来れたの?」
と畠山社長。
 
「え?ここは?」
「苗場のHステージに決まってる」
 
「え〜〜!?私、名古屋駅に居たはずなのに」
「どうも寝ぼけているようだけど、らんこ何でも弾けるよね?」
「もちろん」
「歌えるよね?」
「歌う」
 
「よし。衣裳はもうそれでいいや、メイクだけして」
「分かった!」
 
ほんの5分ほどで
「KARIONさん、出てください」
という進行係の人の声がある。
 
それでKARIONの4人とトラベリングベルズおよび追加演奏者たちはステージに出て行った。
 

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桃香は30日(土)はお昼すぎから夜21半まで電話受付のバイトをした後、勤務先の電話センターを出た。千里も居ないし何か買って帰ろうと思い、コンビニに入る。すると、そこでバッタリと早紀と遭遇する。
 
「こんばんわ〜」
「こんばんわ〜」
と挨拶を交わす。
 
「ホテルこの近く?」
「ええ。そうなんですよ」
「昨日はお友だちと会えた?」
「それが来るの月曜日になったらしくて」
「ありゃ」
「私の携帯にメール送ったらしいんですけど、バッテリー切れで受信できず」
「ありゃりゃりゃ」
 
「成田まで往復して損した」
「まあ、そんな時もありますよ」
 
「19:40の便まで待っても会えないから、結局空港の売店で充電器買ってiPhoneを起動したんですよ。それで月曜になったことが分かって。何か疲れた」
「ほんとにお疲れさん」
 
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「今日はプロダクション3軒行きました。結構熱心には聞いてくれるんですけどねー。どうも私の思ってるイメージと向こうのイメージが違っていて」
「そのあたりはやはり安易な妥協してはダメだよ。ただの歌う機械にされちゃうことは多いから」
「そうなんですよねー」
 
「君の年齢ならアイドルになれって言われるでしょ。君のCD聞いたけどアイドルやるのにはもったいない」
「わあ、聞いてくれました?ありがとうございます!」
 
桃香はこの女子高生に純粋な意味(下心無し)で興味を感じた。
 
「そうだ。何ならファミレスとかにでも行って一緒に御飯食べない?」
「22時すぎたから高校生はもう飲食店には入れないんですよ」
「ああ、そんな決まりがあったか!」
「あ、でも良かったら食糧買っていって、私のホテルのお部屋で少しおしゃべりしません?」
 
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桃香に下心が無くても早紀には実は大いにあったのだが、桃香はそのことに気付いていない。桃香はいつも女の子をナンパしているのに、自分はあまりナンパされた経験が無い。それで気軽に応じてしまった。
 
「うん。いいよ。だったら食糧の代金は私が払うよ」
「わぁ!いいんですか?」
 

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それでピザとか牛丼とか、パンとかを買って彼女のホテルに行った。
 
「おお、庶民的なホテルで安心した」
「だって1ヶ月以上滞在するから、高いホテルには泊まれませんよ。いくつかオーディションにも出るし」
「洗濯物とかどうしてるの?」
「コインランドリーに持っていきますよ」
「偉い」
 
彼女の部屋に入り、ご飯を食べながらおしゃべりする。彼女の実際の生歌も聞かせてもらった。早紀はアコスティックギターを弾きながら自作の曲を歌ったが、CDで聞いた以上に上手く感じた。
 
「いや、早紀ちゃんは間違い無く歌手になれるよ。これだけの歌なら、きっと売り出してくれる事務所はあるよ」
と桃香は言った。
 
「それが上手すぎるのが問題だとか言われて」
「え〜〜〜!?」
「下手くそな方が売れやすい法則があるとかで」
「それは間違っているなあ。早紀ちゃん、いっそアメリカとかで売るのは?」
「外国でやるのはひとつの選択肢とも思ってますけど、海外に行くなら高校卒業してからにしなさいと母からは言われているんですよね〜」
 
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「確かにアメリカとかなら、むしろ18歳くらいになってからの方がいいかも」
と桃香も言った。
 
「それに女の子になる手術も18歳にならないとできないし」
と早紀。
 
「え?早紀ちゃん、まさか男の娘?」
「私、ヴァギナはありますよー」
「びっくりしたぁ!」
 

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「ところで桃香さんって、昨日聞いた時、女の子歌手とか、女の子バンドとかばかり名前を挙げましたよね?」
と早紀は言った。
 
「いや、実は私はレスビアンなんだよ。だから女の子に関心がある」
と桃香は正直に言った。
 
「ビアンなら、私にも興味がある?」
と早紀は意味ありげな視線で訊く。
 
「いや、さすがに高校生には手を出さない」
と言いつつ、この子“ビアン”という言葉を知っているのかと思う。一般の人は普通レスビアンをレズと略す。
 
「私も実はバイなんですよね〜」
「え!?」
 
「でもビアンのテクがあまりよく分からなくて。桃香さん、私に教えてくれません?」
「ちょっと待て」
 
「カフェで会って話しててすぐにビアンというのは分かりましたよ」
「え〜〜!?」
 
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そして早紀は桃香に歩み寄ると、いきなり濃厚なキスをした。
 
「私、バージンじゃないから大丈夫だよ」
「ま、まって。せめてお風呂入ってから」
「じゃ私が先にシャワー浴びていい?」
「うん」
 
それで早紀はシャワールームに入り、5分ほどで出てきた。バスタオルを身体に巻き付けただけの姿である。それで
「待ってるね」
と言ってベッドに潜り込んでしまった。
 
桃香はごくりと唾を飲み込むが
「据え膳食わぬは女の恥」
とばかり、急いでシャワーを浴びてくる。
 

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桃香が浴室を出ると灯りが落ちている。桃香は裸のままベッドに寄った。
 
「本当にいいの?」
「うん」
「えっと早紀ちゃん、ネコ?タチ?」
「リバだよ。桃香さんはタチっぽいから、私ネコになればいいかな?」
「入れちゃってもいい訳?」
「もちろん。さっきも言ったように私バージンじゃないから」
「分かった」
 
それで桃香は“いちばん小さいの”を装着してベッドに入った。キスして乳首も舐めたりする。早紀が気持ち良さそうにしている。それでいよいよあの付近に手を伸ばした。
 
へ!?
 
「これ何?」
「知ってる癖に」
 
「早紀ちゃん、君、やはり男の子なの〜〜〜!?」
 

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