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■娘たちの継承(4)

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「そういえば、通夜の時に、青葉と私と唐本冬子、佐竹真穂、に何かなさいましたよね。あれは結局何だったんですか?」
 
「君の場合は、女性器は装備されていたけど、生理が始まっていないみたいだったから、その周期をスタートさせた。だから君の身体の時間で半月後くらいに初潮があると思う」
 
千里はチラッと《いんちゃん》を見る。
「その最初の生理が大学1年の時の5月14日だよ」
と《いんちゃん》は言った。
 
「私その頃、何してたかな?」
「雨宮先生を迎えにドイツに0泊往復する直前だよ」
「ああ、確かにあの時まだ生理中だった気がする。でもあれが初潮だったのか!」
 
「君は面白いね。歴史通りに生きてない」
「すみませーん。色々経緯があって」
 
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「青葉とあの歌手さんも同じだよ。生理周期のリスタートを掛けた」
「へー」
「青葉はこれまでも何度か生理があったようだが、不安定っぽかったし」
「どういう原理で生理が起きるんですか?」
「君と歌手さんは、普通に女性器に指令を出した。青葉の場合はまだ女性器が無いから、1年後に性転換手術が終わった後、リスタート命令が発動するように仕掛けをしておいた」
 
「なるほどー」
 
「あの霊能者の卵の子は、修行とかをしたことがないみたいで、あまりにも無防備だったから、僕の眷属を1人預けた」
 
「それって凄いことのような気がします」
 

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瞬嶽は千里に「瞬里」の名前をあげたいと言った。
 
「分かりました。謹んで頂きます。でも私、お経とか知りませんけど」
「全然問題無い」
「般若心経くらいは唱えられるけど、私の般若心経は笑われるんです」
「なんで?」
「聞いてみられます?」
「うん」
 
それで“コピー作業”が終わった後で、千里は服を着てから般若心経を唱えた。
 
「観自在菩薩、行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄。
舎利子、色不異空、空不異色、色即是空、空即是色、受想行識、亦復如是。舎利子、是諸法空相、不生不滅、不垢不浄、不増不減。
是故空中、無色無受想行識、無眼耳鼻舌身意、無色声香味触法、無眼界乃至、無意識界。無無明亦無無明尽、乃至無老死、亦無老死尽。無苦集滅道。無智亦無得、以無所得故。菩提薩垂、依般若波羅蜜多故、心無圭礙、無圭礙故、無有恐怖、遠離一切顛倒夢想、究竟涅槃。三世諸仏、依般若波羅蜜多故、得阿耨多羅三藐三菩提。
故知般若波羅蜜多、是大神呪、是大明呪、是無上呪、是無等等呪、能除一切苦、真実不虚。故説般若波羅蜜多呪、即説呪曰。
羯諦羯諦、波羅羯諦、波羅僧羯諦。
菩提娑婆訶。般若心経」
 
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瞬嶽は笑ったりせずに、むしろ感心したように聞いていた。
 
「僕の寿命が今の般若心経で1ヶ月くらい延びたかも知れない」
「そうですか!?何なら高野山に着くまでずっと唱えてましょうか?」
 
「それもいいけど、僕の口述の録音のほうを頼む」
「はい!」
 
それでその後、高野山★★院に向かう2時間ほどの間、千里は(正確には《げんちゃん》が)瞬嶽の口述の録音作業をした。意味の取りにくい所は彼が適宜質問して確認するので、瞬嶽は感心していた。
 
「師匠、このmp3レコーダーと電池、お渡ししますので、山の上でも録音なさいませんか?」
「そう?じゃ借りていこうかな」
「後で回収に行きますよ」
「ああ、君なら僕の庵まで来られそうだね」
 
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それで《げんちゃん》は★★院に着く直前に録音したデータをパソコンにコピーして空っぽにした上で、mp3レコーダを瞬嶽に渡して使い方を教え、乾電池もたくさん渡した。
 
「何かトラブルがあったり、電池が足りなくなった時は呼んで下さい。“誰か”行かせますし」
「君、いい子たちを連れているみたいだね」
 
それでこの後、亡くなるまでmp3レコーダに色々吹き込むのが瞬嶽の日課に加わった。その膨大な内容は文書化するのに10年以上の月日を費やすことになる。
 

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チリのプエルトモントでは、U19世界選手権の決勝トーナメントが行われていた。
 
7月22日に行われた準々決勝で日本はオーストラリアと対戦し92-83で敗れてしまった。23日には5-8位決定戦でカナダと対戦。健闘したのだが、77-71で落としてしまう。それで24日は7-8位決定戦に回るが、ここで対戦することになったのがまさかのロシアである。
 
しかしこの試合を日本は接戦の末71-66で勝利。
 
それで結局7位で終了した。
 
王子はこの大会でも得点女王に輝き、U21とのダブル受賞となった。しかし本人は得点女王にはなったものの、チームの成績が良くなかった(日本では健闘と報道された)のが不満だったようである。
 

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U19一行は下記の日程で帰国した。
 
7.25 PMC 16:30-18:05 SCL (H20020 A319 1h35m)
SCL 21:30- 7/26 0:10 LIM (LA600 787 3h40m) (機内待機)
LIM 1:40-7:55 LAX (LA600 787 8h15m)
LAX 11:50- 7/27 15:15 NRT (JL7015/AA169 777 11h25m)
 
そして、このメンツの中で高校生の6人はすぐにインターハイが行われる秋田に向かう。
 
成田空港 7/27 17:16-18:18 東京 (成田エクスプレス40号)
東京 19:00-23:54 秋田 (こまち141号)
 
プエルトモントの時刻帯はUTC-4なので、7.25 16:30は日本時間では7.26 5:30になる。それで彼女たちにとっては約42時間半の旅であった。
 
6人というのは、高梁王子(岡山E女子高)、水原由姫(岐阜F女子高)、小松日奈(愛媛Q女子高)、松崎由実(旭川N高校)、原口紫(同左)、久保田希望(札幌P高校)である。
 
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インターハイは王子たちが到着した9時間半後の7/28 9:30から試合が始まる。但し6人の中で28日に試合があったのは、愛媛Q女子高の小松のみで、他の5人はシードされていて不戦勝だったので、5人とも28日は練習免除にして軽い調整に留めたようである。また小松も実際は28日はベンチに座っていただけで試合には出なかった。
 
そういう訳で彼女たちは29日の2回戦から登場した。
 
29日の結果(2回戦)
 
香川E×−○旭川N 静岡L×−○大阪S 三重Y×−○宮城K 大阪E×−○愛媛Q
秋田Y×−○福岡C 沖縄W×−○千葉X 市川A×−○石川B 中津N×−○岐阜F
岩手B×−○東京U 茨城S×−○岡山E 山口K×−○山形Y 相模F×−○金沢T
静岡F×−○札幌P 埼玉M×−○福岡W 東京T×−○愛知J 和歌L×−○山梨F
 
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強豪の中でも静岡L学園、東京T高校、大阪E女学院、茨城S学園が組合せに泣くことになる。U21監督の篠原さんが監督を務める茨城S学園も、高梁王子を擁する岡山E女子高にダブルスコアで敗北する。試合後ロビーで篠原さんと遭遇した王子は「圧勝して済みませーん」と言ったが、篠原さんは「優勝してね」と声を掛けた。
 
30日の結果(3回戦)
 
大阪S×−○旭川N 宮城K×−○愛媛Q 東京U×−○岡山E 金沢T×−○山形Y
千葉X×−○福岡C 石川B×−○岐阜F 福岡W×−○札幌P 山梨F×−○愛知J
 
近年実力上昇中の福岡W大付属も札幌P高校の厚い選手層の前に沈んだ。山梨F学苑の吉田愛美はリバウンドも得点も取りまくり、センター対決としては愛知J学園の山本みどりに圧勝したものの、J学園の集団戦に敗れてここで消えた。得点としては2点差であった。岡山E女子高は今日もインターハイ常連の東京U学院にダブルスコアで勝った。
 
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取り敢えずここまではU19世界選手権に行って来た6人の所属高校は全部残っている。そしてここからいよいよ強豪同士の本格的な潰し合いが始まる。
 

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千里は瞬嶽を25日お昼頃に高野山★★院で降ろした後、千葉に向けてゆっくりと途中休憩しながら帰って行っていたのだが、25日の夕方、湾岸長島PAで休憩している時に、A代表監督の城島さんから電話があった。
 
「村山君、今どこに居る?」
「今、ギリギリ三重県です。長島パーキングエリアにいます」
「それ、どちらに向かっているんだっけ?」
「東京方面です」
「だったら、明日の午前中、東京に来れる?」
「はい、参りますが」
 
「明日、大村でのアジア選手権に出るA代表12名を発表するから、その記者会見に出て欲しいんだよ。だから一言メッセージも考えておいて」
 
「私がA代表に入るんですか?」
「えっと、その件は、君と佐藤(玲央美)君と高梁(王子)君は確定と最初から伝えてあったと思うが」
 
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「皆さん凄いから、今回は落選かと思ってました!」
 
「君を落とす訳ないじゃん。記者会見はAホテルだけど、その前にユニフォームとかも渡すから、午前9時までにナショナル・トレーニング・センターに来れる?」
 
「はい、参ります」
 

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それで千里はその後、トイレ休憩を除いてノンストップで東京まで走り、夜11時頃、葛西のマンションに入る。そして、取り敢えず寝た!
 
7月26日朝5時頃目を覚ます。身体がここ数日の、高校時代の身体(正確には性転換手術を受けた3ヶ月後くらいでローキューツに入る前の身体)から、しっかり鍛え上げられた“今の身体”に戻っているのを確認する。軽く4kmほどジョギングしてきてからシャワーを浴び、美容液パックして少し顔を引き締める。それで朝御飯を食べてから代表の練習用ジャージとジャケットを着て、合宿用の着換えなどを用意し、バッグに詰めてインプレッサに放り込む。そして8時頃、東京北区の味の素ナショナル・トレーニング・センターに顔パスで!入り、選手用の駐車場に車を駐めた。
 
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中に入っていくと、ロビーに玲央美や誠美がいる。
 
「早いね」
と千里が声を掛けるが
「私たちはU24で合宿中」
「あ、そうか!」
 
U24(non Univ)チームは7月23日から28日までここで合宿をしている。その後、29日に台湾に渡って、ウィリアム・ジョーンズ・カップに出場する。
 

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9時、予め連絡していたA代表に選ばれた選手は会議室に入って下さいという連絡がある。U24の練習も9時からなので、そのメンバーとおしゃべりしていた千里は玲央美と一緒に会議室に入った。
 
そこに集まってきたメンツを見て「へー!」と思った。
 
すぐに城島(きじま)ヘッドコーチ、飯田アシスタントコーチ、山倉アシスタントコーチ、そして松本チーム代表が入って来た。
 
「それではここに集まってもらった11名と、あと1人まだ海外に居る1名がA代表なのですが、あらためて名前を呼びます」
 
と言って松本代表が12名の名前を読み上げた。
 
PG 羽良口英子(WNBA-Phoenix) 武藤博美(エレクトロウィッカ)
SG 三木エレン(サンドベージュ) 花園亜津子(エレクトロウィッカ) 村山千里(ローキューツ)
SF 広川妙子(レッドインパルス) 佐藤玲央美(ジョイフルゴールド)
PF 横山温美(CDバレンシア) 月野英美(フラミンゴーズ) 高梁王子(岡山E女子高)
C 馬田恵子(エレクトロウィッカ) 黒江咲子(レッドインパルス)
 
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千里は2月に「羽良口・横山・馬田・花園・佐藤・村山・高梁の7名は確定で、残り5人は調子を見て決める」と言われていた。しかし三木エレンの落選は考えにくいので最終的に自分は落とされるのではと思っていた。まさかシューターを3人入れるとは思ってもいなかった。
 
「高梁君はチリでのU19選手権が終わって移動中です。現在チリの首都サンティアゴで、ロサンゼルス行きの飛行機を待っている所だと思います」
 
「あれ飛行機を4つ乗り継ぐんでしょ?」
「地球の裏側から戻って来るから大変だよね」
 
「でもシューター3人なんですね」
と途中で追加招集され、そのままロースターに入ってしまった月野英美が言う。
 
「はい。今回のアジア選手権は優勝しなければオリンピック切符がつかめません。そのためには背の高い中国人選手に対抗するのにシューターは大事ということで現時点で考え得る最高の3人を選びました」
と松本代表は言う。
 
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アジア選手権で、日本は1970年に優勝して以来、ずっと優勝からは遠ざかっており、韓国と中国が優勝を分け合っている状態である。日本は2位になったのも2003年度(開催は2004年1月にずれ込んだ)が最後である。1970年に優勝した時、藍川真璃子が代表チームに入っていた。
 

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新しい代表ユニフォームが配られる。背番号はこのようになっている。
 
4.三木エレン 5.羽良口英子 6.横山温美 7.馬田恵子 8.広川妙子 9.黒江咲子 10.武藤博美 11.月野英美 12.花園亜津子 13.佐藤玲央美 14.村山千里 15.高梁王子
 
「まあ、年齢順に近いかな」
などと武藤さんが言う。
「若干年齢順と違う所がある」
と広川さん。
 
「多分早く引退する順」
と三木さんが言うが、みんなさすがに反応できない。
 
「これはきっと番号の大きい人が潜在能力が大きい」
と羽良口さんが言うので少し笑い声が起きた。
 
「確かに確かに。私なんか既に能力を全部使い切って、潜在能力がマイナスだもん」
と三木さんは言っている。
 
番号順で、三木さんがキャプテン、羽良口さんが副キャプテンとなる。しかし実質的なチームの中心はたぶん広川さんと武藤さんだろうな、と千里は思った。
 
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マイクロバスで都内のホテルに移動し、10時から記者会見をした。全員ひとことずつ選手権に向けての抱負を語ったが、王子のメッセージは電話で城島さんが聞いた内容を“最も年齢の近い人”として千里が指名されたので、千里が代読した。
 
 
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娘たちの継承(4)

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