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■娘たちの継承(11)

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楠本京華はKARIONのステージが終わった後で、冬子さんが来ていたので、自分は出なくていいのだろうと判断して観客席の方からパフォーマンスを見ていたと和泉たちに説明した。
 
しかし京華は冬子と個人的に話し、今日の扶桑以降と明日・明後日は、冬子のそっくりさんにローズクォーツの方の代理をさせるから冬子さんはKARIONの方に出るといいですよと言った。名古屋に居たのは京華の叔母だという。
 
「うーん。それで何とかなるのなら、そうさせてもらおうかな。正直かなり体力的に辛いと思っていたんですよ」
と冬子は言った。
 
「冬子さん、偉い先生たちとのコネがあるみたいだから、大丈夫と思いますけど、どうにもならない時は私に相談して下さい。辛い時は何とかしますから」
と京華。
 
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「あなたは何者ですか?」
「青葉さんのお師匠さんの親友の弟子かな」
「へー!」
 
それで冬子は30日は福岡公演に行き、31日は岡山公演に出た後で、広島に移動し、そこでクォーツのメンバーと合流した。マキたちと話していると、どうも確かに自分はクォーツの3人と一緒に京都・大阪・高松・大分・福岡と駆け巡ったことになっているようである。正直、かなり体力的に辛いと思っていたので助かったと思った。そして広島市のショッピングセンターでこの10日間最後のローズクォーツのステージを務めた。
 

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「早紀ちゃん、男の子なの〜〜〜!?」
と桃香は言った。
 
「ボクは女の子だよ。ほら」
と言って、早紀は桃香の手をもっと奥の方に導いた。
 
「どっちもあるのか!?」
「だから、ちゃんと女の子役ができるよ」
「バイってそういう意味だったのか!」
 
その桃香の問いには答えず早紀は桃香に熱い口付けをした。
 
「よ、よし」
と桃香は、もう“細かいこと”にはこだわらないことにして、普通に女の子とするようなことをした。
 
結構お互いに燃え上がった。
 

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青葉はその日どうしても桃香に電話がつながらないので、忙しそうだけどとは思ったものの千里に電話した。
 
「私もすぐ確認すれば良かったんだけど、桃姉が私の口座に450万円振り込んできてくれているんだよね。私が現金で持って行った300万円だけで良かったんだけど。私冗談で性転換手術代ももらっちゃおうかなと言ったから、真に受けられてしまったかも」
 
「青葉の冗談はあまり冗談に聞こえないから、気をつけた方がいいよ」
「でもこれどうしよう?振り込み戻そうかな?」
 
「振込手数料が高いから、今度青葉が東京に出てきた時か、私か桃香がそちらに行った時にでも渡してくれればいいよ。どっちみち会計が最終的にまとまるのは10月くらいになると思うし。大船渡市に寄付するのもその後になると思う。クレカの請求って2ヶ月くらい後になることもあるからさ」
 
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「なるほどー。じゃ、そうしようかな。今度8月6-7日に岩手に行くから、その途中で東京に寄ってもいいし」
「ああ、なるほどね」
 

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3時間ほどの燃えるような時間が過ぎて、桃香は眠ってしまった。それを眷属の《ふーちゃん》に命じて桃香のアパートに転送する。
 
「まあ夢か何かだと思うかもね」
と早紀は呟く。
 
「でも受精卵ゲット! 取り敢えずボクの子宮に放り込んだけど、誰に産んでもらおうかなあ。この子、千里ちゃんの遺伝子持ってるから、きっと凄く優秀なボディだよ」
と早紀は楽しそうに言った。
 
「早紀、あの子、RH(-)だね」
と《ふーちゃん》が言う。
 
「γグロブリン注射が必要?」
「まだ血液は生成されてないから大丈夫と思う」
「じゃ放置で」
 

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千里は7月27日から8月3日まで東京NTCで合宿。6-9日は福岡・長崎に行って壮行試合。11-12日はユニバーシアードの合宿に参加したものの千里はこのチームの合宿にこれまで1度も参加できていなかったので連携ができず、台風接近を口実に事実上クビになる。
 
そのあと8月14-20日にまた東京NTCで合宿をして21-28日は大村市でアジア選手権に参加した。つまり東京と長崎を行き来しながら、ひたすら合宿と試合をやっていた。
 
そういう訳で、2011年8月21日。千里たちバスケット日本女子代表のメンバーは長崎県大村市の《シーハットおおむら》で開かれる女子アジア選手権に臨んだ。
 
大会はレベル1(6ヶ国)・レベル2(6ヶ国)に別れており、レベル1で優勝したチームはロンドン五輪に出場できる。また3位以内のチームは来年のオリンピック最終予選に回ることになる。
 
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大会は最初に各レベルごとに、総当たりでリーグ戦をした上で上位4チームで決勝トーナメントを行う方式である。
 
なおリーグ戦でレベル1の5位とレベル2の2位、レベル1の6位とレベル2の1位とで入れ替え戦が行われる。つまり4位以内なら決勝トーナメントに行けるが5位以下は入れ替え戦という、まさに天国と地獄のシステムなのである。もっともアジアの女子では、中国・日本・韓国・台湾の4ヶ国と他の国との実力差がひじょうに大きい。
 
決勝トーナメントは例によってリーグ戦の1位と4位、2位と3位が対戦して勝者で決勝戦を行う。
 
リーグ戦の予定はこのようになっていた。
 
21 19:00 レバノン
22 19;00 台湾
23 19:00 韓国
24 19:00 インド
25 19:00 中国
 
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実力的には中国が頭ひとつ飛び出していて、それを韓国・日本が追う展開である。アンダーエイジの世代では日本は韓国に勝っているのだが、フル代表では日本は韓国にかなり後れを取っている。それでも中国とほどの実力差では無いので、韓国に勝てば2位、負ければ3位になる可能性が高い。どっちみち韓国とは準決勝で再戦になる可能性が高い。だからリーグ戦で相手選手の特徴をつかみ、準決勝の韓国戦、決勝の中国戦の突破を狙う、というのが日本の皮算用である。
 
ただし韓国はわりと日本同様リーグ戦も全力に近い形で来るものの、中国は予選リーグでは戦力をあまりオープンにしない作戦でくる可能性が高い。中国としては決勝戦で勝てばいいのである。
 
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今回の大会を指揮する城島(きじま)チームは、篠原チームのような会議をあまりしないのだが、20日の練習を始める前に城島ヘッドコーチは言った。
 
「今回の大会は、リーグ戦では中国が1位になる可能性が高い。すると2位と3位が韓国・日本で、4位が台湾になると思う。だから準決勝が韓国、決勝が中国ということになるだろう。それでリーグ戦は若手主体で戦って、準決勝・決勝に主力をぶつけたい。だから、リーグ戦の間は、三木・羽良口・横山・馬田の4人は基本的に使わないから」
 
主力は使わずに若手でと言いつつ、馬田(恵子)さんが出ないならセンターを務めることになる(黒江)咲子さんは三木エレンの次に年長である。咲子さんとしては少々不快かも知れないが、センターとしての能力に差がある以上、やむを得ないだろう。その咲子さんが率先して
 
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「はい、リーグ戦で頑張ります」
と返事をした。
 
「初戦の司令塔は佐藤君ね」
「分かりました!」
と玲央美が答えた。
 
玲央美は高校時代に学校のチームではセンターとして登録されていたものの、U18の代表候補チームでの練習ではパワーフォワード登録。そして最終的にはスモールフォワード登録でU18アジア選手権に出た。しかし彼女はスリーが上手いので、千里や渚紗などがいなければシューティングガード登録でも良かった。また元々アシストの多い選手でもあり、マッチングやパスも上手く、ポイントガードでも行ける性格の選手だ。
 
万能プレイヤーだが、実はリバウンドを取るのだけが下手という欠点がある。つまり実は181cmの背丈があるのに、センターとしては、やや不向きである。
 
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初日、7月21日。
 
日本は初戦、レバノンと対戦した。
 
玲央美/亜津子/千里/英美/咲子
 
というオーダーで出て行く。この試合では基本的にこのオーダーで最後まで進め、第2ピリオドだけ亜津子の代わりに博美が入って司令塔を務め、また第3ピリオドだけ咲子の代わりに王子、英美の代わりに妙子を使った。玲央美と千里は40分間ずっと出続けたが、ふたりとも体力的に全然平気である。
 
「あんたたちずっと出てて疲れないの?」
と妙子が訊いたが
 
「何なら今からあと1試合しても平気ですよ」
と玲央美は答える。
 
「さすが若さだね」
と言って妙子は首を振っていた。妙子は千里たちより6つ上の学年である。
 

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そういう訳でこの試合は大差で日本が勝った。亜津子が6本、千里が8本、スリーを入れている。本数に差が出たのは出ている時間が違うので仕方ない。
 
ところが、この日大波乱が起きた。
 
「嘘!?韓国が中国に勝ったの?」
「これどうなる訳?」
 
完璧に想定外のことなので、日本チームも慌てる。
 
「考えたんだけど事態は変わらない」
と飯田アシスタントコーチが言った。
 
「韓国が勝ったことで、韓国が1位になる確率が高くなった。その場合、中国と日本は2位か3位になる可能性が高い。すると準決勝で中国と当たることになる」
 
「わぁ」
という声がベテラン勢からあがる。
 
「しかしこの大会はどっちみち優勝しなければならない。そのためには結局決勝トーナメントで中国に勝つ必要がある。準決勝で当たるのも決勝で当たるのも大差無い」
とコーチは言うが、ベテラン勢の表情は厳しい。
 
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「まあ韓国・中国に勝って優勝しようよ。そのために私たちはここに来たんだから」
と三木エレンが言う。
 
「そうですね。とにかく勝つだけですね」
と広川さんが言い、それで全体も
 
「よし、とにかく頑張ろう」
という雰囲気になった。
 
初日の結果。
 
台湾○81-53×インド 韓国○99-93×中国 日本○95-49×レバノン
 

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22日は台湾との対戦だったが、この日はこのようなオーダーで行った。
 
玲央美/亜津子(妙子)/千里/王子/英美(咲子)
 
咲子がやはり3ピリオドも使うと最後の方はバテていたようだったので、英美と1ピリオド交代で使うことにした。英美はこのチームにはパワーフォワードとして登録されているが、大学時代まではセンターであった。王子よりはリバウンドを取るのが上手い。
 
玲央美・亜津子・千里・王子の4人がいづれも貪欲に得点するので今日も大勝となった。この日、亜津子は7本、千里は9本、スリーを入れた。この日は韓国と中国も勝った。
 
22日の結果
 
韓国○83-48×インド 中国○79-58×レバノン 日本○98-54×台湾
 
暫定順位 1.日本(2勝) 2.韓国(2勝) 3.中国(1勝) 4.台湾(1勝) 5.インド(0勝) 6.レバノン(0勝)
 
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「うーん。。。微妙にスリーの本数に差が付いている」
と亜津子が言う。
 
「私は40分間出ていたけど、あっちゃんは3ピリオドしか出てないから、その差だよ。ピリオドあたりの本数ではあっちゃんが2.166、私が2.125で私が負けてる」
と千里。
 
「それでも総本数で負けているのが悔しい」
「でも多分決勝トーナメントではあっちゃんの出番が多くなるよ」
「そうかなあ」
 

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23日。日本は韓国と対戦する。
 
この日のスターティング5はこのようにした。
 
武藤博美/花園亜津子/佐藤玲央美/高梁王子/黒江咲子
 
相手が最初様子見の感じのオーダーで来た所に畳み掛けるような猛攻を加え、亜津子や玲央美のスリー、王子のダンクが炸裂する。国際試合の経験が豊かな博美が独創的な組み立てで攻撃を仕掛けるし、時々サインで玲央美に実質的な司令塔をさせたりもするので、相手は攻撃の筋が読めず防御が崩壊した。
 
第1ピリオドを6-24という大差で終える。日本応援団が盛り上がり、韓国応援団から悲鳴があがる。
 
第2ピリオドでは博美に代わって妙子、亜津子に代わって千里が出て行ったが、韓国側が中核選手を投入してきたので、さすがに一方的にはならなくなった。このピリオドは均衡した展開になり、20-20の同点で終わる。前半合計26-44である。
 
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