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■娘たちの震災後(11)

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「美容師さん、袖振り合うも他生の縁といいますし、よかったらアドレス交換しませんか?」
と青葉が言い、彼女(彼?)も同意したので、青葉と美容師さんは携帯の番号とアドレスを交換していた。
 
ついでに千里の携帯とのアドレス交換も青葉に!してもらった(千里にできる訳が無い)。
 
「濱田晃(はまだ・あきら)さんか。男女どちらでも行ける名前ですね」
「そちらは川上青葉(かわかみ・あおば)さんに、村山千里(むらやま・ちさと)さん。ふたりとも男女どちらでも行ける名前ですね。学生さんですか?」
 
「ええ、そうです。それで性別のモラトリアムやってます。ちなみに妹と苗字が違うのは、複雑な事情があって、簡単には説明できないんですが」
 
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と千里は青葉のことを“妹”と言ったのだが、
 
「へー、でも、お姉さんがデータ交換の操作したのは?」
とあきらに言われてしまう。
 
「私、深刻な機械音痴なので。カメラなどもまともな写真撮れたことないです」
 
と千里は答えた。青葉が“お姉さん”と言われてショックを受けているふうなのはスルーしておいた。この日の青葉は巫女の服を着ているので年齢が分かりにくい。
 
「ああ、それは大変だ。うちの美容室にもいますよ。その子には絶対機械類の操作をさせないんです」
「同類のようだ」
 

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その時、千里は突然、近くのおばあさんがテーブルの端に置いていたお茶の入ったコップをさりげなくテーブルの中央付近に押して移動させた。それとほぼ同時に青葉が
 
「来る!気をつけて!」
と言った。
 
そして青葉の言葉の1秒後に物凄い揺れが来た。
 
「きゃー!」
という悲鳴が避難所内に響く。
 
千里も青葉も、近くに居た別々のお年寄りを守るようにしてしゃがみ込んだ。
 

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震度5近くありそうな凄い余震であった。
 
「みなさん動かないで下さい!」
と避難所の人が言い、被害状況を見て回っている。
 
その時、さっき救援物資を降ろしていた男の娘2人組がこちらに回ってきた。どうも避難所内に怪我した人がいないか、チェックして回るのを頼まれたようであった。その2人組の若い方の子が「え!?」という顔をすると話しかけてきた。
 
「どなたかお怪我なさったりはしていませんか?」
 
「こちらは大丈夫です。あの、あなたもしかして?」
と青葉。
「え?まさか君も?」
とその子。
 
「これ、セクマイの集会か何かですか?」
「偶然の遭遇ですよ」
と青葉は苦笑する。どうもあまりの偶然に表情のロックが外れてしまっているようだ。
 
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そこで少し立ち話をしている内に桃香までやってくる。
 
「何か異様な集団がいる気がする」
と桃香。
 
「まさかあなたもGIDさんですか?」
とあきらが尋ねたが
 
「いや、この人はただのビアンだと思う」
と荷運びをしていた若い方の子が言った。
 
「これ凄すぎるね。しかもレベルの高い人ばかり」
と千里が言う。
 
「ね、この場ではあれだし、後でこのメンツでまた1度集まりませんか」
と青葉が言った。
 
「私と、あなたが携帯メール交換すれば全員集まれそう?」
と荷運びをしていた若い方の子。
 
それで青葉と和実が携帯番号とメールアドレスを交換した。
 

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その時、青葉が
「あっ」
と声を出した。
 
「あんまり凄い遭遇があったから避難所全体を見るの忘れてた。あの赤ちゃんやばくない?」
と青葉が言う。
 
「あれは応急処置が必要だね。私、冷たいおしぼりを取ってくる」
と言って千里はキッチンカーの方に走っていった。。
 
それで千里以外の5人、青葉・桃香・あきら・和実・淳が、青葉が気付いた赤ちゃんの所に行く。
 
「どうしましたか?」
と淳が尋ねた。
「私がスープをこぼしてしまって」
 
と赤ちゃんを抱えた20代の女性が言っている。炊き出しのランチを食べていて、そのスープがこぽれ、赤ちゃんの腕に掛かってしまったようだ。
 

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「取り敢えずこれを」
と言って和実が持っていたウェットティッシュで赤ちゃんの腕をそっと拭く。拭くというより軽く叩いてスープをぬぐう。
 
「淳、救急箱の中にたしか馬油(マーユ)があったと思うから」
「取ってくる」
と言って、淳が駆けていく。
 
そこに
 
「大丈夫ですか?」
声を掛けてきたのはさきほどステージで歌っていたケイである。何か起きているようだと気付いて来てくれたのだろう。
 
「ウェットティッシュとか持ってます?」
と和実が訊く。
「ウェットティッシュなら」
といって、ケイもバッグから出してくれた。そのまま赤ちゃんの腕に当てる。
 
少ししたところで千里が冷たく冷やしたおしぼりを持って来たので、それを赤ちゃんの腕に当てた。スープの成分はウェットティッシュでもうきれいに取れている。
 
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「お母さん、この赤ちゃんにヒーリングしてもいいですか?」
と巫女装束の青葉が訊く。
 
「効果のありそうなことなら何でもしてください」
 
というので青葉は赤ちゃんのそばに正座して座ると、目をつぶり左手で赤ちゃんの腕の少し上のほう数cmあけたところに手をかざすようにした。
 
やがて淳が馬油(マーユ)を取ってきてくれたので、それを火傷した部分に塗る。冷たいおしぼりはもうひとつ取ってきて交換する。青葉のヒーリングが続く。その青葉のヒーリングの様子をじっとケイが見ていた。
 

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結局10分ほどの青葉のヒーリング、そして数回交換した冷たいおしぼりの効果とで、赤ちゃんの腕の火傷はかなり赤味が減った。
 
「冷たいおしぼり5〜6個置いておきますから、また交換してあげてください」
「すみません」
「でもこれなら跡は残りませんよ」
と青葉は言う。
 
「良かった」
「この子、女の子ですよね?」
「はい、そうです。こんな目立つ所にあざとか残ったらどうしようと思った」
とお母さんは言っている。
 

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それで赤ちゃんが何とか無事で済みそうというので、集まっていた人たちも解散しようとするが、和実がケイに呼びかけた。
 
「済みません。お気づきになったかも知れませんが、今偶然にもここに何人もMTFさんが集まっていたんですよね。こんな遭遇ってめったにないから、後でもしよかったら再度どこかで集まりませんか?」
 
「何人いました?私も凄いと思った」
とケイは言っている。
 
それでケイと和実が電話番号とメールアドレスの交換をした。
 
「でもあなたは天然女性ですよね?MTFはあなたのお連れさんと、そこの巫女装束の子、美容師さん、メイドさんっぽい制服の人、それに私も入れて5人かな?」
とケイは言う。
 
ケイが「メイドさんっぽい制服の人」と言ったのは、もちろん桃香のことである!
 
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「それが私もMTFなんですよね」
と和実。
 
「冗談でしょ?」
「これ私の保険証」
と言って和実は首から提げていた免許証入れの中から保険証を取りだしてみせる。
 
「うっそー!?」
とケイは驚いていた。
 

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この集まりを後に『クロスロード』と呼ぶことになる。
 
この日遭遇したのは5つのグループだが、各々別の方面から大船渡に来ていた。
 
千里と桃香は炊き出しのボランティアで釜石市から国道45号を南下してきていた。
 
救援物資を運ぶボランティアをしていた和実と淳は気仙沼から国道45号を北上してきていた。
 
あきらたち美容師グループは一ノ関から県道19/国道343で陸前高田に来て大船渡に回ってきた。
 
ケイたちローズクォーツは盛岡・花巻から国道107号で大船渡に入っていた。
 
そして霊的な相談事や心のケアなどをしていた青葉は高岡から仙台まで夜行バスで来た後、一ノ関からJR大船渡線“ドラゴンレール”で気仙沼に来て慶子の車で大船渡に入っていた。
 
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5組が各々別のルートで大船渡に来ていたので、クロスロードなのである。それは5組7人の人生が交わったポイントでもあった。
 
クロスロードの初期メンバーでここに来ていなかったのは、小夜子、政子、胡桃、の3人である。小夜子は妊娠中でさいたま市に居た。政子と胡桃は東京だった。(胡桃は2012年春に“新トワイライト”をオープンさせるまで東京の美容室に勤めていた)
 

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炊き出しのボランティアは実は明日まであるのだが、千里は青葉と別れた後、《てんちゃん》に代わってもらって、自分は東京北区の合宿所に入った。
 
6月20日からA代表の第四次合宿、その後オーストラリア遠征があるのだが、千里たちU21にも出るメンバーはA代表の合宿を途中で離脱してU21の合宿に加わり、その後アメリカに飛んでU21世界選手権に出場する(つまり千里たちはオーストラリア遠征には参加しない)。
 
この付近はこのような凄いスケジュールになっていた。
 
6.20-7.01 A代表国内合宿(千里たちは途中で離脱)
7.02-7.11 A代表オーストラリア遠征
 
6.25-7.02 U21直前合宿(国内→サンフランシスコ)
7.03-7.13 U21世界選手権(アメリカ・ロサンゼルス)
 
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7.03-7.05 U19国内合宿
7.06-7.14 U19ブラジル合宿
7.15-7.27 U19世界選手権(チリ・プエルトモント)
7.28-8.02 インターハイ(秋田)
 
U21/U19を兼ねている絵津子・純子・王子の3人は、ロサンゼルスからチリに直行である。王子はその後インターハイがあるので、チリから戻ったらすぐに秋田に行く。つまり王子はこの期間にフル代表合宿→U21世界選手権→U19世界選手権→インターハイと渡り歩く。恐ろしいスケジュールだ。
 
なお、王子は6月18-19日にインターハイの岡山県予選、準決勝・決勝に出場し、彼女が所属する岡山E女子高は圧倒的な破壊力で優勝。王子にとって最後のインターハイ出場を決めている。
 
彼女にとっては県予選からインターハイ本番までひたすら代表合宿と世界大会に参加する物凄いハードスケジュールであるが、岡山E女子高のチームメイトには「世界で鍛えて1回り大きくなって帰ってくるから」などと明るく言って岡山を後にしたらしい。
 
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「ひとまわり大きくなるのはいいけど、帰国してきた時には、ちんちん生えていたりしないよね?」
 
「その場合、ちょん切ってからインターハイに出るから大丈夫」
 

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6月20日は朝からミーティングが行われた。
 
城島HC・飯田AC・松本代表の3人が挨拶し、これまでA代表の合宿に出てこられなかったことを詫び、またこれまで代表チームを指揮してくれた篠原HC・高田AC・高居代表に感謝の意を表した。
 
その上で練習が始まるが、城島さんのチームは篠原さんのチームとは別の意味でハードであった。
 
とにかく走らされる!
 
練習が始まる前に10km走らされるし、その後、ドリブル走でコート50往復である。それから更にワンツーパスの練習で走らされ、速攻の練習で走らされる。
 
このひたすら走る練習にベテラン勢が付いていけず遅れる。しかし遅れると厳しい声が飛ぶ。
 
「武藤、お前遅れたからあと10往復追加」
「はい!頑張ります」
 
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中心選手である武藤さんが叱られると、他の選手は自分も頑張らなければという気持ちになる。とにかく下半身の筋力を酷使する練習であった。
 
この練習で割と平気な顔をしていたのが、やはり若手3人(千里・玲央美・王子)と最年長の三木エレンである。エレンは伊達に自分より5-10歳くらい若い選手達に混じって代表を張っていない。身体能力が物凄い。普段から相当鍛えているのだろう。
 
結果的にシューター3人の中でこの練習に出遅れたのは花園亜津子である。
 
「だめだぁ。足が動かない。負けたかも」
などと初日は弱音を吐いていたが、
 
「花園、お前まだ若いんだから、頑張れ」
と飯田コーチが発破を掛けていた。
 
シューター3人は恐らく最後まで競わせる方針だろうから、こんな早々にギブアップされては困るのである。
 
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