広告:ニューハーフ恋子の告白-綾小路恋子
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■娘たちの震災後(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-01-27
 
6月3-5日(金土日)、福井県でインターハイ予選が行われ、女子では城島監督が率いる福井W高校が優勝して秋田で行われるインターハイの切符を掴んだ。
 

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さて、A代表のヨーロッパ遠征と同時期に、U24はオーストラリア遠征、U24(Univ)はトルコ遠征を実施しているが、千里と玲央美はA代表優先でヨーロッパ遠征の方に参加した。
 
6月12日のU20ギリシャとの試合で、今回のヨーロッパ遠征はひととおり終了する。翌日13日にパリのシャルルドゴール空港経由で帰国した。
 
ATH 6/13 15:00 (AF1533-A320) 17:25 CDG (3:25)
CDG 19:25 (JL406-B773) 6/14 14:15 NRT (11:50)
 
6月14日(火)は成田空港で報告会と解散式をした。
 
そしてこの場で、8月に大村市で行われるアジア選手権(オリンピック予選)は福井W高校監督の城島さんが指揮することが発表された。城島さんは昨年U17女子日本代表を率いて世界5位という素晴らしい成績を収めたが、今回の選手権では、アシスタント・コーチとチーム代表も昨年のU17のスタッフがそのまま務めることになる。
 
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記者から城島さんは代表監督の専任になるのか?という質問があるが、バスケ協会の強化部長は、福井W高校監督の兼任であり、また城島さんが指揮するのは今回のみで、オリンピックの監督には別の人物と交渉中であると言明した。
 
城島さんたちは、今月下旬のA代表合宿から代表チームを指導することになる。
 

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解散式が終わった後は、成田から自分の居住地方向に向かう飛行機に乗り継ぐ子も多数いた。
 
「千里はどうすんの?」
と玲央美から訊かれ
「ちょっと大阪に行ってくる」
と答えた。
 
「ああ、行ってらっしゃい、行ってらっしゃい」
と玲央美は笑顔で送ってくれた。
 

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それで千里は次の連絡で貴司のマンションまで行った。
 
成田18:30-19:55伊丹20:23-20:35千里中央
 
千里中央で降りた後、実際にはセルシーでお肉などを買っていく。どうせ貴司は食材なんか置いてないだろうし、ホットプレートを出して焼肉でもしようと思ったのである。ついでにビールもヱビスビールを6缶1パック買う。
 
それで貴司のマンションに入ったのは、もう21時半すぎであった。貴司はもう練習が終わって自宅に戻っているだろう。
 
千里は自分の持っている鍵でエントランスを開けて33階に昇り、3331号室に行く。ドアを自分の鍵で開けて中に入る。
 
「貴司、ただいまあ」
と言って中に入っていくが返事が無い。
 
お風呂かな?とも思ったが、風呂場の電気は付いていない。しかし直前に使った跡があり、かなりの湿度があった。
 
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「寝てるのかなあ?」
と言いながら寝室に入っていく。電気は消えている。
 
「あれ?千里?」
という声がする。
 
「あ、寝てたんだ?ごめんね。起こして」
「いや、今日の練習はなんかハードだったから、シャワー浴びたら、そのまま服も着ずに眠っちゃった。ヨーロッパ遠征お疲れ様。お帰り」
と貴司は言っている。ほんとに裸だったようである。
 
「とりあえずこれお誕生日のプレゼント」
と言って、マドリードで買ってきたレザージャケットの袋を渡す。
 
「さんきゅー!」
 
それで千里は電気を付けた。
 
そして絶句した。
 

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「貴司、それ、どういうこと?」
と千里は怒りの目で言う。
 
「それ?」
と言って、貴司は千里の視線を追った。
 
「え!?」
と貴司が声をあげたが、その次の瞬間、貴司の隣に“裸で”寝ていた人物が大きく伸びをすると
 
「あ、千里さんお帰り。ごめんね。ちょっと貴司さん借りちゃった。気持ち良かったよ」
などと言っている。
 
「緋那!?」
と貴司が驚くように声をあげたが、千里は
 
「もう知らない!」
と言うと、持っていたヱビスビール6缶のパックを貴司に向かって投げつけ、自分の荷物だけ持って、部屋を飛び出した。
 

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千里はマンションの外まで出ると《くうちゃん》に
 
『お願い、インプレッサをここに転送して』
と言った。
 
『千里、再度貴司君と話し合った方がいい』
と《くうちゃん》が珍しく千里に注意するが
 
『あったま来た。あんな奴のこと知らない』
と千里は怒りでいっぱいになった頭で言う。
 
『じゃ転送するけど、絶対にスピード違反はしないことを誓いなさい』
『分かった。誓う』
 
それで《くうちゃん》は車を転送してくれたので、千里はそれに飛び乗ると千里(せんり)ICへ車を向けた。
 
その頃、貴司のマンションでは千里のビール缶攻撃をまともにくらって気絶してしまった貴司を緋那が介抱していた。
 

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千里は結局一睡もしないまま、夜通しインプレッサを中央道経由で東京まで運転し、明け方葛西ICを降りた。コンビニで金麦の500ml缶を2つ買うと、マンションに入り、2缶一気飲みしてベッドに潜り込む。
 
しかし眠れない。
 
『えーん。びゃくちゃん、私を眠らせてよ』
『千里、オナニーしたら眠れるよ』
『今は、したくない』
『しょうがないダダッ子だねぇ』
 
と《びゃくちゃん》は呆れるように言ったものの、千里を睡眠に導いてくれた。
 

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目を覚ました時、千里は今、朝なのか夕方なのか判断に迷った。携帯を開いて確認すると、6月16日の朝4時である。
 
結局丸一日眠っていたようだ。
 
取り敢えずトイレに行く。
 
ギョッとする。
 
『なんでまた男の子になってるの〜?』
『千里、今日は精子を取る日だよ』
『あ、そうか。それなら仕方ないか』
 
と言ってから
 
『女の子の身体のまま精子は取れないの?』
などと言う。
『それはさすがに無茶。そもそも桃香が千里のちんちんを握れない』
『確かに』
 
しかし丸一日寝ていただけあって、凄い量のおしっこが出た。
 
ついでに頭も痛い!
 
『それは2日酔いだね。そのくらいは自分で解決しなさい』
『ごめんね』
 
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貴司からは何度も着信したようで、メールもたくさん来ていたが、全部見ずに削除した。ついでに着信拒否を設定した。
 
コンビニに行って、アイスクリームとオレンジジュース、それにレトルトのカレーを買ってきて、冷凍している御飯をチンし、アイスクリームを食べ、カレーを食べてオレンジジュースも飲んだら、かなり頭痛は軽減された。
 
たくさん食べたり飲んだりしたのでまたトイレに行く。
 
「面倒くさいものが付いてるなあ。切り落としたい気分」
と言って千里は、それを指ではじいてみた。
 
男の子の身体になるのはいいとして、それは高校2年の時の身体なので、まだ筋肉などがあまり付いていない。千里はそれが物凄く頼りないような感じがした。
 
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「男の子の身体って、なんか頼りなくて嫌だ」
と千里が呟くと、《りくちゃん》や《びゃくちゃん》が顔を見合わせていた。
 

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東京を7:24の《あさま》に乗って長野に行く。元々並びの席を取っていたので千葉から来た桃香と並んで行くことができた。
 
「千里、なんか機嫌が悪い」
「ごめん。寝てていい?」
「うん。いいよ」
 
それで結局千里は長野に着くまでずっと寝ていた。丸一日寝ていたのに、更に眠れるって我ながら凄いと思った。
 
長野市内の水浦産婦人科で4回目の精子採取をおこなった。次は7月19日に行い、その採精が終わった後、去勢することにしている。
 
長野での採精を終えた桃香と千里はそのままJRで花巻まで移動した。17-20日にまた東北地方での炊き出しボランティアに参加することになっていたのである。
 
長野13:02-14:26大宮14:34-17:41新花巻
 
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なお、JRは4月21日に東北本線の本線全線が、4月29日には東北新幹線全線が復旧している。但しこの時期は一部の区間で速度を落として運行されている。
 
その日は花巻市の協力会社の女子寮に入って泊まった。
 
なお、千里が海外遠征している間に《てんちゃん》が代わって桃香と一緒にボランティアに行ってくれているが、《てんちゃん》は千里より厳しいので、桃香が襲おうとすると、かなり手痛い目に遭わせているようである。
 
「こないだはちんちん切り落とされたし」
などと言っていた。
 

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6月17日(金)は花巻市とその東側の遠野市でボランティア活動をし、遠野市内の旅館に泊まる。18日(土)は沿岸の釜石市に移動して、そちらの避難所を回った。
 
その間に17日の夕方、青葉のお姉さん・未雨の遺体が見つかったという連絡があった。青葉はどっちみちこの週末、大船渡に来る予定だったので、明日仮葬儀をすると言っていたのだが、18日の午前中には今度はお父さん・広宣の遺体が見つかったという連絡が入る。
 
お姉さんの遺体は数日前に見つかった彼女のボーイフレンドの遺体が見つかった場所に近い砂浜に打ち上げられていた。お父さんの遺体は山間いの崖崩れが起きていた現場の復旧工事中に発見された。
 
それで結局18日(先負)の夜に仮通夜、19日(仏滅)午前中に仮葬儀ということになった。
 
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それで18日の午後は途中から他の人に代わってもらい、千里と桃香は先行して大船渡に入って、未雨と広宣の仮通夜に出席した(どっちみちボランティアも明日は大船渡でやる予定だった)。
 

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今回の仮通夜の出席者は下記10人である。
 
青葉、佐竹慶子、桃香、千里、早紀、椿妃、彪志、それに未雨の同級生女子3人。
 
今回も発見時に遺体を確認してくれたのは慶子であるが、この遺体を青葉と彪志に千里も見た。実際問題として顔などは分からないのでDNA鑑定で未雨と広宣であることを確認したのである。
 
青葉が一瞬ふらっとしたのを今回は彪志が抱き留めてくれた。千里は動じずに見ていたので「千里さん凄いですね」と彪志が言ったが、千里は「彪志君こそ凄いと思う」と言った。なお、桃香は千里から「気絶されたら介抱するの大変だから、やめといた方がいい」と言われて見なかった(彪志は後で、青葉の前で気絶とかしたら振られると思い必死で気合いを入れていた、と言っていた)。
 
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服装は青葉・桃香・千里は和服の喪服で、千里が青葉にも桃香にも着せてあげた。慶子は洋服の喪服。そして早紀・椿妃・彪志、未雨の同級生は学校の制服である。
 
出席者が10人なので先日の祖父母の仮通夜よりは時間が掛かったものの、それでも1時間も掛からずに仮通夜は終了した。夜も遅いので未雨の同級生3人、早紀と椿妃にはお弁当を渡して帰し、残りの5人で佐竹家に移動して精進料理を食べた。
 
桃香は「お肉が無い」などと文句を言っていたが「精進料理なんだから仕方ない」と千里は言っておいた。
 

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その夜は、市内の旅館に千里・桃香・青葉、および彪志は泊まった。この時点で彪志はまだ青葉と“結ばれて”おらず、恋人未満の状態であったので、彪志は別室で、千里・桃香・青葉が同室である。実際、青葉はまだ嵐太郎と彪志の間で心が揺れていた。
 
8畳の部屋に布団を敷くが、並びの順序は窓側から青葉・千里・桃香とした。桃香は割とトイレが近いので出口に近い側を選び、青葉が万が一にも襲われないように間に千里が寝る。
 
青葉は
 
「私は聞こえないふりしてるから、あまり大きな音を立てない程度にね」
 
などと言って寝たが、夜中に桃香が千里の布団に侵入しようとして
 
「グゲッ」
という凄い声を挙げたので、青葉はビクッとして目が覚めてしまった。
 
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桃香がお股を押さえて悶絶していて、千里はスヤスヤと眠っているようなので「一体何があったんだ?」と思った。
 
(実際には千里を襲おうとした桃香が《びゃくちゃん》に撃退されたのである。千里は連日の疲れがたまっていたのと、貴司のことでモヤモヤしていたのもあり、本当に熟睡していた)
 

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