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■娘たちの震災後(6)

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今回の合宿はフル代表やユニバーシアード代表の合宿の倍ほどの密度がある篠原チームの指導なので、これを未経験の上の世代のメンバーたちが悲鳴をあげる。しかし篠原さんは
 
「これに耐えられんという選手はどんな有名選手でも即代表から落とすから」
と言うので、みんな必死であった。
 
今回、練習相手になってもらったのは、何と男子NBLに所属するサンダンカーズのメンバーたちである。都内に本拠地を置くプロチームである。
 
かなり濃厚な基礎練習をやった所で30分だけ休憩を取ってから、手合わせしてもらったが、さすがに男子は身体能力が違いすぎるので、ほとんどの選手がまるでかなわない。
 
しかし、その中で、三木エレン・花園亜津子に千里といったシューター陣は相手が近づいてくる前に撃ってしまうし、フォワード・センター陣の中でも馬田恵子・佐藤玲央美・高梁王子(たかはし・きみこ)といった面々は男子にも当たり負けないので
 
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「君たち凄いね!」
「負けそう」
などと彼らが言っていた。
 
しかしそういうのを見ると高田コーチが
 
「こら、男子。女子選手に負けるなら、性転換して入れ替わってもらうぞ」
などとハッパを掛けていた。
 
「もし、私男子に勝てたら、男子リーグに行っていいですかね?」
などと王子は言っている。
 
「ああ、プリンは男子チームに入りたいかもね」
「念のため訊くけど、元々男子だったのを手術して女子になったとかじゃないよね?」
とサンダンカーズの中でもお調子者っぽい選手が言う。
 
「それどこに行っても訊かれるんで、母に尋ねたら、あんたあんまり荒っぽいから、1歳の時にちんちん切り落として女の子にしたんだよと言われました」
と王子。
 
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「キーミン、それ冗談と思ってもらえないから、やめときなさい」
 

なお、今回このA代表と重なる日程でU24,U24(Univ)の合同合宿が愛知県安城市のステラ・ストラダの体育館で行われていた。千里はU18の時にそこで1度合宿したなと思い、その名前を聞いて当時のことを思い出した。
 
ちなみに千里も玲央美もU24よりA代表が優先なので、愛知県には行かず、東京のNTCでの合宿に参加している。
 
今年はA代表、U24,U24(Univ),U19,U16といくつもの代表が活動しており、兼任者も多いので、スケジュール調整がたいへんである。
 
A代表 8.21 アジア選手権(五輪予選)大村市
U24 7.31 William Jones Cup 台湾
Univ 8.13 ユニバーシアード 中国
U21 7.3 U21世界選手権 アメリカ
U19 7.15 U19世界選手権 チリ
U16 12.4 U16アジア選手権 中国
 
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A代表の合宿は5月15日に終わったが、この濃度の合宿初体験の世代は
「1ヶ月くらい休みたい気分(石川美樹)」
などと言っていた。
 
5月16日(月)。千里はまた長野に行き、精子の採取を行った。これまでの採取はこのようになっている。
(旧)1=3.07 2=3.31
(新)1=4.25 2=5.09 3=5.16
 
(新)が青葉による睾丸活性化操作の後の採取である。
 
千里はほとんと合宿の合間に採取をやっているなあと思った。
 

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5月17日、バスケ協会は女子日本代表で引退を表明した簑島さんの代わりに月野英美(1986)を追加招集したことを発表した。千里は順当な人選だなと思った。彼女は3月末に発表されたメンバーに入っていてもおかしくなかった実力者である。
 
5月18日から22日まではA代表の第二次合宿、そして23日から6月14日まではヨーロッパ遠征というスケジュールになっていた。月野さんは18日からチームに合流する。この国内合宿・ヨーロッパ遠征に付き合うのも結局篠原HC, 高田AC, 高居代表という、U21のスタッフである。
 
実は本来監督をする予定になっている城島さんは、現在インターハイ県予選の直前なので、フル代表の面倒を見る余力が無いのである。
 
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「でも今年は休む暇が無いと思わない?」
と玲央美が言う。
 
5月から8月まではひたすらどれかの代表チームの合宿が続くので本当に休む暇が無い。今年は海外遠征も多い。
 
「うん。ずーっと代表活動していて、学校にも行けないしデートする間もない」
と千里はマジで言う。
 
「学校はまだ籍を置いてるんだ?」
「もう“私は”大学に行かないことにした」
「なるほどね〜」
と玲央美は千里の言った本当の意味をちゃんと理解しているようだった。
 
「ちなみに細川さんと最後に会ったのは?」
「2月下旬」
「そんなに会ってないと彼浮気しない?」
「浮気潰すのを下請けに出してるから」
「下請けさんたちも大変ね」
 

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ヨーロッパ遠征の最初の目的地はスペインのアビラである。千里たち代表チームは5月23日に、このような便で移動することにしていた。
 
NRT 11:05 (JL405 B773) 16:40 CDG (12h35m)
CDG 20:00 (AF1400 A321) 22:05 MAD (2h05m)
 
(NRT:成田空港/CDG:パリのシャルルドゴール空港/MAD:マドリードのアドルフォ・スアレス・マドリード=バラハス空港)
 
マドリード空港からアビラまではバスで1時間半ほどである。アビラのホテルには深夜0時前後に到着予定である。
 
ここでフランスやスペインでの16:40は日本時間の23:40, 22:05は日本時間の5:05であり、翌日の練習開始は現地時刻の9:00 CEST = 16:00 JSTである。
 
(JST=Japan Standard Time, CEST=Central European Summer Time)
 
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つまり日本時間で23日の朝から24日の夕方までは“練習しない”時間帯である。
 
さて、千里は桃香から5月22日の青葉の誕生日に高岡に行くよ、と言われていた。しかしさすがに代表練習を休むわけにはいかないので、青葉には悪いが欠席させてもらおうと思っていた。ところが青葉本人が霊的なお仕事で緊急に岩手に行ったため、結局誕生会は5月23日におこなうことになった。
 
千里は我ながら予定調和だなあと思った。
 
千里は日本からスペインへの移動時間を利用して高岡に行ってくることにしたのである。
 

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23日朝に、まず合宿所で《すーちゃん》を分離する。《すーちゃん》は千里の代わりに成田からフランス行きの飛行機に乗る。例によって玲央美が
 
「すーちゃん、お疲れ様」
と声を掛けてきて、《すーちゃん》は照れながらも、玲央美とおしゃべりしながらヨーロッパまでの旅をそれなりに楽しんでくれたようである。
 
一方、千里はファミレスに代理で勤めている《てんちゃん》にシャンメリーを調達してもらい、都内の洋菓子店でバースデイケーキを買って、桃香と一緒に新幹線で高岡まで移動した。
 
東京11:12-12:30越後湯沢12:39-14:51高岡
 
例によって桃香は格安ツアーバスで行こう、などと千里に言ったのだが、千里は自分が往復の交通費を出すから新幹線にしようと言い、かなり強引に新幹線往復を決めてしまった。
 
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それで実家に着いたら千里が料理を作り、夕方、学校から帰ってきた青葉を迎撃して誕生会をする。
 
例によって誕生会などというものをしてもらったことのなかった青葉は泣いていた。この時期は青葉は涙を流す度に、表情や感情の封印が解けていくような感じであった。
 

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この日の誕生会には青葉の新しい友人たちが4人来ていて、ケーキを切って、シャンメリーを開けて、色々作っておいたお料理も食べ、夜9時頃まで楽しく過ごしたのだが、ふと気付いたように青葉は言った。
 
「そういえば、お母ちゃんと、桃姉とちー姉の誕生日は?」
「私は1960年2月3日水瓶座」
と朋子。
「私は1990年4月17日牡羊座」
と桃香。
「私は1991年3月3日魚座」
と千里。
 
「わ、桃姉のお誕生日に何もしてない」
と青葉は言うが
「私がバースデイカード送っておいたから大丈夫」
と朋子は言う。
 
「青葉じゃないが、私も誕生会とかしてもらったことはない。まあ貧乏だったし」
と桃香も言う。
「うん。ごめんねー」
と朋子。
 
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「桃香あまり友だち居ないしね」
と千里が言っている。
 
「うん。私は女の子は恋愛対象だから、なかなか友だちという存在ができないんだよ」
「まあ男女の友情がなかなか成立しにくいのと似てるよね」
「ああ、そんな感じ」
 

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「だけど、お母さんが水瓶座、千里さんが魚座、桃香さんが牡羊座と星座がきれいに並んでいるのね」
と青葉の友人・明日香が言った。
 
「青葉の5月22日というのは牡牛座かな?」
「それがギリギリ双子座に入っているんだよ」
「残念!」
「誰かもうひとり牡牛座の人が姉妹になればいいね」
 
「ここに牡牛座の人いる?」
 
「私は天秤座」
と日香理。
「私は双子座」
と明日香。
「私は蟹座」
と美由紀。
「私は魚座」
と奈々美。
 
「牡牛座どころか、地の星座(牡牛・乙女・山羊)が居ない」
 

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牡牛座といえば嵐太郎(らんたろう)が牡牛座だよな、と青葉は思った。
 
青葉が双子であるのに対して嵐太郎は隣の牡牛座なので、結婚すると友だちのように仲の良い夫婦になるだろう。一方、彪志は蠍座で、太陽星座だけ見るとふたりは相性が悪い。
 
ところが実は彪志の太陽が青葉の月とピタリと重なっているのである。物凄い縁があることを示唆する配置だが、天体上の関係だけから見ると、彪志が青葉の奥さんということになる!
 

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「Earth, Wind & Fire ってバンドがあったけど、これだとWater, Wind & Fireになるかな」
「バンドする?」
「誰か楽器できる?」
 
「青葉はピアノと龍笛ができる」
と千里が言う。
「りゅうてき?」
「日本の伝統的な横笛の一種だよ」
「へー。聞きたいな」
「それが震災で津波に流されてしまったんだよ」
「それは残念」
 
「私が1本新しいの買ってあげようか?今度、東京方面に出てきた時にでも雅楽器店に行ってみる?」
と千里。
 
「あ、そうしようかな。でも結構値が張るよ」
「大丈夫大丈夫。桃香と2人で出し合うから」
と千里が言うと
「あ、うんうん」
と桃香も言っている。
 
「今日は来てないけど、世梨奈がフルートうまいよ」
「へー」
 
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「私は歌は自信あるけど、楽器はあまり得意じゃないなあ」
と日香理。
 
「私は音痴で、楽器もできないのが自慢」
と美由紀。
「自慢なのか!?」
「その代わり絵は自信ある」
「うん。美由紀の絵はうまい」
 
「私はスポーツばかりだから音楽は微妙」
と奈々美。
「奈々美どういうスポーツするんだっけ?」
「今は卓球部だけど、小学校の時はスポーツ少年団でサッカーやってた。でも低学年の頃は剣道習ってた。幼稚園の頃はスケートだったんだけどね」
「色々やってるな」
「これまでやってきたスポーツの種類につながりが感じられない」
 
「じゃ高校になったら、きっとバレーかバスケットだ」
「私、背が低いから、そういうの無理」
「奈々美は背は低いけど足が速い」
「回転数が速いんだな」
「だったら、バレーならリベロ、バスケならポイントガードだ」
「守備範囲が広くてひたすら拾いまくるリベロ、背の高い選手の中をチョロチョロと動きまわるガード」
 
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「明日香は小学校の時、ブラスバンド部だったね」
「うん。トランペット吹いてた。楽器も買ってもらったけど、中学に入ってから吹いてない」
「それはもったいない」
「練習できる場所が無いんだよ」
「確かに、普通のおうちで吹くと隣近所に迷惑だよなあ」
 
「じゃ青葉の龍笛、世梨奈のフルート、明日香のトランペット、日香理の歌でバンドを組むということで」
 
「そのラインナップの楽器をバックに歌うのはちょっと辛い」
 

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