広告:まりあ†ほりっく 第1巻 [DVD]
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■娘たちの年末年始(7)

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オールジャパンの試合は夕方まで続くのだが、白石コーチと司紗が残って後でレポートをすることにし、それ以外は合宿場に戻ることにする。電車で千葉駅まで行き、瀬高さんの運転するバスに全員で乗って房総百貨店体育館に戻った。戻ったのは14時半くらいである。
 
誰も何も指示していないのだが、選手たちは自主的にウォーミングアップを始め、そのあと、ドリブル走、パス練習、シュート/ブロック/リバウンド練習などといった基礎練習を始めた。
 
自分たちがなかなか肝心な所で越えることのできない札幌P高校の大健闘を目の前で見て、みんな物凄く闘志が燃え上がっていた。
 
それに今の時期は、3年生が5人抜けて、これまでベンチ枠に入ることのできなかった子たちにとって、浮上の大チャンスでもある。特にボーダーラインの子たちは練習に熱が入るようであった。
 
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千里はオールジャパンの試合の様子を《すーちゃん》から聞きながら、後輩たちに声を掛けていた。
 
今日の千里(本人)の行動は、朝練をした後で千里E(すーちゃん)を代役に残して、留萌に飛んで両親に顔を見せた上で、お風呂に入り!合宿所に戻ってきた所でまた交替して、その後、後輩たちの指導をしている。留萌には千里F(こうちゃん)を残して来た。《きーちゃん》は今日は遅番の勤務で、午前中は休んでいたので、複雑な位置交換の手順をしてくれた。
 
なお、今日の試合はこうなった。
 
山形S大学(大8)×−○札幌P高校(高校)
福井W高校(北信)×−○神奈J大学(大4)
愛媛みかんず(四国)×−○湘南自動車(関東)
奈良T大学(大7)×−○岡山RP大学(中国)
福岡W高校(九州)×−○秋田U銀行(東北)
女形ズ  (社2)×−○大阪HS大学(近畿)
札幌C大学(北海)×−○栃木K大学(大6)
岐阜F女子高(東海)×−○兵庫M女子大(大5)
 
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岐阜F女子高と福岡W高校も消えて、出場した4高校の内、2回戦に進出できたのは札幌P高校のみである。
 

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3日も朝練の後、東京に出てオールジャパンの第1時間帯の試合を見る。今日は、札幌P高校−愛知AS大(大2)、神奈川J大(大4)−ジョイフルゴールド(社1)という、また魅力的なカードであった。
 
神奈川J大学とジョイフルゴールドの試合は大方の予想に反して一方的な試合になってしまった。日本代表経験やトップエンデバー召集経験のある豊かな才能のある選手が多いJ大学だが、佐藤玲央美、熊野サクラ、母賀ローザ、堀江希優、ナミナタ・マール、それに湧見昭子といった攻撃陣は破壊力が凄まじく、またリバウンドでも圧倒的であった。15点もの差でジョイフルゴールドが圧勝した。
 
一方札幌P高校は今日も接戦であった。さすがに大学2位のAS大に苦戦するが、何とか食らいついていき、第1ピリオドも第2ピリオドも同点である。第3ピリオドはP高校が主力を休ませる戦略に出たのに対してAS大学は主力をそのまま出して猛攻を掛ける。これで10点差を付けたものの、第4ピリオド、休憩から復帰した主力が、さすがに疲れの見えるAS大学を圧倒し、最後は5点差で勝利を得た。これでP高校は連日大学チームを倒して3回戦進出である。
 
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N高校のメンツはこの第1時間帯だけ見て合宿所に引き上げたが、今日の試合はこのようになった。左側が1回戦から勝ち上がってきたチームである。
 
札幌P高校(高校)○−×愛知AS大学(大2)
神奈J大学(大4)×−○ジョイフルゴールド(社1)
湘南自動車(関東)×−○茨城TS大学(大3)
岡山RP大学(中国)×−○ビッグショック(W9)
秋田U銀行(東北)×−○フリューゲルロースト(W11)
大阪HS大学(近畿)×−○東京Y大学(大1)
栃木K大学(大6)○−×ブリリアントバニーズ(W10)
兵庫M女子大(大5)×−○シグナス・スクイレル(W12)
 
勝上り組で今日勝ったのは、札幌P高校と栃木K大学の2者だけである。K大学はプロに勝っての3回戦進出となった。
 
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千里は自分たちのローキューツを倒した湘南自動車が、松前乃々羽・中嶋橘花・中折渚紗・前田彰恵・橋田桂華といった自分の同学年の5人を中核とするTS大に大差で敗れたのを見て、新たな闘志を燃え上がらせた。湘南自動車はTS大ポイントガード松前乃々羽の自由奔放なゲームメイクに翻弄され、何もいい所が出せないまま敗れた。
 
「乃々羽ちゃん、相変わらず凄いね」
と南野コーチが千里のそばで言った。
 
「理論無視してますからね」
「味方でさえ、パスを取り損ねそうになるね」
「ここでそこにパス出すのは絶対不利でしょ、という所に出すから。それで特に初めて対戦した所はやられちゃうんですよ」
 

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留萌。
 
2日の午後、父はホタテの養殖の仕事の社長の福居さんに、千里を紹介すると言い出した。千里を漁師にしたいという話、まだ諦めていなかったのか!と千里に擬態している《こうちゃん》は少し呆れたが、そんな話が進んだりしたら、千里に叱られる!というので逃げ出すことにした。
 
「ごめーん。僕、バイトの都合があるから、もう帰らないといけないんだよ」
「なんだ。慌ただしいな」
 
「あんた、何時の飛行機で帰るの?」
「20:50のエアドゥを予約してる。レンタカーを返却して搭乗手続きしないといけないけど、搭乗手続きは1時間前までにしないといけないから、新千歳まで3時間として16時半くらいまでに出ないといけないかな」
 
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と『千里』は言ったが、母が配慮してくれる。
 
「お正月だから道が混んでるよ。5時間くらい掛かるかも知れないから、もう出た方がいい」
「そうしようかな」
 
それで千里はすぐ引き上げることにした。
 
母がおにぎりを作ってくれて、おせちの料理を少しタッパに詰めてくれた。
 
「じゃまた」
と『千里』は笑顔で言ったが、母はこんなことを言った。
 
「身体、大事にね。また帰っておいでよ。次は、あんたがどういう姿であってもいいから」
 
母もいよいよ、千里の性別問題を決着させなければいけないと覚悟を決めつつあるようだ。
 
「うん。また帰ってくるよ」
と『千里』は笑顔で答えると、車を出す。玲羅が札幌に出たいというので、札幌まで同乗させることにした。
 
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「玲羅、帰りはどうするの?」
「1泊して、明日の高速バスで帰るよ。札幌B大の下見もしておきたいし」
「ああ、それはいいね。ホテルの予約は?」
「まだしてない」
「じゃ楽天トラベルとかで予約するといいよ」
「そうする〜」
と言って、玲羅は携帯で空きのあるホテルを調べていたようだが、無事確保することができたようだ。
 
「ところで、お姉ちゃん、お年玉とかもらえないよね?」
 
『千里』は苦笑した。脇に停めて財布の中から2万円出して渡す。
 
「じゃホテル代、帰りのバス代と、あと余ったら適当に使って」
「やった!お姉ちゃん、大好き。お姉ちゃんが女の子になっちゃったこと、お父ちゃんが怒ったら、お姉ちゃんの味方してあげるね」
「はいはい」
 
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と『千里』は苦笑して車を発車させた。
 

やはり道が混んでいて、札幌に着いたのがもう16時半だった。
 
「お姉ちゃん、飛行機、間に合う?」
「大丈夫、大丈夫。玲羅も気をつけて」
「うん。ありがとね」
 
と言って玲羅は降りて行った。
 
その後、《こうちゃん》は新千歳までドライブを楽しみ、車を返却した後、遊びに行った!!
 
千里からは明日の朝までに帰還すれば良いと言われている。飛行機の予約ははなっから取っていなかった。むろん自力で飛んで帰るつもりである。
 

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旭川N高校の合宿は、31-2日の間、千里・留実子・暢子・司紗・夜梨子の5人で運用していたので、他のメンバーが3日の午後から戻って来るというのでその5人は3-4日はお休みということにした。それでも千里は3日お昼のオールジャパン第1時間帯の試合を見終えてからN高校のメンツと別れて千葉に戻った。暢子は結局オールジャパンを全試合観てから、都内のホテルでのんびりと一夜を明かしたようである。留実子もやはり全試合観てから、埼玉の親戚の所に顔を出すと言っていた。司紗は自分のアパートに帰ってひたすら寝正月をすると言っていた。南野コーチがおせちやお餅などを少し持たせていた。
 
夜梨子はジョイフルゴールドの応援でチアをやっていた。その後、玲央美たちと一緒に三鷹に移動し、練習の補助や1on1の相手なども務めた。メンバーの中には夜梨子とレベル的に大差の無い子もいる。
 
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「つよーい!なかなか勝てない」
などと豊田稀美が音を上げる。
 
「夏嶺さんって、旭川N高校の出身なんでしょ?さすがですね」
などと向井亜耶が言う。
 
「銀河五人組と言われたんだよね〜」
などと夜梨子は苦笑しながら言う。
 
「なんか格好いい」
「その前は補欠五人組と言っていたんだけど」
「補欠から昇格したんですか?」
 
「いやいや。銀河というのは、星屑(ほしくず)の美称(びしょう)だよ」
「あらら」
 
「私たちは5人の中の1人を除いて、1度も公式戦のベンチに座らなかったから。でも楽しかったよ」
 
「夜梨子ちゃんたちは、他の学校ならレギュラーになっていたと思う」
と昭子が横から言う。
 
「でも弱小でお山の大将になるより、強いチームで揉まれた方が実力は絶対伸びますよ」
と昭子は付け加える。
 
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「まあうちは公式戦に出られないような子を積極的にカップ戦とかに出してくれたからね。だから普通の学校の補欠よりは随分試合経験を積むこともできたと思う」
 
「そういうのいいですね〜」
「でも3年間でチアもだいぶ覚えたよ」
「なるほど!」
 

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3日の14時頃、N高校のメンバーと一緒に千葉駅まで来て、そこで別れた千里は、バスで自分のアパートまで帰ると、窓を開けて換気をし、お掃除をした。しかしこのアパートは実質台所だけなので、すぐ終わってしまう。
 
うーん。。。と考えたあげく、桃香のアパートも掃除してあげようと思い至る。それで勉強の道具なども持った上で、車で桃香のアパートの所まで移動した。
 
お掃除をしている内にどんどん楽しくなってくる。トイレットペーパー、洗濯用洗剤、ガラス磨き、入浴剤、が切れているのに気付き、《せいちゃん》に頼んで買いに行ってもらった。
 
かなり掃除してゴミも2袋できた所で訪問者がある。その訪問者は“自分の鍵”でドアを開けて入って来た。
 
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「あ、こんにちはー」
と千里は掃除機の手を休めて笑顔で挨拶した。
 
「えっと、桃香は?」
「実家に帰っているんですよー。私は桃香の同級生で千里です。勝手にあがらせてもらって仮眠していたんですけど、散らかってるからついでにお掃除してあげようと思って。藍子さんでしたっけ?」
 
「あ、うん」
と言って藍子は中に入ってきた。
 
「今、お茶入れますね〜」
と言って、勝手に紅茶を出してきて、“5分ほど前から”沸かしていたポットのお湯で入れて、藍子に出す。
 
「お砂糖、ミルクは自由にどうぞ。って人の家(うち)なんだけど」
と千里は言っている。
 
「いや、ありがとう。ここはなんかみんなの溜まり場になっているみたいで」
と言って、藍子は千里が入れた紅茶を飲んでいたが
 
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「美味しい!」
と言う。
 
「それ、この夏にインド行った時に、私が買ってきた紅茶なんですよね〜。だいぶ友だちにも配ったから」
 
「へー」
などと言っていたが、藍子は掃除を続ける千里を見て突然
 
「あっ」
と言った。
 
「あんた、こないだ桃香をフェラーリに乗せてた」
と言う。
 
「ああ、こないだちょうど大阪まで行こうとしていたら、桃香が羽田に人を迎えに行くから途中まで乗せてというんで、送っていったんですよね〜」
 
「それだけ?」
「ですけど」
 
「桃香と恋愛関係とかはないんだよね?」
「まさか。私、男の子ですよ」
 
藍子は「ん?」と言って、一瞬、視線を天井に向け、考え込んだ。
 
「よく分からないのだけど」
「はい?」
「あんた、男なの?」
「そうですよ。何なら触ってみます?」
 
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と言って、《きーちゃん》に頼み、自分をドラッグストアで買物中の《せいちゃん》と交換してもらう。
 
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