広告:まりあ†ほりっく 第1巻 [DVD]
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■娘たちの年末年始(2)

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12月29日(水)。
 
合宿メンバーは朝軽く練習をしてから東京体育館に行き、男子の3位決定戦(10:00-)と決勝戦(12:00-)を見学する。その後、V高校に戻って、宿舎と体育館の清掃活動を行うことになっている。
 
一方千里は午前中、みんなが留守なのをいいことに、V高校の掃除道具を持ち出して、眷属のみんなにお願いして、房総百貨店体育館の宿舎に掃除機を掛け、モップ掛けをしてもらった。モップのヘッドはとても再利用できないくらい汚れたので、全部新品と交換した。掃除機のパックも全部新しいのと交換した。《いんちゃん》はカビキラーを持ってカビの出来ている所を見つけては噴射していた。
 
「みんなごめんねー。こき使っちゃって」
と千里は言うが
 
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「たくさん“食事”できたから、この程度平気平気」
と《こうちゃん》などは機嫌良く言っていた。
 
また《びゃくちゃん》に頼んで、この宿舎の周囲、更には体育館の敷地そのものの外周にムカデの忌避剤を散布した。
 
「これはもっと早くやっておくべきだったかもね」
「まあ今の時期はムカデもあまり活動してないけどね。夏前にもう一度撒こう」
 

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寝具のレンタルについては、新島さんに相談したら、知り合いのイベンターさんから安価にレンタルできる所を紹介してもらい、格安でレンタルすることができた。今日の夕方までには届けてくれるということであった。
 
お昼過ぎ、瀬高さんが29人乗りの小型バスを運転して体育館に乗り付けた。
 
「やっほー。呼び出してくれてさんきゅー」
「すみません。わざわざ鶴岡から」
「日給3万円に釣られて出てきたよ」
「その給料を払うことは一応内緒にしておいてください。ボランティアということにしておきますから」
「了解、了解」
「ちなみに大型持っておられましたよね?」
「大型二種持っているよ〜」
「だったら安心ですね」
「まあ大型免許を提示しないと、この車は借りられない」
「そうですよね!」
 
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荷物の持ち運びや補助席開閉の手間を考えて、補助席を使わずに25人以上乗るものをと千里が要望したのでこの車種になったのだが、総重量が11.3tと、わずかに11tを越えるため、中型免許では運転できないのである。なお、このバスは立って乗る人も入れれば一気に(運転手を含めて)58人を運搬できる。
 
「そうそう。レンタル料は結局幾らになりました?」
「354,800円」
と言ってレシートを見せるので、千里はその金額を即瀬高さんの口座に振り込んだ。
 
「私クレカで払ったけど、支払日までにこれ使い込んじゃったらどうしよう?」
「危ない時は相談してください」
と千里は笑って答えた。
 

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29日の午後、東京体育館で男子の決勝戦を見た旭川N高校のメンバーはV高校に戻ると、体育館組と宿舎組に分かれて掃除を始めるが、体育館のモップのヘッドが新しくなっているのに驚く。
 
「ああ。年末だから新しいのに交換するって言ってたよ」
と千里が言うと
 
「なるほどー!」
という声があがっていた。
 
「でもその新品のモップを最初に使うのは気が引けるね」
「いや、モップは汚れるのがお仕事だから」
 
一方で千里はV高校の先生に、モップをだいぶ汚してしまったのでヘッドを交換させてもらったと伝え、了承をもらっておいた。
 

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生徒達が掃除している間に司紗・夜梨子たちは余っている食材をこちらまで持って来たバスに積み込む。ついでに千葉合宿の間、こちらの食器や調理器具を借りられることになったので、それも積み込む。
 
そして運転手の瀬高さんほか、司紗・夜梨子・留実子の3人が乗って、房総百貨店体育館へと運んだ。留実子が加わったのは、力作業が必要だからである!彼女がいるのといないのとでは戦力が大きく違う。
 
体育館に着くと、瀬高さんがあずかっていた鍵で体育館を開け、みんなで荷物を運び込んだ。
 
「あちらが宿舎ですか?」
「そうそう」
「窓開いているけど、いいんですかね?」
「2年間閉め切っていたから、せめてもの抵抗で窓を開けて換気しているんだって。夕方までにはだいぶかび臭さとかも取れるんじゃないかな〜って言ってたよ」
 
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さてバスケ部員たちは掃除が終わると、みんなでV高校の職員室に行き、お世話になった御礼の挨拶をした。
 
「毎年お世話になって助かってます」
「いや、うちの宿泊施設を使ってくれて、それでメダル取ってくれたら、こちらも嬉しいよ」
とV高校の教頭はニコニコ顔で言った。
 
「来年も来れるといいね」
「はい!頑張ります」
 
「それではまだ食器等をお借りします。1月9日に返却に来ますので」
「うん。よろしく〜」
 

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その後、電車とモノレールを乗り継いで、夕方やっと千城台駅に到着する。ここに瀬高さんがバスで待機していて、メンバーを2往復して体育館まで運んだ。なお、指導係のボランティアで来ている人たちは数台の車に相乗りして、こちらに移動している。
 
瀬高さんの運転するバスの第1便で到着した子たちが体育館の中に入る。この中には教頭や白石コーチも入っていた。
 
「これが新しいコートのレイアウトか!」
と声があがる。
 
「もしかして台形が長方形になっちゃったの?」
と教頭が訊く。
「そうなんですよ。だから全世界の体育館管理者が悩んでます」
と白石コーチ。
 
「凄い変革だね!」
「あとスリーポイントラインも50cm遠くなったんですよ」
「それって入る確率がだいぶ落ちない?」
 
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「多くのシューターが入る確率が2〜3割落ちると言っています」
と薫。
「やはりね〜」
と教頭は難しい顔をして言う。
 
「もっとも、村山は全然変わらないらしいですが」
と薫が言うと
 
「さすが村山さん!」
と教頭は言って、納得するように頷いていた。
 

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全員そろった所で2つのコートに別れて各々で紅白戦をしてみたものの、やはりローキューツのメンバーがそうだったように、みんな制限エリアの境界をレイアップシュートのステップに切り替える目安にしていたので、戸惑ってシュートを外す子が多い。由実やソフィアなども、行き過ぎてしまって「あれ〜」などと声をあげていた。
 
「これは少しでも早くこのコートに慣れなきゃダメだと松崎君が言っていたのが正解だね」
と宇田先生も頷きながら言っていた。
 
部員たちが練習している間に、炊き出しチームは体育館の管理室と、宿舎のキッチンを使って御飯を炊きながら、今晩のおかずのトンカツとお味噌汁を作る。ここにはガスなるものが無かったので、プロパンボンベを運び込み、コンロが使えるようにしている。ボンベとコンロはレンタルである。電磁調理器やポット、オーブントースター、オーブンレンジ、などは千里が買ってきた。他にお風呂を焚くためのボイラー用灯油も買ってきた。試しに点火してみてちゃんとお湯が出ることを確認している。
 
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「千里にしては、よく1日でこういうものを抜けもなく手配したね」
と薫が感心したように言う。
 
薫は千里がこういうのが大の苦手であることを知っている。
 
「実は音楽イベントに色々関わっているから、そちらの会社の人からアドバイスしてもらったんだよ。寝具もガスもその人に手配してもらった」
「なるほどー」
 

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「でも私もインターハイとウィンターカップに2回ずつ遠征して、自分もコートに立ちたいなあという思いが募ってきました」
 
などと練習の合間に倫代が言っていた。
 
「倫代ちゃん、去勢したのはいつ?」
と千里が尋ねる。
 
「今年の6月12日です」
「女性ホルモン濃度のモニターは受けてる?」
「はい。それは千里先輩から言われたので毎月1回測定してもらっています。毎回ちゃんと女性の正常値の範囲内です」
 
「ということは、来年のインターハイとウィンターカップの道予選までは出られる可能性がある」
「はい。今回東京に出てきた機会に、バスケ協会に呼ばれまして、向こうの指定のお医者さんにも診察を受けたんです。それで2年前から女性ホルモンを飲んでいたこと、その投与の記録が病院にちゃんとあることを評価してもらって。直前の検査は必要だけど、道大会までなら出られるかも、ということなんですよ」
 
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「やはり本戦はだめなんだ?」
「性転換手術済みというのが条件みたい」
「じゃ、せっかく東京に出てきたついでに性転換手術しちゃったら?」
 
「え〜〜〜!?」
 
「すぐ手術してくれる病院紹介できるけど」
「ちょっと待って下さい。心の準備が・・・」
 
私は女の子にするよと言われてから心の準備をする時間って1分くらいしか無かったよなあ、と高校2年の時のできごとを思い出しながら、焦っている様子の倫代を見ていた。
 

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寝具は夕方トラックで配送されてきたので、各自自分の布団を持って部屋に入る事、ということになった。泊まり込むのは女子部員35名(3年生を除く)、OGグループ11名(3年生3人を含む)、宇田先生・白石コーチ、南野コーチの合計49名である。結局男性2人は体育館の管理室で寝ることにし、宿泊棟の方は女性だけで使うことにした。夜間施錠して出入りを無くすためでもある。
 
部屋割りは、南野コーチ、性別が微妙な部員・横田倫代と留実子を1つの部屋に割り振り、以下下記のようにする。
 
1号室 南野コーチ、留実子、薫、横田倫代
2号室 暢子、千里、紫、由実
5号室 ソフィア、不二子、胡蝶
6号室 夏恋、川南、司紗、夜梨子
3-4,7-12号室 残りの32名を4人1部屋。
 
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桃香は29日のバイトを終えると、帰省の準備を始めた。藍子は何とかなだめて浮気疑惑を解消することができたものの、千里とは結局25日の朝以降全く遭遇していないのが心残りではあった。
 
帰省の手段については、藍子とのデートに予定外の予算を使ってしまったので、格安ツアーバスで帰るつもりだったのだが、あいにくこの時期は利用者が無茶苦茶多い。結局桃香は格安バスの予約も取ることができなかった。
 
困っていた時、千葉県館山市に住んでいる伯父の洋彦(きよひこ)夫妻が
「今年の正月は車を運転して高岡に行こうと思っているんだけど、桃香ちゃん一緒に乗っていく?」
と言ってきたので、相乗りしていくことにした。
 
桃香の父の十七回忌(2008)の時に洋彦が入院していて顔を出せなかったので、一度線香を上げに行っておきたかったのだという。
 
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「俺もいつお迎えが来るか分からんし」
なとと洋彦は言うが
「おじさん、あと40年は大丈夫って顔してますよ」
と桃香は言っておいた。
 
洋彦は現在60歳であるが、糖尿で2年前は大変だったのである。現在禁酒禁煙の上、1日1800kcalというカロリーコントロールをしている。ただ幸いなことにカロリーコントロールだけで済んでおり、食塩などの制限は無い。禁酒禁煙も自主的に決めたものである。
 
「桃香ちゃんの孫がお嫁に行くまで頑張る」
などと何度か言っていた。
 
「孫が男の子だったら?」
「その時は女装させて」
 

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今回洋彦が
「運転は僕と桃香ちゃんの交替でいいよね?」
と言ったので桃香は免許証を母に取り上げられていることを言う。
 
「ありゃりゃ。でも1人で運転するのは辛いから、運転してよ。免許証は僕が言ってみるよ」
と言って、桃香の母に免許証の件を言ってあげた所、母は免許証を桃香に郵送で送って来た。
 
おかげで、桃香は免許を取った1週間後に母から取り上げられて以来、1年半ぶりに免許を手にすることができたのである。
 
「1年半運転してなかったら、結構忘れてない?」
「忘れているかも」
「じゃ最初少し練習しようよ」
 
と言って洋彦は桃香を館山に呼び、田舎の交通量の少ない道路で練習させてくれた。すると元々運動神経が良いこともあって2〜3時間運転しただけで、感覚をほぼ思い出すことができた。
 
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そしてこの経験が3ヶ月後に大いに役立つことになるとは、この時点で桃香は知るよしも無かった。
 

29日夕方から、洋彦・恵奈夫妻と桃香の3人でカローラSE Saloon Riviere 1498cc 4AT に乗り込み、千葉から高岡までの旅に出た。
 
「東名経由ですか?関越経由ですか?」
と桃香は訊いた。
 
東京方面から高岡に行くには、関越→北陸道(上り)というルートと、東名→東海北陸道というルートが主としてある。他に上信越道を通るルート、中央道から長野道へ行くルート、中央道から東海北陸道に行くルートなどもある。なお、料金は実際にどこを通っても最短ルートの料金でよい。
 
「東名は絶対混むよ。関越を通ろう」
と洋彦は言う。
 
それで最初洋彦の運転で外環道経由で関越に入り、上里PAで休憩して夕食を取ってから桃香が運転して関越をひたすら北上する。
 
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なお上信越道は一車線区間がある上に、夜間は妙高高原で濃霧が発生するから辛いよと洋彦が言うので避けることにして、遠回りにはなるものの、長岡まで関越で北上してから北陸道に乗るルートを選択する。
 
越後川口SAで休憩。ここでまた洋彦に交替し、長岡JCTを通って北陸道に入って西進する。もう既に恵奈は眠っている。米山SAで運転交替。深夜ではあるが、深夜に起きているのは桃香は全く平気だし若くて体力もあるので、ここから有磯海SAまで桃香が1人で運転した。トンネルの多い区間でラジオが入らないよと言われていたので、MP3プレイヤーからトランスミッターでカーラジオに飛ばしたものを聴きながら運転していた(この車にはカーナビなどといった上等なものは付いていない)。
 
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桃香は1年半運転していなかったにも関わらず結構うまく運転できるなあと自分では思っていた。しかしこれは一般道より高速の方が運転しやすいこと、夜間で車の量が少なかったことがある。
 
有磯海で朝食を取った後は、洋彦が運転して、小杉ICを降り、30日の朝9時頃、桃香の実家に到着した。
 

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