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■娘たちよ胴上げを目指せ(10)

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「でもよくドバイ空港で迷子にならなかったね」
と彰恵が言う。
 
「田中コーチのお友だちでドイツに住んでいる鈴木さんという方がプラハ空港からチェンナイ空港まで付き添ってくださったんですよ。おかげでドバイでスムーズにトランジットできたし、チェンナイ空港では、その鈴木さんがタクシーに乗せて下さったんです」
 
「それは良かった」
 
ふーん、“お友だち”ね〜と千里は思う。どうも玲央美も同じ事を考えているようだ。おそらくは藍川さんの眷属なのだろう。
 
「実はプラハ空港で航空券買ってくださったのも鈴木さんで。私チェコ語分からないし」
「いや、英語くらい通じると思うぞ」
 

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「でもエミレーツ航空(EK)はフライトアテンダントさんが、すっごい美人ばかりでした」
「ほほお。さすがお金持ち航空」
「あれって絶対美しさを基準にして採用してますよ」
「うんうん。そう言われてるよね」
 
「その中に鈴木さんのお知り合いのフライトアテンダントさんがおられて、向こうから『鈴木さん、いつもご利用ありがとうございます』なんて話しかけられてました」
「へー!」
「エミレーツの常連というのは凄い」
「お金持ちなのかなあ」
 
「それで、このフライトアテンダントさん、実はtransgenderなんだよと鈴木さんがおっしゃって」
 
「え〜!?」
 
「エミレーツの常連さんたちの間では割と有名だって言っておられました」
「そうなんだ!」
 
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「ついでに鈴木さんが、ジョークで私のことHer,tooと言っちゃって」
「それ、ジョークなのか、それとも鈴木さんは本当にそう思い込んでいたのか」
 
「いや、その鈴木さんがプリンを男の子と思い込んでいたから、性別男で航空券買っちゃったのかも」
「あり得る、あり得る」
 
「それでそのフライトアテンダントさん、私に、まだ去勢してからそんなに経ってないのかな。ちゃんと女性ホルモンしてたら、もっと女らしくなれるから自信持ってねと言ってました」
 
「あははは」
 
「私、女性ホルモン飲んだ方がいいのかなあ」
「やめなさい。生理不順になるから」
 
「でも物凄い美人さんでしたよ。小さい頃から女の子の名前付けられて、女性ホルモン与えられて娘として育てられて、学校とかにも女生徒として通ってたらしいです。それで16歳で性転換手術したんだって」
「すごいなあ」
 
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「それって、本人の意志と無関係に女の子にしちゃったんだったりして」
「でも美人に育ったのなら良いのでは」
「しかもエミレーツのフライトアテンダントなんて、凄いエリート」
 
「おっぱい大きいですね、羨ましいと言ったら、彼女は、おっぱいはホルモンだけで育てたと言ってました。あなたもまじめに女性ホルモン飲んでたら、すぐ大きくなるよって」
 
「ああ。きみちゃんは今はまだおっぱいがそんなに大きくないけど、これからバスト発達してくると、それが邪魔になるから、どうしても動きの俊敏さが落ちるよ」
という声も出ている。
 
「それ私も言われた」
と渡辺純子。
 
「じゃ、純ちゃん、おっぱいが大きくなる前に、一緒に性転換しちゃおうか」
「あ、それいいですね」
 
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「勘弁して。君たちが性転換しちゃったら、バスケ協会の上の方が真っ青になる」
と高田コーチが笑いながら言った。
 

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「ところで、さっき私が入って来た後、しばらく練習を見ていて、驚いたような顔して出て行った観客がいましたね」
と王子は言う。
 
「あの人はたぶん中国の情報収集やってる人だと思う」
と千里が言った。
 
「よく分かるね」
「あの人毎日来てるんですよ。お仲間っぽい人と会話している声が微かに聞こえたけど、北京語だったもん」
「耳もいいな」
 
「北京語なら台湾の可能性もあるけど、服装の雰囲気が中国っぽいんですよね」
と千里。
「ああ、確かに台湾と中国では服装のセンスが違う」
と彰恵。
 
「いや、実は僕も中国っぽいなと思ってた。言葉までは聞き取れなかったけど」
と高田コーチも言っている。
 
「まあ私は出場しないから、私のこと報告しても無意味ですけどね」
と王子。
「うん。でも純粋に日本チームに凄い選手が来たってんで驚いたんだと思うよ」
と高田コーチは言った。
 
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この日10月2日は準決勝の2試合が行われる。昨日のように情報制御する必要は無いので、第1体育館で18時から日本対台湾、20時から中国対韓国である。
 
千里たちは午後少し仮眠して15時頃に起き、早め軽めの夕食を食べてから会場に行った。王子も会場までは来て、コートの所まで荷物を運び込むのを手伝ってくれた。その後、客席の方に移動したが、この時、王子は世界選手権用の15番のユニフォームを着ていた。ユニフォームを着た人がコートに入ってきたのにすぐ出て行って戻って来ないようなので、審判から質問された。
 
「さっき出て行ったのは君たちのチームメイトじゃないの?」
「いえ。荷物をコートまで運んでくれただけです。彼女が着ていたのはU20のユニフォームではなく、世界選手権に出たフル代表のユニフォームです。向こうが終わったので応援に来てくれたんですよ」
と朋美が審判に説明した。
 
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「びっくりした。U20のでなくても、できたら代表のユニフォームじゃない、普通の服を着てもらった方がいい」
 
「すみませーん。普段着をうっかりチェコに置いて来たらしいので、後で買いに行かせます」
 
王子はU20のユニフォームとフル代表のユニフォームの他は下着数回分しか持って来ていなかったらしい。ついでに財布もチェコに忘れてきた!というので結局千里が2万ルピー(約3万8千円)貸してあげた。
 

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やがて台湾との試合が始まる。
 
台湾とは予選リーグの初日に対戦して60-94で日本が勝っている。こちらもあの時は本気では無かったが、向こうも必ずしも100%ではなかった。しかし今度は勝った方のみ世界選手権の切符が得られる大事な試合である。
 
台湾は最初から全力で来た。
 
いきなりPGのほかフォワード4人を並べて猛攻の態勢である。
 
しかしこちらは朋美/星乃/彰恵/江美子/サクラ、という「いなす」のがうまいメンツを使って、向こうの勢いを巧みに空回りさせる戦術で対抗していく。結果的にこのピリオドは相手の猛攻っぽい攻撃があったにも関わらず、18-20と日本のリードで終えた。
 
第2ピリオドで、台湾は15番を付けている武(ウー)さんを出して来た。
 
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彼女はメンバー表によると1993年生まれらしい。高校2年生だ。高校生でU20に加えられたということは、かなり優秀な子なのだろう。確かに身長がメンバー表では180cmと書かれているが、もう少しありそうな感じである。この体格だけでも将来有望だ。
 
彼女は予選リーグでもちょくちょく出ていたものの、あまり千里の記憶には残っていなかった。優秀なプレイヤーだが、まだ「次回以降お楽しみ」の範疇かという気がした。
 
「武さんは昨年U16に入っていたんですよね」
と純子が言う。
 
「今年のU18には入ってなかった?」
「ええ。多分両方兼任したら大変だからじゃないですかね」
「確かに」
 

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彼女はそんなに目立った感じのプレイはしていなかった。4分ほど経った所で台湾側は交替用の選手がTO席の脇の交代要員席に来たので、彼女と交替かな、と千里は思った。
 
その時である。彼女がサクラのシュートをきれいにブロックすると、そのこぼれ球を自ら確保し、そのままドリブルで走り出した。早苗が先に回り込むが、一瞬早苗の前で停まったものの、絶妙なバックロールターンで早苗を抜く。彰恵が何とか帰り着いてゴール近くで彼女を待ち構えている。
 
すると武さんはスリーポイントラインの所から美しいフォームでシュートを撃った。
 
これがきれいに入る。
 
すると武(ウー)さんが何だか物凄いはしゃぎようである。
 
「何か言ってる」
「何だろう?」
 
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と江美子や純子が言っていたら、中国語(北京語)は割と得意っぽい玲央美が言った。
 
「スリーなんて初めて入ったと言っている」
「ああ」
「それは嬉しいよね」
 

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台湾は彼女のプレイを見て、交替させるのを中止したようで、交代要員になっていた人がベンチに戻った。
 
そしてこの後「ウー・タイム」が来たのである。
 
続けざまに3つゴールを決め、更にスリーをもう1発決める。
 
彼女の活躍で台湾は日本に6点リードとなる。
 
高田コーチが言った。
 
「純、あの子は君より1つ下の高校2年生だよ。君があの子を停めて来なさい」
「はい」
 
それでボールがアウトオブバウンズになったタイミングで純子は彰恵と交代でコートインした。
 
武(ウー)さんにマッチアップする。
 

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武さんが調子に乗っているので最初は抜かれて8点差となる。
 
しかしすぐに渚紗がスリーを入れて5点差に詰める。
 
次の台湾の攻撃でも、武さんは純子をうまいフェイントで抜いて得点を入れ7点差と突き放す。しかし「ウー・タイム」はここまでだった。
 
純子はせっかく出してもらったのに2度続けて抜かれたので、自分でほっぺを叩いて気持ちを引き締めていた。
 
日本がサクラの得点で2点返して5点差に戻した後、台湾が攻めて来る。武さんにボールが渡る。武さんと純子の一瞬の対峙。武さんは純子が左右に身体を揺らしながら対峙しているのを見てシュートに切り替えた。
 
しかしそのドリブルに山を張っているかのような動作が実は純子のフェイントだった。
 
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武さんのシュートにきれいに合わせてジャンプし、ブロックする。
 
こぼれ球を渚紗が確保。純子にトスして、純子がドリブルで走り出す。相手ディフェンスをひとり抜く間に武さんが戻り、純子の前に回り込む。純子がドリブルしながら再度武さんと対峙。純子は一瞬左側に進もうとしたものの、そこから高速な切り替えで右側を突破。武さんは完璧にこのフェイントに引っかかって向こう側に行ってしまっていた。台湾・萬(ワン)さんのブロックのタイミングをずらしてきれいにシュートを決める。
 
これで3点差。
 

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そしてこの後、武さんと純子はこのピリオドだけで6回対峙したものの、純子が全部勝った。やられたのは最初の2回だけであった。そして純子はその間に連続で得点を決め、日本が逆転する。更に渚紗のスリーもあり、40-45と日本が5点リードの状態で前半を終えた。
 
このピリオドはまさに、武vs渡辺が全てだった。
 
「気持ち良かった」
と純子がベンチに戻って来て笑顔で言った。
 
「勝つと気持ちいいよね」
と江美子が言っている。
 
「凄い子でしょ?」
「はい。マッチアップしてて分かりました。将来、恐い敵になりそうです」
「向こうも今日は純にやられたんで、必死に練習してくると思うよ」
「私もそれ以上に頑張ります」
 

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第3ピリオドには星乃を出したが、ここで彼女はアシストに徹して、自分ではシュートしなかった。朋美とダブル司令塔のような感じになり、台湾チームを翻弄する。
 
この星乃の「内助の功」でこのピリオドは14-21と7点差を付け、ここまでで54-66と12点差になる。
 
第4ピリオド、台湾は再び武さんを出してきたので、こちらも純子を出す。2人の対決はこのピリオドで12回発生して、純子の9勝2敗1分という感じになった。武さんが日本に通じないようだというので彼女は後半は別の人に交替した。
 
向こうは最後はPGも入れずにフォワードを5人並べる態勢で攻撃をしてくるが、こちらは、彰恵・百合子・江美子というメンツがそれを受け流す感じでプレイし、最終的には74-89と15点差で勝利した。
 
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これで日本は決勝に進出するとともに、来年のU21世界選手権の切符を手にした。
 

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