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■娘たちよ胴上げを目指せ(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-05-12
 
「でも握手もしてもらったし。これで絶対優勝できると思う」
と留実子は言った。
 
「おお、それは凄い!」
 
「千里は何かもらったね?」
 
「うん。彼はその人に必要なものを出現させるんだって。師匠に相談しろと言われたから、帰国してから相談してみる」
 
と言って、千里は3つの石英の珠(藤雲石、ローズ・クォーツ、グリーン・アメジスト)をビニール袋に入れ、バッグにしまう。
 
「それ税関で何か言われないかな?」
「下着の中に入れておけば平気」
「ふむふむ」
 

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“彼”の正体については、現地日本人会の人たちは大半が把握したようである。炊き出しに並んでいた地元の人たちはほとんど気付かなかったようだ。日本人選手団・スタッフの中では気付いたのは半数くらいのようである。早苗などは「誰だろう?」みたいな顔をしていた。
 
「でも千里、インドの言葉分かるんだ?」
と尋ねられる。
 
「今のは何というか。同時通訳してもらったというか」
「へ!?」
 
「“彼”は基本的にはマラーティー語を話すんだけど、ヒンディー語、ウルドゥ語なども理解はできるらしい。公演などで英語を話す所は何度か目撃されているけどごく簡単な英語しか使っていなかったから、あまり得意ではないのだろうという話だったよ」
 
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と千里は言った。
 
「なんか他人事のようだ」
 

「でも、サーヤのこと、可愛いお嬢ちゃんと言ってたね」
と千里は話題を変える。
 
「うん。ちょっと感動した」
と留実子は言っていた。
 
「ちゃんと女の子に見えたんだね」
と星乃が言う。
 
「ああいう人はその人の姿形じゃなくて、その人の本質をズバリ見ちゃうから、女の子と判断したんだよ」
と千里。
 
「サーヤって中身は男の子と思ってた!」
「うーん。。。僕の中身は結構女装男子かも」
「は!?」
 

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「サーヤは女物の服を着ることを強制されると反発するけど、女物の服自体が嫌いな訳では無いからね」
と千里は言う。
 
留実子は曖昧に微笑んでいる。
 
「そういえば、サーヤは成人式はどうするんだっけ?」
「母ちゃんが振袖のレンタル予約しようかと言ったけど、どうせ僕に合うサイズのは無いから要らないと言った。まあ、ジャージの上下で出席しようかな」
 
「サーヤなら、それも様になる」
 
「私は特注で注文したよ」
と玲央美が言う。
 
「おお、さすが!」
「私くらいの身長に合わせられる特別に長く作られた生地が存在するんだよ。それを仕立てられる人も実は少ないらしい。先月中旬に頼んだんだけど、今の時期がギリギリと言われた」
 
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「いくらした?」
と彰恵が訊く。
 
「70万」
「高ぇ〜〜〜!」
「でもさすがレオちゃんだよ。私の給料じゃそんなの買えない」
などと早苗が言っている。
 
純子なども「わぁ・・」という感じで玲央美を憧れるように見ている。
 
「早苗も高級取りっぽい気がするけど」
「銀行の給料って、一般に考えられているほどは高くないんだよ」
と早苗。
「うん。私も今までの貯金と冬のボーナス全部注ぎ込む」
と玲央美。
 
「僕はボーナスでも70万なんて無理だ」
とサクラが言っている。
 
「レオと同じ銀行なのに?」
「レオと僕とじゃ給料が違いすぎるよ」
「あぁ・・」
 
「サクラは実家に給料の半分を仕送りしているから、なお厳しいんだと思う」
と玲央美が言っている。
 
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「私、仕送りとか全然してない親不幸娘だし」
と玲央美。
 
「サクラって偉い」
という声があがる。
 
「ここはお金持ちの千里がサクラとサーヤに彼女たちの背丈に合う特製振袖をプレゼントしてあげなよ」
 
などと江美子が言っている。サクラも厳しいが、留実子は更に経済的に厳しい状態にあることを江美子は知っている。
 
千里は苦笑した。
 
「でも今からでは、お仕立てが間に合わないのでは?」
と心配する声がある。
 
「それなんだけど、千里と話していたんだけど、実はインクジェットでもよければ、20-30万で、しかも帰国してすぐ頼めば何とか間に合うんだよ」
と玲央美が言う。
 
「何それ?」
 
「本来、友禅の振袖は人間が手作業で絵を描く。それだと最低100万円以上する。ただしゴム糸目という簡易製作法ならもう少し安い。私が頼んだのは手作業で描く代りにスタンプ押すみたいにして作る。それで60-70万円で済む。ところが、最初から模様をインクジェットプリンタで白い生地に印刷して作っちゃうものもある。これだと安いのだと15万とか20万で出来ちゃうんだよ」
 
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と玲央美は説明した。
 
「それ凄い」
「ただ、印刷だから、絵画とポスターの違いのように、その差が歴然としているんだよね」
 
「いや、安ければ構わん」
 
「レンタルでは無理っぽいのは、百合絵もでは?」
「私は春に頼んだ。実は私も60万掛かった」
と百合絵。
「きゃー!」
「私と一緒に頼んだんだよ。私は50万」
と彰恵。
 
「みんなお金はどうしてんの〜?」
「母ちゃんが積み立てしててくれた」
と百合絵。
「お祖母ちゃんが出してくれた」
と彰恵。
 
「積み立てしてくれるお母ちゃんや、ポンと出してくれるお祖母ちゃんが欲しい」
という声があがる。
 
「ステラはどうすんの?」
「レンタル。背の高い人用のは在庫が少ないから、早い時期に押さえておかないと厳しい。でもレンタルでも15万した」
と星乃は言っている。
 
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「借りるだけで15万〜?」
「振袖って流行もあるし、貸すのは成人式の時だけだし、3〜4回貸して元が取れないとまずいらしい」
「いいやつだと、レンタル料30万くらいするよ。私は12万の借りる」
と渚紗。
 
「トモさんは去年どうしたんですか?」
「私はレンタル。5万。私の背丈なら、ふつうにレンタルできる」
「そっかー!」
 
「ツル(早苗)やキラ(江美子)、来年だけどユキ(雪子)も普通の品のレンタルで行けるよ」
と朋美は言う。
 
「キラは普通のサイズで足りる?」
「微妙かも。やはり高身長さん用のでないと難しいかも」
 
「実は私も何も考えてなかった。私もレンタルが難しかったらインクジェットコースかなあ。20万くらいなら何とかなると思う」
と江美子は言っている。
 
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「私は特注コースですよね?」
と純子。
「そうなるね」
「純、貯金しときなよ」
 
「すると、レンタルが厳しくて、まだ頼んでないのは?」
「やはりサクラとサーヤだな」
「華香と誠美も絶対無理。あの子たちも何も考えてない気がする」
 
「桂華もレンタルでは厳しいと思うけど、あの子頼んでたかなあ」
「桂華はお母さんがしっかりしてるっぽいから、もう頼んでたかも」
「あとで電話してみよう」
 
「で、結局、サクラとサーヤの振袖は?」
 
「じゃ優勝したら、私がプレゼントしてもいいよ」
と千里は言った。
 
千里としては無条件でそのくらい出してあげてもいいが、何かの報酬という形にしないと、留実子はいいとしてサクラが遠慮するだろう。
 
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「じゃ頑張る」
と留実子が言ったので、迷うような顔をしていたサクラも
「じゃ僕も言葉に甘えて」
と言った。
 
「よし。頑張って優勝して、サクラとサーヤが振袖で成人式に出られるようにしよう」
と星乃は言った。
 

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お昼が終わった後、ホテルに戻った所で世界選手権の結果が入った。最終戦の9-10位決定戦では、かなり競ったものの最後は84-79でブラジルに敗れた。これで日本は今大会10位で終わった。しかしこれは1998年に9位になって以来の成績である。
 
世界選手権・五輪の成績
1990 12位 1992 × 1994 12位 1996 7位 1998 9位 2000 × 2002 13位 2004 10位 2006 × 2008 × 2010 10位
 
三木エレンは1975年7月生。1992年のU18 ABC選手権(現在のU18アジア選手権。ABC = Asian Basketball Confederation. FIBA-Asiaの旧名)で活躍。翌年のジュニア世界選手権(現在のU19世界選手権)で8位になるのに貢献した。1995年のアジア選手権で初めてフル代表になり、1996年のアトランタ五輪に出場して7位になった。アトランタに出場した人はもうみんな現役引退しており、彼女はアトランタ7位入賞の最後の戦士である。
 
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この日、チェンナイではL2の3位決定戦と決勝が行われた。その結果、L2の最終順位は次のようになった。
 
1位タイ 2位ウズベキスタン 3位スリランカ 4位インドネシア
 
この大会はこれが最後なので、入れ替え戦は無しである。
 

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ところで今回のU20日本女子代表では直前になって選手の入れ替えが3回も起きたため、背番号の流用も3度起きている。
 
13.高梁王子→渡辺純子
14.中丸華香→花和留実子
9.橋田桂華→竹宮星乃
 
桂華は9番のユニフォームを返却しようとしたが、記念に持ってなさいと言われて、退院したら実家に持ち帰ることにしたようである。王子と華香は急に交替したため、U20のユニフォームを持ったまま、フランスに渡っている。むろんそれとは別にフル代表のユニフォームを支給された(王子は15 華香は6)。U20のユニフォームとフル代表のユニフォームは、どちらも白(ホーム用)・黒(アウェイ用)の胸に JAPAN の文字が入っているが、ロゴその他に微妙な相違がある。
 
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10月2日。朝御飯を食べた後、少しミーティングをしてから午前中の練習を中学校の体育館でおこなう。その練習をしている最中に思わぬ来訪者がいる。
 
「プリン!?」
「なぜここへ?」
「と言うより、どうやってここへ?」
 
それは昨日までチェコで世界選手権を戦っていたはずの高梁王子であった。
 
「ユキさん入れると7人対6人で紅白戦の人数が合わないでしょ。私も入れてください」
「歓迎歓迎」
 
それでU20の練習用ユニフォーム背番号13を付けたままの王子が練習に加わり紅白戦をする。つまりこの日は13のU20ユニフォームを付けているのが王子と純子と2人いた。
 
「プリン凄い進化してる!」
「世界の強豪と戦って、毎日自分が進化している気がしました」
「凄い凄い」
 
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お昼御飯の時に聞いてみると、王子はこのようにしてチェンナイに来たらしい。
 
世界選手権、最後の9-10位決定戦が現地時刻の午前11時前に終わった。王子はその後の様々な行事はパスさせてもらって必要最低限のものだけ持って(荷物の整理は華香に頼んだらしい)、現地日本人会の女性の車に乗せてもらい、プラハに向かった(高速道路を通って2時間)。
 
そしてプラハ(PRG UT+2)から次の連絡でチェンナイ(MAA)に飛んできたのである。
 
PRG 16:00(EK140 5:59)23:59 DXB(UT+4)
DXB 02:45(EK544 4:05)08:20 MAA(UT+5.5)
 
ドバイ空港(DXB)はトランジットするだけなら入国する必要は無い。乗換通路を通って乗り継ぐことができる。
 
そしてインドの入国ビザであるが、実はインドのビザは世界一取得の手続きが面倒と言われているのだが、王子のビザはU20アジア選手権に参加するため、8月中に取得されていたのである(時間が掛かる恐れがあったので早めに手続きしておいた)。
 
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「航空券代とかプラハとの往復ガソリン代とか、チェンナイ空港からここまでのタクシー代とかは。田中コーチ(藍川真璃子)が出してくれたんですよ。それと代表チームとの交渉もしてくれて、私だけこちらに来れるようにして下さったんです」
 
「なるほど!藍川さんのしわざか」
と高田コーチが納得するかのように言った。
 
「でもその場で航空券買ったせいか、こういうことになっていて」
と王子が航空券の半券を見せてくれる
 
「ん?」
「性別が男になってるじゃん」
 
そこには Kimiko Takahashi age:18 sex:M という文字が印刷されている。
 
「そうなんですよ」
「よくそれで乗れたね。プリン、パスポートは?」
「ちゃんと女になってますよ」
 
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といってそれも見せてくれる。
 
「航空券とパスポートの性別が違っていたらふつうは乗れない」
「でもプリンは見た目が男の子だから、Mの航空券で乗れちゃったのかもね」
 

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