広告:素晴らしき、この人生 (はるな愛)
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■女子高校生・3年の冬(5)

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大晦日はプリンセスの橘丘新町店で予約しておいた握り寿司(12人前)を買ってきてみんなで食べた。ほかに鰤(北陸新鮮産業から西日本新鮮産業経由で買った能登の寒鰤)をお刺し身にして出した。お餅も食べられるようにしていたので、清香も公世もぜんざいやきなこ餅にしてたくさん食べていた。なおここのお餅は清香が「こっちが好きだ」というので、北海道で調達してきた切り餅である。
 
ほかにも、おせちの昆布巻き・栗きんとん・伊達巻き・かまぼこ・寒天・田作りなどもどんどん消費された。
 

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「どうでもいいことだが」
と清香は言った。
「餅の外側にあんこのある奴と餅の内側にあんこのある奴をどう言い分ける?」
「うーん。餅の中にあんこがあるのは“あん餅”だと思う」
「大福というのは?」
と公世が訊く。
「大福の外側は餅では無く求肥(ぎゅうひ)だという気がする」
 
「だったら、餅の外側にあんこがあるのは?」
「うーん。あんころ餅かなあ」
「金沢に“あんころ”というお菓子があるね。お土産でもらった」
「金沢のあんころの場合は中身が求肥(ぎゅうひ)だね」
 
「おはぎ・ぼた餅との違いは?」
「おはぎ・ぼた餅は中身がごはんだね。ただし一般に餅米を炊いて“半殺し”にする」
「完全に撞くのは全殺しだっけ?」
「みなごろしというね」
「おはぎとぼた餅の違いは?」
「諸説あって、よく分からないというのが実情だね。半殺しがおはぎで、皆殺しがぼた餅という説もあるし、こしあんがぼた餅で粒あんがおはぎだという説、丸いのがぼた餅で、おはぎは俵型という説、小さいのがおはぎで大きければぼた餅という説もある。また関西ではおはぎと言って関東ではぼた餅と言うという説もある。また春に食べればぼた餅で秋に食べればおはぎという説もある。更におはぎは女言葉だという説もある」
 
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「結局よく分からないのか」
 
「全部おはぎと言う人もいるし、全部ぼた餅と言う人もいる。だから関東関西説がわりと正解に近いのかもしれない」
「ふむふむ」
 

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1月1日の朝は姫路の家ではお屠蘇代わりにコーラで乾杯し、お雑煮を食べた。お雑煮はすまし汁で、かまぼこ、ほうれん草、しいたけ、鶏肉などを鍋には入れていたが、清香はほうれん草が入らないようについでいたようである。お餅はオーブントースターで焼き、汁をついだ椀にアドオンした。
 
おせちは昆布巻きや筑前煮がよく売れていた。
 
留萌の村山家ではお屠蘇の容器(ポリプロピレン)に薬屋の店頭で無料配布していたお屠蘇のティーバッグを入れ、清酒・松竹梅を大晦日にそそいでおいたものを使用した。両親が飲んだほか玲羅(実は代役のライラ)も「高校生になったらお屠蘇くらいいいだろ?」と武矢から言われて一敗飲んだが「まず〜」と思った。そのあと雑煮を食べたが、麦味噌の味噌汁にかまぼこ・大根が入っていた。餅は安い成型餅を鍋で具と一緒に煮たので崩れかけていて武矢が文句言っていた。
 
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(市販の餅には蒸した餅米からちゃんと撞いたりこねたりした物と、餅米粉を蒸して練って成型した物があり、価格は倍以上違う。成型餅は崩れやすい)
 
ロゼ家ではお屠蘇代わりのカルピスソーダで乾杯し、雑煮を食べた。白味噌仕立てで、かまぼこ・大根・里芋・海老などが入っていた。お餅はオーブントースターで焼いてから鍋に加えている。本当に撞いた餅だし一度焼いているので鍋で煮ても崩れたりはしなかった。
 

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1日の午後には姫路の家には清香のお母さんが来て、お寿司を持って来てくれたので頂いた。また
「あんたたちはまだお酒は早いから」
と言って“播磨サイダー”という炭酸飲料を置いていった。
 
なお30日から3日まで百合さんはお休みだが食べる物はたくさんある。
 
2日には公世と清香が立花K神社(北町社)まで初詣に行って来た。千里(ロビン)は自分が立花K神社に行くと話がややこしくなるので行かなかった。なお夜梨子は上町社のほうでお務めしている。
 

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2日は初稽古をしたが、双葉も来て、千里−清香、公世−双葉で対戦した。
 

2日の夕食にはぶりの照り焼きを作った。また牡蛎フライをどっさり揚げたがあっという間に無くなった。双葉も食べて行った。
 
「タルタルソースが手作りっぽい」
「手作りだよ」
「でも美味しい。タルタルソースだけでご飯が行けそうだ」
と清香。
 
「明日は牡蛎飯にしようか」
「私は牡蛎フライのほうが好きだ」
「んじゃ明日も牡蛎フライで」
 

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「ここはお餅が四角い」
と双葉が言っていた。
「丸い餅は鏡餅だ」
と清香。
 
「この家は東日本だからね。電気も50Hzだし」
「うそ」
「北海道で使ってたソーラー発電のシステムを丸ごと持って来たから50Hzの電気が作られるようになってるのよ」
「へー面白ーい」
「だから姫路市内の電機屋さんで洗濯機とかを買ってくるとパワー不足になるはず」
「なるほどー」
「だからこの家の家電品は北海道から3年前に持って来たものか、東京の友だちに買って送ってもらったもの(詳細後述)」
「ああ」
 

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3日には牡蛎フライに加えて鶏の唐揚げも作ったがそれもよく売れた。4日はビーフシチューも作った。

1月7日の朝、千里は「七草がゆ作ろうか」と言ってみたが、清香も公世も
「いらない」
と言ったので作らなかった。
 
留萌のロゼ家でもロゼが訊いてみたが玲羅が「要らない」というので作らなかった。
 
「昔は野菜不足を補うのに良いメニューだったんだろうけどね」
「野菜サラダとかの方がマシ」
 
というのでロゼ家でも姫路でもコンビニで野菜サラダを買ってきて玲羅と公世に渡した。
 
清香は「私野菜きらーい」と言っていた。
 
千里は密かに、昨年の夏、冷麺で双葉はやられて清香は平気だったのは、清香が食べなかったであろうトマトかキュウリに原因があったのではと疑っている。
 
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なお留萌の村山家では武矢のリクエストで津気子が七草セットを買ってきて7日の夕方!に作った。でも作った津気子本人は食べずに食パンを食べていた。津気子も食べてないのでライラも食べず、お餅を食べていた。
 

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1月上旬、千里はイーグレット美術館を訪れた。たくさん招待状をもらったので、他の巫女さんは10-11月くらいに来ていたのだが、千里は忙しかったので年明けになってしまった。
 
いつも神社に来ている白井千枝子さん(イーグレット会長の孫)に案内してもらい、館内を巡っていたらバッタリと播州銀行の支店長さんと遭遇する。お互いに会釈したが、支店長は初老の男性と一緒である。千枝子さんの視線から、どうも彼女の祖父の、イーグレット会長のようだと判断した。支店長が言った。
 
「村山さん。ここと何か関わりがおありですか?」
 
一方、千枝子は言った。
「村山さん、銀行の支店長さんとお知り合い?」
 
どうも関わらざるを得ないようである。それで結局美術館の応接室で話を聞くことになった。ブルマンのコーヒー、更にここから近い場所にあるふらんす亭のケーキが出てくる。千里が聞いたのはこういう話だった。
 
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千枝子さんの祖父・白井五郎さんは姫路製鉄の社長を長くしていた。イーグレットの会長になったのは、社長時代に紙人形の制作者グループの代表(現・イーグレット社長の鈴本明)さんが姫路製鉄に支援を求めてきたものの、本業と交わりのないものなので会社として支援するわけにはいかず、個人的に支援してあげたことによる。元の工房の家賃支払いに苦しんでいたので、現在の工房の土地を買い、プレハブだが、建物を建ててあげた。
 
白井さんは、姫路製鉄の社長を辞めるときに退職金代わりにここの土地をもらった。正確にはこういう経緯だった。実はここの土地は元々姫路製鉄の営業所を建てるために買った土地だった。しかし鉄鋼不況のため姫路製鉄は高炉の休止に追い込まれ、結局その跡地に営業所を建てたので、ここの土地は不要になり浮いてしまった。それで白井さんは責任を取って社長を退くと共にここの土地を個人で会社から買い取ったのである。この時、退職金で土地を買うようにすると手続きが煩雑になるので、退職金代わりにこの土地を現物支給する形にした。この時ここの土地の評価額は1億円で、白井さんの退職金も社内規定で計算するとだいたい1億円程度だった。
 
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それで白井さんはこの土地に美術館を建てて、自宅にあったコレクションを収めた。美術館の建築費は播州銀行から借りた。
 
さてこの土地は白井さんが退職したときは評価額1億円だったが、その後値上がりして現在は3億円の評価額になっているらしい。すると姫路製鉄の株主からクレームが付いた。「この土地を退職金代わりに白井前社長に与えたのは3億円相当の退職金を払ったようなものである。それは多すぎるから白井氏は2億円を会社に払うべきである」と。
 

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「だって退職時には1億円だったのだから、その後で値上がりしたなんて関係無いじゃないですか」
と千里は言った。銀行の支店長さんも言う
「私もそう思うけど株主が納得しないみたいで」
「それで2億円払うか土地を返納しろと言われたんですよ」
「理屈に合わない要求だと思うなあ」
「株主としてはここ30年くらい会社の利益が落ちて行っていたのが経営者の責任だという不満も強いみたいで」
「でも鉄鋼の不況は中国とかで作られた鉄が安価に供給されているのが原因だと思いますけど」
「株主はそう思ってくれないみたいで」
「うーん・・・」
「でも2億円なんて払えないから土地を返納しようと思ったんですよ」
「そしたら美術館は?」
「どこか土地の安い所に同程度の広さの土地を買って新しい美術館の建物を建ててそちらに引越し、こちらは建物を崩して更地にして返却しようかと」
「なるほど」
 
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「それで福崎町か市川町で土地を探していたら今度は姫路市から接触してきましてね」
「ええ」
「とこか適当な場所を紹介するから市外には移転しないで欲しいと言うんですよ。こういう文化的なものが市外に流出するのは避けたいみたいで」
「ああ」
「それで市が仲介してくれて関西電力の変電所の土地を使わないかという話が浮上したんですよ」
「変電所ですか」
「現在関西電力は変電所の再編成・整理統合を進めていて、使わなくなった変電所があるらしいんですよ」
「へー」
「そこの管理棟をそのまま美術館に転用してもいいしと言われて」
「なるほど」
「ちょっと見てもらえませんか」
というので銀行の支店長に千里まで一緒にその変電所に行くことになった。姫路市の西部にあり、たつの市にも近い。現在の場所よりはかなり地価が安そうである。
 
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