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■女子中学生のバックショット(9)

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(C) Eriko Kawaguchi 2022-06-04
 
「可愛い服があったから買ってきちゃった」
と母は言ったが、セナはてっきり“姉に買ってきた服”だと思った。しかし姉は
「ああ、セナはそういう服を着てもいいかもね」
などと言っている。
 
「え?ぼくが着るの?」
「当然当然。ちょっと着替えてきてごらんよ」
と言って、母はその可愛いワンピースを世那に渡した。
 
ドキドキしながらその服を持ち自分の部屋に行く。今着ていたトレーナー、ポロシャツ、ズボンを脱ぎ、ワンピースを着てみた。
 
世那の部屋には姿見が無いので、どんな感じに見えるかよく分からない。ドキドキしながら居間に戻る。
 
「おお、可愛いな」
と父まで言っている。
 
「姉貴が2人になったみたい」
などと弟が言う。
 
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姉が髪にブラシを入れてくれた。カラーリップも塗られる。
 
「写真、写真」
と言って母がデジカメで写真を撮っている。
 
「今日は夕食までそれでいるといいね。あとで絵のモデルになって」
などと姉は言っていた。
 

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12月26日 18時すぎ。
 
東京方面は天文薄明が終了し、空は完全な夜空に変わった。
 
「今日はおしまい!帰ろ。この作業全然終わらないじゃん」
と佐藤小登愛は文句を言っていた。
 
依頼されている歌手のマンションに毎日訪問しては、奧さんとおしゃべりしながら“あぶない”グッズを回収し、ここに運んではお焚き上げしている。
 
奧さんにも色々変なのが憑いてるので、それを毎日!除霊している。奧さんの話では、ポルターガイストを始め、誰も居ないのにピンポンが鳴ったりノックがあったり、また人が部屋の中で歩き回る気配などがあったりすると言う。
 
小登愛は奧さんに
「ここにずっと住んでいたら命の危険があります。できるだけ早く引っ越すことをお勧めします」
と言っておいたので、奧さんも
 
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「夫の仕事が一段落したら相談します。今ずっとアルバムの制作でスタジオに籠もっているんですよ」
と言っていた。
 
問題点は色々あるのだが大きな問題は3つである。
 
(1)とにかく大量の呪いグッズがある。これを全部廃棄しないといけないが強烈すぎてゴミに出したりして処分ができない(きっとごみ収集車が事故を起こす)。それで毎日少しずつ持ち出しては、小登愛が山中でお焚き上げして処分しているのである。始める時、10日はかかるなと思ったが、20日ほど続けてもまだ半分くらい残ってる。
 
だいたいこのマンション物が多すぎ!(小登愛の個人的なグチ)
 
(2)この部屋は霊道がクロスしており、その2つの霊道から多数の亡霊や魑魅魍魎がやってくるので、とても安心して暮らすことができない。人間に取り憑くものもあるので、自殺者が出かねない部屋である。
 
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(3)明らかにここに住んでいる夫妻を狙って、誰かが呪詛を掛けている。呪いグッズの中に犯人に迫るヒントがあるのではないかと思い気をつけているのだが、あまりに多すぎて、ホンボシらしきものに辿り着かない。
 

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それで小登愛はお焚き上げした後に水を掛けてしっかり消火した上で、車で山を降りる。この車は1ヶ月間レンタルしているワゴン車である。呪いグッズを入れた1m四方の箱が入るサイズのものを借りている。この山中のお焚き上げに使う場所をクライアントさんに300万円で購入してもらったし、今回の作業はとにかく実費が掛かっている。
 
小登愛は八王子の問題のマンションに近いホテルに泊まっているが、駐車場からホテルに行く途中、そのマンションの前を通ることになる。これが18:40頃であった。
 
マンションのエントランスの所に女性の人影があった。マンションなんだから人が出入りするのは普通だが、小登愛はそこに立っている人物に何か異様なものを感じた。
 
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それで彼女に声を掛けた。
 
「済みません、ここの住人の方ですか?」
 

女は振り向いて答えた。
「いえ、友人を訪ねてきたんですよ。でもどうやってここを開けてもらえばいいか分からなくて」
と女は答えた。
 
この人“お水”系かなぁなどと小登愛は思った。その系統の女性に共通の雰囲気がある。もしかして風俗の出前に行く所だったりして。
 
「部屋番号をそこの装置に入力すればいいですよ」
「あ、これを押せばいいんですか?」
「ええ」
 
やはりどうも“デリバリー”のようだ。
 
それで女が部屋番号を押すのを見ていたが「え!?」と小登愛は声をあげた。その部屋番号は高岡猛獅の部屋番号なのである。
 
「すみません。あなたその部屋の住人さんとの関係は?」
と小登愛は女に尋ねた。
 
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女はギロッと鋭い目でこちらを見た。次の瞬間、小登愛は全身に強い衝撃を感じた。
 
う・・・
 
小登愛は崩れ落ちるように倒れた。その倒れる時、遠のく意識の中で女の顔が般若のような顔に変化しているのを見た。
 
12/26 18:45頃であった。
 

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“広中”は高岡猛獅・長野夕香夫妻とお酒を飲みながら(広中自身はジュースやサイダーしか飲まない)話していたが、その内疲れていたのだろう。2人とも寝てしまった。
 
「ありゃ〜。寝ちゃったか。まあいいや。少し寝せておこうかな」
と言うと、グラスや皿を台所に運び、洗ってから水切り籠に入れた。シンクに少し?溜まっていた食器も一緒に洗った。
 
「忙しいのに食器洗ったりするのも大変だよなあ。食器洗い機をお勧めしよう」
などと呟いている。
 
広中は完成したアルバムのデータをCD-Rにコピーしてもらったものを聞いていたが「これ売れるよ。凄いよ」などと呟いていた。
 
やがて夜中の12時を過ぎる。
「念のためルートを確認しとこう」
と言って、地図を見ていた。
 
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「東名は静岡付近が刺激が少なくて眠くなりやすいし、中央道を通ろうかな。変化があるから万が一にも居眠り運転になることはない」
 

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やがて1時をすぎる。
 
「そろそろ出ないとやばいな」
と広中は呟くと
 
「高岡さん、高岡さん、長野さん、長野さん」
と言ってふたりを揺り動かす。
 
「車内で寝てていいですから、車に乗って下さい」
「あ、ごめん」
 
それで2人はいったん目を覚まし、車に乗った。そしてそのまま眠ってしまった。
 
「2人とも自分が車に乗ったこと忘れてたりして」
などと言いながら広中は Porsche 911 40th anniversary edition の運転席に座った。
 
エンジンを掛ける。
 
凄い音だ!
 
カーオーディオにできたばかりのアルバム『ワンザナドゥ』のCDをセットした。
 
そして車を発進させた。こんな凄い車を運転するのは初めてだし、そもそも左ハンドルの車も初体験だが、思ったよりちゃんと自分が運転できるので、良かったぁと思った。広中は八王子ICから中央道に乗ると、80km/hほどで車を走らせ始めた。
 
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バルセロナ。2003年12月26日10:47 (=18:47 JST).
 
えっちゃんとおしゃべりしていた、きーちゃんの携帯電話が鳴る。見ると、小登愛の携帯の番号なので、オフフックすると
 
「ブエノス・ディアス、元気してる〜」
と言った。
 
すると出たのは小登愛では無かった。
「私、佐藤小登愛の眷属で櫃美と申します。小登愛が大変なんです。至急こちらに来てもらえませんか?」
 
「櫃美ちゃん。あなたの存在は意識してたよ。でも私今スペインにいるんだけど」
「帰蝶さん、お互いのポジションを入れ替える能力をお持ちですよね。私と入れ替わりで日本に来られませんか?」
 
小登愛の見ている所でそのワザを使ったことがあった。櫃美もそれを見ていたのだろう。
 
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「そしたらあんたがスペインに来ちゃうけど」
「構いません」
 
それで、きーちゃんは、えっちゃんに断ると、自分と櫃美のポジションを交換した。
 
スペインに来た櫃美を見て、えっちゃんは声を挙げた。
 
「あんたどうしたの?」
 
櫃美の身体は左半身しかないのである。右半身が消滅している。
 
「私の身体は半年もしたら再生できます。私が楯になろうとしたのですが、間に合いませんでした。完全には防ぎきれませんでした」
 
と櫃美は悲しそうな目で言った。
 

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一方日本に来たきーちゃんは、小登愛が倒れているのを見る。
 
嘘!?何があったの!?
 
マンションの出入口から人が駆け寄ってくるのを見るので、取り敢えず身を隠した。すぐ救急車が呼ばれたようで、やがて小登愛は病院に運ばれた。
 
きーちゃんも病院に付いていったものの、救急室の医師は小登愛の脈拍・血圧を確認し、まぶたを開けて瞳孔を確認して首を振った。
 
佐藤小登愛 1980.9.7 23:24 小樽市生 2003.12.27 18:45死去 享年24
 
天才霊能者のあまりにも若すぎる死であった。
 
うっそー!?ほんとに何があったのよ!??
 
と、きーちゃんは混乱した。
 

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中央道をポルシェで走る広中は、談合坂SAでトイレ休憩(2人は起きなかった)した後、快調に車を走らせていた。
 
ちなみにSAで休んだ時、スカートを穿いているので、トイレはどちらに入るべきか悩んだが、一応僕男だしと思って男子トイレを使用した。小便器が使えないので個室を使ったが、スカートだと立ってできなくて面倒くさいなと思った。
 
12/27 3時過ぎ。
 
後部座席で寝ていると思っていた夕香が「詩ができた!」などと寝言!?を言った。すると隣で寝ていた高岡が「見せて」などと言っているので、2人は起きてるんだっけ?と広中は疑問を感じた。ミラーを動かしてみるか、寝ているようだ!?
 
面白ーい。この2人寝言で会話してる、と思う。
 
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その内、高岡がFAXしなきゃなどと言う。さすがに車の中からはFAXできないなあと思ったのだが、すぐ先に諏訪湖SAがあるのに気付く。そこに入れて車を駐める。2人は熟睡したままである。
 
広中は首を振って、後部座席で寝ている高岡が持っているレターペーパーを取る。マネージングのためにいつも持ち歩いている小型スキャナをDynabookにつなぎ、取り敢えずそのレターペーパーをスキャンする。それでデータとしてパソコンに取り込んだ。FAXソフトを起動する。発信元に高岡の自宅の電話番号を設定する。そして自分の携帯から上島雷太の自宅電話に掛けた。向こうの電話がFAXに切り代わりピーガガーと言った瞬間FAXソフトのスタートボタンを押す。
 
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これでスキャナで取り込んでいたデータを上島宅にFAX送信することができた。
 
「これでいいかな?」
と呟く。
 
「高岡さん、長野さん、トイレ休憩しませんか?」
と声を掛けたが、2人とも起きる気配は無い。
 
「まいっか」
と思い、広中は自分だけトイレに行ってくる(また男子トイレの個室を使う)と、運転席に戻り、車をスタートさせた。やはり1時間ごとにトイレ休憩した方がいいなと思う。万が一にも居眠り運転になってはいけない。大阪まで残りは360kmくらい。たぶん7時半くらいには着くかな。余裕だなと広中は思った。
 

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12/27 4時過ぎ。
 
中央道の中央道原PA付近、下り方面を警戒しながら走っていた長野県警高速隊の覆面パトカー(クラウン)を物凄い速度で追い越して行ったスポーツカーがあった。
 
パトカーを運転していた警官はあまりの想定外の速度に一瞬ひるんだが、気合いを入れ直して赤色灯を付けると、追越車線に移動し、その車を追いかけた。
 
こちらは150km/hくらい出しているのに前の車との距離はどんどん離れていく。
 
「いったいあいつ何キロ出してんだ!?」
と思い、必死にアクセルを踏んで190km/hくらいまで上げた。この速度はかなりの恐怖を感じる。しかし向こうの車はどんどん遠くへ行ってしまう。
 
急カーブがある。車が流されて左車線にはみ出すも何とか曲がった。
 
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今のは側壁に激突するかと思った!!
 
「だめだぁ!」
と諦めて警官はエンジンブレーキで速度を落とした。
 
そして左車線に移動して駐車帯で停めると、本部に連絡した。緊急配備がなされたものの、それらしき車を発見することはできなかった。
 
「ナンバー見たか?」
「すみません。突然だったので」
「車種は?」
「申し訳ありません。何か白っぽいスポーツカーだったのですが」
 

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12/27 5時半頃。
 
アパートの中で魔法円の中心に座っていた女は強い衝撃を受けて魔法円の中から吹き飛ばされた。
 
壁に叩き付けられて、衝撃で窓ガラスが全部割れた。本人も一瞬気を失ったが、強い風と雪が外から吹き込んで来て、それで何とか意識を回復させることができた。
 
魔法円がズタズタになっている。部屋の中で茶碗とかコップとか大量に割れてる。
 
身体中が痛い。足腰が立たない。這うようにして、ベビーベッドまで行った。
 
「**ちゃん、お母ちゃん負けちっゃたみたい。八王子のマンションに来た女は強そうだったから全力で倒したけど、松戸の女は大したことない気がして油断してしまった(*4)。夕香は死んでくれて、いい気味だけど、夕香の娘までは殺せなかった。ごめん。でもあんたのお父ちゃんまで死んじゃったよ。でもこれで私とあんたとお父ちゃんと3人で天国に行けるね。ずっと一緒だよ」
 
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と言って、女は赤ん坊の遺体を抱きしめ、静かに目を閉じた。
 
(*4) 女は、真理にやられたと思っている。後ろを向いていた千里は“普通の人に見えた”し、まさかその後ろを向いていた人にやられたとは思いも寄らない。
 

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12月27日5時半頃。
 
通り掛かったドライバーからの通報で、岐阜県警の高速隊は中央道の急カーブがある場所で、銀色のスポーツカーが壁に激突しているのを発見した。車は衝突の衝撃で炎上したようであるが、警察が行った時には既に鎮火していた、
 
車の近くに、外に投げ出されたと見られる男性と女性の遺体があった。
 
身元を確認しようとしたが、ふたりとも免許証や保険証など身分を確認できるものが無く、また携帯も持ってないかあるいは車内にあったと見られ、死者が誰なのかはすぐには分からなかった。
 
車のナンバープレートも激しく変形していてすぐには読み取れない。車内が燃えているので、おそらくあったのではないかと思われる車検証なども確認できず、警察は死亡者の特定にけっこうな時間を要することとなった。
 
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