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■女子中学生のバックショット(7)

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27日は、せっかくたくさん集まっているから合奏しようということになり、越天楽と、賀殿破・賀殿急という曲を練習した。越天楽はみんな聴いたことはあるのですぐ覚えたが、賀殿は苦労していた。それでみんなの仕上がり具合を見て、破の方は保留して、今回は賀殿急のみ練習することにした。
 
また夕方近くになって息抜きで『いつも何度でも』をやったら、みんな楽しく吹いていた。
 
夕食後
「明日の朝、演奏会をするよ〜」
という話を聞き
「え〜〜!?」
という声があがった。
 
近くに泊まっている音楽ユニットのメンバーがぜひ龍笛の演奏を聴きたいということだったので披露するということだった。
 
「じゃ越天楽と、賀殿急と、いつも何度でも?」
「いつも何度でもは、くだけすぎの気がする」
「だったら『アメイジング・グレイス』吹かない?」
と20代の巫女さんが提案した。
 
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「あ。それは吹けると思う」
と言っている人が多くあった。
 
「この曲だっけ?」
と言ってひとり吹いてみせたのは『パッヘルベルのカノン』だった!
 
あらためて提案者が『アメイジング・グレイス』を吹いてみせると
「ああ、分かった」という人が多かった。
 
千里は貴司と出会った時の曲だよなあと少し懐かしくなった。最近デートしてないなあとも思う(実はなぜかデートをするのはRになってしまうことが多い)。
 
「じゃアメイジング・グレイス」はぶっつけ本番で」
「びっくり交響曲になったりして」
 

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12月26日(金)朝。
 
東京、というより正確には千葉県松戸市(埼玉県でもない)に来ている千里Yは、朝5時に目が覚めてしまったものの、まだホテルの朝御飯の時刻まで2時間ある。
 
お腹空いた!
 
と思って、千里は部屋を出るとホテルから外に出て近所のコンビニに行った。(千里は近くのコンビニの位置が分かる:近くの神社の位置も分かる!でも近くのトイレの位置は分からない)
 
おにぎりとかパンとか買物カゴに入れていたら、2歳くらいの女の子の手を引いた27-28歳くらいのお母さんが入ってきた。おにぎりを物色するのか千里が居る付近に来た。
 
「可愛いお嬢ちゃんですね」
と千里は言った。
「この子が凄い夜泣きするものだから」
とお母さんは言っている。
 
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「大変そう!」
 
と言ってから千里はかがんで、今は泣き止んでいる女の子と同じくらいの高さになり
 
「お嬢ちゃん、あまりママを困らせたらダメだよ」
と言って、その子の肩付近をなでてあげた。すると女の子は千里に撫でられて笑顔になった。
 
「あらら、この子、お姉ちゃんが気に入ったみたい」
「お嬢ちゃん、名前は?」
「りゅうこ」
とその子は答えた。
 
「私は千里(ちさと)だよ。恐いお化けとかきたら、お姉ちゃんがやっつけてあげるから、あまりママを困らせないようにね」
と千里は笑顔て言った。女の子はコクリと頷いた。
 
千里も龍虎も照絵もこのことを忘れてしまったが、これが実は千里と龍虎のファースト・コンタクトだったのである。
 
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母娘とは帰る方向が一緒になり、彼女たちのマンションの玄関前で別れた。
 
千里は部屋に戻り、おにぎりを食べお茶を飲んで、また一眠りした。
 

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一眠りして起きてから9時頃朝食に行く。そして10時頃、竹中家に真理さんと一緒に出掛ける。
 
「これなんだけどね」
と言って、見せられたが、光辞とは別系統の文献だと千里は思った。ただ使用されている文字?は似ている。読み方もわりと似ている気がした。
 
「ちょっと通読します」
「はい」
 
それで千里はそこに積み上げてある文献(隅に鉛筆で仮番号が入っている)を読んでいく。そして読みながら、畳の上に並べ始めた。
 
千里は2時間ほどでこの文献を読み終えたが。読み終えた時、畳の上には10個の書類の山ができていた。それを眺めながら千里は積み重ねていく。
 
「この並びだと思います。音読しましょうか?」
「お願い!」
 
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それで千里は、お昼を頂いてから少し休憩の後、並べた文献をあらためて音読していく。千里がすらすら読んでいるので、竹中家の人たちが驚いている。息子の一雄さんがICレコーダでそれを録音している。
 
千里の音読は1時間掛かった。
 
「この読み方ならこの並びでいい気がする」
と遠駒藤子さんが言った。
 
「恵雨さんの並べ方・湯元さんの並べ方と比較しよう」
 
「駿馬ちゃん少し休んでいて」
「はい」
 
千里が読み終えたのが15時頃でそこから、3通りの並べ方を比較していく作業を真理さん、藤子・蓮子の姉妹、湯元本人、竹中一雄、その妹の百合子さんの6人でしていった。恵雨は高齢なので別室で休んでいる。
 
3人の並べ方は概ね一致していた。3人ともだいたい似たような感じで捉えたということだろう。その微妙に違う所を、藤子や百合子がページを見比べて、類似性や筆の墨の色の変化具合などを参考に比較していっていた。
 
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千里(Y)はのんびりと休みながら、花絵さんから渡された小学3年生の算数ドリルをやっていた。難しいなあ、どうしてみんなこういう問題スラスラと解けるんだろうなどと思っている。
 
一方、竹中一雄さんたちは、千里がどうしてこんな訳の分からない文字で書かれた文献をスラスラ読める?と思っている!
 
やがて夕食が出てくるのでいただく。千里は食事の後、眠ってしまった!
 

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起こされたのは(12/27)朝4時頃であった。誰かが布団を敷いて、千里をその上に寝せてくれていたようだ。
 
「千里ちゃんごめんね。最終的に恵雨さんの判断で、千里ちゃんの並べ方が正しいという結論に至った」
 
恵雨は休んでいたのだが、時間が掛かっているようだったので3時頃出てきて検討に加わった。そして千里の音読なども部分的に聞いて「これが正しい読み方のような気がする」と言った。
 
「残り2ヶ所、こことここだけが揉めてたんですが」
という所を恵雨は再度見比べた。
 
「ここは多分これの次がこれ。こちらはここに入る」
と示した。
 
「村山さんの並べ方と一致する!」
「会長が再度見た感覚とあの子の並べが一致したのなら、それで正解だろうね」
と湯元。
 
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「たぶんそうです」
と竹中百合子(この人は少し霊感がある)も言い、それで確定ということにした。そして全部写真に撮った上で、仮番号を書き直したのであった。
 

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「ほんと?良かった。お役に立てて」
「ホテルまで送るね」
「はい、すみません」
 
それで真理さんと一緒に帰るが
「あ、すみません。おやつ買っていきたいからコンビニで降ろして下さい」
「だったら私も付き合うよ」
と真理さんは言い、ホテルの駐車場に車を駐めてから、ふたりで一緒にコンビニに行った。
 
なんか今朝はたくさん入るような気がしたので、唐揚げ弁当を買った。真理さんはサンドイッチを買っていた。会計は自分で払おうとしたが
「私がまとめて払いまーす」
と真理さんはレジの所で言って一緒に会計してくれた。
 
「ありがとうございます」
「いやいや。このくらいは。お礼はまたあらためてするね」
「はい」
 
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それでふたりはコンビニから歩いてホテルに戻ることにした。
 
ふたりが昨日母娘と別れたマンションの前まで来た時、真理が何かを蹴ってしまったようでカラカラと転がる音がした。
 
「私何蹴ったんだろう」
と言って懐中電灯を向けて探す。
 
「これかな」
と言って千里が拾い上げた。透明のプラスチックケースに入ったSDカードであった。
「これ落とした人困ってるかも。朝になったらこのマンションのフロントに届けてあげよう」
などと言っていた時、真理は何か気配を感じて振り向いた。女がひとりこちらに向かって歩いてくる。
 
その人物は一見ごく普通の女に見えた。だから真理はなぜ自分はこの女が気になったのだろうと思った。しかし真理が女を見た瞬間、女の形相がまるで般若のようになった。こちらをギロリと睨む。
 
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え!?
 
と思ったが、次の瞬間、女は崩れるように倒れた。
 
そして消滅した!
 
何?何?何?と思った時、千里の表情に気付く。
 
「千里ちゃん!?」
「やられそうだったから、やりました。人間では無さそうだったし」
 
「それって気功みたいなもの?でも後ろ向きだったのに!」
「振り返ってからでは遅いと思ったから。後ろ向きにエネルギー弾撃つのは精度が悪いんですけどね」
 
「へー!でもあんた凄いね!今のは、しまったやられた!と私思ったよ。物凄い殺気だった」
 
2003年12月27日、5時半頃だった。
 

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この瞬間、このマンションの一室で激しく泣いていた龍虎がピタリと泣き止んだ。
 
千里は昨日龍虎とした『恐いお化けとかきたら、私がやっつけてあげるから』という約束を果たし、龍虎をしっかり守ったのである。
 
そしてこの騒動で千里はSDカードのことはきれいに忘れてしまった!
 
(このSDカードは千里が服のポケットに入れたままになり、留萌に戻った後、P神社で落とし、何気なく恵香が拾って恵香も自分のポケットに放り込んでいて、やがて彼女の机の引き出しに放り込まれる:青葉が言った2021年10月時点で現存していた『ワンザナドゥ』の音源3つの内の1つ)
 

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12月26日(金).
 
ワンティスは明日は大阪でのドーム公演がある。年明けからは予定が詰まっており、もうこれ以上アルバムに関する作業をする時間は残されていなかった。
 
それまで細かい点で現時点でのアレンジに異論を唱えていたメンバーがタイムリミットの中、妥協するようになる。
 
15時近く。
 
とうとうアルバムは完成状態になった。
 
正確には完成状態“とみなした”!
 
各々相当の妥協をした、かなり不満の残るものであったがやむを得ないという空気だけがメンバーの間で共有されていた。
 
ここ3日ほどはほぼ徹夜に近い状態で、全員クタクタに疲れていた。特に高岡・上島・雨宮の3人はたぶんこの3日間一睡もしていない。
 
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みんなが一応「これでいい」と言うので、★★レコードの加藤銀河は技術者に
 
「最終マスタリングされたデータをちょうだい。僕が工場に持ち込む」
と言った。
 
ここの所、楽曲データは毎日2回、ミックスダウン・マスタリンクがされている。いつでも工場に持ち込めるようにするためである。
 
そして実は今日の17時までに工場に持ち込まないと発売に間に合わない。
 
「これにコピーしてあります」
と言って、技術者はデータの入ったハードディスクを加藤に渡した。
 
「すぐ出る。左座浪君、後は頼む」
と言って加藤銀河はディスクをリュックに入れて飛び出して行った(急行できるように加藤はバイクでこのスタジオに来ていた)。
 
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「16:53の新幹線の切符を確保しています。今から皆さんをお連れします」
と左座浪が言った。
 
「みんな先に行ってて。僕は一眠りしてから移動する。今新幹線に揺られたら死ぬ」
と高岡が言う。
 
「最終新幹線は21:18なのですが、それまでに東京駅に来られます?」
「間に合わなかったら明日の朝移動しようかな」
「明日朝一番の新幹線では、朝ЭЭテレビに出演するのに間に合わない」
と上島が言う。
 
「じゃ夜中に車で移動するよ」
「大丈夫か?」
「ひと眠りすれば平気」
「分かった。だったら安全運転でな」
「うん」
「酒は飲むなよ」
「大丈夫。酒飲んだらたぶん朝まで寝てる」
「明日の夕方まで寝てたりして」
と雨宮が言っている。
 
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「私が付いてます。猛獅さんが起きれなかったら、私が運転して大阪に向かいます」
と夕香が言う。
 
「それがいいかも知れん。じゃ夕香ちゃん頼む」
「はい。私はお酒は飲みませんから。テレビ局の番組が朝9時からだから午前2時くらいまでに出ればいいですよね」
「2時で間に合うか?」
「多分後半は俺が運転できる」
「ああ。交替で運転するのなら間に合うな。だったら高岡絶対酒は飲むなよ」
「誓う」
 
「そうだ。ギターは置いてけよ。俺たちが一緒に持ってく」
「そうだな。頼む」
と言って、高岡は自分の愛用のGibson J-185とレスポール・ゴールドトップを上島に託した(*3).
 
そして2人は、夕香が新品のポルシェを運転して帰って行った。
 
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ここで2人が“八王子に”帰ったとは、誰も知らない。中目黒のマンションに行ったのだろうと思っている。
 
そしてこれが高岡猛獅と長野夕香の生きている姿を上島たちが見た最後になったのである。
 
(*3) ここで高岡がこの2本のビンテージ・ギターを上島に託したおかげで、この2本のギターは事故で燃えず、2018年に息子(娘?)の龍虎に渡されることになる。
 

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