広告:兄が妹で妹が兄で。(3)-KCx-ARIA-車谷-晴子
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■女子中学生のバックショット(2)

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市川市内のマンションから八王子のマンションに引っ越して来て、夕香は最初の晩、酷い悪夢を見た。自分が大きな木に縛り付けられて、松明を持ち黒い衣裳を着た人たちに取り囲まれているという夢だった。
 
「疲れてるせいかなあ」
と夕香は思った。
 
ワンティスのアルバム制作の作業は最後の追い込みに入っている。自分はコーラス担当なのであまり大した作業は無いのだが、それでも色々雑用を引き受けている。
 
猛獅はこの新しいマンションにまだ1度も来ていない。ずっとスタジオに泊まり込んでいるので、夕香も諦め気分である。
 
「龍ちゃんに会ってこよ」
と言って、夕香はメイクをすると、おやつを買ってから、猛獅のPorsche 996 Carreraを運転して松戸市内の志水家に向かった。
 
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志水家では、夫の志水英世はワンティスの制作でスタジオに籠もっており、もう1ヶ月戻って来ていないということで
 
「お互いミュージシャン・ウィドウは辛いね」
と照絵とグチを言い合った。
 
この日の龍虎は異様に夕香になついた。
 
「今日は甘えん坊さんだね」
と照絵も微笑んでいた。
 
志水家には3時間ほど滞在したのだが、その間、ずっと龍虎は夕香のそばを離れなかった。そして夕香が帰ろうとすると物凄く泣いた。
 
「龍ちゃんどうしたの?ママはまた来てくれるよ」
と言って照絵があやすが、なかなか泣き止まない。
 
「なんでしたら今夜一晩そちらに連れて行きます?」
「いや、いつスタジオに呼び出されるか分からないから」
と言って、夕香は名残惜しそうに龍虎にキスしてから志水家を出た。
 
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龍虎は夕香が帰ってからも1時間くらい泣き止まなかった。
 
そしてこれが龍虎と夕香の今生の別れになってしまったのである。
 

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一方夕香は「今日は随分龍ちゃん泣いたなあ」と思い、後ろ髪を引かれる思いで八王子のマンションに戻った。
 
御飯を作っていたら、後ろに気配を感じる。
 
「あれ?たけちゃん帰った?」
と言って振り返るも誰も居ない。
 
「やだ・・・このマンション何か変じゃない!?」
と夕香は声を挙げた。
 

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その日(千里Yが常駐?する)P神社にふらりと、宮司の孫娘・花絵がやってきた。皇學館大学に通っている和弥の姉で、札幌の大学に通っている。
 
「おはようございます。里帰りですか?」
「卒論が仕上がって提出したから、息抜きに帰省してきた」
「就職する会社の研修とかは無いんですか?」
「ああ、あの会社倒産した」
「え〜〜〜!?」
 
「私の就職活動は振り出しに戻った」
「大変ですね!」
 
「この時期からだとあまりいい所は残ってないと思うんだけど、仕方ない」
「わぁ」
「取り敢えず正月明けくらいまでこちらで羽休め」
「大学の講義は無いんですか?」
「ああ。試験だけ受けに行けばいいよ。出席取る授業とか無いし」
「なんか適当っぽい」
 
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「君たちは勉強会?」
「そうでーす」
「ふーん」
 
と言って、花絵さんはこの勉強会をしている部屋(本来資料室で神道関係の本が大量に本棚に並んでいる)の隅で『魔百合の恐怖報告』を読み始めた。
 
「それ恐くないですか?」
と恵香が訊く。
 
「平気平気。これ寺尾玲子さんの指示が入っていると思うんたけど“キー”を意図的に描いてないんだよ。だからこれ読んで向こうと繋がることは無い」
 
「へー」
 
「これが三流作者の作品だと、全然危険なことが分かってなくて危ない“キー”まで描いてしまっている人がある。そういう作品を敏感な人が読むととても危険」
 
「それどうやったら分かるんですか?」
「やばい!と思ったら心を閉じて今のページは見なかったことにする」
 
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「私分かんないかも」
と美那がいうと
 
「君はあまり霊感が無さそうだもんなあ」
と花絵さんは言っている。
 
「霊感が無かったら、向こうの世界とつながりにくいということはないんですか?」
と恵香が尋ねる。
 
「霊感の無い人は変なのに取り憑かれていても、霊障が出ていても気付かない」
「なるほどー」
 
「まあこの神社に来ればおかしなのは全部取れるだろうけどね」
「ああ」
「神社に来れば浄化されるものですか?」
「きちんと維持されている神社ならね」
「あぁ!」
 

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その時、蓮菜が千里の解答を見てあげていて
「君は解法は正しいが計算が間違ってる」
と言った。
 
「ん?」
と声をあげて花絵さんは千里の解答を見た。
 
「君は美事に計算がおかしいな」
「すみませーん」
 
「君は小学2年生の2桁の足し算のドリルをしなさい」
「小学2年生なんですか〜〜?」
「千里君、4×6はいくつ?」
「えっと22くらいですか?」
 
蓮菜が頭を抱えている。
 
「やはりね〜。君は九九もあやふやだけど、それ以前に足し算が間違ってるんだよ。だから足し算からやり直せば、君はきっと数学はできるようになる」
 
「この子に改善の余地がありますか?」
と蓮菜は尋ねている。
 
「きちんと基礎からやり直せば、君は1年後にはかなり数学はできるようになる。私が指導してあげるから、取り敢えず小学2年生のドリルから始めよう」
 
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と言って、花絵さんは車を出すと本当に小学2年生の算数ドリルを買ってきて千里にやらせた。千里はそもそも繰り上がりをきちんと理解していないことが判明したので、花絵さんはそれも丁寧に教えてあげていた。
 

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佐藤小登愛は小樽時代の知り合い・灰麗(ハイレ)に呼ばれて東京に出て行った。
 
「私なんか使わなくても、東京にもいい霊能者はたくさんいるのに」
とは言ったものの、
「霊能者はたくさんいるかも知れないけど、まともな人は少ない」
と彼女は言っている。
「まあ確かにそうだけどねー」
 
それで見て欲しいと言われて伺ったのは、八王子にあるマンションだった。
 
灰麗はそのマンションの地下駐車場に車を止めると、カードキーでエレベータのドアを開けて小登愛を案内する。
 
「灰麗ちゃんのマンション?」
「私が管理を任されているだけで、実はあるミュージシャンのマンションなんだよ」
 
小登愛はここに来る途中車の中から気の流れなどは自然に感じ取っていた。ここは比較的風水的に良い場所だと思っていた。
 
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「最近まで別のマンションに住んでいたのを、手狭になってここに越してきたんだけどね。人気ミュージシャンだから、色々変な手紙とかも来ててさ。呪いのグッズとかもあるんじゃないかと思って。それをチェックして欲しいのよ」
 
小登愛はそのマンションの部屋の中に入ると腕を組んだ。
 
何じゃこりゃ〜〜〜〜!?
 
「灰麗ちゃん」
「うん?」
「1メートルくらいのさ、ワゴンを用意してくれない?」
「1メートル?そんな大きなものどうするの?」
「呪いのグッズを運び出すのに必要だから」
 
「そんなにあるの〜〜〜?」
「それで多分10回くらいごみ処理場と往復する必要がある」
「ひぇー!」
「とても1日で終わらないから、ホテル取ってくれない?」
「分かった」
「それと予算ある?」
「どのくらい?」
「300-400万円くらいあったら、どこか山奥に小屋か何かを買って欲しいの。地目は山林でいい。そこで一部のアイテムをお焚き上げする」
「クライアントと相談する!」
 
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きーちゃんは、旧知のえっちゃん(エリサ)から呼ばれて、スペインに赴いた。
 
なお、きーちゃんに頼まれて、しばしば千里の代理をしているのは、つーちゃん(月夜)。3人は“ほんの200年ほど前”にアメリカで一緒にお仕事していた。3人は力量がわりと近く(それでもきーちゃんが一番強い)、年齢も600歳前後と比較的近いので仲良くしている。きーちゃんはフランス生まれだが、アメリカ独立戦争の頃にアメリカに渡り、南北戦争の頃=明治維新の頃、アメリカから日本に渡り、箱館戦争に関わって以来、北海道に居座っている。
 
「ごめんね。わざわざ中国(チーナ)から」
「ううん。中国(チーナ)じゃなくて日本(ハポーナ)だけどね」
「・・・日本って、インド洋の国だっけ?女しか住んでない国なんでしょ?」
「中国の東だよ。男もいるよ」
「嘘!?女だけが住む理想境と聞いたことがあるのに」
「女だけでは生殖できない」
 
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(日本人でポーランドとポルトガルが混線している人がいるレベル。また元々ヨーロッパでは“倭国”はインド洋にあるとされた“ワクワク”と混線していた。ワクワクは女だけが住む島で、その女は木の実として生(な)るとされていた)
 
「中国の東って、ハワイかと思った」
「ハワイまで行く前、中国東岸から1000kmくらいの所にある国だよ」
「1000km!だったら絶海の孤島だね」
「面積37万平方kmあるから、孤島という感じではないけどね」
「結構広いね。ノルウェーくらいの広さか。あとで地図確認しよう」
 
「それでどうしたの?」
「いや、ちょっと私では手に負えない案件があってさ。手伝ってもらおうと思って」
「えっちゃんの手に負えない案件じゃ、私にも手に負えないかも」
 
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12月6日早朝。
 
女は赤ん坊を抱えて、タクシーで夜間診療所に飛び込んだ。
 
「子供が!子供の様子が変なんです!」
と女は訴えた。
 
医師は赤ん坊を診たが、難しい顔をする。念のため体温を計り、脈拍を見、そしてまぶたを開いて瞳孔を確認した。更に念のため血圧も測定した。
 
そして首を振った。
「お気の毒ですが、既にお亡くなりになっています」
 
「そんな!」
 
女はその場に崩れて放心状態になった。
 

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12月6日(土・大安・不成就日!).
 
高岡猛獅はポルシェ40th anniversary editionを受け取った。
 
車のシリアルナンバーはNo.1978である。
 
「すごーい。これ僕の生まれ年だ」
「ほんとですか。それは良かった」
と営業マンも驚いていた。偶然そのシリアルナンバーになったようである。
 
猛獅がその車の前に立っている所、運転席に座っている所などを撮影される。雑誌の記事に使うということだった。猛獅はCMとか撮影するわけでも無ければ特に事務所に言わなくてもいいだろうと思い、撮影に応じた。
 

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12月9日(火・友引・さだん(定)).
 
カーマニアで音速通信の社長・重富音康は、ポルシェ40th anniversary editionを受け取った。車のシリアルナンバーはNo.1988である。
 
「すごい。これ僕が会社を始めた年だよ」
「ほんとですか。それは良かった」
と営業マンも驚いていた。偶然そのシリアルナンバーになったようである。
 
彼の会社は2000年には架空売上の計上が発覚して、株価が1ヶ月で200分の1まで急落する騒ぎがあり、自殺者まで出たとも言われた。しかし彼はその後、経営を再建し、今では安定した営業成績をあげている。
 
会社が再び上昇気流に乗っている時に、創業時代を思い出させてくれるシリアルナンバーの車はゲンがいいなと彼は思った。
 
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