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■女子中学生のバックショット(5)

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(C) Eriko Kawaguchi 2022-06-03
 
「セナちょっと来て」
と姉の亜蘭が呼ぶので、世那はちょっと“期待”して姉の部屋に入った。女の子らしい壁紙やカーテンを見て、いいなあとちょっと憧れる。
 
「これ着て」
と言ってワンピースを渡される。
 
「これ着るの?」
と一応聞き返したが
「好きなくせに」
と言われる。
 
それで着ていたワイシャツとズボンを取り敢えず脱ぐ。
 
「ああ、ちゃんと女の子パンティ穿いてるね」
「いけないかなあ」
「好きなものを穿けばいいんだよ」
「そうだよね」
 
それでワンピースを着る。姉の部屋にある大きな姿見に映すと、そこには可愛い少女の姿が見える。ドキドキする。
 
「うん。可愛い。可愛い。そこの椅子に座って」
と言われるのでスツールに座る。背もたれが無いから背筋を伸ばしてバランスを取る。
 
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「うん、いい感じ、いい感じ。あ、カラーリップ塗ろうかな」
と言って、姉はリップを塗ってくれた。
 
リップって、余計なものが付いてて邪魔な感じはあるけど、女の子になったみたいでいいよなあと世那はいつも思っていた。
 
姉は更に世那の眉毛を細くカットした。眉毛を細くすると顔が物凄く女の子っぽくなる。
 

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姉は世那を椅子に座らせると、スケッチブックにステッドラーの美術用鉛筆でデッサンを始めた。
 
「自分をモデルにして書くのってけっこう大変だからね。モデルになってくれる可愛い“妹”が居て助かる〜」
などと姉は言っている。
 
“妹”と言われたことで世那はまたドキドキしている。
 
「それにその表情がいいのよね。はにかみがちで」
と言われると、ますます世那は赤くなった。
 
「身長も体型も私と近いから、私の服が入るしね」
「ぼく、小さい頃からお姉ちゃんのお下がりの服着てた」
「そうそう。だからあんたの子供の頃の写真にはスカート穿いた写真が多い」
「スカート結構好きだけどね」
「あんたいっそのこと女の子になったら?」
「なれるもの?」
「来年の7月だったからは、戸籍上の性別を変更できるようになるらしいよ」
「へー!!」
 
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「3月に卒業したら、私の中学の制服、あんたにあげるね」
 
鞠古君からもらった女子制服を学校に置いていることは姉も含めて家族には黙っている。
 
「だから4月からはセーラー服で学校に通ったら」
「先生に叱られないかなあ」
とは言ったものの、これまで学校でセーラー服を着てて先生に注意されたことは一度も無い。
 
「叱られる訳が無い。だってセーラー服も制服なんだから、制服を着て通学しなければならないという校則には反しない」
「そういえばそうか」
 
世那は千里や沙苗が女子制服で通学し、留実子は学生服で通学していることを思い起こした。沙苗は正式に女子制服での通学を認めてもらったみたいだけど千里や留実子のは、あれ勝手に着ているだけじゃないのかなあ。実際、千里が学生服を着ている所、留実子がセーラー服を着ている所も何度か見たし。
 
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だったらぼくもセーラー服着てもいいのかなあ。
 
「でもお父ちゃんに殴られそう」
「自分は女の子になったからセーラー服で通うと言えばいいのよ」
「“なった”なの?」
「“女の子になりたい”ならまだ男の子だということ。“女の子になった”なら既に女の子だから、むしろセーラー服で通学するのが自然」
 
「えっと・・・」
「今はまだ“女の子になりたい”でしょ?」
「うん。そうかも」
 
「でも性別って気持ちの問題だからね。自分は女の子と思うようになったら、その時から世那はもう女の子だよ」
「気持ちの問題かあ」
 
「女の子なのに身体が男だったら変だから性転換手術してもらう」
「やはり性転換手術しないといけないのかな」
「簡単な手術らしいよ」
「そうなんだ!」
「一週間程度の入院で済むらしいからきっと盲腸の手術程度だよ」
「へー」
 
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「昔はモロッコとかシンガポールまで行かないといけなかったけど今は日本国内でも受けられるようになった」
 
(埼玉医科大学が性転換手術を始めたのは1998年10月16日)
 
「でも“性転換手術”という呼び方はおかしいよね。その手術で性別が変わるわけではない。そういう手術を受ける人って実際にはとっくの昔に女の子になっている。女の子なのに男みたいな身体だからそれを修正してもらうだけのこと。だからむしろ“性適正化手術”とでもいうべきかもね」
 
「なるほどー」
 
性転換手術というのは、小学3〜4年生の頃から名前だけは聞いているし、どうも千里や沙苗はその手術を受けたみたいだけど、どんな手術なんだろう。簡単な手術だったら受けたい気もする。世那がそんなことを考えていたら
 
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「ああ、その物憂い表情がいい。そのままそのまま」
と言って、姉は熱心に鉛筆を動かしていた。
 

ワンティスの初アルバムは2004年1月28日に発売されることが発表されていたものの、実は12月中旬になっても、どれを収録曲かにするかで揉めていた。またいくつかの曲のアレンジでもメンバー間の意見が対立して収拾がつかなかった。
「発売日を延期しませんか」
「それはできない」
とレコード会社の担当・加藤銀河は言う。
 
「いっそ2枚組にはできないんですか」
「既に3500円で予告しているからそれは無理。予約が既に20万枚入っている」
「ひぇー」
 
なお、ワンティスは12月27日に大阪の関西ドーム、12月28日は東京の関東ドームでライブをすることになっており、チケットはどちらもソールドアウトしている。そのライブでは、このアルバムの中から10曲程度(ほぼ全曲に近い)を披露することになっている。
 
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本当はライブに向けての練習もしたいのだが、アルバム自体の完成がまだ見えないので、それどころではない。ライブは実質、ぶっつけ本番になる可能性が濃厚になってきつつあった。サポートミュージシャンとして頼んでいる人たちも待機しているのだが、彼らに確定したスコアを渡すことがことができない。未完成のスコアを渡して
「まだ変更があると思うけど、取り敢えずこれで練習しといて」
と言っている。
 
なお、ライブの後は、12月31日にRC大賞と紅白歌合戦にも出場する。この2つの番組では今年7月に出した『秋風のヰ゛オロン』を演奏する予定である。紅白のリハーサルが29日から始まるので、28日に関東ドームでのライブをした後は、29日から31日まで、NHKホールに詰めることになる。
 
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年明けてからも3月いっぱいまで、スケジュール表は全て埋まっている。実はこれまでアルバム制作中だからといって断っていた仕事が全部そのあたりに押し込まれているのである。そのスケジュールが埋まっている中で、ゴールデンウィークに五大ドームツアーをするので、それまでにシングルを1枚出してくれと言われている。正直、いつ制作するのか難題である。
 

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12月15日(月).
 
英検2級・3級の結果が通知された。千里は合格していた。蓮菜や久美子も2級に通っていたし、恵香も3級に通っていた。
 

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12月21日(日).
 
この日、ワンティスはスタジオを出てテレビ局に行き、音楽番組に出演。この日も先週好評だった『川と花の物語』を演奏した。演奏前に高岡は
 
「先週言った通り、セーラー服を着てもらおう」
と言われてセーラー服を着せられてしまったが、セーラー服が似合う!のでスタジオ上で他の出演者たちから歓声があがっていた。保坂早穂が
 
「高岡さん、私のお嫁さんになってください」
などと言って、猛獅は照れていた。
 
結局セーラー服のまま演奏した。
 
またこの日、ワンティスは保坂早穂の伴奏も務め、ワンティスが彼女に提供した『空っぽのバレンタイン』を演奏した。これも猛獅はセーラー服を着たままであった!
 
この日の放送を志水照枝は録画していたので、後に大きくなった龍虎がこのセーラー服を着た猛獅を“父の最後の姿”として見ることになる。
 
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12月23日(火・祝).
 
天皇誕生日の祝日だが、今年も留萌市のクリスマスイベントが市民体育館で行われる。千里たちは昨年までN小合唱サークルでイベントに参加していたが、今年はS中合唱同好会で参加することになった。この同好会が参加する最初の発表機会である。
 
会場でN小の馬原先生を見たので挨拶した。
 
「あんたたち、合唱同好会作ったんだ?頑張ってね」
「先生が合唱の楽しさを教えてくださったお陰です。でもそちらは今年は残念でしたね」
 
「うん。でも3年連続全国大会に行けたのが奇跡だと言われたよ。また頑張る」
「はい、頑張ってください」
 
今年N小合唱サークルは北海道大会には行ったが北海道2位で、全国大会進出を逃した。千里たちが全国大会に行っていた3年間も、参加校の顔ぶれは毎年大きく変わっていた。全国大会進出というのが、いかに大変なことかを示していると思っていた。
 
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今年のクリスマス会のプログラム
 
矢野秋子オンステージ(1)
F幼稚園
留萌商工会女声合唱団
S中合唱同好会
Fishergirls
V小学校吹奏楽部
お元気会集団演技
N小学校合唱サークル
矢野秋子オンステージ(2)
クリスマスツリー点灯式
 
昨年・一昨年と来てくれた広中恵美ちゃんは、色鉛筆を卒業してしまったので今年はマリンシスタの矢野秋子ちゃん(17)が来てくれている。彼女は深川市出身で、うちの市の市役所の、何とか部長さんの親戚の子の元同級生だとか言っていた。
 
Fishergirlsというのも今年初登場だが、4人組の“男性”バンド!である。でも名前からガールズバンドと思われがちなので、メンバーが営業とかに出ていくと「マネージャーさんですか?」と言われるらしい!ちなみに男の娘とかではなく普通の男性4人らしい。
 
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千里たちは、F幼稚園の子供たち、留萌商工会女声合唱団、に続いて演奏した。
 
全員セーラー服姿である。
 
ピアニストのセナもセーラー服である!
 
セナのお母さんも来場していたが「おお、可愛い、可愛い!」と喜んでいた。
 
「セーラー服持ってたの?」
「借り物だよぉ」
「あんた冬休み中にセーラー服作って3学期からそれで通学する?」
「恥ずかしい!」
「町中の人にセーラー服姿を曝しておいて今更だと思うけどなあ」
「そうですよね!お母さんもこう言っていることだし、3学期からはそれでおいでよ」
とみんなで乗せるので、本人も迷っている?ようであった!
 
今回演奏した曲は、ポルノグラフィティの『アゲハ蝶』とクリスマスにちなんで『アデステ・フィデレス』であった。特に失敗もなくうまく歌うことができた。
 
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女子中学生のバックショット(5)

広告:ここはグリーン・ウッド (第3巻) (白泉社文庫)