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■女の子たちの卒業(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-09-18
 
2009年3月2日(月)は千里たちの卒業式であった。
 
その日の朝、千里はまた夢を見ていた。
 
「千里、今日で高校は卒業だよ。もう制服は脱ぎなよ」
と美輪子が言うので、千里は着ていた高校の女子制服を脱いだ。すると裸になってしまう。
 
あれ〜。私、ブラもパンティも着けてなかったのかな??
 
目の前に3つの扉があった。
 
何となくまず左の扉を開いた。すると父が居る。げっ。
 
「おお、千里卒業おめでとう」
「ありがとう」
「高校卒業したらお前も一人前だな。漁船に乗ってニシンを捕まえてくれ」
「ごめーん。私、実はもう男の子じゃないの。だから漁船には乗れないの」
「あれ? お前チンコ無いの?」
「うん。ごめんね。私、おちんちん取って女の子になったの」
 
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「そりゃチンコ無いと不便だな。よし。俺のをやる」
「え〜〜〜!?」
 
父はズボンを脱いで自分のおちんちんを露出させると、ギュッと引っ張って抜き取り!? 千里のお股にガチャッっと填め込んでしまった。
 
いやーーーーーー!!!!
 
「ほら、お前にもちゃんとチンコができた」
と父は言っている。
「あなたはおちんちん無くしても良かったの?」
とそばで母が心配している。
「息子のためだ。仕方ない。お前は我慢してくれ」
「そうだね。しょうがないね」
 

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千里は左の扉を閉じて、真ん中の扉を開けた。貴司が居る。
 
きゃー。貴司にちんちんの付いた私を見られちゃうなんて。
 
「千里卒業おめでとう。これでもう千里も大人の女かな」
「そ、そうだね」
「じゃ、僕の子供を産んでくれよ」
「ごめんなさい。私、男の子だから赤ちゃん産めないの」
 
「え?そうなの? あ、千里チンコ付いてるんだ?」
「ごめんねー」
「こんなの付けてると赤ちゃん産むのに邪魔だよ。取っちゃうね」
 
そう言うと貴司は千里のおちんちんを掴んでグイっと引き抜いた。引き抜かれた跡は女の子のように割れ目ちゃんになった。
 
わーい!女の子になれたよ。貴司、グッジョブ!
 
「でもそのおちんちんどうするの?」
「あ、僕が使う」
「でも貴司、おちんちんあるじゃん」
「後ろにくっつけるよ」
「え〜〜〜!?」
「おちんちん2個あったら同時にふたりの女の子とセックスできて便利」
「何それ〜〜?」
 
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「千里は僕の奥さんだけど、もうひとり奥さん作るからよろしく。大丈夫。ちゃんと両方とも愛していくから心配しないで」
 
なんて堂々と浮気宣言するんだ?こいつは。
 

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千里は真ん中の扉を閉めて、右側の扉を開けた。
 
中にはとても美しく気高い感じの背の高い女性が居た。千里はちょっと玲央美に似てるかもと思った。
 
「千里、卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
「もう女子高生じゃなくて立派な女だね」
「ちょっとまだ面はゆいです」
 
「あなたは30年間毎年100日の修行をしたから3000日満行のお祝いに女の身体をあげます」
「わあ、いいんですか」
 
「これが女の身体の素なのよ」
と言って女性は掌に赤い珠を持っている。それを持ったまま千里のお腹にそっと押し当てると、珠は千里の身体の中に吸収された。
 
「これで卵巣、卵管、子宮、膣と出来たからね。クリちゃんは、あなた元々おちんちん持ってたから、それをお医者さんが改造したもので間に合わせて。実は普通の女のクリちゃんより感じやすいんだよ。大陰唇も陰嚢を改造したものをあなた持ってるからそのままで」
 
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「はい、それでいいです」
「前立腺はGスポットに私が改造しちゃったから」
「助かります」
「あなたが元々持ってた、お医者さんの作った膣はセックスには使えるんだけど赤ちゃん産むのには狭すぎるから、私が取っちゃったからね。本物の膣をあげたから、これで赤ちゃんも産めるよ」
 
「え?でも私、30年修行したのなら46歳くらいですか?」
「まあ50歳かな。修行できなかった年もあるし」
「50歳で赤ちゃん産めるんでしょうか?」
「千里なら産めるよ。あんた5000歳まで生きるし」
「へー」
 

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そこで目が覚めた。
 
千里はしばらく夢の余韻にひたっていた。
 

千里は2月28日に東京で□□大学の2次試験(小論文と面接)を受けた上で夕方から那覇のKARIONコンサートでキーボードを弾いた。更に翌日3月1日の福岡公演にも参加した後、羽田からの新千歳行き最終便で帰って来た。
 
新千歳空港からは美輪子の彼氏・浅谷さんが運転する車で自宅まで帰った。最初は少しおしゃべりしていたものの、その内、寝てるといいよと言われたので、千里は遠慮無く寝ておいた。私が寝てる方がふたりとしても色々助かるだろうしね!
 
帰宅したのはもう12時半頃である。浅谷さんはそのまま泊まっていくようだ。
 
「ビールちょうだい」
とか言っている。当然ビールを飲んでしまえば朝まで運転できない。
 
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「前から思ってたけど、男の人って別にビールは夏だけでもないんですね」
と千里は言う。
「うん。帰って来たら、まずはビールかな。その後は、日本酒とか焼酎とか水割りとか。まあ僕は蒸留酒があまり得意じゃないから、ビールの後はもっぱら日本酒だけどね」
 
「その蒸留酒ってのが良く分からないんですけど」
「原酒を蒸留して造るお酒だよ。大雑把に言ったら、日本式の蒸留酒が焼酎、ワインを蒸留したのがブランデー、ビールを蒸留したのがウィスキーって感じ」
「へー」
 

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そんなことを言っていたら、冷蔵庫の中をごそごそ探していた美輪子が
 
「ごめーん。ビールが切れてる。金麦でもいい?」
などと言う。
 
「まあ、しょうがないか」
 
と言って美輪子が出してきた金麦を飲み始める。
 
「それはビールじゃないんですか?」
「うん。ビールと似た感じのお酒で安いやつ」
「へー」
「最初ビールに似たもので発泡酒というのが発売されたんだよ。その後更に別の製法で『第三のビール』というのが出て、更に『第四のビール』というのまで出た。この金麦は第四のビールの中のヒット商品」
 
「すごーい」
「金麦は美味しいよ。ひとくち飲んでみる?」
などと浅谷さんは言うが
「未成年にお酒を勧めてはいけない」
と美輪子から釘を刺される。
 
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「でもお酒飲んだことないんだっけ?」
と尋ねられたので
「彼氏の田舎の礼文島に行った時、親戚の人にうまく欺されて飲まされました」
と答える。
 
「ああ、田舎は特に酷い。中学生にでもどんどん酒を勧める」
「そうなんですよ。中学生の従弟が結構飲んでました」
 

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そんな話をしていたら
「あ、そうそう。忘れる所だった」
と言って美輪子が宅急便の段ボール箱を出してくる。
 
「貴司君から荷物が届いているよ」
「わあ」
 
千里はパッと笑顔になって、カッターで段ボールを開ける。中には更に箱が2つ入っている。
 
「こちらはホワイトデーみたい」
と言ってお菓子の箱を開ける。大阪の洋菓子店のホワイトチョコのようである。
 
「なんか高そう」
「千里、これ多分5000円くらいするよ」
「きゃー」
「熱心なんだね」
「えへへ」
 
やはり3万円のバレンタインを送ったからかな。
 
「おばちゃんも、浅谷さんも食べて。これ私ひとりでは食べきれない」
「うん。頂こう」
「美味しい!」
という声が異口同音に出た。
 
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「こちらは誕生日のプレゼント兼卒業祝いだって」
と言って千里はメッセージカードが付けられた小さい箱を開けた。
 
「ほほお」
「私、お化粧なんてしたことないのに」
と千里は少し戸惑いながら言う。
 
中身はエスティ・ローダーのビギナーズセットであった。
 
「うん。だから今から覚えればいいんだよ」
「そうかぁ。女子大生にもなったら、お化粧くらいできないといけないかな」
「そうそう」
「学校にもお化粧して行くんだっけ?」
「そういう子もいると思うけど、学校はスッピンでいいと思うよ」
「安心した」
「バイト先では、その種類によってはお化粧が必要」
「なるほどー」
「洋服屋さんのスタッフとかならお化粧必須」
「なるほど」
「でも飲食店なら逆にNG」
「なるほどー」
 
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「でも貴司が自分でこういうの買ってる所想像したらちょっと面白い」
と千里は言う。
 
「僕も美輪子にリクエストされてお化粧品、買うことあるけど、恥ずかしい」
と浅谷さんは言っている。
 
「いや、恥ずかしがらずに買う男は怖い」
「女装に慣れている人なら」
「貴司君、女装は?」
 
「一度女装させてみたいな」
 

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「それからこれは私からの卒業祝いね」
と言って叔母は化粧品ショップの包み紙の箱をくれる。
 
「わあ、なんだろう」
と言って取り出してみると、エリザベス・アーデンの「サンフラワー」である。
 
「こんなのもらったの初めて〜」
「あんたも女の子なんだから、香りの演出も覚えていくといいよ」
「えへへ」
「ちょっとプッシュしてごらん」
と言うので手にプッシュして香りをかいでみると、甘くて明るい香りがする。
 
「この匂い好き〜」
「気に入ってもらって良かった」
 
「へー、いい感じの香水だね」
と浅谷さんは言うが
 
「ごめん。これは香水じゃなくてオードトワレ」
と美輪子は言う。
 
「そのあたりの違いもよく分からない」
「まあ高いのから順に、香水、オードパルファン、オードトワレ、オーデコロン」
 
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「10秒後には忘れそうだ」
と浅谷さん。
 
「お酒のブランドは覚えるのに」
「自分に関わりの無いものは記憶に残らない」
「賢二は女装の趣味は無いよね?」
「会社の新入生歓迎会で女装させられたくらいかな」
「写真無いの?」
「会社のデータストックから消去しておいた」
 

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翌日3月2日の朝は、千里はいつものように5時に起きて、早朝からシューター教室に出かけていき、智加や結里たちの指導をした。なお、晴鹿は自分の学校の卒業式に出るためいったん岐阜に戻っている。絵津子もこちらに戻って来ている。
 
その後、下着も交換してから女子制服に着替えて教室に戻ると、美輪子が母と一緒に来ていて、美輪子が手を振る。千里も手を振って近づいて行き
 
「来てくれてありがとう」
と笑顔で言う。母は顔をしかめている。
 
「あんた、その制服で卒業式に出るの?」
「そうだよ」
「女の子の制服で?」
「だって私女の子だもん」
と千里は笑顔で母に言った。
 

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千里がそれで教室の中に入っていくと、花野子が
 
「あれ?千里その服で卒業式に出るんだっけ?」
などと言う。
 
「なんで?」
「男子制服じゃないの?」
「女子制服だよ〜。私、女の子だもん」
「だって、千里は性転換手術を受けて男になったらしいという噂が」
 
「どっからそんな根も葉もない噂が!?」
 
「男になっちゃったから、もう女の子の声も出なくなったとか。でも女の子の声だね。以前と違う声だけど」
 
「そうなんだよ。私、声変わりが来ちゃったんだよ。以前のは少女っぽい声だったけど、これ結構大人の女っぽい声だよね」
 
「ああ、そういう声変わりだったのか。声変わりというから、男の声になったのかと」
「まさか。私、睾丸なんか無いのに」
「やはり睾丸が無かったら声変わりしないよね?」
「ふつうの女性の声変わりだと思うけど。実際今、声の音域トップが12月頃に比べて3度ほど低いんだよ。練習していればまた出るようになるかも知れないけど」
「なるほどー。じゃ男の声は出ないの?」
「それはさすがに出ない」
「だよねー」
 
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