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■女の子たちの卒業(2)

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やがて卒業式が始まる。
 
在校生がみんな着席している所に胸にリボンを付けてもらった卒業生が整列して入って来て着席する。
 
教頭先生が卒業式の開会を宣言し、2年生の長谷さんのピアノ伴奏で君が代を全校生徒で斉唱する。それから卒業生の名前が1人ずつ呼ばれて壇に上がり、校長から卒業証書を受け取った。
 
千里は担任から「村山千里」と呼ばれて壇上に上がり、校長先生から証書を受け取った。校長先生は「この3年間、ほんとに頑張ったね」と声を掛けてくれた。
 
全員が卒業証書を受け取った後、壇上にいる校長がそのまま卒業生への式辞を述べる。そのあと理事長さんがあがって告辞を述べる。更にPTA会長、同窓会長の祝辞のあと、来賓の祝辞が続いた。
 
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そのあと在校生代表で2年生の生徒会長から送辞が読まれ、3年生で最後の成績トップであった蓮菜が卒業生を代表して答辞を読んだ。
 
ここで「卒業生特別表彰」がありますと言われる。
 
「表彰の対象になったのは、国際数学オリンピックで金メダルを獲得した3年6組浜中孝徳君、ベネツィア音楽グランプリで入賞した3年3組水野麻里愛さん、そしてU18アジア選手権で優勝・BEST5・スリーポイント女王を取った3年6組村山千里さん」
 
と呼ばれる。どうも国際的な大会で好成績を挙げたというのが選考基準のようだ。千里はこんな賞がもらえるというのは全く聞いていなかったので驚いたが、笑顔で壇上に上がった。
 
ひとりずつ校長から賞状と記念の楯をもらった。麻里愛ともハグした。
 
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その後は2年生の長谷さんのピアノ伴奏で、出席者全員で「仰げば尊し」を歌った後、更に校歌を斉唱して、最後に教頭先生が卒業式終了の宣言をした。卒業生が退場して式は終わった。
 
その後は教室に入って担任の先生からお話を聞いた。保護者は教室の後方、あるいは一部廊下に並んでいる。千里は先生のお話を聞いていて理由のよく分からない涙が出てきた。鮎奈も涙を浮かべていて、千里を見て
「やっぱり卒業式って泣けるよね」などと言っていた。
 
学校としてはこれで卒業であるが、国立の後期試験などはまだこれからである。それで補習は3月中旬まで引き続き行うし、先生たちも学校に常駐しているので進路のことなどで相談があったらいつでも来るようにと言われた。
 
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そのあと解散になったが、千里は同じクラスの女子たちとたくさんハグして泣いて別れた。この中にはすぐにまた顔を合わせる子もいる。でもひょっとすると2度と会うことのない子もいるかも知れないなと千里は思った。
 

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ホームルームが終わった後、廊下にバスケ部の雪子が来ていて
「千里さん、これバスケ部からの記念品です。これまでありがとうございました。また今後の活躍も期待しています」
と言ってくれた。
「うん。雪子も頑張ってね」
「シューター教室はいつまでするんでしたっけ?」
「13日朝までやるんだよ」
「たいへんですね!」
 
お昼は謝恩会が開かれることになっていたが、進学・特進の子たちの参加率は低かったし、千里もそういうのはかったるい気がしたので欠席して、お昼は旭川市内の和食の店で、母・美輪子と3人で昼食を取った。
 
「あ、これあんたに卒業祝い」
と言って母が袋をくれる。開けてみるとオーブントースターの箱が入っている。
 
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「実用品で悪いけど」
「ううん。こういう実用品がけっこう助かる」
「大学に入った後現地で買ったほうがいいかなとも思ったんだけど、卒業からあまり時間が経って渡すのもと思って」
「うん。引越の荷物に入れて送るから大丈夫だよ」
 
「しかし千里が引っ越して行くと寂しくなるなあ」
と美輪子は言っている。
 
「3年間お世話になったからね。それ以前にもけっこう泊めてもらったりしていたし」
「うん。あの部屋は中学の頃から事実上あんた専用になってたから」
「この後は、おばちゃんの子供の部屋にしなよ」
「子供かぁ・・・いつ作ろうか?」
と美輪子が言うと
 
「いつでもいいけど、式をあげた後にしてよね」
と千里の母は言った。
 
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お昼の後は、母たちと別れて(トースターは美輪子に持ち帰ってもらった)、Q神社を訪れた。
 
「なんか最後の方はほとんど出仕できなくて申し訳ありませんでした」
「むちゃくちゃ忙しかったみたいね」
「そうなんですよ!3年生になってからは日本代表のスケジュールが入ってほんとに時間が取れなくなってしまいました」
 
「でも卒業か。寂しくなるなあ」
と斎藤巫女長は言う。
 
「千里ちゃん、どこに行くんだっけ?」
「まだ入試の結果が出ていないので確定してないんですけど、合格していたら千葉のC大学です」
「千葉か。どこか知り合いの居る神社が無かったかな」
「あはは。巫女さんもいいですけどね」
 
「そうだ。これ千里ちゃんの卒業祝いにと思って」
と言って斎藤さんが小さな箱をくれた。
 
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「わあ、イヤリング! これ高そう」
「やはり高校卒業したら、もう大人だし。こういうの持っておいた方がいいよ。真珠のネックレスとかあげたいなとも思ったけど、予算オーバーだから」
 
「これもとってもありがたいです!」
 
それで早速つけてみる。
 
「おお、可愛い、可愛い」
「でも女子高生の制服とは合わない」
「ドレスとか着て、それをつけるといいのよ」
 

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その日は巫女服に着替えて、夕方まで最後のご奉仕をして、この神社を退職した。思えば、ここの神社のお給料が、高校1年の頃の千里の学資を支えたのである。千里は本当に感謝していた。
 
『あぁあ、千里ここ退職しちゃうのか』
と寂しそうに《りくちゃん》が言う。
 
『あんたたちの餌場として貴重だからね。千葉に行っても適当な所見付けてあげるから心配しないで』
と千里は答える。
 
『都会はきっと食べ甲斐のある所がたくさんあるよ』
と《てんちゃん》が言っていた。
 
千里は「よかったらこれ、退職記念に、本殿の隅にでも置かせてください」と言ってローズクォーツ製の龍の置物を斎藤さんに渡した。
 
「ほほぉ。面白いものを」
と言って斎藤さんはその置物をほんとに神社本殿の端の方に小さな棚を作って置いてくれた。
 
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これで千里の後ろの子たちの「緊急の食事の場」としても使えるし、この神社の清浄をキープするのにも貢献できることになる。千里は中学を卒業する時も留萌Q神社に木彫りの龍の置物を置いてきている。
 

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夕方帰宅すると、美輪子がクラッカーで迎えてくれた。
 
「びっくりしたー」
「1日早いけどお誕生日おめでとう」
と美輪子と母が言ってくれる。
 
「ありがとう」
「とうとう千里も明日で18歳か」
「法的に結婚できる年になったね」
「私が法的にも女であったら16歳で結婚できたんだけどね」
「まあ仕方ないよ」
「20歳過ぎたら手術して戸籍も直して結婚しなさい」
と母は言うので
「そうするつもり」
と千里は答えるが、美輪子はニヤニヤしている。
 
ふたりで誕生日のお祝いのごはんを作ってくれていたようで、お魚をたくさん乗せた「すし太郎」の他に、大根やニンジンの煮物、白身魚・カボチャなどの天ぷらも並んでいる。
 
「バイトで全国飛び回っているけど、やはり留萌・旭川のお魚は美味しいよ」
と千里は言う。
 
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「東京とかだと水揚げしてから店頭に並ぶまで3−4日かかったりするんじゃないの?」
「そうみたい。東京も築地とかは新鮮なんだろうけど高級店に限られるみたい」
 
「越谷に行ってる吉子ちゃんとかも、美味しいお魚が食べたい、って言ってるらしいよ」
「埼玉県は内陸だから、よけい厳しいかもね」
 

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しばらくおしゃべりしながら食べていたのだが、ふと母が言った。
 
「千里、あんたけっこう食べるようになったね」
「うん。やはりスポーツするのには身体をしっかり作るのが必要だからね」
「千里筋力が凄いもん。さすが全国で活躍するバスケ選手だけのことはあるよ」
と美輪子が言う。
 
「お父さんには内緒にしててね。私はか弱い男の子ということにしておいて。でないと、漁師になれって言われるから」
と千里。
「あの人はまだあきらめてないみたいよ」
と母も言う。
 
「でも千里が男ばかりの漁船に乗って沖合とかに行ったら、絶対レイプされるよ」
と美輪子は言う。
「まあやられてもいいと開き直っちゃう手もあるけどね。料金取ったりして」
と千里。
「それは別の職業だよ!」
 
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すると母が心配そうに言う。
「あんたさ、性転換手術の手術代稼ぐのに、風俗とか行ったりしないよね?」
 
それで千里は苦笑しながら言う。
「実はさ、高校に入りたての頃、ほんっとにお金が無いから、いっそ夜のお仕事しようかと思ったこともあるよ。あんたなら絶対人気出るとか言う人もあるし」
 
「まあ普通の女の子より、千里みたいなのは商品価値あるからね」
と美輪子。
 
「でも悩んでいる内に貴司のお母さんに紹介してもらってQ神社に奉仕させてもらうようになって、それで結果的には思いとどまったんだよ」
 
「じゃ貴司君のお母さんには、ほんとにお世話になってるんだね」
と母もしんみりとした顔で言った。
 

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