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■女の子たちの卒業(16)

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同日、成田空港。
 
母華ローザはエールフランスのエアバス機から降りると大きく伸びをしてから入国審査の方に行った。1ヶ月ぶりの日本だ。
 
日本人用の自動化ゲートの所に並んでいたら、係員から声を掛けられる。
 
「Excuse me, sir. This automated gate is for Japanese only. Would you move to the gate with officer overthere for foreigners, or if you don't register yet, would you go to the immigration counter?」
 
「あ、すみません。私、日本人です。ついでに私は女です」
「ごめんなさい!マダム。再入国ですか?」
「いえ。日本の国籍です」
と言ってローザは日本政府発行のパスポートを見せる。
 
「失礼しました!」
 
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母華ローザは生まれたのはフランスのオルレアン近郊の町である。出生名はRosa Marie Vorga。父はフランス人、母はアルジェリア人とスーダン人のハーフであったが、彼女がまだ5歳の頃に3つ上の姉とともに一家4人で日本に移住。一家まるごと日本に帰化した。それでローザはフランスでの生活はほとんど覚えていないし、実はフランス語ができない!
 
今回は祖母が大きな病気をしていつまで生きていられるか分からず孫たちに逢いたがっているというので、実は18年ぶりの里帰りであった。両親と姉はまだフランスにいるのだが、フランス語ができないローザは向こうでの生活に疲れてひとりで先に帰国したのである。
 
自動化ゲートを通って手荷物受け取り所に行き、自分の荷物が出てくるのを待つが、さてこれから何をしようかなと考えていた。
 
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スーダン人の母方の祖父の影響かローザも姉のクララも背が高い。クララが181cm, ローザは184cmである。母も179cmくらいある。それで今日みたいにズボンを穿いているとしばしば男性と誤認される場合もある。
 
ふたりは最初姉がその背の高さから中学時代に誘われてバスケ部に入り、全国大会で活躍したことから注目され、愛知J学園に入り、インターハイ優勝を成し遂げた。3つ年下のローザも姉と入れ替わる形でJ学園に入ってやはりインターハイで優勝。リバウンド女王も取った。卒業後、姉は大学を経て実業団に行ったが、ローザは高校を出てすぐにプロになり2004年と2005年の2年間Wリーグで大活躍した。しかし2006年の途中で怪我をして戦線離脱。結局解雇されてしまう。本人も治療とリハビリで半年苦しんだ。
 
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2007年春の時点で元居た球団を含めていくつかの球団に接触したものの球団側は彼女の怪我の回復について懐疑的で、どこにも入団できなかった。その時、同じく元プロの堀江希優(札幌P高校出身)と出会い、ふたりで千葉ローキューツを結成したのである。
 
しかしこのチームは希優が勤めている会社の仕事が忙しくてなかなか出てこられず、ローザ自身も動きにキレが無くて怪我をする前のようなプレイが出来ずに悩んでしまう。結果的には自滅するような形で夏頃から幽霊部員と化してしまい、浩子たちに迷惑を掛けることとなった。
 
2007年の後半はハワイ、タヒチ、ニューカレドニアなどを放浪した。2008年の春に帰国し、姉が所属している実業団チームの練習にだけ参加させてもらったものの、やはり自分が思っているプレイができないことに悩む。姉からは基礎的な運動能力を鍛え直した方がいいと言われたが、元々あまり練習が好きな方ではないので、サボりがちで、結局は姉のアパートで居候しながらゲーム三昧の1年を送ってしまった。
 
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しかし一度フランスに帰って祖母と(姉や母の通訳で)話したりもして、自分もまた頑張らなきゃという気持ちになりつつあった。
 
でも何から始めよう?
 
と思った時、自分の荷物が流れて来たので、それを取って出口の方に向かった。
 

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取り敢えず都心に出るのに地下の駅に行こうとエレベータに行く。やがて上からゴンドラが降りてきたが、その中に乗っていた人物がローザを見て「あっ」と言った。
 
「はい?」
エレベータに乗り込みながらローザは返事をする。
 
「あなた、母華ローザさんだっけ?」
「はい、そうです」
「今、どこのチームにおられるんでしたっけ?」
「実は浪人中なんですよ。2年前に怪我して以降、どうにも調子が出なくて」
「怪我は治ったんですか?」
「一応治ってます。でもなんかプレイに自分で自信が持てないんですよね」
 
ゴンドラは地下に到着する。ふたりはエレベータを出た所で立ち話をした。
 
「ね、良かったら私と一緒にトレーニングしない?」
「済みません、あなたは?」
「ごめんなさい。私、元バスケ選手で藍川真璃子と言うの」
「元日本代表の?」
「よく知ってるわね。たぶんあなたが小さい頃に私もう引退しちゃってたのに」
「済みません。お名前だけ知ってました。その話、ちょっと興味あります」
「じゃ、どこかで牛丼でも食べながら話そうか?」
「私、牛丼大好き! 1ヶ月も外国に行っててお米が食べられなくて飢えてたんですよ」
「あんた、日本人だね〜」
「えへへ」
 
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その4月10日は千里の登校初日であった。
 
朝千里は着替え用の服が、雨漏りのため全部ずぶ濡れになっていることに気づき絶句する。それで結局昨日着ていた男物の服を着たまま学校に出て行き、半ば冗談で「ボク男ですよ」などと言ってしまったのを真に取られ、誘われた男子のクラスメイトとの飲み会を終えてアパートに帰ってきたのは(4月10日金曜日)の夜10時すぎであった。
 
千里は飲み会の帰り洋服屋さんで調達した可愛いチュニックとプリーツスカートを穿き、長い髪を風に靡かせていた。
 
その姿を見て貴司は「やっぱり千里って可愛い!」と思った。
 
一方の千里はアパートの前で座り込んでいる貴司を見て
「どうしたの?」
と困惑したような顔で女声で呼びかけた。
 
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貴司はドキッとした。
 
「振られた」
と答える。
 
「なんで?」
「いや。昨夜彼女と一緒にホテルに行ったんだけど、僕の陰毛が無いのを彼女に指摘されて」
「ああ。こないだ私をレイプした罰でおちんちん切っちゃった時についでに毛も切っちゃったからね」
「それでこれどうしたのかと言われて、千里に剃られたこと言っちゃって」
 
千里はおかしくなった。こういう時、適当な嘘を思いついたりできないのが貴司の欠点でもあり長所だよなあ。
 
「それで千里が男か女かは知らないけど、そういうことをしあう関係にあるなら、もう知らない、と言われてホテルから追い出された」
 
「ふーん」
「それで明るくなってからここを探してやってきて千里を待ってた」
「彼女に振られたから、その代わりに私を求めるの?」
と千里は厳しい表情で訊く。
 
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「違う」
と貴司は言う。
 
「千里のことはずっと好きだった。去年の春に別れたことを後悔していた。留萌と旭川に別れて住んでいても交際できてたんだもん。大阪と北海道でも工夫次第では交際できたんじゃないかという気がして」
 
そう言う貴司は自分の携帯に付けた金色のリングが付いたストラップを見せる。それは千里と貴司のマリッジリング代わりであった。千里は心が暖まるような思いだった。
 
「でも私、もう恋人作っちゃったよ」
と千里は言った。なぜそんなことを言ってしまったのかは自分でも分からなかったがこの時はあまり素直になれない気分だったのである。
 
なお、千里は今日はずっと女声で離している。
 
「え?ほんと?」
「だから貴司とは恋人にはなれない。友だちとしてなら付き合えるけど」
 
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貴司は少し考えた。
 
「分かった。でも今夜は泊めてよ」
「そのくらいいいよ。友だちだもん」
と千里は明るく言って、部屋の鍵を開けた。
 

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部屋の中に入ってから千里はコーヒーを煎れて貴司に出し、台所の板張りに座って一緒に飲む。貴司は千里は僕を居室には入れないつもりなのだろうかと思った。そういえば昨日の日中芦耶を連れてきた時もずっとここで話していた。
 
「でも千里、女の子の声がまた出るようになったんだね。以前の声とは違うけど」
「え?私男だから女の子の声が出るわけないじゃん」
「今千里がしゃべっている声は女の子の声に聞こえるんだけど」
「貴司耳がおかしいんじゃない?耳鼻科行ったら?それとも私が女だという幻想に取り憑かれて男の声でしゃべっている私の声が女の声に聞こえるのならむしろ精神科かもね」
 
「千里のこと、男だとか言ってごめん」
と貴司は謝った。
 
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「ううん。私は間違い無く男だから問題無いよ。おちんちんもあるし」
と千里。
 
「ほんとに?」
「今度一緒に連れションしようよ」
「うーん・・・・」
 
「でも今日は疲れたね。寝ようか」
と千里が言う。
 
「じゃ僕が台所で寝るから、千里は奥の部屋で寝るといいよ」
「あ、それが奥の部屋は使えないのよ」
「へ?なんで?」
「このアパート凄い雨漏りでさ。居室は完璧に水浸し。おかげで私の服が濡れて全滅。それで私、今日の大学初登校には、昨日貴司の愛しい彼女の前で私がわざわざ男装するのに着ていた服しか残ってなくてさ」
 
「ありゃー、それは困るだろ?」
貴司はかなりねちねちと言われたなと思いながらも、それは黙殺して、最も重要な問題にだけ反応した。
 
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「おかげで、私大学では取り敢えず今日は男を装っておいたよ」
「千里の男装には無理があるけどなあ」
「あの子、なかなか信じてくれなかったね。私が男だってことを」
「まあ千里は女だから」
「取り敢えず私着替えが無いんだよねー。明日も何着て学校に行くべきか」
 
貴司は少し考えた。
 
「コインランドリーに持って行って、取り敢えず明日の分の着替えだけでも作ろうよ」
「やはりその手か。洗濯機に入れても朝までには乾かないなと思ってた」
「千里、夜中に女の子が出歩くのは不用心だし、良かったら僕がコインランドリーまで行ってくる。女の子の下着とか僕に触られるの嫌かも知れないけど」
 
「私は男だから全然構わないよ。下着も男物しか無いし」
「ほんとに〜?」
 
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千里は声を殺して笑っていた。
 
それで千里は取り敢えず使いたい分のパンティ数枚、ブラジャー数枚、それにポロシャツ3枚とジーンズ1枚スカート1枚、それにバスタオルを2枚、貴司に渡した。貴司に渡す時、千里はブラジャーのことを猿股、パンティのことをトランクス、スカートのこともショートパンツと言った。
 
「これブラジャーとパンティに見えるけど」
「やはり本格的に貴司、おかしくなってるね。病院に行ってきなよ」
「僕がおかしくなっていて、これが本当に男物の下着なのに女物の下着に見えるのなら、そのままおかしいままでいい」
「ちなみに、貴司に男の下着に頬ずりする趣味があるのなら、それに頬ずりしてもいいよ。貴司って昔からホモ疑惑があったしなあ」
 
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「いや、今日は自粛しておく」
 

それで貴司がコインランドリーに服を持って行き、洗濯乾燥を掛けている間に千里は御飯を炊いてカレーライスを作った。
 
「乾燥までさせてきたよ」
「ありがとう。こちらもカレーができたよ」
 
ふたりで一緒に洗濯物を台所内に張ったロープに掛ける。これで朝までに完全に乾くはずである。そして千里のブラジャーやパンティが目の前にぶらぶらしている状態で、ふたりはカレーライスを食べた。
 
「美味しい、美味しい。千里の作ったカレー久しぶりに食べたけど、やはり千里、料理がじょうずだよ」
 
「お腹空いてたからじゃないの?」
などと千里は言っているが、貴司の表情を見て嬉しそうである。
 
「明日はもっと頑張ってコインランドリーと往復して全部の服を洗濯乾燥させてくるよ」
「うん。でも一部クリーニングに出さないといけないのもある」
「それは分かると思うから、その分はえり出して、そちらはクリーニング屋さんに持って行くよ」
 
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やがて寝ようかという話になる。交代でシャワーを浴びる。
 
千里が先にシャワーを浴びた。貴司はシャワールームから出ると身体を拭いて布団の中で目を瞑っている千里に言った。
 
「千里、もう寝た?」
「起きてるよ。布団が1組しかないから悪いけど私と一緒に寝てくれる?襲ったりしないから」
と千里は言ったが、貴司は
 
「セックスさせてよ」
と千里に言った。
 
「ダイレクトな言い方だなあ」
「婉曲的に言うとか苦手だから」
と貴司。
「友だちだし、セックスくらいしてもいいよね」
と千里は答えた。
 
それで貴司は裸のまま千里の寝ている布団の隣に潜り込んだ。千里も裸で寝ていた。貴司がキスをすると千里は貴司に抱きついてきた。千里の豊かなバストが貴司の胸を圧迫する。
 
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「千里、ヴァギナあるよね?」
「まさか。私男の子なんだから、そんなのある訳無いじゃん。ちゃんとおちんちんがあるよ」
「いや、千里は女の子だ。ちんちんは無いはず」
「確かめてみる?」
と言って千里は貴司の顔を両手でつかんで唇にキスをした。
 
それで貴司はわざわざ布団を剥いで千里の股間を見つめた。豊かな茂みの中に何も突起物がないのを再確認して安心する。
 
「よかった。やはり千里にはちんちんは無い」
「おちんちん、あるってのに。それが見えないの?」
「少なくとも僕には見えない」
「ああ、やはり貴司は嘘つきだからね。正直者にしか私のおちんちんは見えないのよ」
「そういうことなら、僕は嘘つきでもいい」
「やはり嘘つきだってことを認めたか」
 
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貴司はさすがに疲れていたのだろう。1回逝っただけで、すぐ眠ってしまった。千里は微笑んで眠っている貴司にキスをすると、起き上がってバッグの内ポケットから1年前に取り外した金色のリングを取り出し、自分の携帯に取り付けた。
 
「貴司、これを取り付けたってことは私たち、また夫婦に戻ったってことなんだからね。1年間の別離生活からはもう卒業。私毎月2回は大阪に来るからね」
と言って、再度貴司にキスをする。
 
でも貴司って、昨日の子とは別れたものの、またすぐ別の彼女作るんだろうな、と思うと、千里は『何で私、こんな浮気男を好きになっちゃったんだろうね』と心の中でつぶやいた。《きーちゃん》が千里を優しく見守っていた。
 
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女の子たちの卒業(16)

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