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■女の子たちの卒業(4)

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「今いいかな」
「うん」
 
「僕、やはり彼女と恋人になろうかと思う」
と貴司は言った。
 
千里はショックだったが、先日もライブに一緒に来ていたんだもん。やはり仲は進行しているんだろうなと思う。たぶんあのライブの後、ホテルとかにでも行ったのかなあ。悔しいなあ。
 
「いいんじゃない。それ私にわざわざ言う必要もないと思うけど」
「いや千里は友だちだから」
「そうだね。友だち同士ならお互いの恋愛のこと言ってもいいかもね」
 
「実はゴールデンウィークに旅行する約束もしちゃった」
「ああ。いいんじゃない」
と答えながらも千里の心の中では嫉妬の炎が燃え上がる。旅行なら当然旅先でセックスしまくるんだろうなあ。
 
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「私もゴールデンウィークまでに新しい恋人作ってどこか旅行に行こうかな」
と千里。
「うん、それもいいと思うよ」
と貴司は言う。
 
「でも千里恋人って男の恋人?女の恋人?」
「私が女の恋人作るわけないじゃん」
「安心した。千里、やはり女の子だよね」
 
ふーん。他の子と恋人になると私の前で宣言しておいても私のこと気になる訳?
 
「僕は今、千里と恋人になることはできないけど、千里は可愛いもん。声くらい男の子であっても、彼女にしたいと思う男の子はきっといるよ」
「そうかもね。誰かさんみたいに薄情じゃない人もいるかもね」
 
「ごめんねー。そのうち千里が女の子の声も出せるようになったら、僕もまた気持ちが整理できると思うんだけど」
 
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なんかこいつ凄くわがままなこと言ってないか?まさか二股するつもりか?と千里は少し腹が立った。
 
「別にいいよ。女の子であった頃の私のことは貴司の脳のどこかに美しい記憶として保存しておいてよ。私は私で何とかやっていくからさ」
 
と千里は突き放すような言い方をする。そばで聞いている美輪子が顔をしかめている。
 
貴司はしばらく何か考えていたようである。
 
「でも千里さ」
「うん?」
「確かに声は男の声になってしまっているけど、こうやって聞いていると男が話しているようには聞こえない」
「そ、そうかな?」
 
「うん。やはり千里って基本が女の子なんだと思う。だから声だけ男になってしまっても、イントネーションとか話し方の雰囲気がやはり女なんだよ」
 
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それは雨宮先生にも言われたなと千里は思った。
 
「千里、合格発表は7日だったよね」
「うん」
と素っ気なく答える。
 
「その後、入学手続きとかで千葉に行くんだっけ?」
「まあ合格していたらだけどね。手続きは13日からだからその日に行くつもり」
「だったらさ、そのあと千里ちょっと大阪に出てくることできない?」
 
は?こいつ何言ってんの?他の女の子と恋人になると言っておいて、私とも会いたい訳??
 
「私、そのあと自動車学校に行くんだよ。合宿方式。入学手続きの翌日14日に入学して、仮免試験・卒業試験に落ちなかったら27日に終了予定」
 
「だったら28日にでも大阪に出てこない? 大阪までの交通費はあげるからさ」
「私と会ってもいいわけ? 貴司、今けっこう注目されているから顔が売れてるよ。私と会っているの見られたら、誰かがツイッターに書くかもよ。彼女に気付かれたらやばくない?」
 
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「友だちと会うのは別に問題無いと思うけど。もっとも顔が売れているというのでは僕より千里のほうが売れてると思うなあ」
「女子バスケットはマイナーだもん。バスケットといったらみんな男子でしょ」
「それはそうかも知れないけど」
 
そしてその時千里は、なぜそんなことを言ったのか自分でも分からない。
 
「よし。じゃ目立たないように、私男装して会いに行ってあげるよ」
「え〜〜〜!?」
 
そばで様子を見ていた美輪子が「何!?」という感じの顔をした。
 

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電話を切ってから美輪子に訊かれる。
 
「今の貴司君でしょ? なんであんた女声で話さなかったのよ?」
「うーん。。。なりゆき」
「あんたたち、結局どうなってんの?」
「一応私たち、1年前に別れたんだけどね」
「全然別れたようには見えないんだけど?」
 
「そうだなあ・・・」
 

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3月6日(金)は朝からシューター教室をしに行き、またこちらに戻って来た晴鹿を指導した。そのあと、また美輪子に送ってもらって旭川空港に行き、いつもの便で東京に出る。
 
この日は3月6日が「弟の日」というので、男子限定のライブが行われる。3月3日に女子限定ライブをしたので、その代わりである。
 
そして先日の女子限定ライブでは男性の演奏者にもスカートを穿いてもらったので、今日は全員男装である。KARIONの4人まで男装して学生服を着ている。4人の中でいちばん男らしくなったのは小風である。
 
「この格好でスーパー銭湯に行ったら男湯のロッカーの鍵を渡されるかなあ」
「実験してみる?」
などと和泉が言うが
 
「やめて〜」
と三島さんが言っている。
 
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「和泉も美空も学生服着ても女の子にしか見えない」
と蘭子が言っているので
「よし、蘭子にも着せよう」
と言われて、ちゃんと用意されている蘭子用の学生服を着せられ、結局学生服で4人並んだ所を望月さんが記念撮影していた。(今日は蘭子は伴奏者に紛れるために伴奏者用の男装をしていた)
 
「蘭子も学生服着ても女にしか見えん」
「蘭子、ほんとに学校には学生服で行ってるんだっけ?」
「行ってるけど」
「たぶん蘭子が学生服で男子トイレに入る度にパニックが起きている気がする」
 
実際には2月に学校に復帰して以来、蘭子は男子トイレの使用を他の男子たちから拒否され、入ろうとしても追い出されていたようである。
 
「やはり蘭子、男の格好で通学してるって嘘でしょ?」
「ほんとだよ〜」
「それ無用の混乱を起こしているだけのような気がする」
 
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千里も伴奏者用の、少しゆったりしたズボンと男性用ワークシャツにネクタイまで渡された。
 
「村山さんはその長い髪で男に見えないなあ」
と千里を見て黒木さんが言っている。ここは女性用控室なのだが、黒木さんはなぜか入って来ている。彼はしばしば女性用控室に平気で入ってくるし、女性の出演者たちも彼の存在はあまり気にしない。
 
「男性用カツラでもかぶせます?」
と小風。
 
「あ、それで行こう。誰か買って来てよ」
 
え〜〜〜〜!?
 
ということで、小風が千里の頭にメジャーを当ててサイズを測ってくれて、事務所の男性スタッフが千里の頭に合う男性用カツラを買ってきて、千里は髪をまとめてそれをかぶる羽目になった。
 
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KARIONの大きな方針とかはどうも和泉と蘭子の話し合いで決められているようだが、この手のちょこちょこした演出部分は、小風と黒木さんの思いつきが反映されている傾向があるようである。
 
「男装の千里ってすげー違和感」
と泰華が笑って言っていた。泰華は男装すると、けっこう格好いい男子に見える。
 

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ライブが終わった後で千里は黒木さんに声を掛けた。
 
「今日使用した男装用の服とかカツラですけど、私買い取れません?ちょっとコスプレ用に持っておこうかと思って」
 
すると黒木さんは
「ああ、そんなので良かったら持って行っていいよ。僕が望月さんには言っておくから」
などと言うので、そのままお持ち帰りした。
 

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その日は都内のホテルに泊まり、翌日は上越新幹線と《はくたか》を乗り継いで富山に行った。
 
この日のお昼頃、C大学の合格発表があっていた。
 
千里は合格していた。手応え充分だったので、落ちることはないだろうとは思っていたのだが、とにかくもこれで自分の4月からの行き先が決まってホッとした。美輪子・母にメールし、担任の先生には電話して報告しておいた。また、取り敢えず予約だけ入れておいた、自動車学校に料金を振り込んで、千里は14日から自動車学校の合宿コースに行くことになった。
 
夕方から富山市内でKARIONのライブをする。3日は女子限定、6日は男子限定であったが、この日からはまた通常のライブに戻る。ヴェネツィアン・マスクは今回のツアーでずっと付けているのだが、衣装はいつものドレスに戻った。
 
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その日は富山市内に泊まり、翌8日は京都に出てライブである。ここだけが3日連続のライブになっているのである。
 
京都ライブも割と早い時間帯に終わる予定だったので、千里はライブ終了後すぐに新幹線で東京に向かい、羽田からの最終便で新千歳に戻ることにしていた。結果的にKARIONの4人と同じ新幹線に乗ることになるはずだが、向こうはグリーン車、こちらは普通車である。
 
しかしこの日は進行が少し遅れ、アンコールの最後の曲『Crystal Tunes』のピアノを弾き終わったのは本来の予定より10分も遅くなっていた。幕が下りると、すぐに楽屋に引き上げヴェネツィアン・マスクを外し、急いで着替える。結構時間がやばい気がする。
 
『万一の時は、りくちゃん送ってよ』
『旭川まで?』
『京都駅までだよ!』
 
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荷物を持って小走りに裏口に行くと、そこに事務所の若い女の子とKARIONの4人が困ったような表情で立っていた。
 
「どうかしました?」
「いや、実は望月さんがなかなか出てこなくて」
「探してきましょうか?」
「新幹線の時刻がギリギリなんですよ。すぐに行かないとやばいのに」
「望月さんが運転することになっていたんですか?」
「そうなんです」
 
すると小風が言った。
「村山さんは運転はできないんですか?」
「うーん。できないこともないけど」
「じゃ京都駅まで私たちを送ってもらえませんか? 車は駅前に放置でいいので」
「放置していいんですか!?」
「駐車場とかに入れる時間のロスが惜しいので、スタッフさんに1人向こうに行ってもらっているんです。その人が車は回収しますから」
 
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「分かりました」
 

それで千里がヴィッツの運転席に座り、美空が助手席に乗って、後部座席に左から小風・蘭子・和泉と乗り込んだところで千里は「シートベルトお願いします」と言って車を出発させる。
 
車は夕方の京都市内で、たくみに混んでいない道を通り抜けて京都駅に向かう。実は《たいちゃん》がナビゲートしてくれているのである。
 
「千里さん、よくこんな路地みたいな所を知ってますね」
と助手席の美空が感心したように言っていた。
 
わずか2分で京都駅に到着する。
 
「助かりました!」
と和泉が4人を代表して言い、それで4人が飛び降りて行った所で、見た記憶のある男性が寄ってきて
 
「お疲れ様です。車を回収します」
と言うので
「では後はよろしくお願いします」
と言って、千里も荷物を持って車を降りた。
 
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急いで改札を通り新幹線に飛び乗る。千里が乗って1分ほどで新幹線は動き出す。ほんとにギリギリだったようである。
 
『美空たち4人はちゃんと乗れた?』
と後ろの子たちに訊くと
『だいじょうぶ。ちゃんと乗ったよ』
と《いんちゃん》が教えてくれた。
 
でもまた無免許運転しちゃった!
 
 
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