広告:クラスメイトの女装を手伝ったら可愛すぎて震えが止まらない件
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■女の子たちの卒業(7)

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織絵のお父さんの車に、助手席に織絵、後部座席に美来と日登美が乗って金沢から高岡まで行く。車は金沢市内で国道8号線に乗り、津幡バイパス・津幡北バイパスを走って高岡市に入った。この津幡北バイパスは2008年3月に全線開通したばかりである。それまでは8号線は津幡検問所前交差点で慢性的な渋滞が発生していたので、このバイパス(平面交差は1ヶ所のみ:なぜ平面交差を作った?と非難囂々であった)を通ることで距離的には5kmほど長くなるものの、金沢−高岡間は時間的には10分ほど短くなった。
 
病院の駐車場に駐める。お父さんは休んでいるから女の子だけで行ってらっしゃいということだったので、織絵・美来・日登美の3人で4階の病室にあがる。
 
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「元気〜?」
と言って織絵が入って行くと
「ゴシカァン!」
と言って鏡子はすごーく変な顔をしてみせた。
 
が、織絵と一緒に美来・日登美がいるのに気づくと
「ぎゃーっ」
と叫んで毛布の中に顔を埋めた。
 
「友だち連れてくるなら言ってよぉ」
などと言っている。
 
「いや、今のは彼女の名誉のために私たちは見なかったことに」
と美来。
「うん。私は何も見なかった」
と日登美。
 
これが衝撃の音羽・光帆・神崎美恩・浜名麻梨奈4人の初対面だったのである。
 

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いきなりの鏡子の自爆で、全くわだかまりが無くなってしまった。
 
織絵がお土産に買ってきた銀座の洋菓子店のロールケーキを切って摘まみながらおしゃべりに花を咲かせる。
 
「夏に織絵がスタジオに来た時、一緒でしたよね?」
と美来が訊く。
「そうそう。東京に引っ越してこないか?なんて言われたけど、私は織絵みたいに大胆に東京行ってバンドやりますなんて親に言う勇気無かったから、辞退した」
と鏡子は言っている。
 
「元々ふたりでペアだったの?」
と日登美が訊くが
「もうひとり居て3人のバンドだったのよ」
と鏡子が答えている。
 
「私たちは最初5人でレッスン受けてたのよね」
と美来が言う。
「でも1人抜け2人抜けで最後まで残ったのが私と日登美」
「まあ私も最後は抜けちゃったけどね」
と日登美。
 
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「そちらはバンドじゃなくて歌手志望だったの?」
と鏡子が訊く。
「そうそう。歌とダンスのレッスン受けてたんだよね」
「実は私より日登美の方が歌はうまい」
「ほほお」
「ふたりともPatrol Girlsには臨時参加したことある」
「おお、すごい」
 
「まあシンガーソングライターを目指していた部分もあるんだけどね」
「あ、作曲するんだ?」
「うん。日登美が作詞して、私が作曲」
と美来が説明する。
 
「だけど最近美来、曲付けてくれない」
「ごめーん。XANFUSが忙しすぎて」
 

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「でもどのくらい入院しないといけないんですか?」
「医者から4月下旬までは絶対安静と言われている」
「うわぁ」
「たぶん5月いっぱいくらいまで入院しないといけなさそう」
「出席日数足りる?」
「5月で退院できれば大丈夫だと思う。勉強は頑張らないといけないけど」
「勉強してる?」
「してない。Cubaseばかり触ってる」
「打ち込み?」
「というより作曲かな」
「あ、どんなの作るの?」
 
それで鏡子は織絵にパソコンを取ってもらい、その中のひとつのファイルを開いた。
 
「これ、こないだこの怪我して病院に搬送されて手術されてる時にさ、すっごい良いイメージが浮かんだのをまとめてみたのよ」
 
と言って鏡子はその曲を再生させる。
 
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「なんか格好いいね」
と最初に言ったのは美来である。
 
「これ今まで鏡子が書いた曲の中で最高の出来かも」
と織絵も言う。
 
「自分でも歌詞付けてみたんだけど、詰まらないんで没にした」
「ふむふむ」
「鈴子に連絡してみたんだけどね。最近あまり詩を書いてないから自信無いと言われちゃって」
 
「確かに詩って毎日のように書いてないと、すぐセンスが鈍くなるんだ」
と日登美が言っている。
 
「あ、そうか。日登美ちゃんが作詞担当か」
「うん」
 
「ね、日登美ちゃん、もし良かったらこの曲に歌詞付けてみてくれない?」
と鏡子が言った。
 
「うーん。鏡子ちゃんの好みに合うものになるかどうかは」
「取り敢えず私が歌詞を書くのよりはマシになりそう」
と織絵も言った。
 
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2009年3月下旬。
 
前田彰恵はTS市内の女子学生向けの安アパートの1室で缶コーヒーを飲みながら大きく息をついた。
 
ドタバタだったなあと思うし、またよくTS大学に合格したよなあ、とここしばらくの騒動を思い返していた。
 
彼女はそもそも大阪のG大学(関西1部)に行くつもりであった。正式の推薦入試は11月に行われるものの、実質的には8月の時点で内々定をもらっていた。ところが彼女が頼りにしていたG大学女子バスケ部の監督が10月上旬急に入院してしまう。かなり難しい病気で、退院はいつになるか不明ということであった。
 
それでどうしたものかと思っていた時、福岡C学園高校の橋田桂華と秋田N高校の中折渚紗がふたりとも茨城県の国立TS大学(関東1部)に行くという話を聞いたのである。
 
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「桂華ちゃん、なんであんたC学園大学にそのまま進学しない?」
と彰恵は電話で訊いた。
「うん。実はポリシーの問題なんだよ」
「ん?」
「C学園大学の戦い方はさ、C学園高校と同じ集団戦法なんだよ。まあ同じ系統の人間が指揮しているし、同じ系統の生徒が進学しているんだから確かにそうなる。でもそれって個々人の力が生きてこないし自分自身は鍛えられないと思うんだよね。TS大学は逆にアメリカ式の個人主義。個々の能力が第1だという考え方。基本的にゾーン禁止。しかも練習のメニューとかが、物凄く科学的に構成されているんだよ。スポーツチームっていまだに根性第一主義の指導者が多いじゃん」
 
「確かに」
「それで頑張ってTS大学受けようかと思ってさ。実はU18アジア選手権の時に渚紗ちゃんとそれ話してて、一緒に受けようよという話になって、私かなり勉強してるんだよ」
 
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「それ私も興味ある」
「彰恵ちゃんも行く?センター試験の締め切りは9日だよ」
 

それで彰恵は締め切りギリギリにセンター試験の願書を書き、進研ゼミを申し込むとともに、ウィンターカップの練習を毎日必死にやりながら、部活から帰るといったん仮眠して深夜まで受験勉強を続け、1月にセンター試験、2月下旬に小論文と実技による2次試験を受けて合格したのである。
 
実際問題としてはセンター試験の成績はかなり悲惨だったと思うのだが、やはり実技で卓越した所をアピールできたことで通してもらったかなと彰恵は思った。
 

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春休み。福岡市の某病院。
 
医師は手術台の上に乗った若い患者に最後の確認をした。麻酔は既に掛かっている。
 
「睾丸を取ってしまうと、もう子供を作ることはできなくなります。ペニスもたいていの場合勃起しなくなります。本当に取っていいですか?」
 
「はい。お願いします」
 
それで医師は陰嚢を切開すると、中から1個だけ残っていた睾丸を取り出す。
 
「じゃ切りますよ」
「はい」
 
それで医師は精索を切断した。
 
「切りましたよ」
「ありがとうございました」
 
やった!これでボクもとうとう男の子から卒業しちゃったよ。
 
昭ちゃんは心の中で勝利のラッパが吹かれるような思いであった。
 

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千里は3月14-27日に合宿コースで運転免許を取りに行ったが、自動車学校の宿舎で辛島栄子さんという新米の巫女長さんと出会い、彼女の紹介で千葉市内L神社に奉職することになる。千里の神社奉職を最も喜んだのは、もちろん後ろの子たちであった。
 
千里は予定通り3月27日に自動車学校を卒業した。その日は学校の宿舎にそのまま泊まり、翌朝退去する。そして28日は元DRKのメンバーの内、東京周辺の大学に進学した子たちが集まって結成することになったECK(East Capitol Kittens)というバンドの演奏・音源作成に参加した。後のGolden Sixである。
 
そしてその日の夕方、千里は新幹線で大阪に向かった。そして「男装して会いに行く」という約束通り、先日のKARIONの「男子限定ライブ」の時に着た、男物のワークシャツにズボンという格好に新幹線の中で着替えた。頭も長い髪をまとめて、あの日のライブで使用した男性用カツラの中に収納している。
 
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貴司はやや重たい気分で自宅マンションを出た。
 
やっと千里と会える。11月に「会った」のは自分の夢だったのか現実なのか判然としない。確実に会ったのはほぼ1年前、4月1日の朝、心斎橋駅の出札口でだ。あの時のキスの味が忘れられない。
 
自分もあと少ししたら20歳になる。そろそろ自分の将来のことも考えなければとは思っていた。千里と結婚して子供が何人かできて。そしたら自分も千里もバスケ選手だし、きっと子供もバスケするかな、などといったことも思うのだが、そこで千里は子供が産めないという困った問題に到達するのは薄々意識していた。実際千里は、自分以外の女性と結婚してもいいよ、と何度も言ってくれている。特に例の「京平」は自分が子宮を持っていないから誰か他の女性に代わりに産んで欲しいんだと千里は言っていた。
 
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その割には他の女との付き合いは徹底的に邪魔されている気がするんだけど!?
 
奥さんが2人持てればいいのに、などと都合の良いことも考える。でも奥さんが2人持てたとしても、千里はもうひとりの奥さんとの仲を邪魔しそうだなと思い至ると、どうもモルモン教あたりに改宗しても意味無さそうと思ったりもしていた(*1)。
 
(注1.モルモン教はかつては多重婚者の代名詞のようになっていたが、現在ではほとんどの派で多重婚は禁止されている)
 
しかしそういう揺れ動く心の中で千里が声変わりしてしまったと聞いたのはショックだった。色々考えてみたものの男の声で話す千里というのをどうしても恋人として自分の心の中に受け入れられない。散々悩んだあげく、ふたりの関係は友だちということにして継続するという提案をし、千里もそれを受け入れた。
 
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その時点で貴司の気持ちも芦耶の方にやや傾いてしまった。それで芦耶からのゴールデンウィークに泊まりがけの旅行をしようという提案を受け入れた。芦耶とそんなことしてしまったら、それは結果的には自分と千里の恋もそこで終了になってしまうんだろうなと貴司は考えていた。
 
一応その芦耶との旅行の件を千里に伝えておこうと思い電話した時、貴司ははからずしも千里の「声変わりした声」を聞くことになった。
 
確かに千里は男のような声で話していた。
 
あれはショックだった。それでも貴司は千里と会いたい気がした。それで今日会う約束を取り付けたのだが、千里は「新しい恋人のいる貴司と自分が会っていいのか?貴司の顔は知られているから誰か目撃した人がツイッターに書くかも知れないよ」などと言って渋った末、「じゃ男装で行ってあげるよ」と言ったのであった。
 
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正直、男装して男の声で話す千里って・・・見たくない気がした。
 
しかしそういう千里を見てしまったら、自分はもう千里への思いを断ち切ることができるのかも知れないという気もした。
 
千里から声変わりのことを告げられても、貴司の脳内には可愛い声で話す可愛い千里のイメージが焼き付いていて消えなかったのである。
 
そういう訳で貴司は覚悟を決めて新大阪駅にやってきた。
 

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女の子たちの卒業(7)

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