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■女の子たちの卒業(15)

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一方の千里は本当に雨の中を走って、コンビニに飛び込むと、ホットコーヒーと傘を買った。そしてコンビニの出口でじっと雨の降るのを見つめていた。
 
『千里、何やってんのさ?』
と《いんちゃん》が言う。彼女は3人の間に一瞬生じた誤解に気づいていた。
 
『俺、ちょっとあのふたりを邪魔してくる』
と《こうちゃん》が言う。《こうちゃん》は貴司にくっついていたので、貴司がアパートに来た時点で《せいちゃん》と一緒に千里の後ろに帰参している。
 
『いいんだよ。私と貴司はお友だちなんだから、貴司が他の女の子とセックスしても別に構わないよ』
と千里は《こうちゃん》に言う。
 
『ほんとにいいの?あの女が貴司君とセックスしても? 俺は貴司君のこと気に入ってるから、あんな女と結ばれるの嫌なんだけど』
と《こうちゃん》は言ったが、千里はしばらく沈黙した後、こう言った。
 
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『あるべきやうは、だよ』
 
千里は、結局私と貴司の関係は本当に終わっちゃったのかな、と考えながらまだずっと雨を見つめていた。
 

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一方貴司は芦耶と一緒に流しのタクシーに乗り、運転手に
「どこか休憩できるようなホテルに」
と言った。
 
貴司は「休憩できるような」というのは深い意味があって言った訳ではない。適当なビジネスホテルのことを考えていたのだが、運転手は深夜の男女客でもあるし、その言葉を「ご休憩」ができるようなホテルのことだと解釈し、郊外のその手のホテルが並んでいる地域に連れて行き、空室の表示のあるところで停めた。もっともこの時間帯に行くと、短時間の滞在でも休憩料金ではなく宿泊料金が取られる。
 
「ありがとう」
と言って貴司は降りたものの、なぜこんなホテルに連れて来られたのか戸惑う。僕何か言い間違ったっけ?と考える。しかし芦耶は何だかワクワクした表情だ。
 
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ありゃ〜、もしかしてこれってセックスコース?
 
と思い至って、やばぁと思う。
 

でもここまで来てしまっては仕方ない。雨も降っているので芦耶と一緒にホテルの玄関に駆け込む。
 
それで取り敢えず部屋を借りて、中に入った。
「お風呂入ろうよ」
「うん」
と言って芦耶は貴司を見る。
「一緒に入る?」
と貴司に訊いてみたものの、貴司は焦った様子で
「いや、君が先に入って」
と言った。
 
そうだなあ。私も前の彼とも結局一度も一緒にお風呂には入らなかったなあなどと少し甘酸っぱい思い出を脳内に再生していた。
 
元々お泊まりデートにしてしまうつもりで着替えは持って来ているが、ここは着替えを着る必要は無いよね?と考える。芦耶はシャワーを浴びて汗を流し、身体を拭くとバスタオルでバストから腰までを覆って出てきた。
 
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その格好を見て貴司が焦ったような顔をしている。
 
「貴司も汗流してきなよ」
「あ、うん」
 
それで貴司がバスルームに消えたのを見て、芦耶はバスタオルを身体から外し、自分のお気に入りの香水を身体に少し振ってから裸でベッドに入った。
 
彼「持ってる」かなあ?と少し不安だったので、自分が用意していた避妊具をポーチに入れて手の届く所に置いた。
 

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結構な時間が経ってから貴司はバスルームから出てきた。貴司は裸である。
 
が芦耶は戸惑った。
 
こういうシチュエーションでは、男はもうビンビンに立っているものと芦耶は思っていた。少なくとも前の彼氏とした時は、いつももう待ちきれないような顔をして、大きくなって上向きになった股間の物体を見せながら自分に近づいて来た。
 
しかし貴司のそれは全く立っていない。小さいまま下向きにぶら下がっている。
 
それはまだいいのだが、芦耶がいちばん困惑したのが、貴司にほとんど陰毛が無かったことである。陰毛だけではない。下半身に体毛らしきものがあまり見られない。うっすらと毛が生えていることは生えているが目立たない。ごく最近1度剃ったのではないかという雰囲気。
 
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しかし毛のあまり無いお肌に小さなおちんちんが付いているので、その時、芦耶は「まるで子供のおちんちんみたい」と思ってしまった。
 

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「ねえ、なんで毛が無いの?」
「あ、えっと・・・・」
「19歳にもなって、いまだに発毛していないってことはないよね?」
「いや、毛はあることはあったんだけど・・・・」
「剃っちゃったの?」
「うん。まあ。剃られたというか」
「剃られたって誰に?」
「あっと・・・・」
 
「誰に?」
と芦耶が怖い顔で訊く。
 
「ごめん。千里に剃られた」
 
芦耶はその名前を聞いた瞬間、激しい怒りが込み上げてきた。
 
何なのさ?
 
あいつ、結局貴司といっしょに私を馬鹿にしてたの?
 
「だいたい何のためにあの子が男だなんて嘘ついたのさ? 嘘つくにしても、もう少しマシな嘘にしなよ」
 
「いやほんとに男なんだけど」
「その嘘はとっくにバレてるってのに。それにあの子が言ってた。貴司、他にも恋人がいて、その子を妊娠させてるんでしょ?」
 
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「それは違う。あれは何かの誤解だって」
「じゃ、やはりあの子自身が妊娠してるの?」
「妊娠はしてないと思うんだけど」
 
「いい。私もう帰る」
 
と言って芦耶はベッドから出ると持参していた着替えを着始めた。
 
なんかもう気持ちが冷めてしまった気がした。
 
「聖道さん、待って」
「最後まで私を名前で呼んでくれなかったのね。とにかく私はもう冷めた。あの子が男だろうと女だろうと関係無い。そんな所を剃るようなことをする相手が居て、更に他にも子供まで作るような恋人が居て、更に私とも関係を結ぼうとするなんて、最低、最悪、卑怯者、無神経、浮気者、女たらし、二股野郎、いや三股野郎!」
 
もっと罵倒したい気がしたが、言葉が思いつかない。それで芦耶は荷物をまとめて出ていこうとしたのだが、貴司が停めた。
 
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「今、出て行くとまだ雨がひどいよ」
「だからといって、もうこれ以上貴司と居たくない」
 
「分かった。だったら僕が出て行く」
「はあ!?」
「だって聖道さん、大阪からわざわざ千葉まで来て疲れているでしょ?それでこんな夜中に雨に打たれたりしたら風邪引くよ。僕は身体丈夫だから平気だから。僕が出て行く」
 
「ふーん」
「ごめんね。不愉快な思いさせてしまって。あ、そうだ。ここの宿代と、帰りの新幹線代も置いて行くね」
 
と言って貴司は財布から1万円札を3枚出した。そして自分の服を着ると
 
「ほんとにごめんね。君のこと好きだったよ」
と言って、部屋を出て行った。
 
芦耶はその後ろ姿を見送り、どっと疲れてベッドに座り込んだ。
 
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貴司、なんて優しいのよ。でも多分貴司ってその優しさが欠点なんだ。女に言い寄られた時、断れないから、結果的に多数の女との関係ができてしまう。きっと貴司と恋人になる人は、みんなその性格に苦労しそう。
 
秋頃付き合っていた女子高生もそんなんで怒って貴司と決裂したんじゃないかなあ。まあ私はもう貴司から卒業しちゃったけどね。考えてみたらそもそも私が貴司と知合った時もあれって女が切れて貴司を振った所だよね? きっとあの千里って女(?)も1ヶ月もすれば新たな恋人の登場で同じ目に遭うだろう。
 
そして大きく息をついてから冷蔵庫の中にあるビールを開けて飲む。そして飲みながら考えた。
 
以前から疑惑があったけど、ひょっとして貴司ってホモなんじゃないのかな。スポーツ選手には結構ホモが多いって言うし(芦耶の単なる偏見)。
 
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だいたい裸でベッドに入っている女を前に立たないなんてあり得ない。恋愛感情がもし無かったとしても普通の男なら立つでしょ?こちらが女でさえあるのなら。やはり貴司は男にしか反応しないとか。それであの女、男みたいな声も出せるから、貴司が好きになったとか?いや、マジであいつ実は男だったりして?
 
しかし千里の姿を再度思い浮かべた芦耶はすぐに結論に至る。
 
「やっぱあいつ、女だよね。男だっていう主張にはかなり無理があったぞ。男っぽい声も出してはいたけど、声が男でも話し方は紛れもなく女だったもん。ひょっとして男装女子??」
 

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貴司はホテルを出た後、向こうの方にコンビニが見えたのでそこまで走って行ってから傘を買った。
 
千里ごめんねー。千里もコンビニまで走って行ってたけど、濡れなかった?
 
千里に電話してみたが
「電源が切れているか電波の届かない所に」
というメッセージが返ってくる。
 
貴司は取り敢えず今回の件で千里に謝らなければならないと思った。それで千里のアパートに行ってみようと思ったものの、タクシーに乗って昨日の住所に行ってもらったものの、なぜか千里のアパートを見付けることができなかった。
 
「暗い中で探してもしかたないか」
そう思うと貴司はコンビニか何かでもないかなと思って、大きな通りのある方へ歩いて行った。
 
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結局コンビニを3軒ハシゴして、やっと夜が明けてきた。ここまで来る途中で見かけたファミレスが朝6時オープンと書いてあったなと思い、そこに行って開店と同時に中に入りモーニングを食べる。ちょっと人心地する。
 
そのままテーブルに俯せになって30分くらい仮眠するが、店の中に人が多くなってきたのを感じて席を立ち、精算して外に出た。
 
あらためて昨日行ったアパートの所を探して行ってみる。それはなかなか見付からなかったが、かなり悩んだ末に自分が1丁目と2丁目を読み間違っていることに気づいた。タクシーに告げた時も間違って言ってる。あらぁ〜。それじゃ見付からない訳だ。
 
後で知ったのだが、大通りから小さな道に入る時、1丁目は角にセブンイレブンがあり、2丁目は角にファミリーマートがあった。どちらもコンビニがあったことで勘違いに気付きにくかったようである。
 
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結局貴司が千里のアパートに辿り着いたのは(4月10日金曜日の)お昼過ぎである。
 
そして千里は当然留守である。
 
貴司は千里が帰ってくるまで待つことにした。
 

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