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■女の子たちの卒業(8)

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この3月28日、東京では民謡の若山流・家元襲名披露が両国の国士館で開かれた。若山流は全国の名取りの数だけでも5000人を超す民謡の一大流派で、冬子の伯母・若山鶴音(本名水野乙女)が大幹部のひとりで今回の襲名披露の実行委員にも名前を連ねている。それであんたも来いと言われて、乙女の妹でもある冬子の母・春絵は朝から振袖を着て(正確には冬子に着せてもらって!)出かける準備をしていた。一応春絵も若山鶴絵の名前を持っているのだが、もう三味線なんて20年以上弾いていない!それでも立場上、御祝儀を最低100万円は包まないといけないと聞いて、先日は絶句していたところである。風帆が建て替えてもいいけどとは言っていたが、結局は冬子が出してくれた。
 
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「親孝行な娘だ」
と母から言われて冬子は嬉しそうにしていた。
 
出がけに電話が掛かってくる。五姉妹(乙女・風帆・清香・里美・春絵)の次女風帆(名古屋在住)である。
 
「ああ・・・雑用係かぁ。分かった。うちの2人も連れて行く」
と言って電話を切る。
 
「萌依、冬、あんたたちも来てって。色々雑用があるらしいのよ。あちらも恵麻ちゃんと美耶ちゃん連れてくるらしい。里美も純奈と明奈を連れてくるらしいし」
「晃太君(恵麻・美耶の弟)は?」
「男はあまり役に立たないから」
と春絵が言うので
 
「じゃ、ボクは行かなくていいよね?」
と冬子は言ってみたものの
「あんた、女の子だよね。学校にいる時以外は女の子アイドルに変身するんでしょ?」
などと母は言う。
 
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うーん。私って結構都合のいい時は娘とみなされているよなあ、と冬子は思った。
 

結局、冬子は萌依にも振袖を着せた上で自分も振袖を着て3人で出かけることにする。お化粧は春絵が娘(?)2人にしてあげた上で自分もする。
 
その頃、やっと起きてきた冬子の父は自分の妻と娘と息子(?)が全員振袖を着てお化粧までしているので、ギョッとする。
 
「あ、お父ちゃんは御飯適当に食べててね。襲名披露行ってくるから」
と春絵。
「あ、うん。行ってらっしゃい」
と大史は半ば呆然としながらそれを見送った。
 

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新大阪駅。
 
貴司は愛用のG-Shockの時計で時刻を確認した。そろそろ約束の時刻だ。
 
貴司はこちらにやってくる人の波に探すように視線を動かした。その時、最初貴司の意識には全くひっかかっていなかったやや背の低い男性がこちらを見て笑顔で手を振るのを見る。
 
誰だっけ?
 
と一瞬思ってしまったのだが、次の瞬間、まさかあれが千里なの?と思うと物凄いショックを受けた。
 
ああ・・・・やはり僕の可愛い千里はもう居なくなってしまったんだ。心の中で何かが壊れていくような気分だった。サヨナラ、僕の千里・・・。
 
その男性は自動改札を通ると
 
「久しぶり」
と笑顔で「バリトンボイス」で言った。貴司は悲しかったが、もうこれが千里と会う最後になるだろうから、せめて「彼」に良い想い出を作ってあげようと思い直した。それでこちらも
 
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「お疲れ様。それと大学合格おめでとう」
と笑顔で言う。
 
「ありがとう。そちらもあらためて準優勝、おめでとう。入れ替え戦惜しかったね」
「うん。手応えはあったんだけどね」
 

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取り敢えず駅構内のカフェに入って少し会話した。
 
「でもありがとう。わざわざ男装してきてくれて」
「貴司の彼女に誤解を与えるのは本意じゃないから。私、貴司には恋人作っていいんだよ、と何度も言ったしね」
 
「うん。悪いけど、僕も千里に今は恋愛感情は持っていないつもりだから」
 
実際それは今日この「男になってしまった」千里を見て、完全に消えてしまった気がした。
 
「私、大学で恋人作っちゃうかも知れないけど、いいよね?」
「もちろん。その方が僕も安心して千里と付き合えるかも」
 
とは言いつつ、この後自分から積極的に千里に連絡することはないだろうなと貴司は思っていた。母にも千里と正式に恋愛関係を解消したことを言わないといけないな、とも思う。
 
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「バレンタイン送っちゃったけど、揉めたりはしなかった?」
「大丈夫だよ。ファンからの贈り物も何個かもらったから
「有名スポーツ選手の便利な所だね」
「もっとも他のファンからのバレンタインはチームのみんなでシェアしたけど千里からもらったのだけは自分で全部食べた」
「ふーん」
 
本当は自分で全部食べたのは、千里からもらったものと、芦耶からもらったものの2つである。それをここで言う必要もないだろう。
 
結局カフェで1時間ほど話していた。貴司はそろそろ潮時かなと思った。
 
「長居しちゃったね。そろそろ出ようか」
と貴司は自分のしているG-Shockの時計を見て言う。千里がその貴司のしている時計をじっと見つめたのに貴司は気づかなかった。
 
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「あ、けっこう長居したかな」
と千里も腕につけているスントの腕時計を見て言った。
 
「しゃ、貴司頑張ってね。今年こそ1部に上がれるように」
「うん。千里も大学でバスケ頑張ってね。千里が入れば1年で2部に上がれるよ」
 
「ごめーん。私、言ってたようにバスケはやめるつもりだから」
と千里。
 
それがいいかもと貴司はこの時思った。すっかり男っぽくなった千里が女子選手として活動を継続しようとした場合、性別問題で絶対もめて大騒動になる可能性がある。それよりも、これまでの輝かしい実績を花道にもう引退してしまったほうが、性別問題は曖昧にしてしまえる。
 

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そんなことを貴司が考えていた時のことである。ふたりが座っていたテーブルに中学生くらいかなと思うけっこう背の高い女の子が寄ってきた。
 
「あの、すみません。もしかして旭川N高校の村山千里選手ですか?」
と彼女は千里に声を掛けた。
 
すると千里は笑顔で
「はい、そうですよ。よく分かりましたね」
と《今まで貴司と話していたのとは違う声》でその少女に答えた。
 
何!? そんな声も出るのか?
 
「すごーい。その格好だけ見たらまるで男の人かと思っちゃいましたよ」
「ちょっと秘密のデートしてたから。もし良かったらこれネットとかには書かないでくれる?」
 
千里のこの声は女の声と思えば女の声にも聞こえるし、男の声と思えば男の声にも聞こえる、ちょっと不思議な声である。
 
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「はい。書きません。でももし良かったらサインもらえませんか?」
「いいよ」
 
それで千里は少女が出したスケッチブックに、太いフェルトペンを使ってまるでツバメが飛び回った軌跡のような美しいサインを描いた。
 
へー!こんなの作ってたのか!
 
僕は作ってないのに!(だいたいサインを求められたことが無い!)
 
千里は少女に名前を訊き、○○さんへと書き添え、日付も記入した。
 
「○○さんもバスケするの?」
「はい。新人戦では岸和田市大会で準優勝だったんです」
「中学生かな?」
「はい」
「じゃ春の中体連では優勝できるように頑張ろう」
「はい、頑張ります!」
 
それで千里と握手して少女は礼をして去って行った。
 
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「千里、そんな声も出るんだ?」
と貴司が訊く。
 
「だって男装していたら男の声で話さなきゃ」
 
何〜〜〜?
 
「千里、だったら女装したら女の声が出るの?」
「秘密」
 
貴司は、このカフェの会話で千里とは別れるつもりだった。しかし唐突に千里への好奇心が生まれてしまった。
 
「ね。僕、ここに今日は車で来ているんだ。ちょっとドライブしない?」
「うーん。まあいいけど」
 

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それでふたりはカフェを出て(お金は貴司が払った)、近くの駐車場に行く。
 
「へー。変わったエンブレムだね」
「千里がここのメーカー好きって言ってたから」
「そうだっけ?ごめーん。覚えてない」
「いいよ、いいよ」
「でも輪っかが4つって面白い。あと1つ輪を足せば五輪になる。貴司、オリンピックを目指す?」
「男子はオリンピックは遠いなあ」
 
バスケットで日本代表男子はもう30年以上オリンピックに出場していない。女子は1996年(7位)と2004年(10位)に出場している。
 
それで貴司は助手席のドアを開けて千里を乗せようとしたのだが、千里は「助手席は彼女専用にしておきなよ」と言って自分で後ろのドアを開けて、後部座席に乗った。
 
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貴司も「まあいいか」と思い、運転席に座る。車をスタートさせる。駐車料金を払って外に出ると、何気なく左折して北に進路を取った。
 
しかし千里はずっと男声で話している。あの中学生の前で使った性別曖昧な声は貴司とふたりだけの場では使わないつもりのようだ。
 
「千里さ、考えていたんだけど、声変わりが来たって、千里まさか睾丸無いよね?」
「私は男の子だよ。おちんちんも睾丸もあるに決まってるじゃん」
「嘘!?」
「内緒にしててね。私ふだんは男子トイレでおちんちん出して立ってしてるよ」
 
「・・・・。じゃ、千里って男なのに女子選手として試合に出てたの?」
「試合に出る時は事前にチョキンとはさみで切っておくんだよ。試合が終わったら、また糊でくっつけるんだよ」
 
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「そんな馬鹿な!」
 
貴司はあらためて千里に「性別疑惑」を持ってしまった。以前から千里には「男の娘と言ってるけど実は正真正銘の女なのでは?」という疑惑を持っていた。しかしこの時貴司が感じた疑惑は「この子、本当は男の子なのか?男の娘なのか?それとも本当の女の子なのか?」という自分でももう訳の分からない疑問であった。
 
裸にして確かめてみたい!!!
 

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襲名披露の会場に着いた冬子と萌依は、従姉妹たちが大勢来ているのを見て手を振る。従姪の三千花(後の槇原愛)・小都花(後の篠崎マイ)・七美花(後の2代目若山鶴乃)も来ている。特に三千花は豪華な加賀友禅を着ている。
 
萌依と冬子は特に仲の良い純奈・明奈の姉妹とはお互いハグしあった。
 
「萌依ちゃんも冬ちゃんも可愛い振袖着てる」
「純奈ちゃんのも明奈ちゃんのも高そうな振袖だ」
 
自分に続いて冬子もふたりとハグしたのを見て
 
「冬は平気で女の子とハグするなあ」
と萌依は言っているが
「だって私も女の子だし」
と冬子は開き直って言っている。
 
「冬とはけっこう何度も一緒にお風呂入ってるしね。おっぱいの触りっこも何度かしたし」
と明奈は言う。
「まあ、私、少なくとも小学生になって以降、男湯に入ったことはないし」
「うーん。。。まあいいか」
 
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「でも年末から凄い騒動だったみたいね」
「うん。参った参った。でもこれで今更もう私、ふつうの男の子に戻りますなんて言えなくなっちゃった。もうこの後は性転換手術まで一直線かなあ」
 
この時期、冬子は若葉から随分唆されて、もう高校在学中に性転換手術受けてしまってもいいかなあ、という気になりかけていたのである。
 
「ん?性転換手術は1月に済ませたんでしょ?」
と純奈が言う。
「へ?」
「それで1ヶ月間学校を休んでいたと聞いたけど」
 
「いや、冬は確か小学5年生の時に性転換手術は済ませていたはず」
と明奈は言った。
 
 
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