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■夏の日の想い出・砂の城(7)
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目次 8
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白衣の老人は語った。
「わしは透明博士とでも覚えておいてくれ。今世間を騒がせている“透明人間”、あれはわしが造ったんじゃよ。造るといっても人間そのものを造ることはできない。普通の人間だったものをある処置を施して透明に変えたのじゃ。今までに3人の透明人間を造り、1号・2号・3号と呼んでいる。世間を騒がせているのは1号で、2号と3号はまだ外には出していない」
「何のためにそういうことをするんだ?」
と大友少年は訊いた。
「君はこの世にきれいな人とそうではない人が居るのは不平等だと思ったことはないかい?わしは全ての人間を透明にしてしまいたいと思っている。そしたら見た目での差別の無い平等な世界になる」
「そうだ。君を4人目の透明人間にしてあげよう」
「断る!」
「頭から先に透明になりたい?足から先に透明になりたい?」
その二択なの〜!?
「そうだ。君は男の子だから、最初にちんちんを透明にしてあげよう」
「え〜!?」
「ちんちんが透明になったら、もうちんちんが無いのと一緒だよ。ちんちんが無ければ女の子と似たようなもの。君、下の名前は?」
「敏雄」
「だったら名前は敏美か敏子に変えるといいね。そして学ランじゃなくてセーラー服を着なさい」
「やだ」
「ちんちんが無ければ女湯に入っても何もいわれないぞ」
「入りたくない」
「とにかく君のちんちんは透明にする」
と言って老人は椅子に縛り付けられている大友君のズボンのファスナーを開け、注射器を持つ手を中に入れて、ちんちんに注射を打ってしまった。
「これで君のちんちんは3〜4時間で透明になり、お股には何も付いてないように見えるようになる」
「そんなあ」
修学旅行どうしよう?
「そうだ。君は腹が減ってるだろう。パンでもあげるよ。君は縛られてるから、わしがちぎって食べさせてやるね」
と言って怪老人はパンをちぎって大友の前に出すが彼は口を開けない。
「ああ、毒でも入ってないかと疑ってる?わしは人殺しはせんが、疑うなら半分わしが食べよう」
と言って怪老人はパンをふたつに分けた。
「わしが右手に持っているほうと左手に持っているほうとどちらを選ぶ?」
「左手」
「じゃ右手のはわしがもらうよ」
と言って怪老人は右手のパンを食べてしまった。そして改めて左手のパンをちぎってくれた。今度は大友も食べた。
「そうだ。次は顔と頭を透明にしよう。そんな髪の短い女子中学生は居ないし。まあしばらく寝て待っていたまえ」
と言って、博士は麻酔薬を染み込ませた布?を彼の鼻に当てた。大友君は眠ってしまった。
かなり眠った気がした。もう夕方のような光が窓から差し込んでいる。どうもここは拉致されたトンネルとは別の場所のようである。
大友の前方、ガラスの向こうに椅子に縛られたセーラー服の人物の姿が見えた。女の子が拉致されたのだろうか。助けてあげなくちゃと思ってから大友は重大な問題に気付いた。セーラー服の少女には顔が無かったのである。セーラー服は見えるが首から上が見えない。向こう側の壁が見えている。
そして更にもっと重大なことに大友は気付いた。
それはガラスと思ったものが実は鏡ではないかということである。そしてセーラー服の少女と思ったのは実は自分の姿では?という疑惑である。向こうに見える人物のセーラー服は胸ポケットが右側に見える。胸ポケットは普通左ではなかろうか。
彼は椅子に縛り付けられているので身動きできないのだが、それでも何とか目の端で自分の服装を観察してみると、やはりセーラー服を着せられているっぽい
彼は自分の肩を動かしてみた。するとガラス?鏡?の向こうのセーラー服を着た人物も同じ側の肩を動かす。それで彼は3つのことを認識した。
・向こうにあるのはガラスではなく鏡である。
・向こうに見えているセーラー服の人物は自分である。つまり自分はセーラー服を着せられている。
・自分は透明人間になってしまった。
どうしよう!?
時を戻して島田邸地下室。昼12時過ぎ。
中村係長は外の警備の警官との電話をいったん切ると小林に言った。
「小林君済まない。11時半頃、誰か少年探偵団の団員が怪しい人物をひとりで尾行して行ったらしい。中学生の男の子だったらしいのだけど」
「すぐ調べます」
と言って小林は本部にいるはずのマユミに電話した。
「はい。こちらBD本部。花崎の代理の中居です。団長、お疲れ様です」
「ああ、美奈ちゃんか。ちょっと調べてほしいんだけど」
と言って、小林は11時半頃島田邸から離れていった団員が居ないか調べてもらった。
「それは大友君と思われます」
と中居美奈(演:佐川治美)は報告した。
「彼の現在位置は?」
「分かりません」
「分からない!?」
「BDホンの電源が切られているものと思われます。あるいは圏外か」
BDホンというのは少年探偵団の団員に配布されている特製のスマホだが、GPS機能が付いており、現在の所在地を本部で確認できるようになっている。しかし電源が落ちていたり圏外にあるとお手上げである。活動中に自分で電源を切るというのは通常考えられない。すると彼の身に何か起きた可能性がある。
「彼の確認できる最後の位置は?」
「そちらにメールします」
それで1分ほどでメールが来た。
中村係長が心配そうに訊く。
「何かあった?」
「分かりません。彼なら柔道も強いし、大丈夫とは思うのですが、これが彼の消失ポイントです」
と言って小林は自分のスマホのGoogle Map を中村にだけ見えるように示した。
「警官隊を手配して駆け付けよう」
と中村は言ったが、小林は
「その前に真珠塔を島田さんにご返却しましょう」
と言った。
「返却!?君はそれを確保してるのかい?」
「ええ」
「それは凄い。それはどこにあるの?」
小林は言った。
「いいですか?真珠塔はガラスケースに入っており、ケースを開けるには時間が掛かる。そしてケースの幅が部屋の出入口の幅より広い。ということは、真珠塔のガラスケースをこの部屋から持ち出すことはできない。だからケースはまだこの部屋の中にあるのです」
「論理的だけど、この部屋には我々が居るだけだよ。我々はみんな荷物も持っていない」
と中村。
「見落としているのです」
と小林は言うと、部屋の中を見回す。彼はやがて押し入れの襖(ふすま)を開けた。中には何も無いように見える。
しかし小林は押し入れの中に手を入れて何か手探りで探しているようであった。やがて「あった!」と言って手を動かした。するとまるで魔法のように押し入れの奥に真珠塔の姿が現れたのである。
「真珠塔だ!」
「どうなってるの?」
と中村が訊く。
「後でゆっくりご説明しますが、島田さん、取り敢えず真珠塔を金庫の中に」
「分かりました!」
と言って島田は黒川記者に手伝ってもらって、真珠塔のケースを金庫内に戻し、金庫をロックした。
「どういうことだったの?」
「それはゆっくり説明しますが、それより先に所在がつかめなくなっているうちの団員の捜索にご協力頂けませんか?」
「うん。すぐ手配しよう」
小林が真珠塔を取り戻したことから、空気男が再度盗みに来る事態も考えられた。そこで中村係長は島田邸の警備の警官はそのまま残し、新たに10人の警官を手配した。そして小林と黒川は、中村係長の車で大友団員の足取り消失ポイントに向かった。
小林たちが車を降りる。
「あの廃トンネル、怪しくないですか?」
と黒川が言う。
「何かあるかも知れん。調べてみよう」
と言って中村はここに来た警官の内、5人をトンネル入口に残し、あとの5人と中村、小林、黒川の3人でトンネルに入ってみた。やがて部屋のような所に出る。テーブルがあり、紙が載っていた。中村が見て小林を手招きする。そこにはこのような文章が書かれていた。
小林君へ。ただちに手を引きたまえ。私はこれまで3人の透明人間を造ったが4人目は君の部下の生意気な男子中学生を透明人間にしてやった。さっさと手を引かないと、被害者はもっと出るだろう。小林君自身も、君の上司の明智君も、中村係長や黒川記者もみんな透明人間に変えてやるから楽しみにしていたまえ/透明博士
小林はその文章を読んで腕を組んだ。
黒川記者が言った。
「中村さん、この相手はとんでもない奴です。ここは明智探偵のご出馬をお願いできませんか?助手の小林君でさえ、真珠塔を取り戻してくれたじゃないですか?明智先生にご出馬頂ければきっと敵を捕らえられますよ」
「小林君、ここはもぬけの殻のようだし、ぼくは本庁に戻って課長と協議してみるよ。それ次第では明智君に連絡するかもしれない」
「分かりました。私もいったん事務所に戻ります。所在不明の団員については、今は無事を祈るしかありません」
「黒川さん。人命がかかっている。しばらく報道は控えてもらえませんか」
と中村は言った。
「了解です。団員さん、早く見付かるといいですね」
と黒川も言った。
小林は事務所に戻ると、現在の状況を明智(演:本騨真樹)に報告した。
「大友君の御両親に連絡しなくてもいい?」
と文代さん(演:山村星歌)が心配する。小林は言った。
「彼は自分の身を守るすべを知っていますし、柔道三段です。万一彼の行方が今夜21時までに分からなかったら連絡してください。その時は、小林が自分の命に代えても必ず救出すると言っていたと伝えてください」
「分かった」
そこに電話が掛かってくる。中村係長からである。
「明智君、今回の事件について、僕と君と志野課長の3人で少し打ち合わせたいんだけど」
「分かりました。そちらに参ります」
と言って明智は電話を終えると、濃緑のスーツに着替えてから森田助手を呼んだ。
「森田君、警視庁まで行くから車出して」
「はい。参りましょう」
と森田助手(演:木取道雄)は答えた。
ネットの声
「何て分かりやすい配役なんだ」
「当然途中で拉致されるよな」
「こいつ首にしてナナちゃんをドライバーに雇えばいいのに」
「いや、来期アクアは明智のおとなの助手役になるのではという説はあった」
明智探偵は森田助手が運転するプリウスで桜田門の警視庁へ向かった。
しばらく走っていたら、横道から自転車が飛び出して来る。森田は急ブレーキを踏んだが間に合わず、車は自転車とまともに衝突した。森田が車を降りて見る。明智も降りた。
自転車は無人だった。森田は自転車が飛び出して来た横道に男性の浮浪者を見たので尋ねた。
「この自転車、君が乗ってたの?」
「ううん。誰も乗ってなかったよ」
「誰も乗ってなかったって、自転車が無人で走ってたのかい?」
「ああ。不思議なこともあるもんだと思ってたらがちゃんとぶつかったね」
森田は車の損傷をチェックした。
「先生、これはとても自走できません。JAFを呼びますよ」
「ああ、これはひどいな」
「先生はタクシーか何かで桜田門へ」
「仕方無いな」
ちょうどそこにタクシーの空車が通り掛かる。森田は手をあげて停めた。それで明智はそのタクシーに乗り「桜田門の警視庁へ」と言った。
警視庁では中村と志野課長(演:光山明剛)が明智を待っていたが、明智はなかなか来ない。中村は明智のスマホに電話した。
繋がらない!?
中村は事務所に電話してみた。
「え!?明智先生は1時間前にそちらをお出になったんですか?」
文代が森田のスマホに電話してみて、事故があったこと、明智はタクシーに乗り換えたこことを知る。小林はそのタクシーが偽物であった可能性を考えた。中村に連絡する。
「くそぉ!何て奴だ!!」
「わざと事故を起こしてこちらの車を使えなくしておいて、そこにタクシーが通り掛かるなんてうまいじゃないですか」
「今回の犯人はかなり知恵の働く奴だな」
「ええ知恵比べですよ」
中村が小林との電話を切ってから、椅子に座ろうとしたら電話がある。
「はい」
「わしは透明人間の元締めで透明博士という者だが」
「はい?」
「明智君の身柄は預かったよ。彼の身体は今刻一刻と透明になっていきつつある。わしの5番目の作品、透明人間5号になってもらうのだ。天下の名探偵がわしの手下になりさがるとは、いい気分だね」
「で?」
「透明人間6号は誰になると思うかね?明智夫人に気をつけたまえ。旦那だけ透明にして、奧さんがそのままでは寂しいだろうからね」
「何?」
電話はそれで切れてしまった。中村は課長と協議の上、取り敢えず明智探偵の件の報告もかねて中村が明智事務所(住居も兼ねる)に赴くことにした。
中村が明智探偵事務所に来て、文代と協議する。小林も一緒に話を聞く。
「奴の行動の素早さを考えると、今夜が危ないと思います。今夜奧さんの身辺警護をさせてください」
「わかりました。お願いします」
それで、明智文代さんの寝室をはさんで、左側の部屋に中村係長、右側の部屋に小林が居ることにした。
ネットの声
「身辺警護するならなぜ女の警官連れて来て同室させん?」
「ご都合主義、ご都合主義」
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