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■夏の日の想い出・二足のわらじ(16)
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千里はその日、東京からHonda-Jet
Yellowで飛んで来たコスモスの弁護士さんと一緒に不動産屋さんに行き、昨日のうちに仮押さえしておいた土地の購入手続きをした。代金はコスモスにメールしたら即振り込んだので購入手続きはすぐに完了。そのあと法務局に行き、土地の名義人変更の手続きをおこなった。
千里は弁護士さん、播磨工務店の南田弟とともに現地に行き、正確な測量をして写真もたくさん撮った。作業していたら朋子が出てきて、一同にコーヒーをくれた。朋子はお隣に土地を買ったと聞くとびっくりしていたが、これで青葉がお隣で作業できるようになると言うと、歓迎だと言っていた。
「あの子なかなかうちに戻れないとこぼしてたし」
「世界水泳の後は多分1年くらい伏木に居ますよ」
と千里は言った。(←妊娠させる気満々)
帰りのYellowに南田弟と弁護士さんが一緒に乗って東京に戻る。その日の夜、コスモスと南田弟でスタジオの設計図を作成した。
3月14日(月)のお昼。桜木ワルツから花園裕紀に電話が掛かって来た。
「おはようございます」
「おはよう。M高校の二次募集の掲示が出てるよ」
「ほんとですか?」
きっと多忙な葉月に代わって気を付けておいてくれたのだろう。
「締め切りは明日までだからすぐ願書出したほうがいい」
「そうします。ありがとうございます!」
「ほかに女子寮にとっても近いT女子高校も二次募集が出てるけど」
「そちらはパスで!」
それで裕紀はその日学校が終わったら寮にも帰らず直接M高校に行き、その場で願書の用紙をもらい記入して提出した。
「あら。あなた性別が男にO付いてるけど」
「ぼく男子ですー」
「ああ。弟さんの代理で提出しに来たのね」
本人が男であるというのは想像困難であるようだが、裕紀は説明が面倒なのでいいことにした。受験料は必要になるかも知れないと思い少々現金を持っていたので払うことができた。
(彼はこの後あけぼのテレビに行き、ホワイトデー特集に出演した)
3月15日(火).
§§ミュージックが昨年夏に頼んでいたホンダジェットの追加機体が2機納入された。これまで使用していた機体の内、Blue以外は Elite というタイプたったのだが、今回納入されたのは昨年秋に発表された EliteS というタイプである。納入された機体の色は下記である。
Gold
Deepsea Blue
それでこれまでBlue(定員1+6)を使用していたラピスラズリは、このDeepSea Blue (定員1+7)に乗り換えることになった。Gold の方は今の所空いている。
しかしホンダジェットが2機追加されて運用に少しゆとりができたので、Tigerは塗り直しすることにして、いったん運用から外した。この機体は夏頃までには塗り直す条件だったのである。単色で塗る手もあったのだが、虎さんの絵がいいとみんな言うので、絵の上手い夕波もえこに原画を描いてもらい、それをもとに新しい絵を描くことにした。
Tigerは、主としてあけぼのテレビで使用していたのだが、塗り直しが終わるまではGoldを使うことにする。
映画『黄金の流星』でアクアの出番がとっても増えた経緯はこのようであった。
この企画は最初2時間ドラマとして計画された。
ところが話を聞いた大和映像がベルヌ作品というので興味を示し、結局この作品は映画として制作されることになる。これが2月頃の話である。それで予算が当初の3倍になり、原典のフランス語が読めるということで、フランス人の夫を持つ脚本家レイモン紀子さんに脚本が依頼された。レイモンさんは当初日本語で脚本を書き始めた。
ここでモンド・ブルーメがアクア映画というので、この企画に興味を持ち、映画は日独共作とし日独英仏4ヶ国語で配給するという話になる。これで予算はまた3倍(当初の9倍)になった。
それでレイモンさんはこの脚本をフランス語で書くことにし、イギリス人、ドイツ人の脚本家が、レイモンさんのフランス語脚本を見て各々英語版・ドイツ語版の脚本を書くことになる。日本語脚本はフランス語が分かる稲本亨さんに引き継がれた。それで実はこの物語の最初の方の日本語脚本は実際にはレイモンさんが書き掛けだったものが流用されている。
この体制で当初スタジオに砂糖を播いて撮影しようかなどと言っていた後半のグリーンランド編が、醍醐春海が所有する北海道の島で撮影できる見込みが立ち、かなり質の高い作品が作れそう・・・ということになってきた3月中旬。
モンドブルーメの世界戦略部門から注文が付いたのである。
この作品を日独英仏4ヶ国語だけで配給したとしても、アクア主演であれば、他の国からも再配給してほしいという要求がある。その時、宗教規律の厳しい国とか政府統制のきつい国ではカットしなければならない場面が出てくるが、主役のアルケイディアとセスが何度も結婚・離婚を繰り返す部分がそういう国では宗教指導者や概して保守的な政府指導者の怒りを買うのが確実(宗教的に緩い国ではお笑いになる)。だからそういう国の版ではこの部分を全てカットせざるを得ない。
すると、主役のアクアと七浜宇菜が全く出てこないことになる。
アクア主演なのに!
コスモスとモンドブルーメのジールマン社長は直接電話で話し合った。
それで宗教規律の厳しい国向けのバージョンでは、アルケイディアとセスが何度も離婚・結婚を繰り返すという話はカットし、クライマックスでふたりが協力して老人たちを助けたことで、2人は愛し合い結婚することにした、という話だけが描かれるようにすることを決めた。
そしてアクアと宇菜の出番がほとんど無くなるので、代わりに2人を本編部分にも出すことを決め、アクアにジルダルとルクールをさせ、宇菜に2人を助けるアシスタントの役をさせるということも決めたのである。
ジールマンとコスモスは、大変な負担を掛けることになったアクアたち2人のギャラを2本の映画合計で3200万ユーロ(41.4億円)という破格の金額にすることも決めた(1人1本10億円)。但しこの相場は今回だけの特例であり、次の映画企画は『白雪物語』のギャラ(Mr.AQUA, Ms AQUA 2人の合計で)1000万ユーロ(13億円)をベースに考えることでも合意した。
しかしアクアのギャラを払うためにこの映画の予算は更に3倍(当初の27倍)になった!(結果的に千里は島と船の借り賃を“妥当な額”払ってもらった)
しかしそういう訳で『黄金の流星』でのアクアの出番は当初から大幅に増えた。ちょっと顔出すだけだからと言われて、オファーを受けたのに!
アクアFは「いつものこと。いつものこと」と笑っていたが、アクアMは反発した。でもフィアンセの南川彩佳がギャラの額を聞いて「やります、やります」と勝手に同意したので、アクアは渋々この映画に1ヶ月半ほど専念することになったのであった。
それで、アクアの他の仕事を代替することになった羽鳥セシル・水森ビーナ・松梨詩恩・白鳥リズムなどが悲鳴をあげた!!(*35)
しかし『黄金の流星』は予算が大幅に膨れ上がり、高い質の映画にするためにCG制作会社まほろばグラフィックスは大量増員し、100人態勢でこの映画の迫力あるシーンの数々を描いた。
それで『黄金の流星』は『お気に召すまま』に負けない話題作となり、国によっては、こちらのほうがかえって受けた所もあった。
配役は大幅に変更された。
当初松田理史が演じる予定だったジルダルを Mr.AQUA が演じ、ルクールをMs AQUAが演じることになったので、原作のルクールは既に亡くなっていることにされ、映画に出てくるのはその娘という設定になった。しかしルクールが女性になったことで、この映画は随分華やかな雰囲気に変化した、
ジルダルに予定されていた松田はアトランティスの船長の役に回り、船長の出番が大いに増えた。
広瀬みづほが通信士役で登場することになり、みづほはドイツ語・フランス語に加えてモールス信号も練習することになる。結果的にみづほは、アクアが今年前半に主演した4つの作品『陽気なフィドル』『黄金の流星』『お気に召すまま』『竹取物語』全部に出演することになった。
(*35) この余波で§§ミュージックの中堅所も多忙になった。しかしそれが丁度良かったのである。
政府によるコロナ規制が2022年春あたりから弛んできたのを受けて放送各社も撮影の際の衛生基準を緩和した。これに対して§§ミュージック、∞∞プロなどの慎重派は、きちんとした感染対策をしてほしいと要望。それで態勢を元に戻してくれたプロデューサーもいたが、話が決裂したケースも多々あり、§§ミュージックを含めて∞∞プロ系列のプロダクションはそういう番組からタレントを引き上げた。
その結果、§§ミュージックのタレントの仕事がかなり減った。それがこのアクアの仕事の代替の玉突きで中堅の仕事が増えたのと打ち消し合って何とかなったのである。
また∞∞プロの鈴木社長は経営難が伝えられていたネットテレビ局のホーライTVに出資して、実質配下に置いた。それで自主制作番組をホーライTVで流し始めた。これによって∞∞プロやΘΘプロのタレントの仕事はかえって増えた。また、§§ミュージックのタレントがホーライTVにも出演するケースが出てきた。取り敢えず白鳥リズムと信濃町ガールズたちの番組を、あけぼのテレピのスタッフで制作してホーライTVに毎週流すことを決めた。
あけぼのテレピは回線幅拡大のため12月に中小ネットテレビのハイネットTVと提携し、2月には出資して系列化しており、またЮЮネットが中小ネット配信会社の平平ビデオを支配下に入れていたので、AYS連合(あけぼのテレビ・ЮЮネット・★★チャンネル)が拡大してAYSHHH連合という感じになった。
中規模のネットテレビが6社連合して準大手になってきた感じである。
ホーライTV・ハイネットTVはネットテレビ大手のアロロとも提携関係にあり、この両者の会員は(あくまで一部だが)アロロ、あけぼのテレビ双方の番組が見られるという美味しい状態になった。
「え〜!?ゆりえちゃん(今川ようこ)も、えみちゃん(左倉まみ)も辞めないの〜?」
と青木由衣子は叫んだ。
3月16日(水).
東京都・北区のC学園中学に通っていた美崎ジョナ(本名:風谷リンゴ)は中学卒業証書授与式に臨んだ。美崎はこのまま内部進学してC学園高校に入る。
3月16日(水).
山形県酒田市の中学に通う東海林椿希はこの日終業式を終え、その日の内にお父さんの車に引越荷物を積み、夕方、東京五反野の女子寮に入った。
3月16日(水).
宮崎県都城(みやこのじょう)市の中学に通っていた藤真理奈(ふじ・まりな:広瀬みづほ)は、この日中学を卒業した。式が終わり、記念写真など撮ったあと、母の運転する車で宮崎空港に向かう。車には引越荷物が既に積まれている。そして宮崎空港に駐めていたHonda-Jet
Blueに母・兄・妹と4人で乗り、熊谷の郷愁飛行場に向かった。熊谷から先はSCCのドライバーさんが運転するワゴン車に荷物ごと乗って東京に向かう。そして五反野の女子寮に入った。
先日のドラマの撮影でも宿泊したA302に正式に入寮する。
母と妹は“Guest”の入館証を付けたが、お兄さんは事前に写真を送って作ってもらっておいた“家族特別入館許可証”という写真付きの入館証を付けた。
「男性の入館者は厳しく制限してますから」
と副寮母の花ちゃんが説明すると、お母さんは
「そうでしょうね」
と納得していた。
ちょぅど母たちが花ちゃんと話していた時に東海林椿希と両親が到着。椿希と真理奈は握手していた。
両者とも取り敢えず荷物を3階に上げた。
(女子寮のエレベータは3基あるので同時に引越ができる)
寮長の花咲ロンドが双方の家族を案内していた。
椿希のほうは、お母さんと本人の手で荷物がほどかれ、お父さんはホームセンターに行って少し物を買ってくると言っていた。でも東京の道は慣れてない人には大変なので、花ちゃんは、海浜ひるがおに案内させた。
真理奈たちの方は、荷物を置き、お兄さんの手で配線などが行われ、その間に本人と母が買い出しに行き(SCCのドライバーさんに案内してもらった)、妹はおやつを食べていた!
「妹さんは信濃町ガールズ入る気無い?団員の姉妹は入りたいと言えば本部生にするよ」
などと花咲ロンドが勧誘している。
「興味はあるけど娘が2人東京に出てきたらお父ちゃんが寂しがるだろし」
「マリが出て行くのにもぶつぶつ言ってたからなあ」
とお兄さん。
「お兄さんは信濃町ガールズに入る気無い?」
「ぼく男ですよー」
「君なら女の子の服を着せたら女の子で通りそうな気がするが」
「勘弁してください」
「お兄ちゃんなら性転換しても行けると思うなあ」
「何ならいい病院紹介しようか?」
「どうしよう?」
迷うのか?
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