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■夏の日の想い出・二足のわらじ(5)
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目次 8
時間索引 #
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§§ミュージック関係で3月中旬に中学を卒業する予定なのは下記のメンツで各々次の高校に進学することが2月中旬までには決まっていた。
新里好永“恋珠ルビー”葛飾区E学園
平良百合ゆり“花貝パール”葛飾区E学園
藤真理奈“広瀬みづほ”葛飾区E学園
溝口千歌“水谷康恵”葛飾区E学園
風谷リンゴ“美崎ジョナ”北区C学園女子高校
立川心桜“松島ふうか”葛飾区L高校
横山朋菜“箱崎マイコ”葛飾区L高校
佐藤晴恵“鹿野カリナ”葛飾区L高校
末次一葉“花園裕紀”
ルビー・パールなどが進学する葛飾区E学園には常滑舞音・山本コリン・甲斐姉などが在籍中である。ここは割と自由の利く高校で芸能人の生徒も多い。今回水谷姉が進学することで来年は多分甲斐姉妹・水谷姉妹が揃う。
ジョナが進学する北区C学園女子高校はアクアの母校で、白鳥リズム・羽鳥セシル・東雲はるこ・町田朱美・水森ビーナなどが在籍している(男の娘が多い気がするのはきっと気のせい)。ここは音楽教育が充実している。ミッションだが、別に信者にならなくてもいいし、宗教の時間の受講は任意である。
松島ふうかなどが進学する葛飾区L高校には七尾ロマン、直江ヒカルなどが在籍している。ここは単位制なので何年掛けて卒業してもいいが大抵の子は3年で卒業する(4年生以上の子のためのホームルームがある)。
2月下旬、リストを眺めていたコスモスは佐々木春夏マネージャーに電話した。
「花園裕紀の進学先が記入されてないけど、あの子どこに進学するの?」
「それがまだ決まってないんです」
「なんで?」
「退団するなら実家から通える所にしようかなとか言ってるのは聞いたのですが・・・」
「じゃ埼玉の方の高校に入るの?」
「それもまだ決めてないみたいです」
「この時期にまだ進学先が決まってないって、まずいじゃん。あの子、公立とかは?」
「あの子の成績では無理だと思います」
「だったらあの子、どうするつもりなのよ〜!」
とコスモスは叫んだ。
政子はまた唐突に言った。
「よく二足のわらじと言うけどさ」
「うん」
「足は2本ある人が多いから、わらじは2足無いと困るよね」
「いや“一足”というのが左右のわらじセットのことだよ。a pair of straw shoes」
「なんで〜?“ひとつの足”と書くのに」
「なんでと言われても日本語の“足(そく)”というのは両足につける一揃いのものを意味する。靴下一足とか、スケート靴一足とか」
「スキー板は?」
「それは1組だと思う」
「だったら靴の左右どちらかだけを言いたい時はどうすればいいのよ?」
「それは靴の片方だよ」
政子は不満なようである。
「人間は足が2本の人が多いから1足で2つとして、4本足の犬用の靴は?1足で4つ?」
「犬用の靴は“足(そく)”では数えないと思うなあ。4個で1セットみたいな言い方をすると思う」
「百足(むかで)さんなら、100個で1セット?」
「ムカデに靴を履かせようという人はいないと思うけど、ムカデの足は必ず奇数対あるから、100本、つまり2本×50組ということは無い。49組で98本か51組で102本になる」(*8)
「え?足が100本のムカデさんって居ないの?」
「居ない」
「それはいけない。ムカデの漢字は“百二足”とかに改訂すべきよ」
「知らん」
で、結局何の話だったんだ?
(*8) 日本の家庭でよく見かけるオオムカデは21対(42本)の足を持つ。ただし亜種の赤ムカデは23対(46本)である。
3月7日、私は世界水泳の代表に決まった青葉に電話して言った。
「世界水泳代表決定おめでとう」
「ありがとうございます」
「それで物は相談だけど、集中して練習できる環境を提供するからさ」
「はいはい。今度は何のお仕事ですか」
「話が早いね。今度は若杉千代のトリビュートアルバムを作りたいんだよ」
「誰でしたっけ?」
「1960年代に活躍した歌手でね」
「随分昔の人ですね!」
「ワンティスが所属していた事務所のオーナー」
「へー!」
「その人の生誕80年なんだよ」
「もう亡くなっておられるんですか?」
「高岡さんの事故の直後に亡くなってる。癌でね。龍虎の養育費は実はこの人が高岡夫妻に代わって払っていたんだ」
「そうだったんですか!」
それで結局青葉は郷愁リゾートのコテージ“つばめ”で、11-12月にワンティスのトリビュートアルバムを作った時と同様に、南田容子と立花紀子を助手にして3月いっぱいくらいの日程で、このアルバムの編曲をしてくれることになったのである。
私はそれが終わったところでミュージッシャン・アメバムの取材を頼もうと思い、そちらの準備も始めていた。ここまでアクア、長沼清恵、XETIMA、富士川32と取材してきて、次はUFO・スパイスミッション・ビンゴアキを取材する予定である。この放送予定は6月から7月上旬になる。その後の分は世界水泳の後になるだろう。
原則としてアーティストの自宅を訪問することになってはいるものの、この三者は自宅取材が困難なので、どこで取材するか考えなければならない。
2022年3月7日(月).
マリは妊娠中であること、8月上旬頃に出産予定であることを公表した。
「父親は噂されている百道大輔さんですか?」
「知りません。大輔ではないと思いますよ」
「百道大輔さんとの入籍はいつですか?」
「結婚する予定はありません」
「他に交際している人が居るんですか?」
「知りません」
ということで、マリは否定していたものの、多くの人は相手は百道大輔なのだろうと思った。何よりも大輔の子供・夏絵をマリが手元に置いているのが、ふたりの関係が“結婚カウントダウン状態”であることを想像させた。
私もてっきり父親は大輔だと思い込んでいた。
川崎ゆりこは、困ったなあと思い、北海道のことに詳しそうな千里に電話して尋ねた。
「醍醐先生、ちょっとご相談なのですが」
「うん」
「今月末にアクア主演で映画を撮るんですが」
「ああ。『お気に召すまま』ね」
「いえ。それは4月から5月に掛けて撮る予定でその前に3月に『黄金の流星』というのを撮るんですよ」
「慌ただしいね」
「アクアは2〜3日だけの予定なんですけどね」
「え?でも主演って言わなかった?」
「はい。でも彼女の出番は2〜3日で終わるんですよ」
「主演がそんな短時間でいいの〜?」
この時点ではまだアクアは、アルケイディアのみを演じる予定で、ジルダルとルクールまで演じる予定は無かったのである。
「それでこれ隕石が小さな島に落下するお話なんですよ」
「ああ、思い出した。アラスカかどこかに落ちる話だっけ?」
「よくご存じですね。まあグリーンランドなのですが」
「少し方角が違ったか」
「映画の予算が無いのでどこか雪に覆われている島があったらそこでロケができないかなと思うんですが、一週間くらいほぼ占有してロケができるような北海道の島をご存じないかなと思って」
千里は少し沈黙した。ゆりこは忙しいのにそんなんで煩わせるなとか叱られるかと思ったのだが、千里の返事は意外なものだった。
「北海道の日本海沿いに、私が個人で所有している島があるんだけど、そこ使っていいよ。映画の予算無いならタダで貸してもいいよ」
「ほんとですか!助かります」
「何なら見学に行く?」
「はい。ぜひ」
それで、3月8日、川崎ゆりこ、秋風コスモス、河村監督夫妻、大曽根部長の5人が旭川空港まで千里のG450で飛んだ。
旭川空港からは千里が運転するアルハンブラで留萌港まで行く。そこに大型のクルーザーが停泊していて、千里は5人を船に案内した。
「個人所有の島なんで公共の交通機関では到達できないんですよ」
と千里は言っている。
「この船は?」
と河村監督が訊く。
「私個人所有のクルーザーですが」
と千里は平然と答える。
大曽根さんが言った。
「ね、ね、醍醐さん。この船も撮影に使わせてもらえない?大型のクルーザーが物語に出てくるんだよ。そこの撮影をどうしようかと思ってた」
「いいですよ。クルーごとお貸ししますよ」
「助かる!」
川崎ゆりこが訊いた。
「この船の名前、Akuparaって書いてあったけど、亀さんですか?」
「そうそう。ここにマリちゃんがいたら別の亀さんを連想する」
「あの子はすぐ下ネタに行く!」
とゆりこは言っている。
アクパーラというのはインド神話に出てくる巨大な亀である。この船の名誉船長が千里の眷属・玄武なので、彼にちなんで付けたもの。
「でもマリちゃん記者会見では否定してたけど、やはり百道大輔と結婚するのかなあ」
「しないと思いますよ。妊娠中の子どもも別の人の子どもだし」
「そうなの!?」
「父親知ってるのは私とケイくらいでしょうけどね」
などと千里は言ったが、ケイはまだ報されてなかった!
(言えば絶対怒るから)
「だからローズ+リリーは来年には活動再開すると思いますよ」
「へー」
「でもよくケイちゃん1人でローズ+リリーやりながら膨大な曲を書きながら§§ミュージックの会長してるね」
と大曽根さん。
「まあケイは10人居ますから」
と千里。
「ああ、いますよね」
とゆりこ。
「ちなみに私は多分7人、アクアは多分3人です」
「うん。アクアは絶対1人ではない」
と、ゆりこも言っている。
もっともここにいる6人の中で2人のアクアが並んでいる所を見たことがあるのが河村監督夫妻、千里、コスモスと4人もいる。3人並んでいるところを見ているのは千里とコスモスのみである。それにプラスしてアクアの代役をしている“かぶちゃん”のことを知っているのも千里とコスモスのみである。“かぶちゃん”のことはアクア本人も知らない。千里が“3人”と言ったのは“かぶちゃん”を含めての意味。
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