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■夏の日の想い出・二足のわらじ(10)
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目次 8
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語り手「やがて3年の奉公期間が過ぎました」
商店主(秋風コスモス)が言いました。
「よく3年間頑張ったな。じゃこの3年間のお給料をやろう」
それでフリック(アクア)に渡したのは100円玉3枚です。
「1年で100円、3年で300円だぞ」
「わあ、ありがとうございます!」
とフリック。
(放送時に「秋風コスモス、なんてケチなんだ。たくさん働かせて1年に100円は非道い!」と非難轟轟。もちろんそういう反応を期待してこの役を名乗り出た)
なおフリックを演じるアクアは男声で話している。
語り手「何だか給料が異様に安い気がするのですが、フリックは物の相場を知らないので、なんかたくさんもらった気がして喜んで旅支度をし、商家を後にしました」
それで実家に帰ろうと歩いていると、道端につぎはぎだらけの服を着た女(石川ポルカ)が居ました。
「何か恵んでいただけないでしょうか。もう3日間何も食べてないのです」
「それは気の毒だ。この100円玉を1枚あげよう」
「ありがとうございます!とっても嬉しいです」
「そのうち、きっといいことあるよ」
とフリックはその女に声を掛けて先に歩いていきました。
それで歩いていると、道端にボロボロの服を着た女(原町カペラ)が居ました。
「何か恵んでいただけないでしょうか。もう1週間何も食べてないのです」
「それは気の毒だ。この100円玉を1枚あげよう」
「ありがとうございます!とっても嬉しいです」
「そのうち、きっといいことあるよ」
とフリックはその女に声を掛けて先に歩いていきました。
それで歩いていると、道端に“かつて服だったもの”(*11)を着た女(花咲ロンド)が居ました。
「何か恵んでいただけないでしょうか。もう半月何も食べてないのです」
「それは気の毒だ。この100円玉を1枚あげよう」
「ありがとうございます!すごく嬉しいです」
「そのうち、きっといいことあるよ」
とフリックはその女に言いました。
語り手「こうしてフリックはせっかく3年働いてもらった給料を全部貧乏な女にあげてしまったのです」
(この付近のモチーフは『星の銀貨』にも似ている。自分が持ってるパンをあげるバリエーションもある)
(*11) 「なぜ肝心な所が見えないのだ?」という声多数(見えたら放送できない)。この服はロンドに着せてからた泥を付けたり草を擦りつけたりして汚し、破ったり穴を空けたり破ったりして作った。それでかなりみすぼらしい感じになったが、脱ぐ時に崩壊した。
でもこの放送後、3人にファンから洋服のプレゼントが多数来た!
「私たち売れてないから着る洋服にも困っていると思われているかも」
「でもプレゼント嬉しい」
語り手「ところがフリックが最後に100円玉をあげた女は光に包まれます。その光の中で、着ていた“かつて服だったもの”もみるみる内に真っ白い服に変化しました」
光輝く女は言いました。
「私は女神です。あなたは何て心優しい少年なのでしょぅ。自分が持っているお金を全部3人の女にあげてしまうなんて」
「そんな。別に心優しい少年ではないです。困っている人がいたから助けただけです」
「心優しい少女だっけ?」
「ぼく男の子ですー」
(放送時「嘘つけ!」という声多数)
「まあ男でも女でもいい。私はそなたから3枚のコインをもらったからお返しに3つの道具をあげよう。この斧(*12) はどんな木でも伐れる。この鉄砲(*13)は必ず当たる。このフィドル(*14)は弾くとみんな楽しい気分になって踊り出す」
「みんな楽しくなって踊り出すっていいなあ、楽しいことはいいことです」
とフリックは言ってこれらの贈りものをもらいました(*15).
(*12) 撮影に使用したのは、薄い鉄板を曲げて斧っぽくし、木の柄を付けたもので重さ3kgくらいある。アクアやロンドが楽に持てるものにするのに苦労した!
(*13) 撮影に使用したのは、ボルトアクション・ライフルのベストセラー Remington Model 700 のモデルガンである。
(*14) 時々書いているが、フィドルとは“ヴァイオリンと同じ形をした楽器”である!ヴァイオリンとフィドルの違いは、下記の言葉で要約される。
ヴァイオリンは高価な楽器だが、フィドルは、うっかり酒をこぼしても惜しくない楽器。
またフィドルの弾き方は、ヴァイオリンでいえば第一ポジション固定で弾くことが多い。またスピッカートも多用される。
撮影に使用したのはメルカリで1万円で落とした“使用感があるので理解していただける人に”とコメントされていた安物ヴァイオリンだが、実際の音はアクアが愛用の180万円のヴァイオリンで弾いたものを使用している。アクアは自分の演奏を聴きながらそれに合わせてこの安物ヴァイオリンを“松ヤニを塗ってない弓で”弾いた(つまり音は出ない)。
(*15) この物語の重要なバリエーションで、フリックが商店主のところに戻って給金が少なすぎると主張し、ヴァイオリンを弾いて払うまで踊らせるというものがある。商店主はフリックを訴え、死刑にされることになるが、・・・という展開。
しかしその展開ではフィドルはただの脅迫の道具と化しているので、このドラマでは採用しない。それに脅迫して言うことを聞かせたら相手は主人公を恨む。絶対仕返しされる。だからその展開はハッピーエンドにはなりえない。
フリックのセリフにあるように「みんなを楽しい気分にする道具」として、このドラマでは描いた。みんな感謝して主人公にお礼してくれるのである。
「消費税の馬鹿ぁ!」
と叫んでいる石川ポルカが一瞬映る。
語り手「フリックがまた歩いていると、農婦(福衣裕子)が困ったような顔をしていました」
「どうかなさいました?」
「帽子が風で飛んでって木の枝に掛かってしまって。あんた身軽そうだね。あの帽子取ってくれたら千円あげるよ」
「いいよ」
と言うと、フリックは銃を取り出します。
「ちょっとぉ!帽子を撃っちゃだめ!大事な帽子なんだから」
「帽子じゃなくて枝に当てる」
と言ってフリックは帽子が掛かっている枝を撃ちます。すると枝は折れて帽子が落ちてきました。
「ありがとう!助かった」
「良かったですね」
「でもあんた凄く簡単に取ったから、お礼は100円でもいい?」
「ええ。いいですよ。わあありがとう」
と言ってフリックは100円玉を受け取りました。
「こんなにたくさん、お金を頂けるなんて。お礼に何か弾きますよ」
と言って、フリックはフィドルを取り出し弾き始めます。
(ケイ作曲『陽気なフィドル』 performed by AQUA)
すると農婦はその曲に合わせて踊り出します。
「私どうしたんだろう?楽しくて踊り出さずにはいられないよ」
などと言って踊っています。フリックの演奏は続きます。
「なんか物凄く楽しい気分になってきた。ね、あんたさ、お礼を1000円あげると言ったのに100円しかあげなくて悪かったよ。ちゃんと1000円あげるね」
などと言いながら、ずっと踊っています。
「30分経過」と書かれたプラカードを持った赤いドレスの広瀬みづほ(初仕事!)(*16)が画面を横切って行く。
「ね、あんた。私疲れてきたんだけど、そろそろ演奏やめない?」
と農婦は言います。
それでフリックは「そうですか?まだ弾きたかったのに」と言って演奏をやめました。
「帽子取ってくれたし楽しませてくれたから2000円あげるね」
と言って農婦は五百円玉を4枚くれました。
「わぁ、こんなにたくさん!だったらさっきのは返しますね」
「さっきのは消費税分ということで」
「そうですか、では頂いておきます」
(放送時に「消費税額が少ない気がする」という声多数)
(*16) このプラカードは弱視の視聴者のために読み上げる。これはアフレコで広瀬自身が読み上げた。
広瀬みづほはこれに出演するため、2/25金曜日の夕方、宮崎からHond-Jet
Yellowに乗って(着替えと先生から渡された課題を持ち)出てきた。彼女は撮影のために一週間学校を休み(*17)、そのまま震災イベント(3/5-6)に出る。ドラマの撮影が終わった後、車で仙台まで運んでもらい、宿舎に泊まった。
3月5日の舞音のライブの後半(10:30-11:30)、アクアのライブの前半(19:00-20:00)に出演した。
このイベントに出た同じ昇格組の春野わかなは東京に住んでいるので3月6日(日)のローズ+リリーのライブにも出たが、広瀬みづほは宮崎に帰らなければならないので、日曜の午後にHonda-Jet
blackで宮崎空港まで運んでもらった。1人だけで搭乗したので
「乗客が私1人だけで済みません」
と恐縮して言ったが、外人の女性のパイロットさんが
「よくあること、君も売れたら毎日のように飛行機で飛び回ることになる」
と言っていた。
「特別席に座りなさい」
と言われてコーパイ席に座ったが、怖いくらいに凄い迫力だった。
「万一私が操縦中に急死したら君が操縦してね」
「無理です〜!」
でも管制官との通話の仕方は教えてもらった。。
(*17) ドラマの撮影自体は平日は16時以降に行なっているので「中学生を授業がある時間に使用してはならない」という労働法規に直接は違反していないが、かなり違法適法のスレスレである。みづほは日中は先生が渡してくれた課題をやっていた。
この役は別の子(既に女子寮に入っている子:例えば春野わかな)にさせる案もあったが、広瀬の演技力や撮影度胸を確認しておきたいというのと、他の子がこの役をして『お気に召すまま』で広瀬がしたら、その子は役を取られたような気分になるので、無理をさせても広瀬を使った。
広瀬はこの一週間女子寮のA302に宿泊した。
「卒業して出てきた時も君にはこの部屋を当てるから私物を置いててもいいよ」
「じゃ着替えとか置いて帰ります」
同じ昇格組の春野わかなとは隣の部屋で
「お互いがんばろうね」
などと言い合った。
語り手「フリックがまた歩いていると、やがて森に入ります。木こり(鴨居淳三)が困ったような顔をしていました」
「どうかなさいました?」
「この木を切ろうとしているのだけど、俺も年取ってしまって、こんな大きな木はなかなか切れないんだよ。若いの、代わりに切ってくれない?切ってくれたら千円あげるよ」
「いいよ」
と言うと、フリックは自分の斧を取り出します。そしてそれを一振りすると、すぐ木は倒れました。
「ありがとう!助かった」
「良かったですね」
「でもあんた凄く簡単に切ったから、お礼は100円でもいい?」
「ええ。いいですよ。わあありがとう」
と言ってフリックは100円玉を受け取りました。
「こんなにたくさん、お金を頂けるなんて。お礼に何か弾きますよ」
と言って、フリックはフィドルを取り出し弾き始めます。
すると木こりはその曲に合わせて踊り出します。
「俺どうしたんだろう?楽しくて踊り出さずにはいられないよ」
などと言って踊っています。フリックの演奏は続きます。
「なんか物凄く楽しい気分になってきた。ね、君、お礼を1000円あげると言ったのに100円しかあげなくて悪かったよ。ちゃんと1000円あげるよ」
などと言いながら、ずっと踊っています。
「1時間経過」と書かれたプラカードを持ったオレンジのドレスの広瀬みづほが画面を横切って行く。
「ね、君。俺疲れてきたんだけど、そろそろ演奏やめない?」
と木こりは言います。
それでフリックは「そうですか?まだ弾きたかったのに」と言って演奏をやめました。
「木を切ってくれたし楽しませてくれたから2000円あげよう」
と言って木こりは五百円玉を4枚くれました。
「わぁ、こんなにたくさん!だったらさっきのは返しますね」
「さっきのは消費税分ということで」
「そうですか、では頂いておきます」
語り手「フリックが歩いている内に日が暮れて来ました」
「ぼく今夜泊まる所はどうしよう?」
と考えます。すると少し行った所に2階建ての煉瓦の家がありました(*18).
「もしもし。旅の者ですが一晩泊めていただけないでしょうか」
すると中から女の声がします。
「ここは危険です。主人が帰ってくる前にお逃げなさい」
「逃げるといっても・・・」
と言った時、ひとりの老人(獄楽@サウザンズ)がこちらに走ってくるのを見ます。その後ろには熊(*19)が居ます。
「危ない」
と言うと、フリックは銃を取りだし、熊に狙いを定め、引き金を引きました。
ダーン!
熊が倒れます。老人は走るのをやめ、倒れている熊を見ます。
「ありがとう。助かったよ!」
と老人は言いました。
家の中から可愛いメイド姿の少女(花園裕紀!)が出てきて
「お帰りなさいませ、御主人様」
と言う。
(メイド喫茶か?)
「ああ。ただいま。若い人、どちらの人かな」
「イナカイナカ村に帰る途中なのですが」
「それはまた遠い所に。今日はもう遅い。泊まっていきませんか。お礼もしたいし」
メイド服の少女が老人の後ろで両手をX字にして「駄目」のサインを送っていますが、フリックは深く考えずに
「助かります。今夜泊まる所が無くて困っていました」
と言いました。
「よしよし。中に入って」
と言って、フリックを家の中に入れた後、老人はひょいと熊を抱えると斜面に頭を下に乗せ、首の血管を切って血抜きをしました。それから家の中に入りました。
(*18)この家はユニットハウスの表面に煉瓦シートを貼り付けて作ったので1日で完成した。
(*19) 熊は着ぐるみで中に入ったのは同じサウザンズの樟南!である。樟南が着ぐるみを脱いで代わりにプチプチを詰めたもので獄楽が熊を抱えて血抜きするシーンを撮影した。血は赤絵具。なお原作では狼の大群に追いかけられていたが撮影技術上の問題で熊に変更した。
それと昨年の『火の鳥』で狼は味方だったので、ここで敵役にするのは避けたいという意見もあった。
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夏の日の想い出・二足のわらじ(10)