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■夏の日の想い出・二足のわらじ(6)
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時間索引 #
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島に到着するまで6人はオーナー船室で過ごす。ここはコロナ対策で改造したということで物凄く換気がよくなっていた。
「これだけ換気が良ければ問題無いな」
と大曽根さんは言っている。
「でもこのクルーザー、いつから持ってるの?」
とコスモスが尋ねる。
「このクルーザー買ったのは10年以上前なんだよ。売りたがっている人が居たから。最近はレクサスLY650みたいな未来っぽいデザインのクルーザーが流行りみたいだけど、このクルーザーはクラシカルなデザインなんだよね。だから価格もほんの5000万円だった。ずっと関西のほうで運用していたんだけど、父が船があるなら乗りたいっていうから、こちらに持って来た」
「お父さん、漁船に乗ってたんでしたね?」
とコスモスが言う。
「うん。祖父がニシン漁やってて、父の時代はスケソウダラ。でもスケソウダラ船も私が中学の時に廃船になって、そのあと養殖場の見回りをすする小舟に乗ってた。この船、自由に乗っていいよと言ったらオモチャをもらった子どもみたいに喜んで、昔の仲間とか誘ってしょっちゅう動かしてる」
「親孝行じゃん」
と大曽根さんが言う。
「船の設備が豪華すぎるって文句言ってますけど」
「ああ」
「スケソウダラ船は寝る所は狭い板一枚だったみたいだから、広いベッドは落ち着かないと言って、その台持ち込んでそこに寝てるんですよ」
「その台はお父さんのベッドですか!」
島の南東側に港湾と桟橋が作られていて、クルーザーはそこに停泊した。
「島の周囲にぐるっと道を作っていますが面倒なので舗装はしてません。これ撮影に使えます?」
「うん。舗装してないのが凄く嬉しい」
と大曽根さん。
「撮影で必要なら少々ぶっ壊してもいいですから。後で修復しますし」
「だったら少し壊していい?復旧はこちらで責任持ってするよ。道なき道を通るというところを撮影したいから」
「どうぞ。どうぞ」
その道は除雪されていた。昨日、朱雀林業の人に頼んで道だけ除雪してもらったらしい。島は深い雪で覆われている。
港湾の西側、道を100mほど行った所に別荘があり、そこでお茶を飲む。
「この別荘を映さないようにして、この付近は道が無いことにして反対側を通ってもらおうかな」
「ああ。それがいいですね」
「なんでしたら出演者さんをここにお泊めしていいですよ」
「それお願いするかも」
「2階に個室が4個あるから、そこで女性に寝てもらって、男性はここのリビングでゴロ寝すれば10人くらいは泊まれるかな」
「個室1個に2人ずつ泊めれば女8人と男12人で20人くらい泊まれるかも」
などと撮影の計画は進む。
「でもここ電気が使えるんですね」
「太陽光パネル載せてもますからね。水道は簡易水道です。灯油でボイラー焚いてます。ガスは用意してないですが、必要ならプロパンガス持って来ますよ」
「まあガスはなくてもいいだろうね」
「スマホの充電だけでもさせてもらえたら助かるかも」
帰りの船の中でコスモスは千里に打診した。
「大宮先生に今熊谷のコテージに籠もってもらって編曲作業をお願いしているんですが、この手の作業の度に関東に出てきてもらうの申し訳無いと思うんですよ。それで大宮先生の御自宅から出勤感覚で行ける高岡市内かその周辺でスタジオを建てられる程度の土地って確保できないでしょうかね。そこに今の設備を持って行けば、わざわざ関東に出てきていただかなくても作業はできると思うんですよ」
「そのくらいの土地はすぐ見付かりますよ。でも助手の南田容子と立花紀子は?」
「高岡出張で。ですから、彼女たちが泊まれる小部屋付きでスタジオが作れたら理想です」
「立花紀子がテレビに出演する時は?」
「東京日帰りで」
左蔵真未は花ちゃんのところに来て言った。
「花ちゃん、私にも良い名前付けてください」
「うん?」
「ゆりえちゃん(上野有里絵=今川ようこ)、名前変えてもらったらすぐ4月からのレギュラー番組の話あったと聞きました。私にも新しい名前付けて下さい。今の名前って“真未”というのが、真未満のもの、ニセモノって感じで好きになれないんです」
と彼女は言った。
「いまだに真でないというのは、いづれ真になれるように成長していくという意味なんだけどね」
と花ちゃんは言ったものの、彼女の名前を鑑てあげた。
(このくらいパッと屁理屈を言えなきゃタレントの元締めなどやってられない)
それで“左倉まみ”というのと“櫻万実”というのを提案した。
左蔵真未 総35○内助副官 天20□分裂統合 地15○恭謙昇運 人25○英俊奇運 外10×破滅誤解
左倉まみ 総20□分裂統合 天15○恭謙昇運 地5○安定成長 人13◎和合繁栄 外7◎開拓打破
櫻万実 総32◎幸運的中 天21◎朝日黎明 地11◎成長大樹 人24◎才知豊栄 外8◎質実剛健
「読み方は同じなのに随分イメージが違いますね〜」
「“左蔵真未”は外格が悪かったね。タレントは外格がいちばん大事なんだよ。外格って引き立てられる運だから」
「左倉まみも総格が良くないみたいですけど」
「総格の20,30はバブル運といってね。普通の人には凶だけど、政治家とか実業家とか芸能人には吉数なんだよ。勢いに乗って実力以上にのしあがれる画数」
「へー」
「このどっちかの名前で取り敢えず1年くらいやってみない?」
「そうですね。“櫻万実”は凄く画数がいいし、見た目も華やかですけど、あまりに美しすぎて自分じゃないみたい。七尾ロマンちゃんみたいに歌が超絶上手い人なら、こういう名前使ってもいいけど、私みたいな並みの歌い手が使うには、おこがましいです」
「まあ良すぎる名前は名前負けすることがあるんだよ」
「でしょ?“左倉まみ”のほうが分相応かも。こちらもこれまでの名前より感じがいいし、やわらかい感じがするから、そちらでやってみようかな」
「よし」
ということで、左蔵真未あらため左倉まみも退団を撤回したのである。
§§ミュージックおよび08年組は3月5-6日(土日)に震災復興支援イベントを実施したのだが、この時、オリーブレモンは東京のスタジオからの参加だった。そして今年このユニットに参加した夏野明恵を、月曜日にちゃんと学校に行けるようにと、東京ヘリポートから津幡アリーナまで、ヘリコプターで送り届けた。
実は、津幡アリーナのヘリポートを初めて!使用したのだが、ここで問題が発覚した。
(1) ヘリポートは1機分のスペースしか無いので、そのヘリがどくまでは他のヘリが着陸できない。
(2)ヘリの燃料を補給できない。
実を言うと、このヘリポートは、若葉が「ここにヘリポートがあると格好いいなあ」
などと言って、あまり用途を考えずに作ったのだが、今の形では使い道が限られることが判明した。
それで若葉は言ったのである。
「ちゃんと給油所や管制塔もあるヘリポートを作ろう」
それで場所を検討した所、氷見市の山間部なら、土地相場も安いし、他の空港との干渉もあまり無いことが分かる。それで若葉が地元の関係者と話し合ったところ、農業用ヘリ・ドクターヘリなどを無料で駐機させること、夜間(22:00-4:00)は、できるだけ使わないこと、取付道路をムーランの費用で建設することなどを条件に市側の了承を得た。
そして4月中に土地の取得をし、5月中に空港設備を作り6月までに取付道路も建設してしまったのである。その素早い行動力に市がびっくりしていた。そして国土交通省の認可を取り、9月からこのヘリポートを運用していいことになった。それ以前でも緊急時などに着陸するのは構わないという、国交省側の口頭での許諾を得ている。
ヘリポートと取付道路は、融雪装置を付けて冬季に除雪車を入れなくても大抵使えるようにした。また既存の市道や農道と接続し、バイパスとして使用してよいことを市側と同意した。つまり私道のまま、一般車両を受け入れる。鹿児島の藺牟田飛行場の取付道路と似た扱いである。向こうと同様に、一般の人がウォーキングやジョギングを楽しめるように歩道も整備した。
2022年3月11日、政府は、厳しい制限が課されていた大規模イベントについて、大声は出さないなどの感染防止計画を作成することを条件として解除すると発表した。これを受けて、大規模なライブを計画する所が相次いだが、§§ミュージックでは、私・コスモス・アクア・千里・ゆりこ・花ちゃんの、緊急役員会議で検討した所、現時点ではリアル・ライブの実施は時期尚早として、その旨発表した。
・§§ミュージックのアーティストのライブは、当面、全てネット方式でおこなう。
・WHOの終息宣言が出た時点で、再度検討する。
♪♪ハウスの白河夜船社長、そしてサワークリーム食パンの板付中将社長もその日の内に同様の方針を発表した。大手では、##プロ、○○プロ、$$アーツはライブ再開の意向を示したが、最大手の∞∞プロ、またζζプロやΘΘプロは様子見の意向を示して対応は割れた。
中小ではライブ再開の方針を示したところが多かった。中小はライブができないことで、かなり財政的に追い詰められていた。
2022年3月13日(日).
東京藝大の合格発表が行われたが、合格者の受験番号の中に落合翠(町田朱美の姉)の受験番号は無かった。予定通り!?芸大には落ちたので、翠は心置きなく∫∫音大に進学することにした。
3月13日日曜日13時。
坂出モナと弘田ルキアの結婚式が、あけぼのテレビで生中継された。
司会はあけぼのテレビの小林雪恵アナウンサー、音楽担当は夕波もえこである。
本当は婚姻届けを出すだけで式まであげないつもりだったのが、結局式もあげることになった。番組の冒頭、会場のエヴォン銀座店2階に、千里がコネを持つ都内の神社の神職さんが出張してきて結婚式をあげてくれた。
結婚する2人はどちらもウェディングドレスであるが、法的には男女なので、神職さんは「男と女なら問題ありません」といって、神社の名前を出さないことを条件に引き受けてくれた。
新郎新婦は未成年(4月1日に成人年齢変更により成人になる予定)である。また成人年齢が変更されても、お酒は20歳以上なので、三三九度はカルピスで行われた。
巫女舞、指輪の交換、親族固めの杯(これもカルピス)と行われて式は終了する。
最初の15分間で結婚式が行われた後、祝賀会となる。夕波もえこがエレクトーンでメンデルスゾーンの『結婚行進曲』を演奏する中、結婚するカップルが入場する。
そして即ケーキ入刀となる!
(1時間だけ貸し切りしているし、放送枠も1時間なので慌ただしい)
ケーキ入刀とともに、夕波もえこはエレクトーンでPerfumeの『Seventh Heaven』を演奏する。Zoomでつながっている多数の芸能人から「おめでとう」のメッセージが送られる。
その後、友人代表として同じ事務所の松梨詩恩がお祝いのメッセージを述べた後、祝賀会は余興の時間となり、5組のアーティストが演奏を披露した。
ColdFly5 (同じ事務所)
WindFly20 (モナの古巣)
キャロル前田とアドベンチャー (男の娘つながり)
羽鳥セシル (同じ事務所)
常滑舞音 with スイスイ (§§ミュージック代表)
例によって、この歌を聴くだけでも価値があるというラインナップであった。
最後は2人が両親に花束贈呈して、結婚式中継は終了した。
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