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■夏の日の想い出・戯謔(18)

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政子は後産が終わった後、ひたすら寝ていた。青葉は寝ている政子のそばでずっとヒーリングしてくれていたようだったが、夕方の新幹線で富山に戻った。千里は青葉に「東京駅で千里がお弁当買っておいて渡すと思うから」などと言っていた!? 多分千里1に行かせるのだろうが、どうも千里は自分の分身をいいように、こき使っているようだ。
 
政子が目覚めたのは2月4日のお昼頃である。千里が強烈なおっぱいマッサージをしてあげて「いたたたた!」と叫んでいたが、それでよくお乳が出るようになり、あやめに早速お乳を直接飲ませていた。
 
そして政子は言った。
 
「冬、アルバムを作ろうよ」
 
「十二月?星たちの歌?」
「戯謔(ぎぎゃく)」
「え〜〜〜〜〜!?」
 
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「冬がここ半年ほど詩と曲の両方を書いていたいくつかの曲、あれ使えると思うんだ。セールスはあまり出ないかも知れないけど、たまにはそういうのもいいと思うんだよね」
 
「そうだね。毎回100万枚売れていては、こちらもだんだん辛くなる。ここらで連続ミリオンを切っておいてもいいかもね」
 
ローズ+リリーのアルバムで初めてミリオンに達したのは2012年に出した4枚目のアルバム『Month before Rose+Lily, A Young Maiden』であるが、連続ミリオンは2013年の『the time reborn』から続いている。
 
2013.04.24『Rose+Lily the time reborn, 100時間』120万枚
2013.06.05『RPL投票計画』150万枚
2013.07.03『Flower Garden』国内210万枚 海外版80万枚
2014.12.10『雪月花』国内220万枚 国外120万枚
2015.12.02『The City』国内130万枚 国外(振袖とセット)65万枚
2016.12.07『やまと』国内190万枚 国外130万枚
2017.11.15『Rose + Lily ランチセット2017』国内150万枚(海外版は2018.12発売で110万枚)
2018.03.14『郷愁』国内108万枚 海外40万枚
2018.09.08『ブライダル・ウィンド』国内180万枚 海外90万枚
 
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「うん。シングルのミリオンはいいけど、アルバムのミリオンは続いていたらプレッシャーになって精神的に辛い。自由に作れなくなる」
 
それで私たちはこういうラインナップのアルバムを企画したのである。
 
『戯謔』
『Cat People』
『アンダンテ』
『愛の影』
『夜の桜』
『泉』
『君たち男の娘』
『異端修道士の洞窟』
『ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレット』
『ポーコ・ア・ポーコ』
『トロピカル・ホリデー』
『ワンチャンス・トライ』
『雷鳴』
『くじらが空を飛んでいた』
『ミルクみたいな雨』
『鳥になる』
『H教授』
 
全て政子が妊娠中で創作活動を休んでいた間に私が詩・曲ともに書いた作品である。ただ・・・
 
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「紅石恵子名義で発表しちゃった曲もあるけど」
「アルバムを作るのに他の作曲家から提供してもらうのは全く問題無い」
「確かに」
 
紅石恵子名義を使ったのは『アンダンテ』(三善貴恵へ)『愛の影』(紫村光子へ)『昼の桜』(甲野八重子へ)、そして三つ葉が歌って久しぶりの大ヒットになった『檸檬爆弾』である。
 
『夜の桜』は『昼の桜』とセットで作った曲だが、『昼の桜』の方が歌いやすかったのでそちらだけ提供した。『ポーコ・ア・ポーコ』は『アンダンテ』とセットで作った曲だが“おとなの事情”で『アンダンテ』のみを提供した。『泉』は“おとなの事情”で他の人には提供していない。
 

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「知らない曲がたくさんある」
と千里が言うので、パソコンを開けて、私が仮歌を入れた音源を聴かせる。その中で千里が大いに受けていたのが『ポーコ・ア・ポーコ』である。
 
「“おとなの事情”というのがよく分かった。つまり少子化対策ソングだ」
と千里は笑いながら言った。
 
「そうなんだよ。昔書いたエクスタシーと同様に、この歌は日本の出生率を上昇させる可能性がある」
 
「いいと思うよぉ。これ絶対にアイドル歌手には歌わせられない歌だよ」
 
●ポーコ・ア・ポーコ
 
静粛な空間に、澄み切ったハープの音が響く
 
目をつむったまま聴いていた指揮者の指が
ゆっくり、ゆっくりと、動きだし
やがて一気に
 
オーケストラヒット
 
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また更にハープのソロが続いて
またやがて・・・
 
この一瞬にシンクロして鳴る
貴方と私のヴァイオリン
 
曲が次第に盛り上がって行くように
私の気持ちも、少しずつ、少しずつ
盛り上がって行く。
 
至福な瞬間に向って
 

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「これを聴いてから『アンダンテ』を聴くと、そちらも怪しい歌だ」
「うん。両方聴けば実はそれが分かる」
 
●アンダンテ
 
貴方のG線(げーせん)が、ゆっくりと幅の広い音を響かせる
止まっていた指揮者の指が動き出し
オーケストラがにわかにモーツァルトを奏で始める
 
貴方は妙に真面目な表情で、鋭い視線を譜面に投げ
自分の一部のようにヴァイオリンを操る
 
その顔を見ると私は妙に楽しくて
思いっきり、そこへ和音を重ねる
 
つかの間のアンダンテ、4分28秒
少なくともその間だけは
私たちの心は同じところにある
 
ただ それだけが心地良くて
 

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「『アンダンテ』って誰が歌ったんだっけ?」
「三善貴恵ちゃん」
「その子知らない」
 
「一昨年の秋にデビューしたんだよ。1枚目は240枚、2枚目は60枚」
「それって自主制作並みじゃん」
 
「シンガーソングライターなんだけど、詩が中学生が書いたか?というくらいに未熟でね」
「ああ」
 
「他の人の曲も歌ってみなよと言われてUDPから紅石恵子の曲を提供されて、この曲で初めて500枚を突破して700枚売れたけど、実質的にマリ&ケイの歌でも1000枚に到達しないというのは見込みが無いとみなされて引退勧告された。年齢も高いしね。紅石恵子は作曲料30万円+8%印税だから最低4000枚は売れないと採算が取れないよね」
 
今年度マリ&ケイの歌は作曲料100万円取っている。今年度は有名作家は軒並み高額の作曲料を提示している。海野博晃さんは300万円、ヨーコージ(蔵田さん)や雨宮先生、吉野鉄心さん、ゆきみすず先生などが150万円、スイート・ヴァニラズやマリ&ケイ、香住零子、吉原揚巻、後藤正俊といった中堅作家が100万円前後である。
 
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作曲料+8%印税を払う場合、作曲料が100万円なら最低でも1万枚は売れないと採算が取れない。普段の年に比べて遙かに多くの依頼が来るので、高額提示することで依頼数を抑えているのである。
 
私や丸山アイ・千里2がやっている夢紗蒼依も最初は作曲料20万円の売切り(印税無し)にしていたが、引き合いが多すぎるので段階的に引き上げて現在50万円+8%印税にしている。
 
望坂拓美と松本花子は“最低”50万円、つまり楽曲を渡す時に50万円払ってもらうが、最初に受け取る作曲印税から最大50万円ペイバックする方式になっている。松本花子が10月からこの方式にしたので望坂拓美も追随した。
 
(印税が20万円なら全額ペイバックするので実質作曲料30万円。印税が50万円以上なら50万円ペイバックで実質作曲料ゼロになる)
 
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「だったら使って良いよね?」
「向こうのプロダクションと話さないといけないけど、適当な金額で権利を買い取れば使えると思う」
 
「じゃ使おうよ。離れた場所に置けば、鈍い人はセットだということに気付かない」
「そうかもね」
と答えてから私は言った。
 
「それで千里頼みがある」
「うん?」
 
「誰かに提供した曲は、詩津紅とか麻央とかに詩を補作してもらって標準的な長さにしているんだけど、未発表曲では歌詞が短い曲が多い。それを千里が補作してくれない?正直、まだ政子に無理させたくないんで」
 
「OKOK。私の好みで補作しちゃおう」
「うん。それでいい」
 

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それで私たちは急遽このアルバム『戯謔』を制作することにしたのである。村上社長の許可を取る必要があったのだが、これは鱒渕さんが交渉してOKを取ってくれた。毎年発表しているオリジナル・アルバムのシリーズではなく、あくまでイレギュラーな番外編的なアルバムということで話を通してしまった、
 
それでこの曲は原則としてスターキッズ&フレンズと少数の友人だけで制作することにした。参加する友人は下記である。
 
千里(Fl/龍笛/篠笛), 夢美(Vn), レイア(様々な楽器)、美野里(Pf), 鮎川ゆま(Sax/笙), 小風(Fl), 美空(Cla)
 
小風は一昨年から暇なので何か楽器でも覚えようとフルート教室とサックス教室に通っていた。聴かせてもらったがサックスはまだまだなもののフルートは結構行けると思ったので吹いてもらうことにした。かなり暇をもてあましていたので「ああ、音楽ができる!」と嬉しそうにしていた。お見合いの話まで持ち込まれて来たのを断っていたらしい。なお小風はギターも弾けるが、取り敢えずギタリストは足りている。
 
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美空も一昨年からKARIONの方が開店休業に近いのでゴールデンシックスの方に入り浸りになっている。ところがあのバンドでは様々な楽器をやらされるので、大正琴、三味線、ムックリ(口琴)、トンコリ(竪琴に似たアイヌの楽器)、ライア(ヨーロッパの竪琴)とやらされた上で最近はクラリネットをライブでは吹くことも多いらしい。聴いてみるとうまいので頼むことにした。なお元々美空はDRK/ゴールデンシックスのベーシストのひとりである(千里と交代で弾いていたらしい)。
 
夢美はオルガン奏者で国内で年間20-30回のライブをしているし、毎年2枚前後のアルバムを出しているが、私との関わりではオルガンはあまり弾かず、“趣味の範囲”というヴァイオリンを弾くのが常になっている。趣味の範囲といっても、国内のコンテストで3回入賞した私より上手い!
 
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今回の演奏の全体の管理は、七星さんと風花にお願いしたが、七星さんは無論サックスを吹くし、風花にもフルートを吹いてもらう。
 

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アルバムの収録曲だが、最終的に次の12曲に絞ることにした。
 
『戯謔』
『Cat People』
『愛の影』
『夜の桜』
『異端修道士の洞窟』
『ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレット』
『ポーコ・ア・ポーコ』
『ワンチャンス・トライ』
『雷鳴』
『ミルクみたいな雨』
『鳥になる』
『H教授』
 
『アンダンテ』と『ポーコ・ア・ポーコ』を並べるとあからさまなので、『アンダンテ』は外して、三善貴恵と同じ事務所の先輩、高木美優の制作中のアルバムに入れる方向で話がまとまった。高木美優は私とエレクトーン教室でクラスメイトだった子で、以前SPSというバンドをしていたのだが、バンド解散後は、あまり目立ったヒットは無かった。ただ彼女はライブハウスなどでけっこう動員を稼いでいるので、昨年春のJPOP界大量リストラには掛からなくて済んだのである。
 
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『泉』は歌詞があまりにも怪しすぎて、氷川さんに却下された!
『君たち男の娘』も「世界観が異質です」と言われてやはり却下された。
 
『トロピカル・ホリデー』は『十二月』でも使えるので、そちらに回すことにした。
 
『くじらが空を飛んでいた』は三つ葉の波歌が「これ可愛い!ください」と言ったので、例によって紅石恵子名義で提供することになった。
 
偶然の作用なのだが、コンセプトが競合しているTrine Bubbleにはマリ&ケイの名前で、三つ葉には紅石恵子の名前で曲を提供することになり、この体制がこの後、数年続くことになった。
 

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夏の日の想い出・戯謔(18)

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