[携帯Top] [文字サイズ]
■夏の日の想い出・戯謔(3)
[*
前p 0
目次 8
時間索引 #
次p]
2018年11月11日(日).
今年の各種歌謡賞のトップを切ってBH音楽賞が発表され、授賞式も行われた。今年は例年12月上旬に発表されていたYS大賞が無くなってしまった。昨年のテレビ放送で終了し、今年度からは演歌を対象とする賞に衣替えして2月発表になっている。時期的には3月に発表されるGD大賞・CD賞と似たよう時期になるのかも知れない。この後は12月中旬のDL大賞、年末のRC大賞が比較的大きな音楽賞である。
そういう訳で今年のBH音楽賞ゴールド賞の受賞者は下記である。
アクア『旅人の休息』
カラー・ボックス『ノックノック』
KARION『赤い橋のたもとで』
北里ナナ『ナナの海』
金属女給『ブラック勤務の1日』
カトラーズ『バンブーグローブ』
ゴールデン・シックス『急がば走れ』
桜野みちる『竹細工の宝石箱』
品川ありさ『ふたつの滝』
島田春都『シンコペーション・クロック』
ステラジオ『どんどん虫が湧いてくる』
津島瑤子『冬の月』
奈川サフィー『Password』
ナルカヤ32『アンノウン・フィーリング』
ハイライトセブンスターズ『玉葱の馬車に乗って』
FireFly20『夕日と砂浜』
蓬莱男爵『Heartless World』
松浦紗雪『大きな海大きな空』
松原珠妃『ロコモコ前奏曲』
リダンダンシー・リダンジョッシー『君といつか』
レインボウ・フルート・バンズ『ハートマン君、訓練だ』
丸山アイ『あなたと私の新大陸』
三つ葉『檸檬爆弾』
山森水絵『孤独なランナー』
ローズ+リリー『お嫁さんにしてね』
アクアは自身の名義でも受賞したが、北里ナナ名義でも受賞している。そちらは川崎ゆりこが代理で賞状をもらい、歌唱は録画が流された。蓬莱男爵はデビューしてから4年ほど経つが、こういう大きな賞の受賞は初めてで、泣きながら賞状を受け取っていた。
ステラジオの作品は今年賛否の割れた作品である。歌詞の内容がコカイン中毒の症状に似ていると言われ、ステラジオのふたりは薬物検査を受けさせられた!もちろん陰性だったが、この歌は放送禁止・学校での使用禁止の通達があった。しかし大量にダウンロードされて、大きなセールスとなった。この授賞式では「都合により歌唱を辞退します」とナミが言っていた。
この他22歳以下を対象とするヤング賞には下記の10組が選ばれている。
アクア、松梨詩恩、M&H、ホワイトキャッツ、青島瀬梨香、松元蘭、フローズンヨーグルツ、ボニアート・アサド、白鳥リズム、島田春都。
アクアと島田春都はゴールド賞とヤング賞のダブル受賞である。
「男の娘強いな」
「アクアは男の娘ではないと思う」
「女の子だっけ?」
「島田春都は性転換手術しちゃったから、もう男の娘ではないと思う」
「女の娘?」
島田春都は春にデビューした時はお金が無いからいつ性転換手術ができるか分からないと言っていたのだが、曲が売れてたくさん印税も給料ももらったので手術を受けられることになり、夏の終わりに国内で手術を受けたのである。そのことについて訊かれた春都は
「ファンの皆様のおかげで女の子になることができました。本当にありがとうございます。復帰したら、頑張ってお仕事しますね」
と言っていた。
「春都ちゃん久しぶりに見たね」
「心配してたけど元気そうで良かった」
「授賞式だから出てきたけど、今月いっぱいまではお休みらしい」
「だけどやはり性転換手術すると3ヶ月休まないといけないんだな」
「ラジオ出演も2ヶ月経った今月初めからだったね」
「だったら、やはりローズ+リリーのケイが2011年の4月に性転換手術を受けたというのは明らかな嘘だな」
「あれ、手術したと称する日の一週間後にライブやってるからな」
「やはり、性転換したのは休養していた高校3年の時か、あるいはデビュー前の高1の時かどちらかだな」
ところで、今年の受賞曲の中で私が書いたのは三つ葉の『檸檬爆弾』(紅石恵子名義)だけであった。マリ&ケイの作品ということになっている『お嫁さんにしてね』は実際には千里の作品である。
嫉妬する訳ではないが、千里は、これ以外にアクア『旅人の休息』(琴沢幸穂)、北里ナナ『ナナの海』(琴沢幸穂)、津島瑤子『冬の月』(鴨乃清見)、山森水絵『孤独なランナー』(鴨乃清見)と4曲、『お嫁さんにしてね』まで入れて5曲も入っている。
また今年は夢紗蒼依の作品が、奈川サフィー、スカイロード、島田春都、松梨詩恩、などと入っているし、松本姉妹の作品も桜野みちる、品川ありさ、松浦紗雪、白鳥リズム、ボニアート・アサドと入っている。今年§§ミュージックの歌手は松本姉妹作品が多い。コスモスに「松本姉妹と会った?」と尋ねてみたのだが、彼女も会っていないらしい。あれは窓口になっている木ノ下大吉先生と紅川会長との個人的なつながりから、優先的に良い作品をもらえているのだという(松本花子の作品にはいわゆる“量産品”的な歌が多い。しかしそれを求める需要が存在する)。
私は昨年かなり精神的に参っていた所で、今年の春から夏に掛けて無理したので、まだ緻密な作業ができない状態になっているのを自分でも感じていた。『檸檬爆弾』も下川工房のアレンジャーさんが魅力的な編曲をしてくれた故のヒットだと思う。
どこかで何とか復活のきっかけをつかみたい、と私は思い悩んでいた。
2018年11月30日(金).
アクアが主演する映画『80日間世界一周』が劇場公開された。公開された最初の一週間で観客動員が180万人、興行収入20億円を突破した。動員数に対して売上がやや少ないのは見に来ている主力が中高生であるためである。男女比は男4:女6くらいで相変わらず、アクアは男女双方に人気が高いことを示していた。
政子は初日に、アクアが舞台挨拶する映画館のチケットをコネを駆使してゲットし、客席から黄色い歓声を送ってきたらしい。パンフレットや映画館で販売していた関連グッズを買ってきてご満悦の様子であった。
批評家たちのコメントも概ね好意的であった。特に映画の中で20分も掛けたインドでのお祭り騒ぎの部分は、本当にインド映画的なノリで面白いと多くの人がコメントしていた。また適当に数カ所でロケして誤魔化すのではなく、多忙なアクアを1ヶ月まるごと拘束して本当に世界一周旅行してきて撮影したのは素晴らしいという評もあった。イエローストーンの景色が美しいという評価ももらった。
12月5日(水).
北里ナナの3枚目のシングル『シルバークリスマス/風車小屋の娘』が発売された。記者会見を開いてくれという要請がひじょうに強かったので、北新宿のTKR大ホールで会見が行われた。当日はアクアのCDの会見より多いのではないかと思うほどの記者が詰めかけた。
当日出席したのはこういう面々である。
事務所社長のコスモス、レコード会社の三田原部長、『少年探偵団』プロデューサーの小池、覆面をした!加糖珈琲(=田代蓮菜)、私、そして3Dプリンタで制作した“ナナちゃん人形”である。実は昨年の放送でナナが誘拐されるシーンで使用されたものだ。
マリは妊娠中なので欠席、琴沢幸穂は海外出張中なので欠席ということにした。
「覆面をしておられるのは怪人二十面相さんでしょうか?」
「加糖珈琲です」
「加糖珈琲さんはなぜ顔を隠しておられるのでしょうか?」
「私は実は医者をしておりまして、音楽活動については病院の許可は取っているのですが、患者さんが私を見て騒いだりするとよくないので隠させて頂いております」
この点については記者たちもあまり突っ込まなかった。
「北里ナナさんですが、まるでお人形のように動かないのですが、生きておられますか?」
「生きてますよ」
というアクアの声がするので、記者席がざわめく。
「あのぉ、アクアさん、近くにおられます?」
「アクアって誰でしょうか?私は北里ナナですけど」
「北里さん、女の子ですよね?」
「もちろんそうですよ。ちんちん付いてないから間違い無く女の子です」
質問する方もする方だが、記者席では忍び笑いが多数起きていた。
「では歌って頂きましょう」
と三田原が言うと、場内の灯りが落ちる。ナナちゃん人形の隣にいる加糖珈琲が人形に黒い幕を被せる!それと同時に会見席の後方の幕が上がったが、そこには覆面をしたバンドがいる。そのバンドの前方にとても可愛いピンクのドレスを着た北里ナナがフェイドインするかのようにすーっと姿を現す。記者席にざわめきが起き、多数のフラッシュが焚かれる。
登場したナナはバンド演奏に合わせて『シルバークリスマス』と『風車小屋の娘』をいづれもショートバージョンで歌唱した。ビデオ撮影している記者もあった。
北里ナナは歌い終えると笑顔で手を振る。多数の拍手が送られる。そしてナナはすーっとフェイドアウトするかのように姿を消した。後にはバンドだけが残っている。
幕が降りる。と同時に加糖珈琲はナナちゃん人形に被せていた黒い幕を取り払う。そして灯りが点いた。
「今のはペッパーズゴースト(*1)ですか?」
という質問がある。しかし三田原は
「ご想像にお任せします」
と答えた。
実際問題としてあの登場・退場の仕方が人間ではあり得ない雰囲気だったので、多くの記者がやはり立体映像なのだろうと思ったようであった。
(*1)ペッパーズ・ゴースト(Pepper's Ghost)というのは、45度の傾斜を付けたハーフミラーを使用して実像と虚像を重ねる技術で、東京ディズニーランドのホーンテッド・マンション、また初音ミクやPerfumeなどのコンサートで使用されているもの。しばしばホログラフィと混同されるが全く別の物である。
今回のアクアの登場は確かにハーフミラーを使用しているが、実はハーフミラーの向こうでは本物のアクアFが歌っていた!出現と消滅は彼女に当てるスポットライトの増光・減光によるもの。
その後、楽曲の傾向などについては主として私が説明した。実際には私は今回の制作には関わっていないのだが、だいたいの話は和泉やマネージャーの山村さんから聞いていたので、問題無く答えることができた。
記者の質問はその後『少年探偵団』の今回のシリーズや、今後の展開などについて尋ねるものになっていき、これは小池プロデューサーが答えていた。
「北里ナナちゃんは今回のシリーズにも登場しますよね?」
「2回以上は登場する予定です」
「このドラマを映画化するご予定は?」
「今の所は未定です」
12月20日(木).
今年のDL大賞が発表された。これは大手ダウンロードサイト、Direct-CDが単純にダウンロード数で上位の楽曲を表彰するものである。
1位はカトラーズ『バンブーグローブ』、2位がカラー・ボックス『ノックノック』、と発表された。カトラーズは随分前から活動していて、様々なアーティストに楽曲を提供してきているが、自身が大きな賞をもらったのは初めてである。カラーボックスは15年ほど前に若い世代に大人気だったのだが、久々のヒットであった。今年は日本中が『ノックノック』で歌いまくり、踊りまくり大ブームとなっていた。小学生の鼓笛隊や中学高校の文化祭などでも多数取り上げられたようである。
3位以降にはベテラン歌手が多くランクインしている。このランキングはブームに惑わされずに本当に広く愛されている曲がランクインする傾向がある。またダウンロードは1人が複数ダウンロードして票数を上げるような操作がしにくい(同じidで複数回ダウンロードしても単なる“落とし直し”とみなされる)ので組織票が入りにくい。そのため最近は最も本当の流行を反映したランキングとも言われている。
なおアクアは昨年発売した『サンダーボルト』がかろうじて10位に入っていた。ローズ+リリーは『同窓会』が16位に入っていた。
12月26日(水)にはアクアの14枚目のシングル『変装合戦/七つ道具の歌』が発売された。『少年探偵団II』の主題歌である。
曲のクレジットは『変装合戦』は岡崎天音(マリ)作詞・大宮万葉(青葉)作曲、『七つ道具の歌』は琴沢幸穂作詞作曲である。
“七つ道具”というのは少年探偵団の子たちが持っている常備品で、作品によって微妙に異なるのだが『黄金の怪獣』と『鉄人Q』では次のようなものが挙げられている。
BDバッジ、万年筆型の懐中電灯、磁石、呼び子の笛、虫めがね、小型望遠鏡、手帳と鉛筆。
最後は「手帳と鉛筆」でセットである。初期の作品では万能ナイフが入っていたのだが、読者の子供たちが真似したら危険と判断されたのか、上記2作品では代わりにBDバッジが入っている。BDはboy detectivesである。
今回のテレビシリーズではこのようになっている。
BDフォン、小型LED懐中電灯、小型望遠鏡、非常ブザー、虫メガネ、消毒薬と絆創膏、非常食パック。
BDフォンはBDバッジに代わるスマホで、PINまたはノックコードでロック解除できて更にパスワードを入れてデジタル団員証を表示できることで本物の団員であることを確認出来る。地図ソフトも入っているので磁石を省略できる。メールで連絡を取り合えるので呼子笛も不要である。GPS発信機能もあり、拉致されたらそれで追跡できる。
この『七つ道具の歌』ではこのひとつひとつの効用を挙げていき、サビ部分では道具の名前を連呼している。小学生に受けそうな感じの歌である。私はこの歌を聞いていて、昔松原珠妃が書いた『アンティル』という歌を思い出していた。
[*
前p 0
目次 8
時間索引 #
次p]
夏の日の想い出・戯謔(3)