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■夏の日の想い出・戯謔(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2019-01-14
 
その日、長崎市の谷山家では、幼稚園・年長の小歌が
「そろそろ起きなさい。幼稚園行くんでしょ?」
という母の声に起きて、半分寝ぼけたまま取り敢えずトイレに行った。
 
それで便器に座り、おしっこをしたら、いつもの出方と違うのでギョッとする。見ると、***が無くなっている!代わりに***があって、その間からおしっこは出ているのである。
 
「また、おねえちゃん、ボクの***もっていったな!」
 
それで出した後ちゃんと紙で拭いて、パンツとズボンをあげ、手を洗ってトイレから出ると、もう御飯を食べて着換えも済ませ、パソコンで遊んでいた小空に言う。
 
「おねえちゃん、ボクの***かえしてよ」
「今日は1日貸しといてよ。これ面白いんだもん。伸び縮みするし、立っておしっこできるし。小歌はどうせ座ってしかおしっこしないんだから無くてもいいじゃん」
「ないとこまるよぉ」
「何に困るの?」
「えっと・・・・」
「じゃ無くてもいいよね。どうせならこのままずっと私が持ってようかな」
「ないのはいやだよぉ」
 
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谷山宏香は呆れて
「小空、あんたは女の子なんだから、***あってもしょうがないでしょ。ちゃんと小歌に返してやんなさい」
と注意する。
 
「じゃ今晩返すから今日1日我慢してよ」
「わかった。ちゃんとゆうがたかえしてよね」
 
それで姉弟の話はまとまったようであった!?
 

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小歌はごはんを食べてから着換えようとして、幼稚園の制服のズボンが無いことに気付く。
 
「あ、おねえちゃん、ボクのズボンはいてる」
「だって今日は***があるからズボン穿きたいもん。あんた***無いんだからスカート穿いてきなよ」
「え〜〜?」
「スカート穿いてけば、また女子トイレが使えるよ」
 
むろん小空は男子トイレを使う気満々である。
 
「じょしトイレなんて、はずかしいよぉ」
「でも好きなんでしょ。個室でできるから」
 
しかし母は言った。
 
「それ騒ぎになるから、小空はズボン、小歌はちゃんとスカート穿きなさい。小歌は男子トイレ使うの禁止」
 
「え?ボクがスカートなの?だんしトイレつかったらダメなの?」
 
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「間違った!小空がスカート、小歌がズボン。小空は男子トイレ禁止。小歌は女子トイレ禁止。小空、小歌に制服のズボン返しなさい」
「はーい」
と気の無い返事をして、小空は渋々ズボンを脱いで小歌に返した。
 
「でも小歌、スカートも好きなくせに」
などと小空は言っていた。
 
「お母さん、ちんちんって、取ったり、くっつけたりでくっと?そんなら、私も欲しかぁ」
 
とふたりの姉・多真恵(小2)が不思議そうにふたりのやりとりを見ている。
 
「このふたりんことは気にしてもしょんなかよ。ちんちんなんて付けても邪魔になるだけやけん、やめた方がよか」
と夏花美(小4)は言っていた。
 
「女だけの姉妹の一番下が男の子ってパターンはだいたい女装させられるもんと決まっとるね」
といちばん上の八千穂(小6)は言っているが、小空と小歌の日常はただの女装という範疇を超えている気はする。
 
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谷山家では醤油の瓶が空を飛んでポンと小空の手に納まっても、傘が勝手に空を飛んで学校まで行ったりしても、誰も驚かない。
 

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なお、細川貴司は自分の子供がこんな場所ですくすくと(?)育っていることを全く知らない。小歌は遺伝子上は京平の異母兄である(多分異母姉ではない)。
 
なお、2人の名前は小空:虚空、小歌:光太郎という語呂合わせになっている。
 
実際には「谷山光太郎」の名前は小空と小歌が共同で使用している。一種の共同ペンネームである。
 

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若葉が建てていたスーパー銭湯旅館《藍小浜》はユニット工法で10月末には竣工。営業の許可も取り、従業員も募集して12月頭から営業を開始した。ただし12/30-1/2は全てカウントダウン・ライブの客で予約済みである。
 
千里が建てていた体育館もやはりユニット工法で11月末に竣工した。こけら落としに千里の知り合いの男子バスケチーム、市川ドラゴンスvs行田トルネーズの試合が行われ、地元の人たちも見物に来ていたが、おそろしくハイレベルな試合だったようで、見学した地元の高校の先生が「まるでNBAの試合のようだった」と言っていた。私は実際には見ていないが、さすがにNBAというのは大袈裟ではないかと思う。
 

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1ヶ月に1作だけという制限の中で、私は8月に『檸檬爆弾』、9月に『アンダンテ』、10月に『Cat People』、11月に『愛の影』という作品を書き、『Cat People』は千里の勧めで次のアルバム用にリザーブすることにしたが、他の作品は紅石恵子名義でUDP(上島代替プロジェクト)に投入された。
 
12月に書いたのが『戯謔(ぎぎゃく)』という曲だった。
 
  戯謔詩
 
大河は粛々として流れ
水面は玻璃の如く光る
 
飛鳥の啼声は寂寞とし
彩雲は紅玉の如く美し
 
嗚呼、待ちし人は来ず
空虚に冷めし波旡の盃
 
楽人の哀しき風琴の音
会者定離の理を知らむ
 
  戯謔訳
 
川が静かに流れてるね
水面がきらきらと輝く
 
鳥が寂しい声で鳴いて
夕焼け雲が赤く染まる
 
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ああ、彼は来なかった
冷たいコーヒーカップ
 
生演奏の音は侘しくて
もう知らない!と思う
 
1番の歌詞は漢詩風、そして2番の歌詞はその現代語訳になっているという趣向である。私は1番の曲は C, F, G7 のみで構成し、2番の曲は Dm, Am など平行調の和音や9thコードまで使用している(11th, 13thは不使用)。
 
マリは「分からん」、和泉は「面白いけど使えん」と言ったものの、千里は「また少し回復してきている」と言い、この曲にはサビは無用だから間奏を入れようと言って、間奏を即興で書いてくれた。私がその間奏はわりと好みだというと「スコアにまとめるから1日ちょうだい」と言い、翌日にはバンドスコアに編曲したものを送って来てくれた。七星さんも「これは変わった曲だけどアルバムには使えますね」と言った。
 
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七星さんの意見も千里の意見も、いい曲なんだけど、マニアックすぎてシングル向きではないというのであった。
 

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「ここってドームより大きいじゃん。春休みかゴールデンウィークにここでアクアのライブやろうかな」
と唐突にコスモスは言った。
 
§§ミュージックのタレントが多数このカウントダウンに出演するので、建設が進む12月初旬にここを下見にきたコスモスは、この会場の巨大さに驚いたようである。
 
「アクアの場合、この規模の会場の観客をきちんとコントロールできるかが鍵だと思う」
と私は言った。
 
「まあ警備員が5000人くらい必要かな」
「ああ、必要かもね。それともしかしたら費用は掛かるけど、椅子を並べた方がいいかも」
「椅子は観客の移動を防止する効果があるよね?」
「もちろん。アクアのコンサートなんてほぼ全員立ちっぱなし、踊りっぱなしだろうから、座る意味はあまり無い」
 
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カウントダウンの場合は、前座まで含めると長時間になることもあり、何なら寝そべって観覧してくださいという趣旨でロープで区切ったブロック指定である。たぶん椅子の方がたくさん入る。
 
「椅子席にした場合どのくらい入る?」
とコスモスも訊く。
 
「4万平米だから、単純計算すると9万席近く設置できると思う。でもそれではアクアの場合制御困難になるから密度を下げて、まあ7万席くらいかな」
 
「アクアなら7万人集められるよね?この場所でも」
「当然。昼間やれば鉄道で観客が移動出来るから、カウントダウンみたいに交通手段や旅館の確保までする必要が無い。敦賀駅までピストン輸送すればいいよ」
 
「まあ京都・大阪で泊まる人が多いだろうけど、大都会だから充分収納できる」
「JR西日本と交渉すれば臨時列車も運行してくれると思うよ」
「その交渉はレコード会社にやってもらった方がいいよね?」
「うん。その方がいい。何とかミュージックという名刺で行っても、まともに話を聞いてもらえないし、かなりの保証金をデポジットする必要があると思う」
 
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12月31日。
 
今年はローズ+リリーもKARIONもいつもの東京パティオでの24時間カウントダウンには出場しない。桜野みちると、ローズ+リリー自身のカウントダウンを優先させてもらった。なおKARIONのメンバーの中で、和泉はアクアに付いて紅白歌合戦の方に行っている。今日は社長のコスモスがずっと桜野みちるに付いているので、§§ミュージックの多数のアーティストが出演するローズ+リリーのカウントダウンには副社長の川崎ゆりこがついていてくれる。
 
桜野みちるのラストライブは、お昼から行われた。私は§§グループのオーナーでもあるし、顔を出して、みちるに記念品としてセイコーのからくり時計をプレゼントした。時報とともに人形が出てきて踊るタイプである。
 
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この日のライブは11:40スタートで休憩2度を挟んで15:00頃までの3時間である。途中2回の休憩時間はゲストの演奏が入り、1回目のゲストタイムはゴールデンシックスと品川ありさ、2回目のゲストタイムは桜野レイアとアクアである(多分アクアの時間にトイレに行く人はほとんど居ない)。アクアの前に歌うのは一種の“ババ”なので、そこに2月デビュー予定のレイアを入れた。
 
なおこの日は“桜野レイア”とは紹介せず単に“近日デビュー予定のレイア”とだけ紹介して、みちるの妹であることは、わざわざ言わない。質問されたらスタッフは姉妹であることを話してよいことにしている。
 
桜野みちるのバックでダンスやコーラスを披露するのは、第1部と第3部では信濃町ガールズ、第2部では○○ミュージックスクールの生徒さんのピックアップメンバーである。私と○○プロ丸花社長の関係から出演を依頼した。普段なら信濃町ガールズのA班とB班で交替するのだが、今回は半分が小浜に行くのである。
 
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なお、このライブに婚約者の森原准太は来ていない。
 
今日までは「ファンのみんなの桜野みちる」であり、明日からは「1人の羽藤舞香」に戻る、ということで、みちる自身が准太に「出禁」を宣言したのである。
 

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私はライブのスタートを見てから小浜へ移動した。
 
今日の§§グループの歌手・スタッフは東京班と若狭班に分かれる。
 
■東京班
 責任者 秋風コスモス
 関東ドーム 桜野みちる(ラストライブ)
 NHKホール アクア・品川ありさ(紅白)
 サポート 紅川勘四郎・日野ソナタ・桜野レイア
 信濃町ガールズA班
 事務方:田所萬里愛・山村勾美・高村友香
 
■若狭班
 責任者 川崎ゆりこ
 単独歌唱 高崎ひろか・姫路スピカ・花咲ロンド・白鳥リズム
 集団歌唱 桜木ワルツ・山下ルンバ・西宮ネオン・今井葉月・原町カペラ・石川ポルカ
 信濃町ガールズB班
 サポート 唐本冬子・上野陸奥子
 事務方 沢村朋代・河合友里・緑川志穂
 
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若狭班の中で責任者の川崎ゆりこと上野陸奥子、事務方の3人、および山下ルンバと信濃町ガールズB班は12月30日中に小浜市に入り、ステージや控室の確認などをし、リハーサルにも付き合った。山下ルンバは信濃町ガールズのメンツにはお馴染みなので、今回は中学生たちの引率者である。
 
マリ、スターキッズ、追加演奏者たちの多く、それに風花・妃美貴・鱒渕水帆といったサマーガールズ出版のスタッフ、氷川たち★★レコードのスタッフも12月30日中に小浜入りしている。
 
リハーサルでは、ローズ+リリーの代役をスイート・ヴァニラズのCarolとMinieにお願いした。スイート・ヴァニラズはリーダーのEliseが2月3日まで産休中(立春から活動再開らしい)なので、実際の子守で多忙なLonda以外の3人が暇をもてあましており、リハーサル歌手をお願いした。顔にフェイスカラーを塗られて顔の填め込みの動作確認をされたCarolは面白がっていたし、ケイの代理でホログラフィ装置と並んで歌ったMinieは「SFの世界に入ったような不思議な感じだった」と言っていたらしい。
 
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なお一行は12/30は若葉の建てた旅館“旅館・藍小浜”に前泊している。
 

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