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■夏の日の想い出・戯謔(13)
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目次 8
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(C)Eriko Kawaguchi 2019-01-25
1月3日(木).
政子がお母さんと一緒にカウントダウン・ライブをした小浜から戻ってきた。
敦賀10:10(しらさぎ56)10:45米原10:57(ひかり516)13:10東京
それで政子が戻ってくるくらいの時刻を曖昧な集合時刻として、クロスロードの集まりをした。この日は集まれる範囲でということにしたのだが、こういうメンツが恵比寿の私のマンションにやってきた。
小夜子(最近暇をもてあまし気味)
小夜子の子供たち:みなみ(7) ともか(5) ほたる(3) えりか(1)
森高紘(あきらの妹)子供たちのお世話係として同行
青葉(お正月なので彪志の家に滞在中)
淳(性転換手術後4ヶ月弱)
若葉(暇とお金をもてあまし中)
若葉の子供たち:冬葉(4) 若竹(1) 政葉(3ヶ月)
紙屋美緒(千里と桃香の大学時代の友人)
紙屋清紀(美緒の法的な夫で事実上の妻)
美緒と清紀の子供:佳純(1)
この他にクロスロードとは関係無いのだが、タレントさんなどが挨拶に来るかもということで、風花・詩津紅・妃美貴に鱒渕さんも来てくれていたので、その4人と私、政子、政子のお母さんまで入れると22人(内子供8人)もマンションのLDKに集まっていた。
結構な人数になったが、小さな子供が多いので、どこかのお店で集まるよりは、こういう個人の家に集まった方がよいだろうということもあり、うちのマンションを会場にしたのである。
主な欠席者
和実(妊娠中:絶対安静)
胡桃(美容室が正月で多忙)
あきら(性転換手術から1ヶ月で療養中)
桃香(頼まれた原稿を書いているらしい)
千里(よく分からないが忙しそう)
ちなみに彪志君はクロスロードには加入していない。クロスロードの加入条件は「女湯に入れること」なので、彼は性転換しない限り加入困難である。
紙屋夫妻は2012年1月に伊豆で会合をした時に初出席して、その後、数回参加している(当時はまだ入籍前同棲中)。美緒は天然女性。清紀君は本人は「純粋なホモでトランスの傾向は無い」と主張しているものの、頻繁に女装させられており、実際問題として、女湯パスしてしまう!(雰囲気があまり男性っぽくないのでしばしば男湯脱衣場から追い出されるらしい。彼はオッパイが無いのに女湯で怪しまれたことは全く無いと言う)
もっとも彼は恋愛対象が男性なので、女湯で女性の裸を見ても何も感じない。むしろ男湯は精神的に耐えられないらしい。そういう人なら問題無いんじゃない?と和実が言って、彼はクロスロードに受け入れられている。
今回のメンツの中で唯一のちんちん保持者である!
「紘(ひろ)さんって、名前の区切り場所を間違えられません?」
「間違えられます。よく森・高紘(もり・たかひろ)と読まれて男性と思われるんですよ。それでママさん教室に申し込んで、男性の方はご遠慮頂きたいのですが、とか電話が掛かってきてました」
「ああ」
「『森高』は森高千里ちゃんとかいるのに」
「うちの父が1文字名前が好きだったんですよね。それで姉貴は晃(あきら)で私は紘(ひろ)で」
「でも最近、お姉さんは、ひらがなで『あきら』と書くことが多い」
「美容室のホームページの美容師一覧で、ひらがな書きになっているんですよね。私もひらがな書きで通そうかなあ」
「それもいいかもね」
「ちなみに私の旦那は森高・実(もりたか・みのる)なんですけど、森・高実(もり・たかみ)と読まれて女性と誤認されることあります」
「じゃ夫婦性別逆転認識ですね」
「そうなんですよ!だから夫婦で学校の行事に参加した時、旦那の名札が赤い名札で、私の名札が青い名札になってたことあります」
「あはは」
この日はうちのマンションに挨拶回りで、スリファーズ、ムーンサークル、Trine Bubble, ゴールデンシックス(のカノンとリノン+美空)、スターキッズ、バレンシア(のココア・ミルク・レモン・ゼリー)、三つ葉、透明姉妹、松元蘭などがやってきた。風花と鱒渕さんに居てもらって良かったと思った。
ちなみにカノンとリノン+美空、スターキッズの七星さんは結局そのまま居座ってしまった。
スリファーズなども元々クロスロードのメンツにカウントされているので2時間近く根を生やしてピザやおせちなどをつまんでいたが
「あ!東郷先生の所にも行かなきゃ」
と言って、慌てて退出して行った。三つ葉なども忙しいはずなのに1時間以上居た。
「紅石恵子ってケイ先生なんでしょ?」
「そうだよ。和泉から聞かなかった?」
「なんでケイの名前じゃないんですか?」
「実は作曲料が安い。ディスカウント版」
「そうだったのか!」
「今年はあまりに依頼が多いから断るために作曲料を100万円にしているから。でも紅石恵子は30万円で出しちゃう」
「へー」
「でも三つ葉なら印税で充分もらえるから作曲料安くても問題無い」
「わぉ」
三つ葉のCDなら5万枚は売れる。5万枚売れると印税だけでも200万円。更にカラオケやTV・有線などでの使用料まで考えれば、実は作曲料無しでも全く問題無い。しかし今年は作曲料ゼロではとても仕事を受けられない。
「紅石恵子は全部ケイさんの作品だけど、実は今年はケイの名前で出ている作品こそ、ケイさんの真筆が少ない」
とちょうど来ていた透明姉妹が言うので
「え〜〜〜!?」
と三つ葉の3人は驚いていた。
「でもヒットして良かったね!」
「あのヒットのお陰で、お給料あげてもらえるんですよ」
「それは良かった」
「お給料方式じゃなくて4月からはマージン方式にしないかと言われているんですけど、悩んじゃって」
「そうだね。三つ葉はそろそろマージン方式の方がいいかもね。お給料方式ならアップできる限度があるけど、マージン方式なら稼げば稼ぐだけもらえる。まあ事務所と折半くらいの所が多いけどね」
「事務所が4で私たちが6と言われました」
「その比率は良心的だと思う。事務所が9で本人は1なんて大手事務所もあるよ」
「うっそぉ!」
「7:3とか6:4くらいの所が多い。でも叩かれることの多いジャニーズとかは4:6らしいね。あそこは実は待遇いいんだよ」
「へー」
「でも仕事が無かったら収入ゼロですよね」
「当然。でもステラジオなんかも最初マージン方式に移行した頃は、食べて行けるか不安だったらしいけど、今では高額納税者になっているからね」
「わあ」
「というか、ケイたちも、最初の頃は前のマンションの家賃を払えるかどうか不安だったと言ってたよね」
と若葉が言う。
「そうそう。たまたまスリファーズに提供した曲がヒットして、それで何とかなったんだよ。でもアーティストはやはり給料方式でやっていては甘えが出るもん。そろそろ独り立ちできるような頑張ろう」
「実はここに来る前に、新島先生(雨宮派の統括者)の所と、金墨円香さん(三つ葉の番組の司会者)の所に寄ったんですが似たようなこと言われました」
と波歌(しれん)が言う。波歌は桃香の親戚らしい。
「やはり給料方式は基本的に雛鳥(ひなどり)が巣立つまでのモラトリアムだからね。そのあたり、毛利さん(毛利五郎:三つ葉のプロデューサーのはず)とかともよく話し合ってごらんよ。私個人の考え方だけど、アーティストは事務所に雇われて演奏をするのではなく、アーティストが主体で、事務所はあくまでその営業支援をする存在であるべきだと思うんだよね。日本の芸能事務所には、そういう認識のない所が多いけど」
「むしろ芸者の置屋みたいな感覚の所が多いよね」
と七星さんが言う。
「それ。ほんとに酷い所が多い」
「江戸時代だと、芸者が所属していてリクエストに応じて派遣する置屋、料理を提供する料理屋、場所を提供する待合茶屋、の“三業”が協力して花街は維持されていた。それが、芸能プロダクション、レコード会社、放送局や映画会社、という三業に置き換わっただけ」
「闇は深いなあ」
子供たちはだいたい政子のお母さんと、詩津紅・妃美貴の姉妹が見てくれていたのだが(風花と鱒渕さんはキッチンの隅で営業的な話をしていた)、あきら・小夜子の4人の娘たちの中で長女のみなみは小学1年生で、おとなたちの会話にも興味津々の様子であった。しばしばこちらのテーブルに載っているピザとかチキンを取りに来て、そのまま小夜子の膝の上に乗って大人たちの会話に聞き耳を立てていた。
「みなみちゃん、パパが女の人になっちゃったけど、どう思った?」
と政子が尋ねたものの
「パパはじめから女だったとおもうけど」
と彼女は言う。
「だっておっぱいあったし、おちんちんなかったよ」
「隠してたけど本当はあったのよ。それを取っちゃったのね」
「へー。でもパパにおちんちんとかあったらへんだから、とっていいとおもうよ」
「うん。確かにあきらさんにちんちんがあるのは変だ」
「私も長らくあの人のちんちん見てなかったのよね〜。手術前にタック外してきれいに洗って、舐めてあげたよ」
などと、あまり子供の教育にはよくないことを小夜子は言っている。
「私も冬のちんちん取る前に舐めてあげたな」
と政子は言っている。
「もっともあれが本物だったかどうかはかなり怪しい」
「桃香も千里の性転換手術の前夜舐めてあげたと言っていたけど、多分それも偽物で手術自体がフェイク」
などと美緒が言っている。
「実際千里が性転換手術を受けたと称しているのは2012年だけど、ボクは2009年に千里のヌードを見ているんだよ。完全に女の子の身体だったし、高校時代に性転換手術を受けたんだと本人も言っていた」
と清紀が言う。
「いや、千里は高校入学当初、まるで男の子みたいな格好してたけど、水泳の着換えの時に、お股がもろに見えて、間違いなく女の子であることが分かった。だからたぶん中学生のうちに性転換手術して女の子になっていたと思う」
とリノンが言っているが、カノンが苦笑している。
「やはりクロスロードの最初の会合をした時点で、あきらさん、淳さん以外は全員性転換済みだったんだよ」
と若葉は言っている。
「私は本当に2012年に性転換手術受けたんだけど」
と青葉が言うが
「却下」
と政子から言われている。
「せいてんかんって男の人が女の人になること?」
とみなみが訊く。
「そうそう。その逆もね」
「うちの学校のどうきゅう生の雪雄くんも男の子だったけど、女の子になったんだよ」
「へー!」
「みなみちゃん何年生だっけ?」
「1年生」
「1年生で性転換かぁ。うらやましい」
「ようちえんに入ってきたときはズボンはいてて男の子だったけど、トイレは女の子トイレつかってた。水あそびのときとか女の子水ぎをきてたよ。でも、おまたのところがふくれててみんな『ゆきちゃん、そのおまたへーん』といってた。雪ちゃんも、これじゃまだからとりたいんだよねとゆってた。でもなつ休みのあとからはスカートはいて出てきて、水あそびで水ぎになってもおまたはふつうの女の子とおなじでふくらみはなくなってたの。『雪ちゃん、おまたどうしたの?』ってきいたら『びょういんにいっておちんちんとってもらって女の子にしてもらった』とゆってた。名まえも雪子にかえたんだよ」
「幼稚園で性転換したのか!」
「いや小学校入学前に手術するのが理想的」
「でもよく手術してもらえたなあ」
「半陰陽ということにして手術したのかも」
「それは昔からある」
「冬もそういう名目で手術したんでしょ?」
「えーっと」
今日は子連れも多いし、和実と政子が妊娠中で、千里も代理母さんが妊娠中である。そんな話をしていたら、
「え?千里、代理母さんに妊娠してもらってるの?」
とそれを知らなかった美緒が言う。
「多分数日中に生まれると思う」
などと言っていた時、桃香から代理母さんが産気づいたから仙台に向かうという連絡が入った。
「千里そちらに行ってないよね?」
「来てないけど」
「だったら会社かなあ。ちょっと会社の電話に掛けてみる。携帯鳴らしても出ないんだよ」
ということで桃香は電話を切って、会社(?)に掛けたようである。
「千里、どこか会社に勤めてるんだっけ?」
「さあ。聞いてない」
「バスケットと作曲とやってて忙しい千里が会社に勤められる訳が無いと思う」
とカノンが言っている。
ここにいるメンツは“千里”が名古屋から戻ってきた後、Jソフトに復帰したことを誰も知らなかった(私も知らなかった)。青葉だけが何か考えているようであった(青葉もJソフト復帰の話は聞いていなかったようだ)。
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夏の日の想い出・戯謔(13)