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■夏の日の想い出・戯謔(11)
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「私、小浜と聞いた時に、てっきり長崎のほうかと思っちゃった」
と言っているのは福岡在住の明奈である。
「そのあたり紛らわしいよね。福井県小浜市と長崎県の小浜温泉、滋賀県草津市と群馬県の草津温泉、長崎県の川棚町と山口県の川棚温泉、山口県の小郡と福岡県の小郡、佐賀県の陶磁器の里の有田と和歌山県のみかんの里の有田、横浜市の金沢文庫の金沢と北陸の金沢市、沖縄県の宮古島と岩手県の宮古市」
「草津温泉が滋賀県にあると思い込んでいる人は結構いる」
「金沢文庫が石川県にあると思い込んでいる人もいる」
「有田みかんって佐賀県で作られていると思い込んでいる人もいる」
「辻真先の推理小説で、その小郡と川棚のコンボで場所を誤認させるトリックが使われたことある」
「あれは九州山口の人には速攻でバレてしまうトリック」
「今は新山口と名前が変わってしまったけど、昔は福岡市にいると、JR小郡行きは東に向かい、西鉄小郡行きは南に向かっていたんだよ」
「大阪に到着した外国人観光客が山笠を見ようと思って福岡行きの切符を買ったら、なぜか着いた所は北陸の地」
「それで予定を変えて讃岐うどんを食べて帰ろうと思い高松までの切符を買うとなぜか能登半島に行ってしまう、と」
「JRの福岡駅は富山県福岡町だからね。山笠見に行くなら博多駅までの切符を買わなければいけない。そして高松駅は四国だけじゃなくて能登半島にもある」
「カーナビでさいたま市に行こうと思って大宮ICを目的地に設定すると、なぜか到着するのは千葉市」
「字が同じだけど読み方が違うのもある。大阪の空港がある八尾(やお)と富山の風の盆の八尾(やつお)とか、東京の三田(みた)と兵庫の三田(さんだ)、京都の桂川(かつらがわ)と福岡の桂川(けいせん)」
「同じではないけど紛らわしい所もあるよね」
「北海道と水海道、宮城県の白石市(しろいしし)と千葉県の白井市(しろいし)、大阪府大阪市と大府(おおぶ)市、秋田県の男鹿(おが)半島と宮城県の牡鹿(おじか)半島、長野県の大町と長崎県の大村」
「長野県大町市と長崎県大村市って、県名も似ているから紛らわしい」
「昔青森県の大湊に送るべき除雪車を間違って大村市に送っちゃった会社があった」
「さすがに長崎県では除雪車は要らないな」
「私、千里浜(ちりはま)と言うつもりで久里浜(くりはま)と言っちゃったことある」
と言っているのは金沢市在住の千鳥である。
「久里浜は神奈川県で九十九里浜は千葉県」
「それも紛らわしい」
「千里浜(ちりはま)と言ったら、千里浜なぎさドライブウェイだよね」
「そうそう。日本でただ1ヶ所普通の車で砂浜を走れる道」
「あそこ地図見て行ったら道路とか何も無いから、どこ?と思ったことある」
「普通は4WDのSUVとかでないと、砂浜を走ると簡単にスタックする。でも千里浜なぎさドライブウェイの場合は砂が物凄く硬いから、ごく普通の車で舗装道路と同じように走れるんだよね」
そんな会話を聞いていた時、唐突に私は昔蔵田さんに連れられて、千里浜なぎさドライブウェイを走った時のことを思い出した。まだ中学生だったのに運転させられたよなあ、などと思い起こす。
そしてその時、突然その千里浜なぎさドライブウェイに夕日が沈んでいく様が脳裏に浮かんできた。
あれ?私あそこで夕日見たことあったっけ?などと考えていた時、千里がさっと五線譜とボールペンが入った、ファスナー付きクリアポーチを渡した。
「ありがとう」
と言って受け取ると、私は今脳裏に浮かんだ情景を五線紙にメロディーと歌詞の同時進行で書き込んでいった。
私のイマジネーションの中で太陽はぐいぐい水面に近づき、やがて沈んで行く。その沈んでしまう直前にキラリと光ったのがダイヤモンドのように美しいと思った。
10分ほど、私の周囲の人たちは会話をとめて静かに私の作業を見守ってくれた。
1月1日の早朝。私は悪夢のような夢を見て目を覚ました。
凄くストレスの掛かる夢だったので、私はその印象をノートに書き綴った。そして、1時間ほどでメロディーも付けて歌の形にまとめた。
今月2作目だけど、いいよね?と思う。
(※以下、閲覧注意なので、見たくない人は少し先までスクロールして下さい。これは実際には私が大学生時代に書いた詩です)
異端修道士の洞窟
汽車を降りた近くの道に
ちっぽけな洞穴(ほらあな)があったよ
そこにたたずむ年老いたシスター
静かに祈りを献げていた
むかし洞窟の奥には、ちっぽけな教会があったよ
牧師と二人のシスター、きれいなのとそうじゃないの
子供たちに囲まれて、神様の話をきかせる
村はいつも静かで平和だった
シスターは語る。小さな声で。
過ぎた日の、悲しみを。
ある時牧師は突然破門された
若者が五人で異端牧師を殺しに行く
2人までは殺したが、きれいなシスターを殺せない
代りに大将を撃ち殺し、シスターは抱いてやった
シスターは語る。震える声で。帰らぬ日の悲しみを
クロスを胸に、涙を瞳に、跪いて祈りささげる
むかし洞窟の奥には、ちっぽけな教会があったよ
牧師と2人のシスター、きれいなのとそうじゃないの
子供たちに囲まれて、神様の話をきかせる
村はいつも静かで平和だった
村のはずれの小さな道端に
ちっぽけな洞穴(ほらあな)があったよ
ただすむシスターに別れをつげて
私は再び汽車に乗ってゆく
名前も知らぬ小さな村の
秘めた悲しみ胸において
去り行く旅人の
瞳に小さな涙一つ
※この付近までスクロール
「修理は終わったね」
と千里はこの歌の譜面を見て言った。私たちは早朝Muse-3施設を出て敦賀に向かうバスの中だった。
「千里の嫌いなテンションコードをたくさん使っているけど」
「いや、この歌にはあっていい。これをむしろシンプルなコードだけで書いてはいけないと思う。ある意味、私には絶対書けない曲だよ」
「でも、私まだまともな曲が書ける気しない」
「修復は終わったけど、始動できない状態だと思う」
「・・・それは分かる気がする」
「壊れた発電機を形の上で修復しても、スイッチを入れないと発電は始まらない。冬がこれからしなければならないのは、そのスイッチを入れることだよ」
と千里は言った。
「どうすればスイッチが入るだろう?」
「うーん。。。私にも分からないけど、これは少し時間が掛かるかもね」
「やはりもう少し時間を掛けなきゃだめかぁ」
「どん底は越えたと思うから、この後も月に1曲くらいのペースで何か書くようにしていきなよ。たぶん半年くらいの内にはスイッチが見つかると思うよ」
「半年かぁ・・・」
と言ってから私は千里に言った。
「Trine Bubbleに渡す曲を頼まれていたんだけど、昨夜打ち上げの場で書いた曲が彼女たちにはいいと思うんだよ。千里、千里浜なぎさドライブウェイ走ったことある?」
「2回走ったよ」
「だったら、その時のイメージを参考に、昨夜私が書いた曲を添削してくれない?」
「いいよ。一週間ちょうだい」
「うん。お願い」
それで私は彼女に『ダイヤモンド千里浜』の譜面を渡した。
その日は5:20にMuse-3施設の地下入口のところに、私、川崎ゆりこ、§§ミュージックの子たち(信濃町ガールズB班の子たちを含む)が時間厳守で集合した。それでチャーターしているバスで敦賀駅に向かうが、千里も「乗せて」と言って一緒に行った。北陸本線の始発に乗り込む。
敦賀6:22(しらさぎ52)6:56米原7:18(こだま691)7:38京都7:43(のぞみ97)10:27博多
米原は、私ひとりなら走って走って6:59の《ひかり491》に間に合うのだが(米原駅の新幹線と在来線の乗り換えはかなり距離があるが走れば2分で可能)、多人数を引率しているので無理である。それで次のこだまに乗る。京都駅での乗り換えは5分しか無いが、14番線に着いて向かい側の13番線に入ってくる列車に乗ればいいので全く問題無い。
(ちなみに京都駅で私は北陸本線から新幹線に1分で乗り換えたことがある)
一行の中で沢村マネージャーだけは京都で乗り換えずにそのままこだまで大阪まで行き、1月2日京阪ドームでのアクア公演の準備に入った。1月3日の愛知公演の準備は小野市花が行っている。この2人は新年会欠席である。
また、千里も沢村さんと一緒に、こだまでそのまま大阪に行ったようである。恐らく細川さんとデートするのだろう。
のぞみに乗った私たちは、博多駅からレンタルしたバスで博多ドームそばのSホテルに入り、昨日の内に福岡に入っていたメンバー(桜野みちる・紅川会長・日野ソナタ・信濃町ガールズA班)と合流する。
昨日東京で泊まったグループ(品川ありさ・秋風コスモス・絹川和泉)は下記の連絡で博多入りした。
羽田空港8:20(ANA243.B777-200)10:20福岡空港
羽田空港まではタクシー、福岡空港からは月原美架マネージャーが運転するベンツ(山村勾美の友人所有の車)でSホテルまで移動している。実際には飛行機の到着が少し遅れたので、東京組が到着したのは私たちが着いた少し後であった。
なお月原は福岡公演準備のため12月29日に福岡入りして、地元のイベンターやレコード会社担当者などと作業を進めていた。彼女は今日のライブが終わったらすぐに北海道に飛んで1月5日の札幌公演の準備作業に入る。
なお、桜野レイアとアクアも私たちがSホテルに入ったとき既に来ていたが、いつ到着したかは話すと、迷惑の掛かる人があるので秘密にしてくださいと2人と一緒に行動していた山村マネージャーが言っていた。
実際には東京で紅白に出たのがアクアN、福岡に居るのはアクアM、そして小浜で出演したのはアクアFで、アクア自身は全く移動していない!
(小浜に居たアクアFがそのまま大阪に移動して1月2日の京阪ドームのライブで歌う予定である)
11時過ぎから新年会を始めた。§§ミュージック関係者のみのパーティーであるが、未成年の子たちの親も(交通費・宿泊費事務所持ちで)参加しているので、物凄い人数がいた。アクアの両親、田代夫妻も来ている。
紅川会長が音頭を取って、お屠蘇代わりのサイダーで乾杯し、お雑煮が配られるので「餅が硬くならない内に食べてください」と案内した上で、紅川さん、私、コスモスが新年の挨拶をした。
紅川会長からは、あらためてオーナー交替について説明があった。紅川さんは株主ではなくなったものの、引き続き会長を務めてもらうことを私から説明した。(§§ホールディングの株式は紅川さんが100%所有していたので、現在は私が100%所有している。§§ミュージックは§§ホールディングの100%子会社である)
現在§§プロに所属(A契約)または所属はしていないものの事務管理(BC契約)になっている(研修生・練習生以外の)タレント・ミュージシャンは4月1日付けで∞∞プロ“内”の《§§プロ》という“部門”に移籍され、そちらは日野ソナタと田所萬里愛が統括することになる。
A契約:立川ピアノ・大宮どれみ・満月さやか・明智ヒバリ
B契約:上野陸奥子・日野ソナタ(霧島鮎子)・秋風メロディー(上野美由貴)
C契約:新宿信濃子・春風アルト・冬風オペラ・浦和ミドリ・桜野みちる・海浜ひまわり・神田ひとみ
(事務所とトラブルがあった夏風ロビン・千葉りいな、短期間で活動停止したスーザンと藤沢ナインは完全に切れていて事務取り扱いもしない。ナインはデビュー直前に、実は女の子ではないことが発覚してデビュー中止になった子である)
なお、§§ミュージックの取締役は、紅川勘四郎会長・秋風コスモス社長・川崎ゆりこ副社長であったが、私もオーナーということで副会長を拝命している。
私はUTP専務(社長は須藤美智子、副社長は大宮伸幸)、サマーガールズ出版専務(社長は政子)、★★情報サービス副会長(会長は千里:上島先生が退きその株式を引き受けたので交代)、AI-Muse専務(社長は丸山アイ・副社長は若葉)、§§ミュージック副会長と、やたらと“サブ”的な肩書きが多い。
アクアのライブがあるので、新年会は12時に終了。多くが博多ドームに移動する。未成年の子たちの保護者には、ドームの席をリザーブしていたので、そちらでアクアのライブを観覧したようである。
私などはライブ終了まで楽屋で待機していて、田所さんや月原さんなどと話していた。紅川さんはどこか用事があるというので出かけていたが、後で聞いたのでは福岡在住の、明智ヒバリのお母さんと会っていたようである。なお明智ヒバリのお祖母さんは、ノロになったヒバリをサポートするため沖縄に移動している。お祖母さんは久高島出身で貴重なイザイホーの経験者である。
そういう訳で現在、木ノ下大吉先生の家には、ヒバリと祖母、上島先生夫妻の4人も居候している状態のようである。更には木ノ下先生が窓口になっている松本花子システムの管理のため、内瀬さんという女性(?)も毎日通勤してきていて、しばしば泊まり込みになるので、かなり賑やかな状態になっているらしい。
内瀬さんというのは私も1度東京に出てきた時に会ったが、女性にしか見えないものの本人は「性別は追及しないで」と言っている。そんなことを言わなければ誰も性別に疑問を抱かないと思うのだが!?彼女(彼?)は有名音楽家の娘(息子?)らしいのだが、父親(母親?)についても追及しないでと言っていた。
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