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■夏の日の想い出・戯謔(10)

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10組の歌手が歌っていく。桜野みちるは明後日の紅白には出場しない(明日のラスト・コンサートが最後の歌唱というポリシー)ので、テレビで彼女の歌唱が見られるのはこの番組が最後である。歌い終わった時、涙を目に浮かべて深くお辞儀をしたが、そこに松浦紗雪と松原珠妃が一緒に花束を持って行って渡した。みちるは驚いて完璧に泣きながら花束を受け取った。その時、珠妃がみちるに何か言ったようであった。その言葉は、後日、珠妃自身がツイッターに書いていた。
 
「結婚して子供でもできて少し落ち着いたら、音楽の世界に戻っておいで」
と言ったらしい。
 
確かに彼女の歌唱力はこれで引退してしまうには惜しい。そしてきっと彼女は結婚しても練習を続けるだろう。
 
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ローズ+リリーだが、マリは欠席予定だったのだが、一応会場には来た。しかしかなりお腹も大きいし、何かあってはいけないということでこの日は私ひとりで歌わせてもらうことを主宰者側には了承してもらっている。実際司会の人もそのようにアナウンスしてくれた。カメラを向けられたマリは大きなお腹を抱えたまま、笑顔で手を振っていた。
 

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10組の歌唱が終わった後、様々な賞の発表があり、また今回は60回記念ということで、過去の大賞受賞作品も多数放映された。しかし去年のRC大賞受賞曲もその前の受賞曲も全く聞いたことのない曲だ!
 
やがて放送も終わりに近づく。司会者がおもむろに紙を開く。
 
「第60回RC大賞は」
と言って言葉を切った上で、彼は発表した。
 
「カラー・ボックス『ノックノック』」
という発表に会場全体から歓声があがる。
 
なんか久しぶりに私が知ってる曲が受賞した!!
 
私や珠妃なども含めて、他の受賞者たちがカラー・ボックスのメンバーに握手を求める。多数の拍手の中、彼らは今年大ブームになった『ノックノック』を歌った。
 
そして興奮したムードの中、今年のRC大賞の放送は終了した。
 
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放送が終わった後、松元蘭が最初にマネージャーさんと一緒にこちらに来て挨拶した。
 
「ケイ先生のお陰で新人賞も頂けましたし、私もっともっと頑張りますからよろしくお願いします」
「うん。頑張ったね。七星さんにも伝えておくから」
「はい、よろしく」
 

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続いてTrine Bubbleが事務所社長の児島さんと一緒に来る。
 
「マリ先生、ケイ先生ありがとうございます。素敵な曲を頂いたのでこんな大きな賞の授賞式に出ることが出来ました」
「まあこれがスタートラインだから、これからも頑張ってね」
「はい!」
と3人は同時に笑顔で返事した。息は合っているようである。
 
「それでマリ先生、ケイ先生、ご相談なのですが、年明けてからまたあらためてお願いに参りますが、この子たちに次の曲も書いて頂けないかと」
と児島さんが言う。
 
うーん。今私曲が書けないんだけど、と思ったが、マリは
「いいよ」
と返事した。あはは。まあ何とかなるかな、と私は内心冷や汗を掻きながら笑顔を見せていた。
 
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あとでマリや風花から話を聞くとTrine Bubbleはデビュー曲は青島リンナから提供を受けたものの、全く売れなかったらしい。それでリンナが「申し訳無い」と言い、やはり妊娠中はあまりいいのが書けないのかも知れないと言い、それで私を紹介してくれたらしい。それはまだ政子の妊娠が発覚する前だった。
 
向こうは楽曲をもらった直後にマリの妊娠報道があり、頭を抱えたかも知れないが、もらった曲を出さないわけにもいかないので松本花子ブランドの曲『恋は大回り』とカップリングで出したら大ヒットになり嬉しい悲鳴をあげたようである。
 
この曲のヒットで八高線の乗車率、特に東京近郊区間で唯一非電化区間である八高北線(高麗川−倉賀野)は乗車率がこれまでの5倍になって地元の人が困るくらいになったらしい。
 
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そういう社会的なブームまで引き起こしていたなんて、全く知らなかった!
 
なお、私たちはこの日、松原珠妃から一緒に食事しない?と誘われたものの、妊婦があまり動き回ってはいけないからと言って遠慮して私たちは帰宅させてもらった。この日は早めに寝せて、翌12月30日朝、鱒渕さんと一緒に新幹線で小浜に向かわせた。
 

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さて、小浜市でのカウントダウン・ライブを終えた後の、打ち上げに参加したのはこういうメンツだった。
 
●乾杯だけで帰した人・帰った人
マリ、詩津紅、谷口翼、★★レコードの秩父、UTPの江口マル、§§の沢村・河合・緑川、19歳学年の西宮ネオン、花咲ロンド。山下ルンバ、桜木ワルツ、上野陸奥子、ヴァイオリン奏者の女性5人、○○プロから来ている人で小森以外、★★クリエイティブの人で山岸以外
 
●1時間ほどおしゃべりした人
私、七星、千里、風花、川崎ゆりこ、高崎ひろか(未成年で唯一残った)、若山一門6人、田中世梨奈、上野美津穂、生方芳雄、山岸欣一(★★クリエイティブ)
 
高崎ひろかは本来なら同学年の西宮ネオン・花咲ロンドと同様、乾杯だけで帰すべきだが、§§ミュージックの看板歌手のひとりなので「あんたはしばらく居なさい」と言って、川崎ゆりこが残るよう言った。
 
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§§ミュージックのアクア・プロジェクト以外の売上げでは、品川ありさと高崎ひろかで合わせて6割を稼いでいる(桜野みちるは§§ミュージックではなく§§プロ)
 
●2時まで居た人
妃美貴(幹事)、鱒渕(サマーガールズ出版)、氷川(★★レコード)、甲斐窓香(UTP)
 
●朝まで飲んでいた人!
加藤銀河、七星以外のスターキッズ&フレンズ、鮎川ゆま、小森雅洋(○○プロ:幹事代行)
 
●5時半に様子を見に来た人
詩津紅・秩父
 
ちなみに下記の高校生以下のメンバーは先に寝ていたか、あるいは終わった所ですぐ寝せたので、乾杯にも参加していない。
 
信濃町ガールズB班(中学生)、白鳥リズム(中2)、石川ポルカ(中3)、今井葉月(高1)、原町カペラ(高1)、姫路スピカ(高3)、
 
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そういう訳で乾杯をしてから約半数が離脱した後、残っていたのはこういうメンツである。
 
私、妃美貴、風花、鱒渕、氷川、千里、川崎ゆりこ、高崎ひろか、若山一門6人、田中世梨奈、上野美津穂、生方芳雄、山岸欣一、スターキッズ&フレンズ、鮎川ゆま、加藤銀河、甲斐窓香、小森雅洋
 
「田中さん、上野さんはもう就活してるの?」
「まだでーす。5月くらいから動き出さないといけないかなと思っているんですが」
「青葉はもう去年の夏くらいからやってますね。アナウンサーって戦線が無茶苦茶早いみたいです」
「東京と大阪のキー局・準キー局は全滅と言っていたね」
「名古屋はまだ結果出ていないけど、厳しいかもと言ってた」
「名古屋にも落ちていたら、もう札幌とか福岡には参戦しないで金沢か富山を目指すという話でしたよ」
 
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「でもあの子、金沢のテレビ局に出てるんじゃないの?」
「そうですけど、出演者とアナウンサーでは基準が違うから」
 
「高崎ひろかちゃんは、大学には行ってるんだっけ?」
「行ってないです。とてもそんなの行く時間無いです」
「同じ学年の西宮ネオンと花咲ロンドは行ってますけど、この子とは仕事の量がまるで違うから」
と川崎ゆりこが言っている。
 
「スケジュール表の空きが週に1回くらいしか無いんですよ。もっともアクアのスケジュール表とか見たら恐ろしいですけどね」
「まあ、あの子は仕方ない」
 
「だったらアクアちゃん、高校にもまともに行けないのでは?」
 
「それがアクアは契約で高校在学中は学業絶対優先なんです。だからよほどのことがない限り、授業を最後まで受けてからお仕事に行きます。もっとも彼はいわゆる“光GENJI通達”の対象なので、深夜労働の縛りがないから、深夜までお仕事してますけどね」
とひろか。
 
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「私時々身体辛くない?と訊くけど、ボク丈夫なのが取り柄ですから、と言ってますね。小学生時代、大病と闘っていた子とは思えない元気さです」
とゆりこ。
 
「物凄いハードスケジュールでお仕事してるのに、疲れているような顔見たことないって、彼と同級生の松梨詩恩が感心していますよ。詩恩は学業優先みたいな契約無いから授業中でもどんどん呼び出される」
 
と高崎ひろかが言うので
 
「ひろかちゃん、松梨詩恩ちゃんと知り合い?」
などと訊かれる。
 
「え、えっと・・・」
とひろかが悩んでいるが、千里がバラしてしまう。
 
「高崎ひろかちゃんと、松梨詩恩ちゃんは姉妹だよ」
 
「え〜〜〜!?」
「知らなかった!」
 
というのでここにいたメンツのほとんどが知らなかったようである。
 
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「あれ?でも苗字が違わない?」
 
高崎ひろかの本名は柴田邦江、松梨詩恩の本名は天羽飛鳥である。
 
「うちの両親が離婚して、私は父の元に、詩恩は母の元に引き取られたんです。だから苗字が違うんですよ」
「そうだったのか!」
 
「あの子は都内の実家に住んでいて、私は高校時代は研修所に住んでいたんですが、よく外出許可取って、母んちに泊まってました」
 
「お父さんは北海道に住んでいたから、ひろかちゃんはタレントになって東京に出てきて、結果的にお母さんと近くなって嬉しかったのでは」
「えへへ」
 
「きょうだいはその2人?」
「父が再婚して、子供が生まれたからその子まで入れて3人姉妹です」
「その子は妹さん?弟さん?」
「多分弟じゃないかなぁ」
「性別が曖昧なの?」
「あの子、父親似で、詩恩も父親似だから、男女なのに顔がそっくりなんですよ」
「へー!」
 
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「だから『カントリーロード』に『シンデレラ・エクスプレス』の映画を撮った時は2度とも北海道から呼ばれて詩恩の衣装付けて、かなりスタンドインとボディダブルまでやらされていました」
 
「ほほぉ」
 
「女の服とか嫌だよぉとか言いながら、やってましたけど、あれはかなりハマったんじゃないかなあ。特に2度目は」
「おお、それはぜひ女装の味をしめさせよう」
 
「女の衣装付けてると、ほんとに詩恩そっくりだから、双子だったんだっけ?とかも言われていたし、取り敢えずトイレは女子トイレ使うように言われて恥ずかしがっていたし」
「そりゃ詩恩ちゃんが男子トイレに居たらみんな仰天する」
 
「あまり男っぽくならないように去勢したいなら病院紹介するよと言われて、それだけは勘弁してと言ってました」
「でも詩恩ちゃんに似てるなら凄い美少年じゃん。男っぽくなっちゃうのはもったいない」
「取り敢えず女物の下着を送りつけておきました」
「あはは」
 
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「何歳?」
「小学6年生なんです。だからちょうど背丈も詩恩と同じくらいなんですよね。それにまだ声変わり来てないし」
「おお、それはぜひ声変わり前に去勢を」
 

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