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■春枝(11)

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怜は家族と相談するといってその日はいったん帰宅し、パートナーであるサトミとよくよく話し合った。それで結局怜は「肉体的には女だけど精神的には男」という線でこのあとやっていこうと決めた。
 
病院で診断書を書いてもらい、それにもとづいて戸籍上の性別を女に変更し、サトミと婚姻届を出すことにした。
 
実際問題としてサトミは常時女装で生活していて、ヒゲなどはレーザー脱毛し、喉仏は削り、バストもシリコンを入れて大きくしているので外見上女にしか見えないものの、女性ホルモンは摂取しておらず去勢もしていないので、実は男性機能を完全に維持している。ちんちんがあって、おっぱいもあるので、温泉などでは男湯にも女湯にも入れない。
 
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女性ホルモンについては本人に訊いてみたことはあるのだが「実は飲むのが怖い」というので「無理に飲む必要はないと思うよ。サトミはおっぱいあるんだから、飲まなくても問題ないよ」と言ってあげている。
 
そういう訳で本人が「その内性転換したい」とは言うものの、去勢さえもしないというのは結局性転換するつもりはないのではと怜は思っていた。結果的に2人は永久に婚姻することができない。しかしここでもし怜が性別を女に変更した場合、婚姻が可能になるのである。
 
ふたりはそうやって籍を入れようと話し合った。
 

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それで怜は次に病院に行った時、先生に性別を女に変更して生きて行きたいと申告した。それで医師は、この人は半陰陽で、生まれた時は陰茎があるように見えたので男子として出生届が出されたものの、実はそれは肥大化した陰核であったと思われること。現在は本来の女性の形に身体が発達しており、月経も来ているし、陰茎のように見えていた物も自然消滅して、股間の形は完全に女性型であるといった診断書を書いてくれた。
 
これを持って家庭裁判所に性別の“訂正”を申告すれば戸籍上の性別は変更されますよということであった。
 
それで怜は病院を出て自宅に戻り、今後の計画についてサトミと再確認をした。
 
ふたりはあくまで「怜が夫で智美が妻である」が、戸籍上は「怜が妻で智美が夫」になる。性生活では、各々の形態通り「怜が女役・智美が男役」をする。
 
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「まあどちらが夫でどちらが妻かなんて便宜上のものだよね」
「もしサトミが将来性転換した場合はレスビアンになるということで」
「それも楽しそうだけどね〜」
 
「学校はどうするの?」
「女の身体に変化してしまったことを校長に言うつもり。性転換手術したのなら、難癖つけて辞めさせられるかもしれないけど、半陰陽なら許してくれると思う」
「それで女教師になる?」
「まあ仕方ないね。男教師を装うのは無理だと思う」
「だろうね」
 

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家庭裁判所に提出する書類を書き、提出しに行って来ようと言ってふたりは一緒にアパートを出た。
 
そして金沢まで出て、家庭裁判所(金沢城址の近くにある)に近い駐車場に車を駐め、一緒に歩いていたら、
 
「こんにちは」
と声を掛ける人がいる。
 
「あれ?あなたは?」
 
「先日、イオン河北でお会いしましたね」
と千里は笑顔で怜に言った。
 
「どうもその節は」
 
「ちょっとお話したいことがあるのですが、どこかに入りませんか?」
「済みません。今ちょっと裁判所に行こうとしていたので、その後でいいですか?」
 
「ああ。裁判所ですか。その前にお話したいのですが」
 
怜とサトミは顔を見合わせた。
 

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それで結局、3人は近くの駐車場に駐めている怜のエスティマの中で話すことにした。怜がエスティマを使っているのは、部活で生徒たちを送迎することがあるから、できるだけ多人数乗る車が欲しかったためである。怜は新しい学校でも合唱部の顧問をしている。
 
「あなたこないだ会った人と似ているけど違う方ということは?」
「よく分かりましたね。実は双子の妹なんですよ」
「そうでしたか!いや、髪の長さが違う気がして」
 
「あの後、お体に何か変化がありませんでしたか?」
と千里は尋ねた。
 
「どうしてそれを?」
「性別が変わってしまったとかは?」
「なぜご存知なんです?」
 
「詳しいことは説明できないのですが、依田さんは、このまま女性として生きていかれるおつもりですか?」
 
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「それは迷ったのですが、こういう身体になってしまった以上、男を装い続けるのは無理なので、女性に移行しようかと思い、家庭裁判所に性別の訂正を申し立てるつもりだったのですが」
 
「男に戻れたら戻りたいですか?」
と千里は訊いた。
 
怜はたっぷり30秒くらい考えてから答えた。
 
「戻りたいです」
 
そばでサトミも頷いていた。彼が本当は女になどなりたくないのは充分分かっている。
 
「だったら戻してあけますよ」
「どうやって?」
「これから先のことは詮索しないと約束してもらえませんか?」
 
ふたりは顔を見合わせてから答えた。
「約束します。何も詮索しません」
 
「でしたら私の服の中に手を入れて左側の第10肋骨に触って下さい」
と千里は言った。
 
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「第10肋骨って、前にある肋骨の中でいちばん下のですよね?」
と怜が尋ねる。
 
こういうのが分かっているのは、さすが学校の先生である。
 
「それです」
「でも女性の服の中に手を入れるのは・・・」
「今はあなたも女性だから、女同士ということで」
「確かに」
 
それで怜は千里の服の中に右手を入れても左の第十肋骨を手探りで見付け、そこにしっかり触る。
 
「では男に戻します。女の身体でなくなってもいいですか?」
「いいです」
「ちんちん生えちゃうけどいいですか?」
「生えて欲しいです!」
 
それで千里は両手で印を結んだ。
 
「あ・・・身体が」
 
「少し気持ち悪いかも知れないけど我慢して。絶対に手を放さないように。男でも女でもない中途半端な状態になっちゃって、その後は修復のしようがないですから」
 
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「分かりました。頑張ります」
 

それで15分ほどで変化は完了した。
 
「終わりました。もう手を放してもいいですよ」
 
それで怜はおそるおそる自分のお股に触った。
 
「ちんちん戻ってる!」
「良かったね」
とサトミも微笑んで言っている。
 
しかし怜は急に思い出したように言った。
 
「実は元の男の身体だった時、腎臓に小さな腫瘍ができていたんです。それが女の身体に変化した時には消えていたんですよ。男の身体に戻ったら腫瘍も復活していないでしょうか?」
 
「この***の法というのは、性転換しちゃうのは副作用なんですよ」
「副作用?」
「本作用は若返りなんです。依田さん何歳でしたっけ?」
「40歳です」
「でしたらだいたい1割若返るので、女性に変化した時36歳相当に戻ったはずです。そのため、最近できた腫瘍は消えちゃったんでしょうね」
「そういうことだったのか」
 
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「再度***の法を適用して男に戻ったので、再度年齢は1割若返って、現在32歳相当になっているはずです」
「凄い」
「だから8年戻ったので腫瘍なんてきれいに無くなっています」
 
「だったら8年後には腫瘍ができる?」
 
「それはそのようなことが起きないように、腎臓に負担を掛けない食生活とかをしていればいいと思いますよ。未来というのは、多数の選択肢の枝の中から私たちが自分で自分の望む未来を選んで行っているんですよ。分岐する枝の元のほうに戻ったけど、次また同じ枝に進むとは限らないです」
 
「ああ、未来というのはそうなのかも知れませんね」
「明るい未来を想像する人は明るい方向に行くし、暗い未来を想像する人は暗い未来を選択しがちです」
 
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「それ私もよく生徒たちに言いますよ」
と怜は言っていた。
 

「あのお、もしかしたら、怜が女になってしまったのって、あなたのお姉さんの仕業(しわざ)?」
とサトミが尋ねた。
 
「すみませーん。姉があの時ものすごく疲れていたので、うっかりやってしまったみたいで」
 
「うっかり人を性転換させちゃうんですか?」
とサトミが非難するように言う。
 
「いいよいいよ。僕は男に戻れたから実害は無いし。結果的に若返って腫瘍も無くなったのなら、いいことだらけだ」
と怜は言う。
 
「そうかもね」
 
千里は言った。
「お詫び代わりのサービスで、奥さんは女の身体に変えてあげましょうか?」
 
サトミは驚いた顔をしたが、即返事した。
 
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「女になりたいです!」
「だったら、今度はあなたが私の左胸の第十肋骨に触って」
「はい」
 
それで千里は彼女を女の身体に変えてあげたのである。
 
「嬉しい!ちんちん無くなっちゃった!」
「サトミ、胸が物凄く大きい」
 
「それ生胸でもEカップあると思います。美容外科に行ってシリコンバッグ抜いてもらったほうがいいですよ」
「そうします!」
 
「年齢も若返ったんですよね?」
と怜が訊く。
 
「奥さんは何歳ですか?」
「33歳です」
「だったら3.3年くらい若返って、今は29.7歳くらいかも」
「わあ。20代に戻れたのか。私、赤ちゃん産めたりして」
「産めると思いますよ。だってあなた完全な女だもん」
「マジ?」
 
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元男性のサトミにとって赤ちゃん産むなんてのは想定外のことだろう。
 
「でもこの後どうしよう?」
と怜が戸惑うように言った。
 
「今度は奥さんが病院に行って、この人は完全な女性であるという診断書を書いてもらって性別を訂正すればいいですよ。そしたら結婚できるでしょ?」
 
「それで行こう!」
 

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「だけど村山さんと出会う前にも私、とっても女性化しつつあったんですが、それはなぜだったんでしょう?医者が言ってた腎臓の腫瘍のせいでしょうか?」
と怜は尋ねた。
 
「肝臓なら分かるけど、腎臓の腫瘍でそういう症状が出るというのは考えにくいですね」
と千里は言い、《びゃくちゃん》に尋ねてみた。
 
「ああ、あなた、何かの呪いが掛かっていたみたい」
と千里は言った。
「呪い?」
「もう既に呪いは無いのですが、掛かっていた跡だけ残っていますね。どこか変な所に行かれませんでした?これは自然系の呪いで、男性を女性化させる作用がある。たぶんこれ姉がその呪い自体は祓ったんだと思います」
 
「そうだったんですか!」
「その呪いで性別が曖昧になりつつあったから、うっかり性別が男女どちらかに確定するようにしちゃったのかも」
 
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「なるほどー」
 
「意識してやっているのなら、ちゃんとあなたの本来の性別を確認してからしたのかも知れませんが、姉は疲れていて無意識だったので、あなたは本来女性と思ったのかも知れませんね」
 
「あははは」
 
「同性愛だから読み間違ったのかもね」
とサトミが言うと
「それはあり得る気がするよ」
と怜も納得していた。
 

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「でもそんな呪い、どこで拾ったんだろう」
と怜は少し考えていたが、思い至った。
 
「もしかしたら天狗岩かも」
「何です?それ」
 
「能登半島の山の奥に、以前天狗岩という名前で実際はおちんちんの形をした自然石があったんですよ。3月に生徒たちを連れて見に行ったんですが、岩は無くなっていたんですよね」
 
千里はその背景を見た。物凄く怪しげな雰囲気がある。
 
「その生徒さんたちが心配なのですが」
「女生徒ばかりだったんですが、女性にも影響あります?」
「女性は大丈夫です。男子生徒はいませんでした?」
 
「はい」
と答えてから、怜は思い出した。
 
「すみません。1人だけ居ました。ピアニストの男の子なんです」
「その子の連絡先分かりますか」
「はい」
 
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それで怜から平野啓太の連絡先を聞いた千里は、すぐにそちらに照会してみた。するとペニスに腫瘍ができていて、その治療のために東京の病院に入院しているということが分かり、そちらを訪問することにした。
 
なお怜は、啓太の他に岬も居たことが完全に意識の中から外れていた!岬はそもそもソプラノだし、ふだんから女生徒の中に埋没していて、彼が男子であることを多くの人が忘れてしまっているのである。
 

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