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■春枝(7)

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「よかったね」
と藤尾さんに言われて取り敢えず(荷物を取ってくるため)一緒に614号室に帰った。それで報告したら、最初からいたセミロングの女性:坂下さんは「よかったね」と言ってくれたが、新たに来ていた髪にパーマを掛けている女性:田神さんは「部屋の変更って何があったんですか?」と訊いた。
 
「ああ、性転換したから男部屋に変更になるのよ」
と藤尾さん。すると田神さんは
 
「え?充分女性に見えるのに。もしかしてまだ最終的な手術が終わってなくてまだ男性扱いなんですか?」
などと言っていた。藤尾さんが苦しそうにしていた。
 
それで
「お騒がせしました」
と言って、移動しようとした所で気が付いた。
 
「しまった!制服を交換してもらうの忘れた」
「うーん。。。。女子制服のまま研修受けたら?別に困らないでしょ?」
「トイレが不便です」
「女子トイレ使えば?青山さん、女子トイレにいても誰も騒がないよ」
「それはまずいですー」
 
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それで再度事務局に電話してみたのだがつながらない。
 
「もう帰っちゃったのかもね。明日頼みなよ」
「そうします」
 

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そういう訳で広紀は女子制服のまま新たに割り当てられた528号に行ったが
 
「すみません。ここは男子部屋なので女性の方には入ってもらいたくないんですが」
と言われる。
 
「私、男です。性別間違えられて女子部屋に入れられていたんです」
と広紀は言った。
 
「そういう冗談はやめて欲しいんだけど」
「女子制服着て男と主張されても困るな」
「男だというのなら、ちんこ付ける手術でもしてから来てね」
「はい、女は出て出て」
 
と言って、広紀は追い出されてしまった!
 
「これどうしたらいいの〜〜?」
と広紀はマジで悩んだ。
 

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依田怜は悩んだ末、ゴールデンウィーク前の4月26日、学校を休み、わざわざ金沢まで出て、大きな病院の泌尿器科に行ってみた。連休前だけに患者が多い。3時間待ってやっと診察室に通される。
 
「どういうお悩みですか?」
「実はここ2ヶ月ほど、立ちにくくなって、そもそも性器自体が縮んでいるような気がするのですが」
「では取り敢えず血液検査をしましょう」
 
それで検査室に行き、採血された。
 
2時間待つ!
 
名前を呼ばれたので診察室に入る。
 
「女性ホルモンの量が非常に増えていますね。もしかしたら肝臓疾患かも知れません」
「肝臓ですか?」
 
「男性の身体の中でも女性ホルモンは作られているのですが、肝臓で分解されてしまうんですよ。ところが肝臓の機能が低下していると、きちんと分解されなくて、女性ホルモンの量が増えて、陰萎症状が出たり、乳房が膨らみ始めたりします」
 
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「実は最近乳首が大きくなってきた気がするんです!」
 
それで身体も実際に見てもらったが、
「ああ。確かに身体が全体的に女性化していますね。ちょっと内科に行って肝臓の検査を受けてください」
 
「分かりました」
 
それで内科に行く。
 
4時間待つ!
 
もう病院の受付も閉まってしまうが、患者はまだかなり残っている。結局18時半頃になって、やっと診てもらった。
 
「午前中に採血してもらった血液から再度肝臓疾患に関する因子を見ていたのですが、特に異常はありませんね」
 
「異常が無いんですか!?」
 
「確かに女性化しているようですが、女性ホルモンとかは飲んでおられませんよね?」
「そんなもの飲みません!」
「時々男性でも、美容にいいとか聞いて女性ホルモンや類似物質を摂るかたがおられるので」
「はぁ・・・」
 
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「プエラリア・ミリフィカとかは?」
「何です?それ?」
「ガウクルアは?」
「知りません」
「DHCのサプリ、エステミックスとか?」
「サプリとか嫌いです」
「ザクロ・エキスとかは?」
「そんなの飲みません」
「ビールをたくさん飲むとか?」
「私はチューハイ専門でビールは飲みません。でもビールで女性化するんですか?」
「かなり大量に飲んだ場合ですけどね」
「でも飲みませんよ」
 
「そういうのを摂取していなくて、肝機能も正常で女性ホルモンが増加するというのは、何だろう?連休明けに少し精密検査してみましょうか?」
 
「お願いします」
 
それでその日は帰宅したが、丸一日掛けて、1回採血されたのと、2人の医師に合計5分くらい診察してもらっただけで、ひたすら待合室で待つ1日だった!
 
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出羽で“巫女の力”を取り戻した千里1は東京に戻ると、ヘア・ドネーションをしてくれる美容室でバッサリ長い髪を切った。店長さんがカットしてくれたが「本当に切っていいですね?」と3回くらい訊かれた。
 
それで経堂のアパートに戻ると、桃香は千里と判別できず
「すみません。どなたでしょうか?」
と尋ねたほどであった。
 
多くの人が、千里をその髪の長さで判別しているので、桃香以外にも認識できない人が多数発生したが
 
「困るなあ」
とぶつぶつ言っていたのは、“工作がしにくくなる”千里2と千里3である!
 

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千里1が髪を切ったのは、この髪が元の長さに戻るまで必死で練習しようという決意の表れである。千里1は毎日10kmのジョギングと腕立伏300回・腹筋300回などの基礎トレーニングを自分に課したが、シュート練習できる場所が欲しいと思った。
 
公共の体育館はあまり長時間独占できない。常総ラボ(これのこともやっと自分が作った体育館であることを思い出した)まで行けば練習できるが、車で走っても片道1時間半ほど掛かる。東京中心部を通過する時に混むと2時間以上見る必要があることもある。それで「混雑するエリアを通らずに」到達できる場所にシュート練習のできる場所が欲しいと思ったのである。
 
そこで千里1は不動産屋さんに飛び込むと板橋区内に25坪という小さなサイズの土地を1500万円(さすが都区内!)で購入し、ここに建坪10坪・床面積15坪という小さな家を建てる契約を工務店と結んでしまった。
 
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住宅の衝動買いである。
 
(千里2が「また住所が増えた」とぶつぶつ言っていた)
 
この家は純粋にシュート練習のためだけの家で1階が練習場(9.8m×2.9m)、地階(9.8m×4.3m)にトイレ・ユニットバスとキッチンに仮眠用の部屋というものである。しっかり防音壁を貼り付けるので、練習の音で近所から苦情が来ることはないであろう。幅3mに対して長さが10mという非常識な形にしたのは、この土地が11.2m x (7.2m・8.4m)という台形の土地で、その幅のギリギリまで使ったのと、3ポイントラインの距離が6.75mだからである。
 
(ゴールはコート端から1.575m, ゴールから3Pラインまで6.75m, プレイヤーが立つ場所を1m 程度確保するとこれで9.3m。壁の厚さをゴール側0.3m 反対側0.2mとして家屋の長さは9.8m。建物は敷地境界から50cm以上空けて建てなければならないので9.8mの家を建てるには最低10.8m以上のスパンがある土地が必要ということになり、3P練習場の建築には最低10.8m以上のスパンがある土地が必要である)
 
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なお、ゴールは高さと向きを調整可能にして、斜めや真横からのシュートも練習する。
 
この“板橋ラボ”は7月に完成するが、それまでの間は世田谷区内の体育館を借りたり、あるいは(渋滞しても大丈夫なように)Yamaha YZF-R25(*3)で常総ラボまで走って、そちらで練習していた。
 
(*3)YZF-R25は青葉から借りっぱなし!である。だが借りたのは千里2なので千里1はこれが借り物であることを知らない。車庫にあったので、雨宮先生が置いていったのだろうと思っている。
 

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千里2は毎年春から夏に掛けてアメリカのWBCBL(Women's Blue Chip Basketball League) に、秋から春に掛けてフランスのLFB(Ligue feminine de basket) に参加しているのだが、昨年秋、WBCBLの創設者 Willie McCray が辞任してしまった。リーグの継続性についても議論があったようだが、結局 WBCBL参加チームのひとつである Grand Rapids Galaxy のオーナーである William Kelly が新たに資金を提供して WBDA(Women's Basketball Development Association) が創設されることになり、WBCBL の各チームは WBDA に移行することになった。
 
しかしこの動きに反発したSt.Louis Surgeなど5つのチームが別の女子バスケットリーグ GWBA (Global Women's Basketball Association) を設立し分離独立した。結果的にはリーグが分裂したような形になった。この背景には2017シーズン決勝戦でSurgeに不利な判定があって優勝を逃したのがあったともされる。GWBAは今年は5チームでやるが来年は10チームでやりたいとして参加を募っていたようだが、最終的に2019年に GWBA に参加したのは4チームに留まった。
 
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千里(ヴィクトリア)が所属するフィラデルバーグ・スワローズは大半のチームが移籍したWBDAの方に参加したので、今年はWBDAの選手として活動することになった。
 
「WBDAって、パッと見には WNBAと空目しない?」
「それが目的なのでは?」
などとチームメイトと言い合った。
 
WBCBL/WBDAに参加している選手には、いつかWNBAのチームに加入できないかと夢見る若い選手が多い。それ以外に千里のように外国から修行に来ている選手も結構あり、リーグでは積極的にそういう選手にチームを紹介している。
 
WBDAの最初のシーズンは2019年5月11日(日本時間12日3:00)から始まった。この時期フランスではまだプレイオフをしているのだが、千里(キュー)たちのチームは4月17-23日に行われた準々決勝で1勝2敗となり、準決勝以降に進出できなかった。チームとしての活動は決勝戦の終了(5月23日)まであるのだが、試合に出ないのをいいことに、千里2は《すーちゃん》を代役に置いて、4月24日にはアメリカに移動してしまい、その後スワローズの練習に参加して開幕を迎えた。
 
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なおこの時期、千里3の方は4月25日から今年度最初の代表合宿(第二次合宿)、5月6-12日には第3次合宿、5月20日−6月3日には第四次合宿、と合宿が続いている。
 
つまりこの5月、千里は実はフランスでLFBの活動、アメリカでWBDAの活動、日本では代表活動をと、並行して3ヶ所で活動していたことになる。その中で千里1は本格的にリハビリを開始していた。
 

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青葉たち水泳日本代表は5月8日までケアンズで合宿をし、そのあとシドニーに移動して5月10-12日はシドニーオープンに出場した。その後、帰国した。
 
SYD 5/13 6:15 (JL772 787-8) 17:05 NRT (9'50")
 
ジャネは深川アリーナでひたすら泳ぐと言っていたが、青葉はさすがに大学を全休するわけにはいかないので、いったん高岡に戻る。
 
新幹線に乗るのに東京駅まで行ったら桃香と遭遇するのでびっくりする。
 
「桃姉、どこまで?」
「高岡。千里が来いというから」
「ちー姉、高岡に居るんだ?」
と訊いてから、それはどの千里だろう?と思う。
 
「でも桃姉ひとり?早月ちゃんと由美ちゃんは?」
「千里が今朝から連れ出していた。高岡まで行ってたなんてびっくり」
と桃香が言っている。それで高岡にいるというのは1番のようだなと判断した。
 
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実際高岡の実家まで戻ると、髪をショートカットにした千里がいた。朋子から最初「どなたですか?」と訊かれたらしい!青葉は新幹線の中で桃香からその話を聞いていたものの、それでも一瞬誰だっけ?と思った。
 
「今夜は焼きそばなんだ?」
と青葉は訊いた。
 
「うん。途中で買ってきたから」
と千里は言うが、焼きそば麺の製造所を見たら神戸である!?
 
「ちー姉、神戸に行って来たの?」
「そそ。神戸でお仕事があったのよ。子供連れてきてくださいと言われたから2人連れて行ったけど、仕事の一部にスーパーでお買い物するというのがあったから、買ったついでにこちらに来た」
などと千里は言っている。何か不思議なお仕事だなと思った。
 
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「待て。もしかして私はこの焼きそばを一緒に食べるために高岡に呼び出されたのか?」
と桃香は訊くが
「そうだけど」
と千里は平然として答えていた。
 

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